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第六章:渇きと依存の境界線
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「……律、動くな」
東条の指先が、まだ熱の残る律の腰にそっと触れた。
社長室のデスクの上。スーツは脱ぎ散らかされ、律はシャツだけを羽織ったまま、脚を東条の腕に絡められていた。
「奥……まだ、残ってる……」
中に注がれた東条の熱が、締まりのいい穴の奥で、じゅるりと卑猥な音を立てる。
「ん、や……そんな、っ……もう……無理……っ」
「さっき、三回もイったくせに。……まだ締めつけてくるのは、どう説明する?」
「ちが……っ、それは……」
「俺のが、欲しくてたまらないんだろ?」
腰がずるりと動き、まだ敏感になっている律の中をえぐるように揺さぶる。
律の喉奥から、止めたくても止められない声が漏れた。
「……ああっ、や、やだっ、奥、またっ、当たって……!」
「一晩に四度も突かれるなんて、律は顔に似合わず欲張りだな」
「そんな、数なんて……っ!」
東条の腰が打ちつけられるたび、快楽と羞恥が交互に襲いかかってくる。
けれど、最初に感じたような「拒絶」は、もうなかった。
それどころか――
気づけば、東条の熱が抜けることに恐怖すら覚えていた。
「……あんたが、怖いです……」
東条の動きが一瞬、止まる。
「どうして?」
「身体の奥まで、あなたに刻まれて……頭の中も……全部、占領されて……。
僕、もう……自分じゃなくなりそうで、怖いんです……っ」
その声に、東条はほんの少しだけ表情を緩めた。
「なら、もう……自分でいるのを、やめればいい」
「っ……」
「俺の中で泣いて、喘いで、壊れて……それだけでいい。
君が“自分らしくあろうとすること”に、意味なんかない」
その瞬間――
律の心の奥で、何かが静かに崩れ落ちた。
(全部、委ねたら……きっと楽になれる……)
東条が再び腰を沈める。
濡れた音と肉の打ち合う音。淫靡な熱が、また律の奥を溶かしていく。
「っ……社長……」
「名前で呼べ。俺はお前の男だ」
「……東条……さん……」
その声に、東条の腰が深く深く沈み込む。
律は知らなかった。
自分の“壊れる音”が、あんなにも甘く耳に響くことを。
◆
数日後――
社内では律と東条の関係を知る者は、まだ、いない。
東条は表面上、何も変わらず社長としての仕事をこなしていた。
ただ――
律の指には、銀の細いリングがひっそりと嵌められていた。
「……これは?」
そう問うと、東条は微笑んで言った。
「“所有印”だよ。俺がどこまで執着してるか、思い出すためのね」
「……こんなの、付けてたら……いつか……みんなに、バレますよ……」
今ですら、バレないかと、ひやひやしているのに。こんな、関係を証明するようなもの……。
聞かれたら、なんて答えればいいんだ。
でも、嬉しい。この関係を、社長が、大切にしてくれているような気がして。
遊びなれた社長にとっては、これも単なる、一過性の戯れなのかもしれない。
だけど、こうして記念に残るものを贈られたことで、この不安定な関係を、少しだけ信じていいような気にもなる。
「その時は、君を秘書から降ろす。俺専属の、夜の管理人としてな」
「……っ、ほんとに……最低……」
律はそう言いながらも、リングを外すことはなかった。
むしろ、気づけば無意識に指輪に触れて、その贈り主のことを考えている……。
心が壊れたわけじゃない。
でも、どうしようもなく――
東条の温度が、律を生かしていた。
---
次章予告:
第七章「欲と独占のアフターグロウ」
新たな取引先との会食。その席で律は、別の男から熱い視線を向けられる。
嫉妬を隠さない東条の暴走と、律が選ぶ“自分の居場所”。
“喰われるだけ”だった関係に、変化の兆しが――。
東条の指先が、まだ熱の残る律の腰にそっと触れた。
社長室のデスクの上。スーツは脱ぎ散らかされ、律はシャツだけを羽織ったまま、脚を東条の腕に絡められていた。
「奥……まだ、残ってる……」
中に注がれた東条の熱が、締まりのいい穴の奥で、じゅるりと卑猥な音を立てる。
「ん、や……そんな、っ……もう……無理……っ」
「さっき、三回もイったくせに。……まだ締めつけてくるのは、どう説明する?」
「ちが……っ、それは……」
「俺のが、欲しくてたまらないんだろ?」
腰がずるりと動き、まだ敏感になっている律の中をえぐるように揺さぶる。
律の喉奥から、止めたくても止められない声が漏れた。
「……ああっ、や、やだっ、奥、またっ、当たって……!」
「一晩に四度も突かれるなんて、律は顔に似合わず欲張りだな」
「そんな、数なんて……っ!」
東条の腰が打ちつけられるたび、快楽と羞恥が交互に襲いかかってくる。
けれど、最初に感じたような「拒絶」は、もうなかった。
それどころか――
気づけば、東条の熱が抜けることに恐怖すら覚えていた。
「……あんたが、怖いです……」
東条の動きが一瞬、止まる。
「どうして?」
「身体の奥まで、あなたに刻まれて……頭の中も……全部、占領されて……。
僕、もう……自分じゃなくなりそうで、怖いんです……っ」
その声に、東条はほんの少しだけ表情を緩めた。
「なら、もう……自分でいるのを、やめればいい」
「っ……」
「俺の中で泣いて、喘いで、壊れて……それだけでいい。
君が“自分らしくあろうとすること”に、意味なんかない」
その瞬間――
律の心の奥で、何かが静かに崩れ落ちた。
(全部、委ねたら……きっと楽になれる……)
東条が再び腰を沈める。
濡れた音と肉の打ち合う音。淫靡な熱が、また律の奥を溶かしていく。
「っ……社長……」
「名前で呼べ。俺はお前の男だ」
「……東条……さん……」
その声に、東条の腰が深く深く沈み込む。
律は知らなかった。
自分の“壊れる音”が、あんなにも甘く耳に響くことを。
◆
数日後――
社内では律と東条の関係を知る者は、まだ、いない。
東条は表面上、何も変わらず社長としての仕事をこなしていた。
ただ――
律の指には、銀の細いリングがひっそりと嵌められていた。
「……これは?」
そう問うと、東条は微笑んで言った。
「“所有印”だよ。俺がどこまで執着してるか、思い出すためのね」
「……こんなの、付けてたら……いつか……みんなに、バレますよ……」
今ですら、バレないかと、ひやひやしているのに。こんな、関係を証明するようなもの……。
聞かれたら、なんて答えればいいんだ。
でも、嬉しい。この関係を、社長が、大切にしてくれているような気がして。
遊びなれた社長にとっては、これも単なる、一過性の戯れなのかもしれない。
だけど、こうして記念に残るものを贈られたことで、この不安定な関係を、少しだけ信じていいような気にもなる。
「その時は、君を秘書から降ろす。俺専属の、夜の管理人としてな」
「……っ、ほんとに……最低……」
律はそう言いながらも、リングを外すことはなかった。
むしろ、気づけば無意識に指輪に触れて、その贈り主のことを考えている……。
心が壊れたわけじゃない。
でも、どうしようもなく――
東条の温度が、律を生かしていた。
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次章予告:
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新たな取引先との会食。その席で律は、別の男から熱い視線を向けられる。
嫉妬を隠さない東条の暴走と、律が選ぶ“自分の居場所”。
“喰われるだけ”だった関係に、変化の兆しが――。
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