私の運命は高嶺の花【完結】

小夜時雨

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終章・女神

ヴィクリス

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「教室です。学舎としてたくさんの生徒が着席し、
 教師の教えを乞うのですよ」
「こちらは学食です。無料で提供されており、
 あちらの部屋はお金をかければ活用できる食堂です。
 ほとんど貴族が使っていますね」

(……特権階級と一緒って気づまりだからなぁ。
 平民にはこのほうがいいか。楽)

まるでお客さま対応で、それはまぁ至極丁寧に案内された。
これは嬉しい。嬉しいが……。
……ちらほらと通り過ぎる好奇心丸出しな生徒たちの視線が私に突き刺さる。

(ところで誰なんだろう、この人)

仕草や立ち姿で間違いなく高等な教育を受けた男だ。
背筋もピンとしていて、喋りも発音からして悪くない。人に嫌われないような喋り方をする。
じ、と見つめると、彼はにこ、とまた笑う。楽しいのだろうか、妙に目尻が下がっている気がする。商談相手にしては気安すぎる。

(……ただの女好きかな……)

そういえばそんな気がしてきた。可能性として。
私の外見は平均……といいたいが、角度によっては平均以下の女だなとしみじみ感じている。

「ヴィクリス!」
「やあ」

似た年頃の男子生徒に話しかけられているし。級友か。
ツンツンヘアーな彼は口もツンツンしている。

「珍しいな。君が女性を連れているなんて」
「そうかな」
「ああ、天と地が逆転するぞ」
「まるで天変地異が起きるとでも言いたいようだね」
「ああ、言いたいね」

ジロジロと、ツンツン言いながら案内を買って出てくれる親切な彼の肩越しから、興味津々で私を見てくるので、返事もしづらくてうーん、と困った顔でいると、ヴィクリスと呼ばれた彼が視線を遮るようにして割り入ってきた。

「こら。ダメだろ、女性をそんな視線で。無遠慮だぞ」
「あ、これは失礼しました」

両手を上げて、恭順を示した。

「ただ、ヴィクリス。
 わかってはいるだろうが……」
「ああ、わかっている」
「ならいいけど」

なんとも摩訶不思議な応酬をした彼らは、ある程度納得の行った意見交換を行ったのか、そのまま別れた。

「じゃあな」
「ああ」

……なんだったんだろ。
そんな私は、ただただぼうっとしていた。
それがいけないことなのか、それすら今の私には考えが及ばなかった。

「邪魔が入ったね。
 ……時間だから、さあ真っ直ぐ会場へ行こう」
「はい、お願いします」
「任された」

ふふ、と微笑する彼はやはり楽しそうだった。
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