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24.5 謎の地下空間
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広い空間の至る所に大きな木箱が沢山積み上げられている。
それに、床には下水路を潰したような跡もある。
神殿が権勢を持ち、地下の空間が必要になり、作られたのかも知れない。
その際に、下水道とのつながる部分をふさいだのだろう。
「うーん、それにしては塞ぎ方が甘いよな」
ナイフ一本あれば、三十分で中に入れる状態なのだ。
防犯意識が低いと言わざるを得ない。
『ただの物置なのじゃろ』
木箱を調べていたフレキが言う。
『これをみるのじゃ』
「む? えっと、なんだろうこれ。食器? しかもあまり高そうじゃない」
『きっと施しの時に使うものであろ。こっちは、儀式で使う祭具じゃな』
「祭具? 高い物?」
『いや、数十年に一度レベルの大規模な式典で使われる数百人の信者に持たせるものじゃ』
「なるほど、あまり価値のない物だけど、捨てるには惜しい物が置かれていると」
皿も祭具も高いものではない。そのうえ人神の印が入っている。
盗んだとしても、売るのは難しい。
『ほら、あれをみよ』
「む?」
フレキが鼻先で示す先、下水道とは逆の方向には、階段があって太い鉄格子が嵌められていた。
大きな錠もかけられている。
「なるほど、こちらから神殿に入れないようにしていると」
『神殿には高価な物もあるからのう』
地上に上がる階段の付近には特に木箱が沢山積み上がっている。
それも積み上げ方が乱雑だ。
奥まで、つまりこちらまで運ぶのが面倒だったのだろう。
「だけど、あの錠前、完全に錆びているね」
遠目に見ても、大きな錠が完全にさび付いていることがわかる。
これでは正しい鍵を持ってきても、開けられない。
壊した方が早いだろう。
「数年は放置されてないとこうはならないよな」
『そうじゃな』
もしかしたら、神殿の権勢が高まり、使える土地が増え、新たに倉庫でも建てたのかもしれない。
「で、俺たちが探している神器は木箱のどれかの中な?」
『恐らくな』
「大変だな」
木箱は大量にあるのだ。
『気配を探るのじゃ』
「そうはいっても、漠然とこっちの方かな程度にしかわからないんだけど。多分、下水道に近い方だよ」
『それは、不幸中の幸いじゃな。乱雑に積み上げられた、階段の方の木箱などしらべたくないのじゃ』
「同感だよ」
俺とフレキは下水道近くの木箱から中身を調べていく。
『で、不死者の気配は?』
「…………あるよ。人神の神殿だから、わかりにくいけど」
近くに居るのは間違いない。だが、どこに居るかはわからない。
まさに神器と同じである。
『まずは神器からでよかろう』
「そうだね」
積み上がった重たい木箱を床におろして、中身を確認して次に行く。
「鍛えておいて良かった」
『であろう? 鍛えておいて損はないのじゃ』
そんな無駄口を叩きながら、木箱を調べていく。
ほとんどが食器やら、何に使うかわからない祭具である。
「これは、古着? 虫食ってるな」
こんな環境に衣服を放置したら、当然虫の餌食だ。
『とりあえず、使わないものを木箱に突っ込んで放置したのであろ』
「ん? あった。多分これ?」
木箱の中を探していたら、使徒の勘に引っかかる物が見つかった。
木の棒のような祭具が沢山詰まった木箱の中に、外見は似ているが、雰囲気がまったく違う物が入っていた。
それは〇・一メートルほどの棒だ。まるでナイフか剣の柄のように見える。
『おお! 見つけたか! まさにそれが死神の使徒の神具じゃ』
「なにがどうなって、祭具に混ざったのかわからないけど、とにかく混ざったんだなぁ」
『不思議なこともあるものじゃ』
「でも、フレキ、鎌って言ってなかった?」
もしかしたら、フレキはおじいちゃん狼なので、記憶が曖昧でも仕方がないのかもしれない。
そんなことを思っていると、フレキが尻尾を振りながら言う。
『それが鎌なのじゃ。やり方はわからんが、鎌に変化するのじゃ』
「ふむ?」
フレキにそう言われたら、鎌になりそうな気がしてきた。
「おっ?」
鎌にしようと思った次の瞬間、その棒が突然大きな鎌へと変化した。
それに、床には下水路を潰したような跡もある。
神殿が権勢を持ち、地下の空間が必要になり、作られたのかも知れない。
その際に、下水道とのつながる部分をふさいだのだろう。
「うーん、それにしては塞ぎ方が甘いよな」
ナイフ一本あれば、三十分で中に入れる状態なのだ。
防犯意識が低いと言わざるを得ない。
『ただの物置なのじゃろ』
木箱を調べていたフレキが言う。
『これをみるのじゃ』
「む? えっと、なんだろうこれ。食器? しかもあまり高そうじゃない」
『きっと施しの時に使うものであろ。こっちは、儀式で使う祭具じゃな』
「祭具? 高い物?」
『いや、数十年に一度レベルの大規模な式典で使われる数百人の信者に持たせるものじゃ』
「なるほど、あまり価値のない物だけど、捨てるには惜しい物が置かれていると」
皿も祭具も高いものではない。そのうえ人神の印が入っている。
盗んだとしても、売るのは難しい。
『ほら、あれをみよ』
「む?」
フレキが鼻先で示す先、下水道とは逆の方向には、階段があって太い鉄格子が嵌められていた。
大きな錠もかけられている。
「なるほど、こちらから神殿に入れないようにしていると」
『神殿には高価な物もあるからのう』
地上に上がる階段の付近には特に木箱が沢山積み上がっている。
それも積み上げ方が乱雑だ。
奥まで、つまりこちらまで運ぶのが面倒だったのだろう。
「だけど、あの錠前、完全に錆びているね」
遠目に見ても、大きな錠が完全にさび付いていることがわかる。
これでは正しい鍵を持ってきても、開けられない。
壊した方が早いだろう。
「数年は放置されてないとこうはならないよな」
『そうじゃな』
もしかしたら、神殿の権勢が高まり、使える土地が増え、新たに倉庫でも建てたのかもしれない。
「で、俺たちが探している神器は木箱のどれかの中な?」
『恐らくな』
「大変だな」
木箱は大量にあるのだ。
『気配を探るのじゃ』
「そうはいっても、漠然とこっちの方かな程度にしかわからないんだけど。多分、下水道に近い方だよ」
『それは、不幸中の幸いじゃな。乱雑に積み上げられた、階段の方の木箱などしらべたくないのじゃ』
「同感だよ」
俺とフレキは下水道近くの木箱から中身を調べていく。
『で、不死者の気配は?』
「…………あるよ。人神の神殿だから、わかりにくいけど」
近くに居るのは間違いない。だが、どこに居るかはわからない。
まさに神器と同じである。
『まずは神器からでよかろう』
「そうだね」
積み上がった重たい木箱を床におろして、中身を確認して次に行く。
「鍛えておいて良かった」
『であろう? 鍛えておいて損はないのじゃ』
そんな無駄口を叩きながら、木箱を調べていく。
ほとんどが食器やら、何に使うかわからない祭具である。
「これは、古着? 虫食ってるな」
こんな環境に衣服を放置したら、当然虫の餌食だ。
『とりあえず、使わないものを木箱に突っ込んで放置したのであろ』
「ん? あった。多分これ?」
木箱の中を探していたら、使徒の勘に引っかかる物が見つかった。
木の棒のような祭具が沢山詰まった木箱の中に、外見は似ているが、雰囲気がまったく違う物が入っていた。
それは〇・一メートルほどの棒だ。まるでナイフか剣の柄のように見える。
『おお! 見つけたか! まさにそれが死神の使徒の神具じゃ』
「なにがどうなって、祭具に混ざったのかわからないけど、とにかく混ざったんだなぁ」
『不思議なこともあるものじゃ』
「でも、フレキ、鎌って言ってなかった?」
もしかしたら、フレキはおじいちゃん狼なので、記憶が曖昧でも仕方がないのかもしれない。
そんなことを思っていると、フレキが尻尾を振りながら言う。
『それが鎌なのじゃ。やり方はわからんが、鎌に変化するのじゃ』
「ふむ?」
フレキにそう言われたら、鎌になりそうな気がしてきた。
「おっ?」
鎌にしようと思った次の瞬間、その棒が突然大きな鎌へと変化した。
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