どうしよう、俺の公子様がXXに。

小夜時雨

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それは動かぬ証拠というものか。

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 まるで生きているかのような、黄金に煌めく……細長い耳、まん丸だが鋭い瞳、足は太くたまに捕獲されると幸せのシンボルとされたり食べられたりしている草食獣の……。

 「兎、の像?」

 まるでお茶会の再現でもするかのように、兎が鎮座している。
はじめ、獣人の本性が太陽に照り返して輝きながら腰を下ろしているのかと思ったがそうでもないらしい。
 (僕のセンサー大丈夫かな)
 こんな勘違いを起こすなんて。
まるでそこに獣人がいるかのように、僕は感じたのだ。

 「リヒト、他にもありますよ」
 
 見渡せば、

 「おおー……」

 円を描く丸いテーブル。
そこの椅子すべてが像で埋まっているわけではない。
 兎をはじめとして、龍、蛇、牛……と、脈動感のある獣人たちの本性が鎮座しているのである。

 「これって……」

 なんとはなしにお正月、な感じだ。

 「そうだ、十二支」

 ただ、いくつかの像がないようだ。
そのわりに。

 兎の隣が複数空いているのである。
その四番目の椅子に、フリードリヒは優雅に座っている。足まで組んで。長い足だからまるでモデルでもやってるかのように、サマになっているが、椅子の数をかぞえると13個あるようだ。

 「うーん、僕の席はないようだね」
 
 なんだか億劫になるテーブル席だ。
正直、招待されたくない座席だし、そういう雰囲気すらある……なんだか異様な物語性さえありそうな椅子の群れだ。

 「……ん?」

 特に残念でもないのに、僕の婚約者殿はにこやかに、自身の膝の上をポンポン、と叩いた。

 「さ、リヒ。
  俺の上にいらっしゃい」
 「俺のうえ」
 「俺を椅子だと思って」
 「ええ……」

 若干怪しい響きのセリフ運びだ。

 「他に椅子はないの?」
 「あったら別の椅子に座るでしょう? リヒトは。
  だめですよ、あなたはここに座るべきです、俺の上に」
 
 まあ、あんまり……気配のよろしくない場所だし、僕は……座したくはないので、一応は敷物みたいな扱いの婚約者どのを間においたほうが腰の座りは良さそうだ。
 (まあいいか)
 なんか嬉しそうだし……。
 (……デートだしな)
 公子様のご機嫌が良いと、僕だって嬉しいのだ。
しずしずと近づき、よいせ、と乗り上がって落ち着く。

 「……でもいいの? 重たくない?」
 「そうでもないです。
  可愛い座り心地です」
 
 (なんだか猫になった気分)
 猫は、公子様のほうなんだが……。
けど、こうしていると落ち着くのはやっぱり、良いんだろう、フリードリヒの足の太さがしっかりと僕のお尻にフィットしてるし。ぎゅ、と背後から人形を抱きしめるかのように両腕を巻かれているけど、僕の首筋から何やらふんふん鼻息荒いけど、気にしないことにしよう。
 (螺旋階段の息が荒いし)
 さっきから、護衛たちの体力の限界を感じる叫びと声が……聞こえる……。

 「この円卓って、何?」
 「そうですね……リヒト、
  このテーブルはただ丸いだけではなく、
  巡る、という意味もあります」
 「うん……」

 背中越しに、フリードリヒの穏やかな声とすりすりと撫で回されている感覚、人肌にほっとする。
僕もまたすり、と頬を擦り返すと、ふふ、とくすぐったそうに、彼は微笑む。

 「これこそが天の宴、王の椅子の座席配分表です」
 
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