私の運命は高嶺の花【完結】

小夜時雨

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序章・運命の世界

Q.運命とは?

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 運命に出会うと奇跡が起きるって言われています。
教本に書いてある通りです。 ええ、本当に。

 私にもかつて運命との出会いがありましたが……えー、ごほん!
 知らなかった? そうでしょうそうでしょう。

 内緒にしてましたからね。ふふ……。この時のためにとっておいたんです。
 はい、静かに! 静粛に! 静粛にっ!

 はい。ではお答えしましょう。

 私の運命のお相手は、とってもかっこよかったんです。
でもね、出会う前に死んでしまったのです。

 つまり、相手は知らなくても、私のほうが先に運命を見つけてしまったから……だから、そうなってしまったんです。
あら? なんでしょう、すごい静かになっちゃって……ああ、もう。泣かないで。あらら。
そこまで真に受けないで大丈夫ですよ、もう何十年も前の話ですもの。私の中でも折り合いがついています。

 ん? かわいそう?
 
 うーん。そうねえ、確かにかわいそうかもね。
 でも、いいのです。

 運命のあの人は、私のことを知らずに死んだのですから。
 会わなかったから、奇跡も起きませんでした。
だから、大丈夫。
 私は幸せでした。

 こうして、あなたたちに出会い、教えることができるのですから。
あ、それともう少し大人しくしてくださいね。
いいこと言ってるんですから。きちんと学んでくださいね。

 ほら、背筋をびしっとする!
 ふふ……。
 奇跡、を見たことがある?
 あらおませさんね。
 ふふ、そうそう。あら、そうなの?
 昨日の出来事?
 まあ……それは良いものを見させてもらいましたね。

 周りに虹が出た?
 なるほどなるほど。それは綺麗な七色だったでしょう。
 周りの大人たちが全員拍手しててびっくりした? そうでしょうそうでしょう。

 それこそ、奇跡。
 愛と運命の女神の祝福です。

 結婚しても祝福は女神様からいただけますが……目に見える奇跡を起こしてくださるのは、運命の相手と出会えたときだけです。運命の相手ではない二人には運命の相手と出会えなくなるよう、女神様が配慮してくださるのです。そういうものなのです。
 ですので運命以外の愛し合う夫婦だと安心ですね?
愛はとても尊いものです。不安になるでしょうけれど、これもまた出会いの賜物。
 大丈夫ですよ、心配することでもありません。それほどは……うーん、多分?
 ふふ。
 
 ほら、運命に出会いたくなったでしょう?
 んー会ってみたいけど、運命ってどうやったらわかるって?
 芳しい匂いがしたり、模様が出たり……。
 魔法のような奇跡を目の当たりにするらしいです。
 この国では運命に出会う確率は他国よりも格段に多いみたいですけれどね、それでも100人にひとり、いればいいほうかもしれません。え? もっと具体的に? 私ですか? ああ……。

 ……うん。……そうですね……とても輝いていましたよ。
 美しくて……理想的な王子様でした。
 ふふ……。
 
 心臓が今でもドキドキします。
 ずるいですよね、王子様って。

 
 
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