少年と教師

リリーブルー

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少年と悪友

先生に捕まる

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「見てもらえよ、大好きな小坂に。宮本のエッチな姿。そしたら、小坂だって興奮して、がまんできなくなって、してくれるかもしれないぜ?」
もう、村田の言っていることは、めちゃくちゃだった。
「何言っているんだよ」
ここを、どこだと思っているのだ。学校の教室で、しかも見回りの小坂先生が、きっと、また戻ってくるのに。宮本は、必死で村田の身体を押しやろうとした。
「素直になれよ」
村田が宮本の耳元でささやいた。
「ここでは、だめだよ」
宮本は、村田によって、なしくずしにされようとしていた。
「ここでは? ほかのところでならいいのか?」
「そういう意味じゃないって」
「こんなチャンスないのに」
「今はだめだって」
宮本は、村田を押しのけた。なのに村田は宮本のベルトをつかんで言った。
「小坂と、やりたいんだろ?」
「ぼくは、そんなこと言ってないよ」
「でも、そういうことだろ?」
村田の手が宮本の大事なところに触れた。
「違うよ。そんなんじゃないよ。あ……あ、やめてよ」
宮本は手で制した。
「もう、素直じゃないなあ」
村田の顔が近い。
「あぁっ! だめ!」
村田が手で股間をさわってきたので、宮本は変な叫び声をあげてしまった。その時、
「そこ、まだいたのか。施錠されるぞ」
小坂先生のとおる声が教室に響いた。
 夕闇の中で、宮本らの姿は、よく見えなかったのだろう。そう思いたい。
「はい」
宮本は答えて、急いで前をかくした。見られたかも。声も聞かれたかも。きっと、見られたに違いない。村田に触られて、喘いでいるところ。宮本は恥ずかしさにいたたまれなくなった。教室の扉のところで小坂先生が待っていた。
「先生、さようならー」
村田は言いながら、宮本を小坂先生の方に押しつけた。

 宮本は、よろけて先生にぶつかってしまった。
「すみません」
小坂先生の体温を、ふわりと感じた。村田は、どんどん先に行ってしまった。村田の姿が小さくなり視界から消えた。
「宮本」
小坂先生が、宮本の腕をつかんだ。叱られる! 宮本の腕をつかんだ手の強さに、宮本は、とっさに、そう思ったが、かけられた言葉は、いたわりに満ちていた。
「大丈夫か?」
小坂先生の思いがけない優しいことばが、宮本の胸をうった。宮本は、答えられなかった。涙がじわりとにじみ、こぼれ落ちそうだった。大丈夫なんかじゃなかった。
「何か、されていたんじゃないのか?」
宮本は、恥ずかしかった。小坂先生に、村田に無理やり触られているところを見られてしまったこと。エッチな声を聞かれてしまったこと。小坂先生のことが好きなのに、村田とキスしてしまったこと。すべて打ちあけて、ごめんなさいと言って、小坂先生の胸に、わっとすがりついて、思うぞんぶん泣きたかった。でも、ためらいの気持ちが、宮本を押しとどめた。高校生にもなって、そんなことできないと思った。
 宮本は、こみあげそうになる嗚咽をのみこんで言った。
「ちがいますっ」
宮本は、首を振って、この恥ずかしい状況から逃げ出そうとした。
小坂先生の手が滑って、宮本の手と触れあった。と思ったら、ぐっと手を握られた。小坂先生に捕まってしまった。宮本の心臓は、ばくばくした。「小坂先生、先生のことが好きなんです」そのことばが、のどもとまで出かかった。のどが涙がつまったように痛かった。
 小坂先生は、心配そうに、宮本の顔をのぞきこんで、たずねてきた。
「宮本、どうしたんだ?」
やめてください。優しくしないで。涙がこぼれるから。
「なんでもないです」
宮本は小坂先生から顔をそむけた。
「ほら、そうやって、目も合わせない」
小坂先生は意地悪だ。手を放してくれない。小坂先生の手は、あたたかかった。嘘みたいだ。毎晩想像してる先生の手が、自分の手を強く握って放さないなんて。だめだ、夜な夜な想像してることなんて、思い出したりしたら。
「はなしてください。ほんとに、なんでもないですから」
宮本は、必死で小坂先生の手を振りほどこうとした。小坂先生は、宮本の手をはなしてくれた。宮本は、いそいで、かばんで股間を隠した。夜のことを思い出したせいで、少し反応してしまっていた。
「村田に、いじめられているとかじゃないよな?」
小坂先生は心配そうにたずねた。
「ちがいます」
村田にキスしてもいいと言ったのは自分なのだ。それに、宮本が小坂先生のことが好きなのは事実で、村田は、ほんとうのことを指摘しただけだった。
 宮本が、否定すると小坂先生は、
「ならいいんだけど」
と、まだ腑に落ちないような声音で言った。
「すみません。失礼します」
そう言って逃げ出そうとした宮本の背中に、小坂先生の声がかかった。
「なにか悩んでいることあるなら、聞くぞ」
一瞬、見透かされているようで、どきっとした。でも宮本は、自分がどきっとしたことすらも恥ずかしかった。
「さよなら」
宮本は、走って階段を駆け下りた。
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