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終章・女神
国教まで変わったよ……。
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魔法が使えるようになった我が国は、なんと国教が変わってしまった。
具体的にいうと愛の女神信仰のみになってしまったのである。
あんなにも運命だのと騒ぐ国だったのに……どういうこと?
おかしいことに、新・ダフォーディル魔法立国の民たちはあまり気にしていないようだった。なんでだ。
(運命が大好き、だったのに?)
物語や劇で流行ってるのは基本だったが、それにしたって前世よりもその熱量はかなり薄いような……? まるで夢から覚めたかのように、浮かれていた部分がごっそりと人々の中から掻き消えてしまった。
「そんなものあったけ?」
みたいな素っ気なさ……。
結局はそうなってしまっている。
というわけで、ダフォーディル魔法立国は愛の女神、を信仰するようになった。
運命の女神はポイ、である。
前世の苦悩が報われないな……と切ない気持ちになる。
「これも時代か……」
疑問は尽きないが、新・魔法立国には新たなる力が備わったのでそちらに夢中になっている。
そう、前述の通り、魔法、という力だ。
修道女だった時代の、そんな不可思議な話題はあったな、とは思う。思い起こせば。ふと気にはなる。こうして私にも備わっているのだから……。国民は上から与えられたこの妙な力を、普通に使いこなしている。運命の君、と出会う際のあの妙な奇跡を知っているからこそ、受容しやすいのだろうと考えてはいるが。
いつもより熱の入った魔法授業のあと、教師に尋ねた。
「先生、少しよろしいでしょうか」
「おや、ニバリスさん。なんでしょう」
「この魔法はまるでみなさま当たり前のように受け止めていらっしゃいますが、
どうしてなんでしょう」
「それはまた奇異な質問ですね」
(や、だっておかしいでしょう)
教壇で仕事道具を片付けながら教師はふむ、と答えた。
「この魔法立国の魔法は、王家直々の指示によるものですからね。
それに隣国の女王国からも長年の協力要請を受けています。
成果が出て、ほっとしているのはこの国ではなく隣国でしょうね。
どうも、このダフォーディルの前の国、アネモネス王国は夢見がちで、
運命を気にしてばかりいましたからねえ……」
「はぁ」
「もっといえば、ここ最近の王家はだらしなかった。
婚約破棄を代々繰り返し、せっかくの魔法研究も危うく頓挫しそうにも
なっていましたからねえ。実用段階ではありましたが、
毎年、本当に危なかったのですよ」
教師の師匠は魔法第一人者であるらしい。
苦労性っぽい。
「あなたは幸せですよ、ニバリスさん。
この魔法はこの国のすべての民の幸福がかかっています」
それは大袈裟だな、と世界中を旅したかつての商人としての目からして言わせてもらうと思ったが、目が本気だった教師の手前、教え子にあたる私は静かに頷くことしかできなかった。
いや実際、魔法がなくても生活はできていたからね。
ただ、この魔法立国と名乗る以上、この国にとってはこの力こそが死活問題になるのだろう。唯一の武器ともいうべきか。それを国民に教えている、というあたりが気になるところだが。
具体的にいうと愛の女神信仰のみになってしまったのである。
あんなにも運命だのと騒ぐ国だったのに……どういうこと?
おかしいことに、新・ダフォーディル魔法立国の民たちはあまり気にしていないようだった。なんでだ。
(運命が大好き、だったのに?)
物語や劇で流行ってるのは基本だったが、それにしたって前世よりもその熱量はかなり薄いような……? まるで夢から覚めたかのように、浮かれていた部分がごっそりと人々の中から掻き消えてしまった。
「そんなものあったけ?」
みたいな素っ気なさ……。
結局はそうなってしまっている。
というわけで、ダフォーディル魔法立国は愛の女神、を信仰するようになった。
運命の女神はポイ、である。
前世の苦悩が報われないな……と切ない気持ちになる。
「これも時代か……」
疑問は尽きないが、新・魔法立国には新たなる力が備わったのでそちらに夢中になっている。
そう、前述の通り、魔法、という力だ。
修道女だった時代の、そんな不可思議な話題はあったな、とは思う。思い起こせば。ふと気にはなる。こうして私にも備わっているのだから……。国民は上から与えられたこの妙な力を、普通に使いこなしている。運命の君、と出会う際のあの妙な奇跡を知っているからこそ、受容しやすいのだろうと考えてはいるが。
いつもより熱の入った魔法授業のあと、教師に尋ねた。
「先生、少しよろしいでしょうか」
「おや、ニバリスさん。なんでしょう」
「この魔法はまるでみなさま当たり前のように受け止めていらっしゃいますが、
どうしてなんでしょう」
「それはまた奇異な質問ですね」
(や、だっておかしいでしょう)
教壇で仕事道具を片付けながら教師はふむ、と答えた。
「この魔法立国の魔法は、王家直々の指示によるものですからね。
それに隣国の女王国からも長年の協力要請を受けています。
成果が出て、ほっとしているのはこの国ではなく隣国でしょうね。
どうも、このダフォーディルの前の国、アネモネス王国は夢見がちで、
運命を気にしてばかりいましたからねえ……」
「はぁ」
「もっといえば、ここ最近の王家はだらしなかった。
婚約破棄を代々繰り返し、せっかくの魔法研究も危うく頓挫しそうにも
なっていましたからねえ。実用段階ではありましたが、
毎年、本当に危なかったのですよ」
教師の師匠は魔法第一人者であるらしい。
苦労性っぽい。
「あなたは幸せですよ、ニバリスさん。
この魔法はこの国のすべての民の幸福がかかっています」
それは大袈裟だな、と世界中を旅したかつての商人としての目からして言わせてもらうと思ったが、目が本気だった教師の手前、教え子にあたる私は静かに頷くことしかできなかった。
いや実際、魔法がなくても生活はできていたからね。
ただ、この魔法立国と名乗る以上、この国にとってはこの力こそが死活問題になるのだろう。唯一の武器ともいうべきか。それを国民に教えている、というあたりが気になるところだが。
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