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第九話 帰還初日の騒動
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オルベリア王国北東部の街、メルビア。
冒険者ギルドと商業ギルド、そして運送ギルドの各支部を構えているため人の出入りも多く、場所によっては深夜でも明かりの絶えない、比較的規模の大きい街だ。
僕が生まれ育ち、現在も拠点としている場所。
メルビアの南門に到着した僕達は、野盗の引き渡しのために、門の脇にある詰め所を訪ねていた。
「ご苦労さんだったね。これで少しは街道が平和になるよ」
手続きの書類を書き終わり、門番の男性が労いの言葉をかけてくれた。
「しかし、ルカちゃんが仕事意外で人を連れてるとは珍しいね」
「いろいろありまして」
ずっとメルビアを拠点にしているので、ここの門番とも世間話をするくらいには親しい。幼い頃は、日が暮れた時間に通ったりすると止められたこともあった。
そろそろ冒険者ギルドへ向かおうと、門番に挨拶をして詰め所を出る。
「ベルハイトさん。先に冒険者ギルドに行きましょう」
「運送ギルドじゃなくていいんですか?」
「道順的に、そのほうが楽なので」
話しながら門をくぐった、その時。
「そこの荷馬車泥棒!!」
「?」「え?」
不穏な言葉が聞こえて、僕とベルハイトは声のほうを見る。そこには仁王立ちでこちらを睨む、箒を携えた女性がいた。
荷馬車泥棒とは、もしかしなくても僕達のことだろうか。
「うちの荷馬車を盗んでおいて、よくもここに来れたわね!!」
箒を肩に担ぎ、ずんずんと大股で近づいてくる。
僕達の目の前に立ち止まると、僕を見て眉を顰めたあと、ベルハイトを睨みつけた。
「こんな子供にまで悪事の片棒を担がせるなんて!」
「は?いや、何の」「問答無用!!」
ベルハイトの言葉を聞くことなく、女性は箒を目一杯振りかぶって、
バシーーン!
「い゙っ?!」
力いっぱい振り下ろされた箒をベルハイトは片腕で防ぐが、女性の暴挙は止まらない。それどころか、防御されて悔しかったのか、更に勢いを増す。
「このっ!!大人しく!お縄にっ!つきなさーい!!」
声を張り上げながら、箒を何度も振り下ろす女性。
「は?!何言っ、ちょっと待って!いてっ!痛いって!」
その箒を腕で防御してはいるが、相手が一般市民なだけに、力づくで止めることができないベルハイト。そしてざわつくメルビア南門。
僕は目の前の喜劇……ではなく、悲劇から一歩身を引いた。
女性の細腕が繰り出す箒の殴打。必死に静止するベルハイト。
「………………」
連れが見知らぬ女性に冤罪で滅多打ちにされている光景。
「った!ちょ…、ルカさん!見てないで助けてくださいよ!」
あまりの猛攻にベルハイトがギブアップした。仕方ない。
「あの、」
「こらーーーっ!」
僕が女性に声をかけようとした時。先程の門番が騒ぎを聞きつけ、慌てて詰め所から出てきた。
「やめなさい、お嬢さん!その人は野盗じゃない!野盗を捕まえた冒険者だ!」
「へっ?」
女性は間の抜けた声を上げて門番を見た。
その門番の後方にある件の荷馬車からは、縛り上げられた盗賊がぞろぞろと連行されていく。
「…………………………あ…、あれ…?」
女性は振り上げていた箒をぽとりと落とした。
「このたびは!大っ……変!申し訳ございませんでしたっ!!」
事態が収束し、野次馬も少し散った頃。
衆人環視のなか、箒使いの女性は実に素早い動作で額を地面につけ、完璧な土下座の体勢をとった。
「えぇ……」
箒で目一杯叩かれたベルハイトは、そのあまりの落差にドン引きしている。
仕方ないので、僕が女性に声をかける。
「あの馬車、貴方の荷馬車なんですか?」
「私の父のなの……。何日か前、野盗に襲われて。父はなんとか逃げられたんだけど、荷馬車と積み荷は盗られてしまって……」
土下座したままなので、くぐもっているが、きちんと答える女性。
「本っ当に、ごめんなさい……」
謝意が深すぎて地面にめり込みそうだ。
僕は何の被害も被っていないので、裁定を下す権利はベルハイトある。
隣を見上げると、ベルハイトは眉を下げて息をついた。
「もういいですよ。事情も分かったし」
「!ぅう…、ありがとう…っ」
女性はそろりと顔をあげ、よろよろと立ち上がる。
僕は女性に尋ねる。
「さっき「荷馬車と積み荷」と言ってましたけど、僕達が見た時には、乗ってたのは野盗だけでした」
「え?!じゃ、じゃあ…、積み荷はどこに……」
「物にもよりますけど……既に換金したか、食料なら消費したか、隠れ家にでも保管してるか…」
そう言うと、女性はがっくりと項垂れた。
「今月の仕入れ分が……」
商店でも営んでいるのだろうか。
意気消沈の女性に、門番が声をかける。
「お嬢さん。親父さんを呼んできてくれるか?荷馬車の確認と、野盗どもの面通しをしてほしいんだが」
「あ、はい!」
女性は我に返って返事をし、ベルハイトに向き直る。
「あの、本当ごめんなさい。何かお詫びを……」
「いや、大丈夫だから。気にしないで」
ベルハイトは丁重に断るが、女性は気がすまないようで、
「じゃあ…、何か入り用の物があったら、中央街の[アデル・オリーブ]に来てちょうだい!お詫びにうんとサービスするから!」
「はは…。考えとくよ」
箒を拾い上げ、女性は走り去っていった。
その背を見送りながら、
「災難でしたね」
「まったくです…。ルカさん、傍観する気だったでしょ?」
ベルハイトがじっと僕を見下ろす気配がする。
「そういえば[アデル・オリーブ]って、何の店でしょうね」
「話すり替えた……」
少し拗ねてしまったベルハイトを伴って、僕はメルビアの冒険者ギルドへ向かった。
「あーはっはっはっはっはっ!…ひひひ、ひゃはははは…!…ふ、はははっ!…ひーひひ…っ」
この笑い転げている人は冒険者ギルドのギルド長、ヴィクトル。
僕が[真なるの栄光]を解雇された顛末を説明すると、膝を叩きながら笑いだし、終いにはカウンターに突っ伏して笑い悶え始めた。筋骨隆々の身体がブルブルと震えている。
僕は予定通り、ベルハイトを連れて冒険者ギルドを訪れていた。彼の登録拠点の変更手続きと、[真なる栄光]の件を報告することが目的なのだが、笑い転げる筋肉の塊のせいで話が進まない。
「ギルド長…。そろそろ落ち着いてください」
僕が持ってきた[真なる栄光]との契約書類を確認しながら、ギルド職員のアリスが呆れたように隣を見やる。
ヴィクトルが爆笑しているのは、ティモン達の自信に満ちた台詞の数々を、僕が一言一句漏らさずに伝えたことが原因だ。
ちなみにアリスは、「ティモンさんのお世話係」の部分でドン引きしていた。分かる。
「いやー…、ははは。馬鹿だとは思ってたが、ここまでとはなぁ」
ヴィクトルはようやくカウンターから身を起こすと、息を整えながら手近な椅子にどかりと座った。
「この分だと、依頼のほうも期待できねぇか」
「一応行きの道中で、街道調査の内容や方法は説明してありますけど…」
「あいつらだからなぁ…。だが、駄目な時に備えて手は打ってあるし、お前が気にする必要はねぇよ。ご苦労だったな」
駄目な時の備え。僕はそれに心当たりがあったが、ここで言及する気はない。[真なる栄光]が戻ってくれば、すぐに分かることだ。
「…で、そっちのにーちゃんは何だ?まさかコレか?」
ニヤニヤしながら親指を立てるヴィクトル。この人は、素面で酔っ払いのような絡み方をしてくる。
はじめましての人が挨拶しにくくなるので、やめてほしい。
「えっと……。ユトスから来た、冒険者のベルハイトです。ルカさんには向こうで大変お世話になって…」
「ほぉん?お世話ねぇ…。若いってのはいいねー」
ヴィクトルのニヤニヤ笑いが止まらない。何を言っても下世話な方向に持っていこうとするのは、この人の悪癖だ。
「セクハラですよ、ギルド長」
アリスが一層冷ややかな目でヴィクトルを見る。
「冗談だよ、じょーだん」
けらけら笑うヴィクトルに、アリスは溜め息をつきながら、
「話が進まないので、私がご用件をお伺いします」
「はは…。お願いします」
ベルハイトは苦笑し、魔法鞄から、麻紐でまとめた書類を出した。
「活動拠点の変更のため、登録ギルドをユトスからメルビアに移す手続きをしたくて」
アリスは書類を開いて素早く目を通していく。
ここで書類に不備があったり、経歴に問題があったりすると、登録が受理されないことや、受理されるまでに時間を要することがある。
「Cランク冒険者のベルハイト・ロズさんですね。タグをお預かりします」
カウンター内に置かれた板のような装置に書類の印字面を乗せ、それに接続された箱形の装置にタグを入れる。
これは名前や登録ギルドなど、タグに刻まれた情報を更新する装置で、魔道具の一種だ。ほんの数秒で更新は完了する。
アリスはタグをベルハイトに返し、手順に則った説明をする。
「冒険者ギルドの利用規約、並びにメルビアを拠点にするうえでの活動規約はユトスと同じです。質問はありますか?」
「いえ、特には。あ、宿舎の空きってありますか?」
「宿舎に入るのか?ルカん家でいいじゃねーか」
何故か割り込んでくるヴィクトル。
「ご遠慮ください」
ベルハイトが応えるより早く割り込む僕。
「集団生活は苦手なんで」
「集団っていうか俺とルカさんで二人……じゃなくて!問題はそこじゃないです。昨日も思いましたけど、気にするべきところ、そこじゃないですからね?」
何故か怒られた。
僕にとっては集団だし、重要な問題なのだが。
ヴィクトルがけらけら笑っている。何かツボに入ったようだが、放っておこう。
「これから運送ギルドに報告に行きますけど、ベルハイトさんはどうします?」
「じゃあ、俺も挨拶に……」
その時、ギルドの正面扉が勢いよく開いた。
駆け込んできたのは、先程南門にいた門番。
「誰か手を貸してくれ!野盗に逃げられた!!」
冒険者ギルドと商業ギルド、そして運送ギルドの各支部を構えているため人の出入りも多く、場所によっては深夜でも明かりの絶えない、比較的規模の大きい街だ。
僕が生まれ育ち、現在も拠点としている場所。
メルビアの南門に到着した僕達は、野盗の引き渡しのために、門の脇にある詰め所を訪ねていた。
「ご苦労さんだったね。これで少しは街道が平和になるよ」
手続きの書類を書き終わり、門番の男性が労いの言葉をかけてくれた。
「しかし、ルカちゃんが仕事意外で人を連れてるとは珍しいね」
「いろいろありまして」
ずっとメルビアを拠点にしているので、ここの門番とも世間話をするくらいには親しい。幼い頃は、日が暮れた時間に通ったりすると止められたこともあった。
そろそろ冒険者ギルドへ向かおうと、門番に挨拶をして詰め所を出る。
「ベルハイトさん。先に冒険者ギルドに行きましょう」
「運送ギルドじゃなくていいんですか?」
「道順的に、そのほうが楽なので」
話しながら門をくぐった、その時。
「そこの荷馬車泥棒!!」
「?」「え?」
不穏な言葉が聞こえて、僕とベルハイトは声のほうを見る。そこには仁王立ちでこちらを睨む、箒を携えた女性がいた。
荷馬車泥棒とは、もしかしなくても僕達のことだろうか。
「うちの荷馬車を盗んでおいて、よくもここに来れたわね!!」
箒を肩に担ぎ、ずんずんと大股で近づいてくる。
僕達の目の前に立ち止まると、僕を見て眉を顰めたあと、ベルハイトを睨みつけた。
「こんな子供にまで悪事の片棒を担がせるなんて!」
「は?いや、何の」「問答無用!!」
ベルハイトの言葉を聞くことなく、女性は箒を目一杯振りかぶって、
バシーーン!
「い゙っ?!」
力いっぱい振り下ろされた箒をベルハイトは片腕で防ぐが、女性の暴挙は止まらない。それどころか、防御されて悔しかったのか、更に勢いを増す。
「このっ!!大人しく!お縄にっ!つきなさーい!!」
声を張り上げながら、箒を何度も振り下ろす女性。
「は?!何言っ、ちょっと待って!いてっ!痛いって!」
その箒を腕で防御してはいるが、相手が一般市民なだけに、力づくで止めることができないベルハイト。そしてざわつくメルビア南門。
僕は目の前の喜劇……ではなく、悲劇から一歩身を引いた。
女性の細腕が繰り出す箒の殴打。必死に静止するベルハイト。
「………………」
連れが見知らぬ女性に冤罪で滅多打ちにされている光景。
「った!ちょ…、ルカさん!見てないで助けてくださいよ!」
あまりの猛攻にベルハイトがギブアップした。仕方ない。
「あの、」
「こらーーーっ!」
僕が女性に声をかけようとした時。先程の門番が騒ぎを聞きつけ、慌てて詰め所から出てきた。
「やめなさい、お嬢さん!その人は野盗じゃない!野盗を捕まえた冒険者だ!」
「へっ?」
女性は間の抜けた声を上げて門番を見た。
その門番の後方にある件の荷馬車からは、縛り上げられた盗賊がぞろぞろと連行されていく。
「…………………………あ…、あれ…?」
女性は振り上げていた箒をぽとりと落とした。
「このたびは!大っ……変!申し訳ございませんでしたっ!!」
事態が収束し、野次馬も少し散った頃。
衆人環視のなか、箒使いの女性は実に素早い動作で額を地面につけ、完璧な土下座の体勢をとった。
「えぇ……」
箒で目一杯叩かれたベルハイトは、そのあまりの落差にドン引きしている。
仕方ないので、僕が女性に声をかける。
「あの馬車、貴方の荷馬車なんですか?」
「私の父のなの……。何日か前、野盗に襲われて。父はなんとか逃げられたんだけど、荷馬車と積み荷は盗られてしまって……」
土下座したままなので、くぐもっているが、きちんと答える女性。
「本っ当に、ごめんなさい……」
謝意が深すぎて地面にめり込みそうだ。
僕は何の被害も被っていないので、裁定を下す権利はベルハイトある。
隣を見上げると、ベルハイトは眉を下げて息をついた。
「もういいですよ。事情も分かったし」
「!ぅう…、ありがとう…っ」
女性はそろりと顔をあげ、よろよろと立ち上がる。
僕は女性に尋ねる。
「さっき「荷馬車と積み荷」と言ってましたけど、僕達が見た時には、乗ってたのは野盗だけでした」
「え?!じゃ、じゃあ…、積み荷はどこに……」
「物にもよりますけど……既に換金したか、食料なら消費したか、隠れ家にでも保管してるか…」
そう言うと、女性はがっくりと項垂れた。
「今月の仕入れ分が……」
商店でも営んでいるのだろうか。
意気消沈の女性に、門番が声をかける。
「お嬢さん。親父さんを呼んできてくれるか?荷馬車の確認と、野盗どもの面通しをしてほしいんだが」
「あ、はい!」
女性は我に返って返事をし、ベルハイトに向き直る。
「あの、本当ごめんなさい。何かお詫びを……」
「いや、大丈夫だから。気にしないで」
ベルハイトは丁重に断るが、女性は気がすまないようで、
「じゃあ…、何か入り用の物があったら、中央街の[アデル・オリーブ]に来てちょうだい!お詫びにうんとサービスするから!」
「はは…。考えとくよ」
箒を拾い上げ、女性は走り去っていった。
その背を見送りながら、
「災難でしたね」
「まったくです…。ルカさん、傍観する気だったでしょ?」
ベルハイトがじっと僕を見下ろす気配がする。
「そういえば[アデル・オリーブ]って、何の店でしょうね」
「話すり替えた……」
少し拗ねてしまったベルハイトを伴って、僕はメルビアの冒険者ギルドへ向かった。
「あーはっはっはっはっはっ!…ひひひ、ひゃはははは…!…ふ、はははっ!…ひーひひ…っ」
この笑い転げている人は冒険者ギルドのギルド長、ヴィクトル。
僕が[真なるの栄光]を解雇された顛末を説明すると、膝を叩きながら笑いだし、終いにはカウンターに突っ伏して笑い悶え始めた。筋骨隆々の身体がブルブルと震えている。
僕は予定通り、ベルハイトを連れて冒険者ギルドを訪れていた。彼の登録拠点の変更手続きと、[真なる栄光]の件を報告することが目的なのだが、笑い転げる筋肉の塊のせいで話が進まない。
「ギルド長…。そろそろ落ち着いてください」
僕が持ってきた[真なる栄光]との契約書類を確認しながら、ギルド職員のアリスが呆れたように隣を見やる。
ヴィクトルが爆笑しているのは、ティモン達の自信に満ちた台詞の数々を、僕が一言一句漏らさずに伝えたことが原因だ。
ちなみにアリスは、「ティモンさんのお世話係」の部分でドン引きしていた。分かる。
「いやー…、ははは。馬鹿だとは思ってたが、ここまでとはなぁ」
ヴィクトルはようやくカウンターから身を起こすと、息を整えながら手近な椅子にどかりと座った。
「この分だと、依頼のほうも期待できねぇか」
「一応行きの道中で、街道調査の内容や方法は説明してありますけど…」
「あいつらだからなぁ…。だが、駄目な時に備えて手は打ってあるし、お前が気にする必要はねぇよ。ご苦労だったな」
駄目な時の備え。僕はそれに心当たりがあったが、ここで言及する気はない。[真なる栄光]が戻ってくれば、すぐに分かることだ。
「…で、そっちのにーちゃんは何だ?まさかコレか?」
ニヤニヤしながら親指を立てるヴィクトル。この人は、素面で酔っ払いのような絡み方をしてくる。
はじめましての人が挨拶しにくくなるので、やめてほしい。
「えっと……。ユトスから来た、冒険者のベルハイトです。ルカさんには向こうで大変お世話になって…」
「ほぉん?お世話ねぇ…。若いってのはいいねー」
ヴィクトルのニヤニヤ笑いが止まらない。何を言っても下世話な方向に持っていこうとするのは、この人の悪癖だ。
「セクハラですよ、ギルド長」
アリスが一層冷ややかな目でヴィクトルを見る。
「冗談だよ、じょーだん」
けらけら笑うヴィクトルに、アリスは溜め息をつきながら、
「話が進まないので、私がご用件をお伺いします」
「はは…。お願いします」
ベルハイトは苦笑し、魔法鞄から、麻紐でまとめた書類を出した。
「活動拠点の変更のため、登録ギルドをユトスからメルビアに移す手続きをしたくて」
アリスは書類を開いて素早く目を通していく。
ここで書類に不備があったり、経歴に問題があったりすると、登録が受理されないことや、受理されるまでに時間を要することがある。
「Cランク冒険者のベルハイト・ロズさんですね。タグをお預かりします」
カウンター内に置かれた板のような装置に書類の印字面を乗せ、それに接続された箱形の装置にタグを入れる。
これは名前や登録ギルドなど、タグに刻まれた情報を更新する装置で、魔道具の一種だ。ほんの数秒で更新は完了する。
アリスはタグをベルハイトに返し、手順に則った説明をする。
「冒険者ギルドの利用規約、並びにメルビアを拠点にするうえでの活動規約はユトスと同じです。質問はありますか?」
「いえ、特には。あ、宿舎の空きってありますか?」
「宿舎に入るのか?ルカん家でいいじゃねーか」
何故か割り込んでくるヴィクトル。
「ご遠慮ください」
ベルハイトが応えるより早く割り込む僕。
「集団生活は苦手なんで」
「集団っていうか俺とルカさんで二人……じゃなくて!問題はそこじゃないです。昨日も思いましたけど、気にするべきところ、そこじゃないですからね?」
何故か怒られた。
僕にとっては集団だし、重要な問題なのだが。
ヴィクトルがけらけら笑っている。何かツボに入ったようだが、放っておこう。
「これから運送ギルドに報告に行きますけど、ベルハイトさんはどうします?」
「じゃあ、俺も挨拶に……」
その時、ギルドの正面扉が勢いよく開いた。
駆け込んできたのは、先程南門にいた門番。
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