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少年と悪友
悪友とファーストキス
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「また村田か! 村田……と宮本……」
小坂先生は村田の名を呼び叱ったあと、宮本の顔を見て、意外だ、というような顔をした。村田は規則破りで悪いことする常連だった。だが宮本は、そうではなかった。村田が変なことするから、よりによって小坂先生に、こんな誤解されそうな変なシーン、見られてしまったじゃないか! ほかの人に見られるよりマシ? キスしていたわけじゃないし。でもキスしていたように見えただろう。してないのに! 誤解です、先生!
好きな人に浮気現場を押さえられたような気持ち……いや浮気じゃないし! 小坂先生と付き合っているわけじゃないどころか、好きだとも本人に言ってないし。本人どころか誰にも言ってなかったのに。自分にだってずっと隠してた気持ちなのに。村田に暴かれたせいで、こんなことになってしまった。でも村田とは何もしてないし、村田のこと別に好きじゃないんです。
いや、小坂先生は、何とも思ってないに決まっているし。
「早く帰りなさい」
小坂先生は先生らしい指導的な口調で、宮本たちに告げた。
「はい」
宮本と村田は大人しく答え、すぐに、帰り仕度にかかった。
先生が廊下を歩き去る足音を確認してから、宮本たちは帰りじたくの手を止めた。
「今の、完全に小坂に見られたよな? やっべー」
村田は、しまった、という顔をして言った。
宮本は、唐突に言ったのだと思う。
「キスしてもいいよ」
村田は、あぜんとした顔で宮本を見た。何を突然、という表情だった。小坂先生には、キスなんかしてないのに、していたと思われてしまったに違いない。もう、この際してしまえ。村田は、前からしたがっているのだし。
「ほんとに、いいのか?」
村田は、驚いたような顔で宮本の意思を確認した。
「さっきまで嫌がっていたのに」
村田の顔はほころび、興味しんしんという感じになった。
「あ、わかった。小坂に見られて興奮したんだな?」
村田はそう言うと、宮本の返事を待ちきれないというように、宮本の唇に唇を重ねてきた。乾いた唇の、あたたかい感触。村田は、口を開けて、濡れた舌で、宮本の唇に触れた。宮本が恐る恐る、ぎゅっと閉じていた唇の力をゆるめると、宮本の唇の内側を村田の舌が触った。宮本と村田の舌先が触れ合った。二人の前歯が軽くあたってカチっと鳴った。
村田は、せわしない息づかいのもと、宮本の制服のズボンのベルトをはずそうとしてきた。宮本は、村田の唇から逃れて言った。
「何するんだよ……」
村田は宮本の大事な所をねらってきた。
「大丈夫。もう見回りも終わったから、誰も来ない」
村田が、熱に浮かされたような表情になっているのが怖かった。宮本は必死だった。宮本はキスしてもいいと言っただけだった。それ以上のなにかなんて、したかったわけじゃない。
「小坂先生、きっと、また確認に来るよ……」
だから、もう帰らないと、と宮本は言おうとした。一度なら見間違えですむかもしれないけれど、今度見られたら、小坂先生は、宮本と村田の仲を完全に誤解するだろう。
「あ、やっぱ、宮本、見られるのが好きなんだ?」
村田は、わけのわからないことを言ってきた。
「ちがうよ」
宮本は否定した。
「だって、小坂に見られたら急に積極的になって、してもいいだなんて言い出して。しかも小坂がまた来るのを期待してるなんて、小坂に見られたいってことだな」
村田は宮本を変態みたいに言った。
「ちがうよ、ぼくは小坂先生が好きだから……」
宮本は誤解されたくなかった。
「へえー、宮本は、小坂の姿を見ただけで興奮しちゃうんだ? それで授業中も……」
「違うよ!」
村田が何を言おうとしているか予想できて、宮本は言わせまいとした。村田は、後ろの席から、いつも、宮本を観察していたのだろう。
「隠すなよ。宮本が見たり見られたりするのに興奮する性質なのは、前から、俺、わかっていたんだから。だって、俺に気づかれても、やめないし。あんなふうに授業中に触っていたら、小坂も気づくと思うよ?」
村田は、ニヤニヤした。
「触ってなんかいないって」
村田に気づかれているとわかったからって、コントロールできることとできないことがあった。
最初のころ、校内で見かける小坂先生は、子どもっぽくてかわいい感じの人だったのに、今では、大人っぽいイケメンという感じになってきた。それだけでなく、ときどき見せる気だるげな表情が、とても妖しく色っぽかった。自分も去年とは、ずいぶん成長したと思うけど、小坂先生になにがあったんだろう。恋人でも、できたんだろうか。
小坂先生は村田の名を呼び叱ったあと、宮本の顔を見て、意外だ、というような顔をした。村田は規則破りで悪いことする常連だった。だが宮本は、そうではなかった。村田が変なことするから、よりによって小坂先生に、こんな誤解されそうな変なシーン、見られてしまったじゃないか! ほかの人に見られるよりマシ? キスしていたわけじゃないし。でもキスしていたように見えただろう。してないのに! 誤解です、先生!
好きな人に浮気現場を押さえられたような気持ち……いや浮気じゃないし! 小坂先生と付き合っているわけじゃないどころか、好きだとも本人に言ってないし。本人どころか誰にも言ってなかったのに。自分にだってずっと隠してた気持ちなのに。村田に暴かれたせいで、こんなことになってしまった。でも村田とは何もしてないし、村田のこと別に好きじゃないんです。
いや、小坂先生は、何とも思ってないに決まっているし。
「早く帰りなさい」
小坂先生は先生らしい指導的な口調で、宮本たちに告げた。
「はい」
宮本と村田は大人しく答え、すぐに、帰り仕度にかかった。
先生が廊下を歩き去る足音を確認してから、宮本たちは帰りじたくの手を止めた。
「今の、完全に小坂に見られたよな? やっべー」
村田は、しまった、という顔をして言った。
宮本は、唐突に言ったのだと思う。
「キスしてもいいよ」
村田は、あぜんとした顔で宮本を見た。何を突然、という表情だった。小坂先生には、キスなんかしてないのに、していたと思われてしまったに違いない。もう、この際してしまえ。村田は、前からしたがっているのだし。
「ほんとに、いいのか?」
村田は、驚いたような顔で宮本の意思を確認した。
「さっきまで嫌がっていたのに」
村田の顔はほころび、興味しんしんという感じになった。
「あ、わかった。小坂に見られて興奮したんだな?」
村田はそう言うと、宮本の返事を待ちきれないというように、宮本の唇に唇を重ねてきた。乾いた唇の、あたたかい感触。村田は、口を開けて、濡れた舌で、宮本の唇に触れた。宮本が恐る恐る、ぎゅっと閉じていた唇の力をゆるめると、宮本の唇の内側を村田の舌が触った。宮本と村田の舌先が触れ合った。二人の前歯が軽くあたってカチっと鳴った。
村田は、せわしない息づかいのもと、宮本の制服のズボンのベルトをはずそうとしてきた。宮本は、村田の唇から逃れて言った。
「何するんだよ……」
村田は宮本の大事な所をねらってきた。
「大丈夫。もう見回りも終わったから、誰も来ない」
村田が、熱に浮かされたような表情になっているのが怖かった。宮本は必死だった。宮本はキスしてもいいと言っただけだった。それ以上のなにかなんて、したかったわけじゃない。
「小坂先生、きっと、また確認に来るよ……」
だから、もう帰らないと、と宮本は言おうとした。一度なら見間違えですむかもしれないけれど、今度見られたら、小坂先生は、宮本と村田の仲を完全に誤解するだろう。
「あ、やっぱ、宮本、見られるのが好きなんだ?」
村田は、わけのわからないことを言ってきた。
「ちがうよ」
宮本は否定した。
「だって、小坂に見られたら急に積極的になって、してもいいだなんて言い出して。しかも小坂がまた来るのを期待してるなんて、小坂に見られたいってことだな」
村田は宮本を変態みたいに言った。
「ちがうよ、ぼくは小坂先生が好きだから……」
宮本は誤解されたくなかった。
「へえー、宮本は、小坂の姿を見ただけで興奮しちゃうんだ? それで授業中も……」
「違うよ!」
村田が何を言おうとしているか予想できて、宮本は言わせまいとした。村田は、後ろの席から、いつも、宮本を観察していたのだろう。
「隠すなよ。宮本が見たり見られたりするのに興奮する性質なのは、前から、俺、わかっていたんだから。だって、俺に気づかれても、やめないし。あんなふうに授業中に触っていたら、小坂も気づくと思うよ?」
村田は、ニヤニヤした。
「触ってなんかいないって」
村田に気づかれているとわかったからって、コントロールできることとできないことがあった。
最初のころ、校内で見かける小坂先生は、子どもっぽくてかわいい感じの人だったのに、今では、大人っぽいイケメンという感じになってきた。それだけでなく、ときどき見せる気だるげな表情が、とても妖しく色っぽかった。自分も去年とは、ずいぶん成長したと思うけど、小坂先生になにがあったんだろう。恋人でも、できたんだろうか。
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