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06 ケロとラウルと鶏肉
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しばらく竜と触れ合った後、ラウルは旅に戻ることにした。
「さてと。僕はもう行くね」
「きゅきゅ」
「しばらくは安静にして、ゆっくり休むんだよ」
ラウルは竜を置いて行こうとした。
とても可愛いので、ラウルにも一緒に行きたい気持ちはある。
だが野生動物なのだ。連れて行かない方がいい。
「きゅきゅぅ!」
竜は離れたくない様子でラウルに必死にしがみつく。
「だめだよ。悲しいけど」
「きゅーん、きゅきゅきゅ」
竜に甘えた声を出されて、ラウルは困ってしまった。
「うーん。瀕死だったし、ここで放置したら……」
また大きな鶏や、他の獣に襲われるかもしれない。
そうなったら助からない恐れもある。可哀そうだ。
一度、助けたのなら最後まで面倒を見るべきだろう。
「じゃあ、一緒に行く?」
「きゅるきゅっきゅ!」
嬉しそうに竜はラウルに体をこすりつけた。
その時ラウルの視線に、コカトリスの死骸が目に入った。
「あ、そうだ。鶏の死骸、このままにしない方がいいね」
「きゅる」
ラウルはコカトリスの死骸を解体していく。
「それにしても大きな鶏だったね」
「きゅるー?」
「死骸を放置したらアンデッドになるかもだからダメなんだよ」
「きゅる」
「それに鶏の爪とか鶏冠は錬金術の材料になるし」
竜に説明しながら解体していたラウルは思わぬものに気が付いた。
「あれ魔石があるよ」
強力な魔獣であるコカトリスの体内に魔石があるのは当然だ。
だが、ラウルは鶏だと思っている。普通の鶏には魔石はない。
体内に魔石があるのは魔獣だけ。
だから、ラウルは驚いたのだ。
「魔獣と化した鶏だったのかー。すごく大きかったもんね。そりゃ普通の鶏じゃないよね」
姉に教わった通りに、ラウルはコカトリスを解体していく。
めぼしい素材を回収した後、死骸を炎の魔法で焼却した。
そしてラウルは竜と一緒に歩きだす。
竜はラウルの肩の上に乗って嬉しそうにしている。
そんな竜のお腹の音がグーっとなった。
「ん? お腹空いてるのかな?」
「きゅきゅ」
「さっき取ったばかりの大きな鶏の肉、食べる?」
「きゅいきゅい!」
嬉しそうに竜は羽をバタバタさせる。
ラウルは足を止めて、コカトリスの肉を食べることにした。
「ちょっと待ってね」
ラウルは鞄からコカトリスの肉を取り出す。
ちなみにラウルの鞄は錬金術の練習がてら作った自作の「魔法の鞄」だ。
中身が不思議な空間になっており、容量が非常に大きくなっている。
それに中に何を入れても質量が変わらない。
その上、中に入れた物の状態も変化しない。
非常に貴重な品だ。
とはいえ「魔法の鞄」は失われた技術ではない。街でも買える。
だがとても高級だ。一つの値段が優秀な冒険者の年収ぐらいするのだ。
余程の豪商や王侯貴族以外、「魔法の鞄」は使わない。
とはいえ、ラウルは魔皇帝の息子にして侯爵なので、王侯貴族である。
使用していても、何もおかしくはない。
だが、ラウルの「魔法の鞄」は容量が規格外の多さだった。
そのことをラウルは知らない。
「えっと、焼いたお肉と生のままのお肉、どっちがいい?」
「きゅきゅぅ?」
「とりあえず野生の犬だから、生で食べたいかな?」
ラウルは生の肉を一口サイズに切って、竜に差し出す。
「きゅる、はむはむはむ、きゅむう」
一生懸命、竜は肉を食べる。
ラウルは、ひな鳥に餌を与える母鳥になったような気分になった。
「血もいっぱい流れていたし、いっぱい食べて体力つけないとね」
「はむはむはむ、きゅい」
そしてあまりにも竜がおいしそうに食べるので、ラウルも空腹を感じた。
コカトリスの肉を焼いて、自分も食べる。
「うん。普通の鶏肉より、たんぱくな味だけど、おいしいね」
「きゅきゅ」
「魔獣になっても鶏は鶏なんだねー」
「きゅる」
「焼いてるのも食べたいの?」
一生懸命、竜は口を開けている。いよいよ、ひな鳥のようだ。
ラウルは自分も食べながら、竜の口にも焼いた肉を入れていく。
食べっぷりから考えるに、竜は焼いた肉の方が好きらしい。
「君、名前あるの?」
「はむはむ。きゅる?」
竜は一生懸命に肉を食べながら首をかしげる。
それを見てラウルは竜に名前はなさそうだと思った。
「そうだなー。ケロかな?」
「きゅるー?」
「ケルベロスからとったんだよ。」
ケルベロスは、別名を地獄の番犬という。
頭が三つあり炎を吐く恐ろしい犬の魔獣だ。
「鶏なんかに負けない強いワンちゃんになるんだよー」
「きゅる!」
食事を終えると、ラウルとケロは移動を再開する。
特に急ぎの旅ではないとはいえ、ラウルの進みはあまりにも遅い。
「ふんふーん」
「きゅーるきゅーる」
ラウルは元の道がどちらにあるかわからないぐらい迷っている。
だが迷っていることにすら気付いていない。
だから暢気に元気に歩いていった。
「あ、珍しい薬草があった! 採集していこうね」
「きゅるるる!」
ラウルとケロはご機嫌だが、気が気じゃないものが一人いる。
魔皇帝からラウルの護衛を任された特殊部隊の隊長である。
隊長は焦っていた。
魔皇帝からは「どうしようもない状況まで、見守るだけにしろ」と命令されている。
とはいえ、ラウルは街道からどんどん離れていっているのだ。
そろそろ「どうしようもない状況」と言っていいのではないだろうか。
隊長は悩んだ結果、もう少し見守ることにした。
隊長が見守ってくれていることにも気づかずに、ラウルは歩く。
本来ならば歩きにくいはずの、道なき道をどんどん進んでいった。
「さてと。僕はもう行くね」
「きゅきゅ」
「しばらくは安静にして、ゆっくり休むんだよ」
ラウルは竜を置いて行こうとした。
とても可愛いので、ラウルにも一緒に行きたい気持ちはある。
だが野生動物なのだ。連れて行かない方がいい。
「きゅきゅぅ!」
竜は離れたくない様子でラウルに必死にしがみつく。
「だめだよ。悲しいけど」
「きゅーん、きゅきゅきゅ」
竜に甘えた声を出されて、ラウルは困ってしまった。
「うーん。瀕死だったし、ここで放置したら……」
また大きな鶏や、他の獣に襲われるかもしれない。
そうなったら助からない恐れもある。可哀そうだ。
一度、助けたのなら最後まで面倒を見るべきだろう。
「じゃあ、一緒に行く?」
「きゅるきゅっきゅ!」
嬉しそうに竜はラウルに体をこすりつけた。
その時ラウルの視線に、コカトリスの死骸が目に入った。
「あ、そうだ。鶏の死骸、このままにしない方がいいね」
「きゅる」
ラウルはコカトリスの死骸を解体していく。
「それにしても大きな鶏だったね」
「きゅるー?」
「死骸を放置したらアンデッドになるかもだからダメなんだよ」
「きゅる」
「それに鶏の爪とか鶏冠は錬金術の材料になるし」
竜に説明しながら解体していたラウルは思わぬものに気が付いた。
「あれ魔石があるよ」
強力な魔獣であるコカトリスの体内に魔石があるのは当然だ。
だが、ラウルは鶏だと思っている。普通の鶏には魔石はない。
体内に魔石があるのは魔獣だけ。
だから、ラウルは驚いたのだ。
「魔獣と化した鶏だったのかー。すごく大きかったもんね。そりゃ普通の鶏じゃないよね」
姉に教わった通りに、ラウルはコカトリスを解体していく。
めぼしい素材を回収した後、死骸を炎の魔法で焼却した。
そしてラウルは竜と一緒に歩きだす。
竜はラウルの肩の上に乗って嬉しそうにしている。
そんな竜のお腹の音がグーっとなった。
「ん? お腹空いてるのかな?」
「きゅきゅ」
「さっき取ったばかりの大きな鶏の肉、食べる?」
「きゅいきゅい!」
嬉しそうに竜は羽をバタバタさせる。
ラウルは足を止めて、コカトリスの肉を食べることにした。
「ちょっと待ってね」
ラウルは鞄からコカトリスの肉を取り出す。
ちなみにラウルの鞄は錬金術の練習がてら作った自作の「魔法の鞄」だ。
中身が不思議な空間になっており、容量が非常に大きくなっている。
それに中に何を入れても質量が変わらない。
その上、中に入れた物の状態も変化しない。
非常に貴重な品だ。
とはいえ「魔法の鞄」は失われた技術ではない。街でも買える。
だがとても高級だ。一つの値段が優秀な冒険者の年収ぐらいするのだ。
余程の豪商や王侯貴族以外、「魔法の鞄」は使わない。
とはいえ、ラウルは魔皇帝の息子にして侯爵なので、王侯貴族である。
使用していても、何もおかしくはない。
だが、ラウルの「魔法の鞄」は容量が規格外の多さだった。
そのことをラウルは知らない。
「えっと、焼いたお肉と生のままのお肉、どっちがいい?」
「きゅきゅぅ?」
「とりあえず野生の犬だから、生で食べたいかな?」
ラウルは生の肉を一口サイズに切って、竜に差し出す。
「きゅる、はむはむはむ、きゅむう」
一生懸命、竜は肉を食べる。
ラウルは、ひな鳥に餌を与える母鳥になったような気分になった。
「血もいっぱい流れていたし、いっぱい食べて体力つけないとね」
「はむはむはむ、きゅい」
そしてあまりにも竜がおいしそうに食べるので、ラウルも空腹を感じた。
コカトリスの肉を焼いて、自分も食べる。
「うん。普通の鶏肉より、たんぱくな味だけど、おいしいね」
「きゅきゅ」
「魔獣になっても鶏は鶏なんだねー」
「きゅる」
「焼いてるのも食べたいの?」
一生懸命、竜は口を開けている。いよいよ、ひな鳥のようだ。
ラウルは自分も食べながら、竜の口にも焼いた肉を入れていく。
食べっぷりから考えるに、竜は焼いた肉の方が好きらしい。
「君、名前あるの?」
「はむはむ。きゅる?」
竜は一生懸命に肉を食べながら首をかしげる。
それを見てラウルは竜に名前はなさそうだと思った。
「そうだなー。ケロかな?」
「きゅるー?」
「ケルベロスからとったんだよ。」
ケルベロスは、別名を地獄の番犬という。
頭が三つあり炎を吐く恐ろしい犬の魔獣だ。
「鶏なんかに負けない強いワンちゃんになるんだよー」
「きゅる!」
食事を終えると、ラウルとケロは移動を再開する。
特に急ぎの旅ではないとはいえ、ラウルの進みはあまりにも遅い。
「ふんふーん」
「きゅーるきゅーる」
ラウルは元の道がどちらにあるかわからないぐらい迷っている。
だが迷っていることにすら気付いていない。
だから暢気に元気に歩いていった。
「あ、珍しい薬草があった! 採集していこうね」
「きゅるるる!」
ラウルとケロはご機嫌だが、気が気じゃないものが一人いる。
魔皇帝からラウルの護衛を任された特殊部隊の隊長である。
隊長は焦っていた。
魔皇帝からは「どうしようもない状況まで、見守るだけにしろ」と命令されている。
とはいえ、ラウルは街道からどんどん離れていっているのだ。
そろそろ「どうしようもない状況」と言っていいのではないだろうか。
隊長は悩んだ結果、もう少し見守ることにした。
隊長が見守ってくれていることにも気づかずに、ラウルは歩く。
本来ならば歩きにくいはずの、道なき道をどんどん進んでいった。
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