63 / 435
第九章 再び潤の部屋にて
暴露
しおりを挟む
僕は自分の脱いだズボンと下着を探して、きょろきょろした。潤の叔父様が、ベッドの縁に掛けてあったのを取って僕に手渡してくれた。受け取る時に、譲たちに見えないように、こっそり、裸のお尻を撫でられた。僕は行為を中断されて寂しかったので触ってもらって嬉しくて、ぱっとおじ様の顔を見たら、向こうも僕を見ていたので余計嬉しかった。けれど潤や譲を刺激しないように僕は下を向いて黙って下着とズボンを履いた。
「また、今度、三人で、続きをしよう」
潤の叔父様が、僕の耳元でささやいた。僕は、ぼっと顔を熱くさせながら、頷いた。潤と三人ならかまわないだろう。でも、また潤はやきもちを焼くかなあ。
「約束だよ?」
小指をこっそり差し出されたので、僕は子どものように小指をからめ返した。
「変態オヤジ、高校生相手に何こそこそしてんだよ」
譲が、僕らを見とがめて、怒ったように言った。
「さっきだって、あんたがついていくのが筋だろう。おかげで、恥ずかしい思いをしたんだぜ。旦那さんですか、とか言われて」
譲が文句を言った。
「いや、すまん」
「知ってた? 母さん妊娠してたの」
「ええっ!?」
その場にいた全員が驚いた。
潤が、
「なんとなく知ってた」
と言った。
「夢でお告げがあったから」
潤は夢見るように語りだした。
「天使が俺のところに来て、あなたは妊娠しましたって」
譲が、バコンと潤の頭をぶった。
「お前が妊娠するかっ! 男だろ」
「乙女も妊娠するんだから、俺だって」
「さては、さっき宙吊りになって頭がいかれたな?」
「俺がってわけじゃなくて。俺の子って意味だったんだなあ」
みんなが硬直した。
誰もが思っただろうけれど、誰も言い出せなかったことを、潤が、あっさり口にしてしまった。
「何? みんなどうしたの? 夢の話だよ? 俺の子どもができた話」
ふっと、潤のおじ様が笑った。潤の叔父が、潤の所に行って、潤を机から降ろして抱いた。潤の頭をぐりぐり撫でていた。
「どうすんだよ……親父」
譲が、小声で言った。
「もちろん私の子だ。譲や昴の弟だよ」
潤のおじ様が言った。
「後で子どもの父親は来いって言われたぞ……」
譲が言った。
「譲、嘘を言うな。既婚者に、そんなまわりくどい言い方はしないはずだ。夫が行けばすむことだ」
潤の叔父が、叱るように言った。
「あ、そう。あんたの子ってことにするんだ。まあ、そりゃそうだよな。寝取られコキュの汚名を着せられたくないだろうし。若い男に寝取られましたなんて」
譲が父親を嘲笑った。
「ほんとに恥ずかしい思いをしたんだ。俺が付き添っていったから、俺が子どもの父親と間違われて。失礼だよな」
「ふうん、じゃあ、俺が行けば、間違いがなかったわけだ」
潤が言った。僕は、ある意味、潤が行って、平気で第三者に暴露して、ことが発覚して、魔窟の家が解体されるのがいいかも、と思った。
「馬鹿言うな。最悪だ。お前の希望的妄想をべらべら余所でしゃべったりするなよ。今は家の中だから言ってるだけだからな」
譲が慌てた。
「え、どうして。妄想なんかじゃないよ。譲兄さんだって知ってるじゃないか」
「いいや、俺は知らないし、考えたくもない。以後その話は、聞かない。聞きたくないから。俺の前で、その話を二度と絶対するな。したらお前を犯す」
譲が心底嫌そうに言って潤をおどした。
「してもしなくても犯すくせに……」
「人聞きの悪いことを言うなよ。俺は、いつだって、お前の許可をとって、合意の上でしてるだろ。ひどいことや危険なことはしてない。危険に見えることだって、十分注意を払った上でしてるし……」
「とにかく朝食後に、私が行くから」
と大洗氏が言うと、
「俺もいくよ」
と潤が言った。
「お前は、いい」
大洗氏は言った。
「絶対行くなよ、また母さんが錯乱する」
譲も止めた。
叔父と兄に止められて、潤は泣きそうな顔をした。
「まあ、いい。とにかく朝食をとろう」
「あの、おろすとかしないで?」
潤がすがるような目で、父と兄に言った。
「大丈夫、お前は心配するな」
潤の叔父様が大きな手で潤の頭をぽんぽんした。
「弟……かな?」
潤が聞いた。
「そう、潤の弟か妹」
潤の叔父が答えた。
「正しくは、潤の、従弟妹」
譲が言うと、潤が、
「正しくは、俺の息子か娘」
と言った。
「潤、その妄想、外では絶対、言うなよ! お前は、冗談のつもりでも、洒落にならないからな」
と譲が怒った。
「妄想とか冗談じゃないのに……本当のこと言うのはダメっていうルールなの?」
潤が不思議そうに尋ねた。
「わけがわからなくなるだろう? その子から見て、潤が、いとこで兄で父だったら。私から見て、孫で子で」
大洗氏が説明した。そういう問題じゃないんじゃない? と僕は思ったが、納得できればいいわけだ。
「俺から見て、潤が、いとこで弟で叔父?」
譲も考えた。
「うん、めんどうだね、倫子さんが俺の叔母で母で妻で」
また、潤の発言が、みんなを硬直させた。
「だから、潤、そういうこと言うなよ? デリカシーがないなぁ」
譲が、潤に注意した。
「みんなが言ってたから、俺も言っただけだよ。なんで俺だけ発言権ないの? ひどいよ」
潤は、自分だけ注意されるのが不服そうだった。
「お前の発言が一番ヤバいからだって。みんな隠そうとしてるのに、当人がバラしてどうする」
譲が指摘した。
「うん、わかった。言わない。俺の子どもってことは、みんなに内緒にすればいんだね?」
「おい……。もう俺、知らねえぞ」
譲が、投げやりに言った。
「言わないじゃなくて、お前の子じゃないから。いいな? 夢のお告げかなんかといっしょで、お前の考えてることは、お前の夢や妄想だ」
譲は、潤に言い聞かせた。そして父に同意を求めた。
「な? そういうことだろ?」
「潤、服を着なさい」
潤の叔父は答えずに言った。
「めんどくさい。いいよ、男しかいないし」
潤が言った。
「それ、さんざん男に狙われたやつが言うセリフかよ」
譲が注意した。
「家にいるときくらい、そういうの忘れてリラックスしたいんだよ」
潤が、真顔で言った。
「また、今度、三人で、続きをしよう」
潤の叔父様が、僕の耳元でささやいた。僕は、ぼっと顔を熱くさせながら、頷いた。潤と三人ならかまわないだろう。でも、また潤はやきもちを焼くかなあ。
「約束だよ?」
小指をこっそり差し出されたので、僕は子どものように小指をからめ返した。
「変態オヤジ、高校生相手に何こそこそしてんだよ」
譲が、僕らを見とがめて、怒ったように言った。
「さっきだって、あんたがついていくのが筋だろう。おかげで、恥ずかしい思いをしたんだぜ。旦那さんですか、とか言われて」
譲が文句を言った。
「いや、すまん」
「知ってた? 母さん妊娠してたの」
「ええっ!?」
その場にいた全員が驚いた。
潤が、
「なんとなく知ってた」
と言った。
「夢でお告げがあったから」
潤は夢見るように語りだした。
「天使が俺のところに来て、あなたは妊娠しましたって」
譲が、バコンと潤の頭をぶった。
「お前が妊娠するかっ! 男だろ」
「乙女も妊娠するんだから、俺だって」
「さては、さっき宙吊りになって頭がいかれたな?」
「俺がってわけじゃなくて。俺の子って意味だったんだなあ」
みんなが硬直した。
誰もが思っただろうけれど、誰も言い出せなかったことを、潤が、あっさり口にしてしまった。
「何? みんなどうしたの? 夢の話だよ? 俺の子どもができた話」
ふっと、潤のおじ様が笑った。潤の叔父が、潤の所に行って、潤を机から降ろして抱いた。潤の頭をぐりぐり撫でていた。
「どうすんだよ……親父」
譲が、小声で言った。
「もちろん私の子だ。譲や昴の弟だよ」
潤のおじ様が言った。
「後で子どもの父親は来いって言われたぞ……」
譲が言った。
「譲、嘘を言うな。既婚者に、そんなまわりくどい言い方はしないはずだ。夫が行けばすむことだ」
潤の叔父が、叱るように言った。
「あ、そう。あんたの子ってことにするんだ。まあ、そりゃそうだよな。寝取られコキュの汚名を着せられたくないだろうし。若い男に寝取られましたなんて」
譲が父親を嘲笑った。
「ほんとに恥ずかしい思いをしたんだ。俺が付き添っていったから、俺が子どもの父親と間違われて。失礼だよな」
「ふうん、じゃあ、俺が行けば、間違いがなかったわけだ」
潤が言った。僕は、ある意味、潤が行って、平気で第三者に暴露して、ことが発覚して、魔窟の家が解体されるのがいいかも、と思った。
「馬鹿言うな。最悪だ。お前の希望的妄想をべらべら余所でしゃべったりするなよ。今は家の中だから言ってるだけだからな」
譲が慌てた。
「え、どうして。妄想なんかじゃないよ。譲兄さんだって知ってるじゃないか」
「いいや、俺は知らないし、考えたくもない。以後その話は、聞かない。聞きたくないから。俺の前で、その話を二度と絶対するな。したらお前を犯す」
譲が心底嫌そうに言って潤をおどした。
「してもしなくても犯すくせに……」
「人聞きの悪いことを言うなよ。俺は、いつだって、お前の許可をとって、合意の上でしてるだろ。ひどいことや危険なことはしてない。危険に見えることだって、十分注意を払った上でしてるし……」
「とにかく朝食後に、私が行くから」
と大洗氏が言うと、
「俺もいくよ」
と潤が言った。
「お前は、いい」
大洗氏は言った。
「絶対行くなよ、また母さんが錯乱する」
譲も止めた。
叔父と兄に止められて、潤は泣きそうな顔をした。
「まあ、いい。とにかく朝食をとろう」
「あの、おろすとかしないで?」
潤がすがるような目で、父と兄に言った。
「大丈夫、お前は心配するな」
潤の叔父様が大きな手で潤の頭をぽんぽんした。
「弟……かな?」
潤が聞いた。
「そう、潤の弟か妹」
潤の叔父が答えた。
「正しくは、潤の、従弟妹」
譲が言うと、潤が、
「正しくは、俺の息子か娘」
と言った。
「潤、その妄想、外では絶対、言うなよ! お前は、冗談のつもりでも、洒落にならないからな」
と譲が怒った。
「妄想とか冗談じゃないのに……本当のこと言うのはダメっていうルールなの?」
潤が不思議そうに尋ねた。
「わけがわからなくなるだろう? その子から見て、潤が、いとこで兄で父だったら。私から見て、孫で子で」
大洗氏が説明した。そういう問題じゃないんじゃない? と僕は思ったが、納得できればいいわけだ。
「俺から見て、潤が、いとこで弟で叔父?」
譲も考えた。
「うん、めんどうだね、倫子さんが俺の叔母で母で妻で」
また、潤の発言が、みんなを硬直させた。
「だから、潤、そういうこと言うなよ? デリカシーがないなぁ」
譲が、潤に注意した。
「みんなが言ってたから、俺も言っただけだよ。なんで俺だけ発言権ないの? ひどいよ」
潤は、自分だけ注意されるのが不服そうだった。
「お前の発言が一番ヤバいからだって。みんな隠そうとしてるのに、当人がバラしてどうする」
譲が指摘した。
「うん、わかった。言わない。俺の子どもってことは、みんなに内緒にすればいんだね?」
「おい……。もう俺、知らねえぞ」
譲が、投げやりに言った。
「言わないじゃなくて、お前の子じゃないから。いいな? 夢のお告げかなんかといっしょで、お前の考えてることは、お前の夢や妄想だ」
譲は、潤に言い聞かせた。そして父に同意を求めた。
「な? そういうことだろ?」
「潤、服を着なさい」
潤の叔父は答えずに言った。
「めんどくさい。いいよ、男しかいないし」
潤が言った。
「それ、さんざん男に狙われたやつが言うセリフかよ」
譲が注意した。
「家にいるときくらい、そういうの忘れてリラックスしたいんだよ」
潤が、真顔で言った。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる