162 / 229
決定事項
しおりを挟む
はじめはどうにも、嫌がっていたそぶりをしてみせていたフリードだったけれども、失敗した壁ドンを通り越してお願いしたら、あっという間に教えてくれた。多分、それでも、すべてではないだろうけど。
「リヒト様は上目遣いの達人ですね」
とは、ルフスさんの談である。
僕の失敬な壁どん(物理)ですら目撃していたそうだが……それは最初っからでは?
「身長差がありますからねえ。
懐にかき抱いているリヒト様の、
可愛いらしい仕草にしてやられたのでしょう。
さすがです」
「……それ、褒めてる?」
「褒めてますとも」
にこやかに会話は締められたが、それはそれでどうなんだろう。
ルフスさんはウキウキで旅行カバンの中身の入れ替えをああでもない、こうでもないと忙しそうにして僕の部屋から出ていった。
「はぁー……」
ずるずる、と貴族子息らしくないだらしない格好で椅子に座る。
しばらくすると、この薄暗い僕の部屋に、いつものハイパー執事がやってきた。
ニコニコとしているが、なんだろう。さすがに体裁が悪いので座り直している。
「どうしました?」
「はい。ご主人様からの日程のご予定をお伝えいたします」
「あー、決まったんだね」
「さようでございます」
ヴォル家筆頭執事も、ことさらに調整に時間がかかったようだ。
「お疲れ様です」
「ありがたきお言葉」
今回の旅程は、さすがに同行者がいるだけに、関係各所への話のもっていきように大変苦労したようだ。
なんたって極秘旅行である。ある意味。
「王陛下にまで話がいっちゃったもんね……」
「はい。今回のことについて、
ちょうど良いからとのことで。
ですが、今までご主人様はお休みをいただいていなかったのですから、
その兼ね合いもあるのでしょう」
どうやらこの国には有給、という考え方がちょっとはあるらしい。ちょっとは。
そう、僕の婚約者であるところの、フリードも、僕と一緒に成敗……いや、旅行についてってくれることになったのである。
「一粒で二度美味しい、とはこのこと」
一人ごちる。うん。
幸い、対抗馬の権力者であるヴォル家の公子様が印籠のようにいてくれるので、もし何かあったら助かる。
(あの、なんだか見境のなさそうな、
それでいて妙な感じの獣人の王様も、
なんだかんだであの領地のことについて
気にはしているようだし)
国からのバックアップも万全、のようだし、一応はお忍びではあるので不足がないようにしてくれるのは大変大助かりだ。
(もし僕に何かあれば、
という可能性もなきしにもあらずだからね)
そういう場合、も少しは考えてはいるし、うん。大丈夫だ。
今回は大貴族の領地における問題だから、国からの干渉はばっちこいである。
その糸口になれば幸いだ。証拠も見つけたいし見つけられなくても、根幹を破壊しておけば大丈夫だろう。蛇口の元をなんとかすればなんとかなるものである。
(あの薬の出所もね)
僕の二の腕も大いに唸るというものである。ぐるんぐるんと。
「リヒト様は上目遣いの達人ですね」
とは、ルフスさんの談である。
僕の失敬な壁どん(物理)ですら目撃していたそうだが……それは最初っからでは?
「身長差がありますからねえ。
懐にかき抱いているリヒト様の、
可愛いらしい仕草にしてやられたのでしょう。
さすがです」
「……それ、褒めてる?」
「褒めてますとも」
にこやかに会話は締められたが、それはそれでどうなんだろう。
ルフスさんはウキウキで旅行カバンの中身の入れ替えをああでもない、こうでもないと忙しそうにして僕の部屋から出ていった。
「はぁー……」
ずるずる、と貴族子息らしくないだらしない格好で椅子に座る。
しばらくすると、この薄暗い僕の部屋に、いつものハイパー執事がやってきた。
ニコニコとしているが、なんだろう。さすがに体裁が悪いので座り直している。
「どうしました?」
「はい。ご主人様からの日程のご予定をお伝えいたします」
「あー、決まったんだね」
「さようでございます」
ヴォル家筆頭執事も、ことさらに調整に時間がかかったようだ。
「お疲れ様です」
「ありがたきお言葉」
今回の旅程は、さすがに同行者がいるだけに、関係各所への話のもっていきように大変苦労したようだ。
なんたって極秘旅行である。ある意味。
「王陛下にまで話がいっちゃったもんね……」
「はい。今回のことについて、
ちょうど良いからとのことで。
ですが、今までご主人様はお休みをいただいていなかったのですから、
その兼ね合いもあるのでしょう」
どうやらこの国には有給、という考え方がちょっとはあるらしい。ちょっとは。
そう、僕の婚約者であるところの、フリードも、僕と一緒に成敗……いや、旅行についてってくれることになったのである。
「一粒で二度美味しい、とはこのこと」
一人ごちる。うん。
幸い、対抗馬の権力者であるヴォル家の公子様が印籠のようにいてくれるので、もし何かあったら助かる。
(あの、なんだか見境のなさそうな、
それでいて妙な感じの獣人の王様も、
なんだかんだであの領地のことについて
気にはしているようだし)
国からのバックアップも万全、のようだし、一応はお忍びではあるので不足がないようにしてくれるのは大変大助かりだ。
(もし僕に何かあれば、
という可能性もなきしにもあらずだからね)
そういう場合、も少しは考えてはいるし、うん。大丈夫だ。
今回は大貴族の領地における問題だから、国からの干渉はばっちこいである。
その糸口になれば幸いだ。証拠も見つけたいし見つけられなくても、根幹を破壊しておけば大丈夫だろう。蛇口の元をなんとかすればなんとかなるものである。
(あの薬の出所もね)
僕の二の腕も大いに唸るというものである。ぐるんぐるんと。
12
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)
ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。
僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。
隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。
僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。
でも、実はこれには訳がある。
知らないのは、アイルだけ………。
さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪
異世界転移した先は陰間茶屋でした
四季織
BL
気が付いたら、見たこともない部屋にいた。そこは和洋折衷の異世界で、俺を拾ってくれたのは陰間茶屋のオーナーだった。以来、俺は陰間として働いている。全くお客がつかない人気のない陰間だけど。
※「異世界に来た俺の話」と同じ世界です。
※謎解き要素はありません。
※ミステリー小説のネタバレのようなものがありますので、ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる