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終章・女神
結婚しました
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結婚するまでの過程は嵐のようで、段取りはあっという間に決まっていってしまい、ふと意識をすれば、すでに私は白くて無垢なドレスに身に包んでいた。ティアラは燦然と輝き、想像してたより軽いが重みと責任が肩に乗っかっている。ブーケを持たされている私にとって今日こそが人生における新しい門出か……、と、過去と今、そして、これからのことに思いを馳せた。王族ならではの式典における順番など……学ぶことも多かった。一般人である私が王家に嫁ぐのは前代未聞だと、大いに国中を賑わしている。幸にして記者に追い回されていないのは、とにもかくにも権力というものが発動しているからなんだろう。国名がいくら変わろうとも、中身が変わらないのは国も同じである。
私の格好はすでにヴィクリス様はご存知であったが、それでもと彼はわざわざ私の元へと駆けつけた。
ヴィクリス様は私の姿を褒めちぎり、それどころか少し泣いていた。
「……こんな日が来る、なんて……夢みたいだ」
鼻声。
つられそうになるが、堪えて、私はヴィクリス様に寄り添った。
「夢じゃ、ないです」
「そう、ですね……」
式典用の、それも正装である。
斜めがけの勲章が佩用され、胸元にも宝石まみれの勲章、だけでも彼の顔立ちを際立たせるのに、さらには王子様ルック。かつて学会へと出る際の演出用の王子様よりもさらに上がった男ぶりが眩しい。
ヴィクリス様の青い瞳が溶けてしまわないように、私は手巾で彼の目元を拭った。
この手巾にも、紋章が縫われている。私が刺した刺繍だ。涙を吸わせていると、キラキラと煌めくかつて見染めた時と同じ……いやそれ以上の熱い気持ちでもって、ヴィクリス様に抱え込まれて、こうして私は本当の幸福に包まれることになった。口づけはしない。これから、愛の女神の前で誓うのだから。
一歩一歩、足を前に踏み出して前進する。頼もしい新郎の腕を頼りに、長いレースやドレスの端を踏まないよう、ゆっくりと進んでいく。
ヴィクリス様のご両親ともすでに顔を合わせ済みで、私たちの婚姻は反対もされずに、むしろ大変喜ばしいことだと、こうして教会の親族席にて私たちを見守ってくださっている。
私の家族もまた、親族席でソワソワと、とても緊張した面持ちでいる。
ニバリス家の後ろにはなぜか王族がいるのだ。謎の席順だが、ヴィクリス様のご両親のところにはかつて私が自分の墓参りに出かけた際、お世話になったあのおじさんがいた。彼もまた正装をしており、代々受け継がれているという剣が腰にある。また、ダフォーディル学院の魔法の先生もおられ、ヴィクリス様を崇高なる存在かのごとく拝み続けていた。さらには、森に帰ったはずの熊さんが堂々とご立派な正装をしていて、隣国代表だと言わんばかりに騎士たちを侍らせて頷いている。
私や、ヴィクリス様の友人たちもきてくれた。
ヴィクリス様の友人たち、見覚えのある人たちもいたがきっとダフォーディル学院の同級生なんだろう。私もまた同じくクラスメイトたちばかりで、ニバリス家と同じく緊張しているようだ。なんたってヴィクリス様のご友人たちは貴族が多数。中には一般の方々もいるようだが、見分けがつかない。まだ私は貴族名鑑を覚えきれていないので、同級生たちがなんとも思いがけない席の近さにドギマギしているのが手に取るようにしてわかる。そのうち出てくるであろう料理を堪能して欲しい。
(さあ、あと数歩で……)
互いに向き合い、顔と顔を見合わせる。
淡く薄い丁寧な仕切りのレースが開かれた世界では、ヴィクリス様の、私もとろけてしまいそうな、笑顔。
「愛の女神に誓いますか?」
願いは彼方だが、私の愛はここにある。
降りてきた口づけはとびきりに、私を愛したのだから。
私の格好はすでにヴィクリス様はご存知であったが、それでもと彼はわざわざ私の元へと駆けつけた。
ヴィクリス様は私の姿を褒めちぎり、それどころか少し泣いていた。
「……こんな日が来る、なんて……夢みたいだ」
鼻声。
つられそうになるが、堪えて、私はヴィクリス様に寄り添った。
「夢じゃ、ないです」
「そう、ですね……」
式典用の、それも正装である。
斜めがけの勲章が佩用され、胸元にも宝石まみれの勲章、だけでも彼の顔立ちを際立たせるのに、さらには王子様ルック。かつて学会へと出る際の演出用の王子様よりもさらに上がった男ぶりが眩しい。
ヴィクリス様の青い瞳が溶けてしまわないように、私は手巾で彼の目元を拭った。
この手巾にも、紋章が縫われている。私が刺した刺繍だ。涙を吸わせていると、キラキラと煌めくかつて見染めた時と同じ……いやそれ以上の熱い気持ちでもって、ヴィクリス様に抱え込まれて、こうして私は本当の幸福に包まれることになった。口づけはしない。これから、愛の女神の前で誓うのだから。
一歩一歩、足を前に踏み出して前進する。頼もしい新郎の腕を頼りに、長いレースやドレスの端を踏まないよう、ゆっくりと進んでいく。
ヴィクリス様のご両親ともすでに顔を合わせ済みで、私たちの婚姻は反対もされずに、むしろ大変喜ばしいことだと、こうして教会の親族席にて私たちを見守ってくださっている。
私の家族もまた、親族席でソワソワと、とても緊張した面持ちでいる。
ニバリス家の後ろにはなぜか王族がいるのだ。謎の席順だが、ヴィクリス様のご両親のところにはかつて私が自分の墓参りに出かけた際、お世話になったあのおじさんがいた。彼もまた正装をしており、代々受け継がれているという剣が腰にある。また、ダフォーディル学院の魔法の先生もおられ、ヴィクリス様を崇高なる存在かのごとく拝み続けていた。さらには、森に帰ったはずの熊さんが堂々とご立派な正装をしていて、隣国代表だと言わんばかりに騎士たちを侍らせて頷いている。
私や、ヴィクリス様の友人たちもきてくれた。
ヴィクリス様の友人たち、見覚えのある人たちもいたがきっとダフォーディル学院の同級生なんだろう。私もまた同じくクラスメイトたちばかりで、ニバリス家と同じく緊張しているようだ。なんたってヴィクリス様のご友人たちは貴族が多数。中には一般の方々もいるようだが、見分けがつかない。まだ私は貴族名鑑を覚えきれていないので、同級生たちがなんとも思いがけない席の近さにドギマギしているのが手に取るようにしてわかる。そのうち出てくるであろう料理を堪能して欲しい。
(さあ、あと数歩で……)
互いに向き合い、顔と顔を見合わせる。
淡く薄い丁寧な仕切りのレースが開かれた世界では、ヴィクリス様の、私もとろけてしまいそうな、笑顔。
「愛の女神に誓いますか?」
願いは彼方だが、私の愛はここにある。
降りてきた口づけはとびきりに、私を愛したのだから。
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