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終章・女神
公的な学院
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多少、着心地の良い布地が普及して当たり前になったり、昔に比べるとスカートがやや短くなった脆弱国の風俗文化。食文化にも彩りが増えたし、修道女だった時代に比べると息がしやすい気がした。
他国よりも、脆弱国アネモネスには良い面がある。
そのひとつが、女性への優遇措置。
運命と愛の女神の国アネモネスではあるので運命の女性にも仕事はあり、自由度もあった。愛のなせる技である。それでもまぁ、女性が一人暮らしできるようになったのはここ最近かもしれない。そこに関しては厳しかった。
けれど、世界的にみてかなり進歩しているように思う。
(財政破綻寸前だけど)
そこだけは心配だ。元商人としても。
「隣国の身分、手に入れられないかな……」
やっぱりそこに立ち戻る。女王の国は商いしやすかったからね。そこは運命の人のおかげかもしれないな。第三王子の手腕は凄かったし、王配としての振る舞いも評判よかった。こんな時代にも受け継がれているほど。
それは、まぁそれとして。
私もまあ、そのアネモネスの一員として生活があるわけで。
この国の長所の一端に、学校の存在がある。
前世では学校そのものは確かにあったが、あくまでも読み書きができればいい、という程度であったから、この成長ぶりには目を見張る。金のない国だが教育には力を入れているようだ。
「ほほー」
見事なレリーフ、ご立派な御門、大きな宿舎。
大人数を収容できる学び舎はどこもかしこも豪華絢爛の一言に尽きる。
一般市民が学びにくるところにしてはあまりにも金の掛け方がえぐい。と、それはそうか。貴族も通うのだから。なぜか共通だ。多分運命の君に会えるかも、的な精神がそうさせているのだろう、多分。ブレない部分はブレないのだ。
しかし想像以上だ。首が痛い。天井高すぎないか? 出入り口でこれは……。
別のところに予算つけたほうが良いのでは?
「ようこそ、ダフォーディル学院へ」
……悪目立ちしていたみたいだ。
まさしく迷子だと判じ、近寄ってきた人物がいる。
背格好からして男だ。
私に向かって靴音足速に鳴らして向かってくる長身の人物。
逆光してるから眩しくて、彼の顔をよく見ることができない。
「あ、すみません。お邪魔でしたか」
どう考えても広々としていて閑散とした玄関口だが、私の存在がまるで迷惑かもしれない。
ぺこ、と謝罪の言葉を述べると、彼はいえ、と会釈をする。
にこ、と微笑むと、彼もまた微笑する気配。……何やら既視感のある感じだ。
それでいてやけに品のある雰囲気……、親しみのこもった視線を向けられているような。
彼のほうが背が高いから、私は見上げるにも失礼かもと胸元をじっと見つめる。
「一年生ですね?
良ければ会場までご案内いたしましょうか」
それには及ばない、と断ろうとした。普通に悪いし、別にそこまでする必要性を感じなかった。
ぐいぐいと懐っこい人物であるところの彼は、上級生っぽく落ち着いた雰囲気と制服を纏っている。
「ふふ、俺、……わたしも時間があるのです。
どうか、エスコートをさせていただいてもよろしいでしょうか?」
及び腰になるのは、彼のいかにもな清廉な振る舞いのせいだ。
女性をエスコートするのに手慣れてる感じも気になるし、第一初めて出会う人だ。
差し出された平手からすっと見上げていくと……青く、透き通るような瞳とかち合う。
私を覗き込むかのような……それでいてキラキラとしていて、やけに血色の良い唇は形が良く、まるで女性のように色づいていて誰かを待ち構えているかのようにすら思える。
そう、まさにモテる青少年、といった風情なのに。
なぜか得体の知れない、怖い感じがした。
後退しかけたが、
「あの……」
「さ、参りましょう」
「あ」
躊躇いのない彼の手が、私の片手を掴んだ。
がっちりとした指だった、大きくて暖かく。
何か、を感じとったのは気のせいだろうか。
他国よりも、脆弱国アネモネスには良い面がある。
そのひとつが、女性への優遇措置。
運命と愛の女神の国アネモネスではあるので運命の女性にも仕事はあり、自由度もあった。愛のなせる技である。それでもまぁ、女性が一人暮らしできるようになったのはここ最近かもしれない。そこに関しては厳しかった。
けれど、世界的にみてかなり進歩しているように思う。
(財政破綻寸前だけど)
そこだけは心配だ。元商人としても。
「隣国の身分、手に入れられないかな……」
やっぱりそこに立ち戻る。女王の国は商いしやすかったからね。そこは運命の人のおかげかもしれないな。第三王子の手腕は凄かったし、王配としての振る舞いも評判よかった。こんな時代にも受け継がれているほど。
それは、まぁそれとして。
私もまあ、そのアネモネスの一員として生活があるわけで。
この国の長所の一端に、学校の存在がある。
前世では学校そのものは確かにあったが、あくまでも読み書きができればいい、という程度であったから、この成長ぶりには目を見張る。金のない国だが教育には力を入れているようだ。
「ほほー」
見事なレリーフ、ご立派な御門、大きな宿舎。
大人数を収容できる学び舎はどこもかしこも豪華絢爛の一言に尽きる。
一般市民が学びにくるところにしてはあまりにも金の掛け方がえぐい。と、それはそうか。貴族も通うのだから。なぜか共通だ。多分運命の君に会えるかも、的な精神がそうさせているのだろう、多分。ブレない部分はブレないのだ。
しかし想像以上だ。首が痛い。天井高すぎないか? 出入り口でこれは……。
別のところに予算つけたほうが良いのでは?
「ようこそ、ダフォーディル学院へ」
……悪目立ちしていたみたいだ。
まさしく迷子だと判じ、近寄ってきた人物がいる。
背格好からして男だ。
私に向かって靴音足速に鳴らして向かってくる長身の人物。
逆光してるから眩しくて、彼の顔をよく見ることができない。
「あ、すみません。お邪魔でしたか」
どう考えても広々としていて閑散とした玄関口だが、私の存在がまるで迷惑かもしれない。
ぺこ、と謝罪の言葉を述べると、彼はいえ、と会釈をする。
にこ、と微笑むと、彼もまた微笑する気配。……何やら既視感のある感じだ。
それでいてやけに品のある雰囲気……、親しみのこもった視線を向けられているような。
彼のほうが背が高いから、私は見上げるにも失礼かもと胸元をじっと見つめる。
「一年生ですね?
良ければ会場までご案内いたしましょうか」
それには及ばない、と断ろうとした。普通に悪いし、別にそこまでする必要性を感じなかった。
ぐいぐいと懐っこい人物であるところの彼は、上級生っぽく落ち着いた雰囲気と制服を纏っている。
「ふふ、俺、……わたしも時間があるのです。
どうか、エスコートをさせていただいてもよろしいでしょうか?」
及び腰になるのは、彼のいかにもな清廉な振る舞いのせいだ。
女性をエスコートするのに手慣れてる感じも気になるし、第一初めて出会う人だ。
差し出された平手からすっと見上げていくと……青く、透き通るような瞳とかち合う。
私を覗き込むかのような……それでいてキラキラとしていて、やけに血色の良い唇は形が良く、まるで女性のように色づいていて誰かを待ち構えているかのようにすら思える。
そう、まさにモテる青少年、といった風情なのに。
なぜか得体の知れない、怖い感じがした。
後退しかけたが、
「あの……」
「さ、参りましょう」
「あ」
躊躇いのない彼の手が、私の片手を掴んだ。
がっちりとした指だった、大きくて暖かく。
何か、を感じとったのは気のせいだろうか。
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