待夜駅と碧翠堂

リリーブルー

文字の大きさ
7 / 24

昼の待夜駅

しおりを挟む
 碧翠堂主人の青年は、こう見えてなかなかの目利きだ。なぜなら小さな頃から、お屋敷で、たくさんの宝物にかこまれて育ったからだ。
 だから、弱冠二十歳だけれど、こうして店をかまえている。商品は、大きな船で、外国をまわって集めてきたものばかりだ。

 なのに、ちっとも売れないのは、人々が、夢を忘れたからだと若き碧翠堂主人は思う。
 そして、待夜駅の看板を見あげる。
 なんてロマンチックな名前なんだろう。
 骨董屋仲間は、碧翠堂主人のことを碧翠堂さんと屋号で呼ぶ。

 碧翠堂は、待夜駅の開いているときを知らない。
 なぜなら、碧翠堂は、飼っている猫に餌を与えるために夕暮れどきになると、早々に店を閉めてしまうからだった。
 碧翠堂はお酒を飲めないし、待夜駅がどんな店か知らない。
 きっと、カウンターには、美少年がいて、南極の氷をかき混ぜると、グラスの透明なクリスタルの光に澄んだ音を立てるのだろう。

 待夜駅の看板は、昼の間、階段の入り口にしまわれてあって、階段の内側の白い漆喰の壁は昼の光の中では、くすんで見えた。静かに眠っている待夜駅は愛おしく、夕暮れの光の中で、それが次第に魅惑的な姿に変わっていくのを、うっとりと眺めながら、碧翠堂は、帰宅の途につくのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...