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(……長い道のり。それはつらい)
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獣王のおわす都から、北へ走る山脈を避けるためにまずは他領を横断しなければならない。
頭の中に浮かぶ地図をほんわかと思い浮かべながら、
(あの山、なかなか離れないなー)
馬車の車窓から比較する。
山のうえにある木の本数が少し違うな! 隣と!
「リヒ、寒くないか?」
「大丈夫」
窓を開けて見てるから、どちらかというとフリードの方が寒そうだが、毛並みがある本性が猫だから丈夫なんだろう、僕より羽織るものが少ない格好だというのに気にもしないでせっせと書類の類をペラペラとめくっている。
「フリード、疲れない?」
「大丈夫」
「……ふっ」
「……ふふ」
お互いに返事が被り、つい見合って笑ってしまう。
「……フリード、
もう少し体が冷えたら、
猫になって僕を温めて欲しいな」
「……ふ、毛皮がわりですか?
……良いでしょう、たっぷり温めてあげますから」
貴公子である公子様を公然とモフモフできる。
それがこの婚約における最大のメリットかもしれない……。
「……しかし、まだあの山は離れないね」
「山の数をかぞえていたのですか?」
「ううん、生えてる木の数と色と、
生えて動いてる動植物の数と……虫はいっぱいいすぎて、
かぞえるのは途中で飽きてきた」
僕の素直な答えに、フリードはモフモフな毛並みを微動させて笑う。
「ふふ、リヒトらしい回答だが……、
さすがは夜の一族といったところか」
「色味は隣の山が生き生きとしている」
「……意外と楽しんでいて、俺は嬉しいですよリヒ」
ふわもこな尻尾もゆらゆらとゆらめきつつ僕の腕をくるくると包み、僕を抱き込んでいる。
大型猫の状態のフリードはお髭も長く立派で、ふがふがと動いていて見てて面白い。
(人型だとつるりとした卵肌なのになあ)
獣人の神秘である。
青髭すら見当たらないぐらい、フリードリヒという美男子の外見は生まれながらの美肌なのだ。それなのに、猫になるとちょこちょこと口がもごもご動くと同じく微動するのだから……ユニークな生態の神秘である。
(それに猫の毛からはお日様の匂いがするし)
良い匂いもする。
本体(?)も良い匂いがするが、猫になっても良い匂いがするのは反則すぎる。
(僕の匂いは夜の匂いというか、湿ってるというか)
なんとも言い難い暗い香りであるからして。
フリードは本当に猫なんだなあ、と思う。それも表の。
「どうしました?」
「んー、なんでもない」
言いながら、僕はモフモフな胸元から腕によりかかり、香箱座りをしていた猫の手を借りて、すやりと横寝の姿勢に入ることにした。
(窓も見えるし)
「リヒは案外とお外が好きなんですね」
「そう? ……そうかも」
(あんまり昼間はお散歩しないけど)
見えすぎるのも困りものだ。
「……なんとなく、リヒトのことが、
理解できて嬉しいですね。
俺はまだ、あなたのこと把握しきれていないのだから」
「そうかな……」
そうかも?
視線を窓から見上げる形になる猫の顎のあたりを見ていると、彼はそのエメラルドの瞳をにんまりとさせ、
「ふふ、可愛い顔を」
ずるいことだ、と言いながら、ゴロゴロと喉を鳴らしながら僕に頭突きをし始めた。
「ちょ、痛い、痛いからフリード」
「あなたにはちょうど良い塩梅なんですよ、これぐらいが」
「どういうこと!?」
あと爆音なんですけど、ゴロゴロ!
僕の抗議の声なんぞ聞こえていません、とばかりにさらなるナメナメの刑に処された。うう、解せぬ。
頭の中に浮かぶ地図をほんわかと思い浮かべながら、
(あの山、なかなか離れないなー)
馬車の車窓から比較する。
山のうえにある木の本数が少し違うな! 隣と!
「リヒ、寒くないか?」
「大丈夫」
窓を開けて見てるから、どちらかというとフリードの方が寒そうだが、毛並みがある本性が猫だから丈夫なんだろう、僕より羽織るものが少ない格好だというのに気にもしないでせっせと書類の類をペラペラとめくっている。
「フリード、疲れない?」
「大丈夫」
「……ふっ」
「……ふふ」
お互いに返事が被り、つい見合って笑ってしまう。
「……フリード、
もう少し体が冷えたら、
猫になって僕を温めて欲しいな」
「……ふ、毛皮がわりですか?
……良いでしょう、たっぷり温めてあげますから」
貴公子である公子様を公然とモフモフできる。
それがこの婚約における最大のメリットかもしれない……。
「……しかし、まだあの山は離れないね」
「山の数をかぞえていたのですか?」
「ううん、生えてる木の数と色と、
生えて動いてる動植物の数と……虫はいっぱいいすぎて、
かぞえるのは途中で飽きてきた」
僕の素直な答えに、フリードはモフモフな毛並みを微動させて笑う。
「ふふ、リヒトらしい回答だが……、
さすがは夜の一族といったところか」
「色味は隣の山が生き生きとしている」
「……意外と楽しんでいて、俺は嬉しいですよリヒ」
ふわもこな尻尾もゆらゆらとゆらめきつつ僕の腕をくるくると包み、僕を抱き込んでいる。
大型猫の状態のフリードはお髭も長く立派で、ふがふがと動いていて見てて面白い。
(人型だとつるりとした卵肌なのになあ)
獣人の神秘である。
青髭すら見当たらないぐらい、フリードリヒという美男子の外見は生まれながらの美肌なのだ。それなのに、猫になるとちょこちょこと口がもごもご動くと同じく微動するのだから……ユニークな生態の神秘である。
(それに猫の毛からはお日様の匂いがするし)
良い匂いもする。
本体(?)も良い匂いがするが、猫になっても良い匂いがするのは反則すぎる。
(僕の匂いは夜の匂いというか、湿ってるというか)
なんとも言い難い暗い香りであるからして。
フリードは本当に猫なんだなあ、と思う。それも表の。
「どうしました?」
「んー、なんでもない」
言いながら、僕はモフモフな胸元から腕によりかかり、香箱座りをしていた猫の手を借りて、すやりと横寝の姿勢に入ることにした。
(窓も見えるし)
「リヒは案外とお外が好きなんですね」
「そう? ……そうかも」
(あんまり昼間はお散歩しないけど)
見えすぎるのも困りものだ。
「……なんとなく、リヒトのことが、
理解できて嬉しいですね。
俺はまだ、あなたのこと把握しきれていないのだから」
「そうかな……」
そうかも?
視線を窓から見上げる形になる猫の顎のあたりを見ていると、彼はそのエメラルドの瞳をにんまりとさせ、
「ふふ、可愛い顔を」
ずるいことだ、と言いながら、ゴロゴロと喉を鳴らしながら僕に頭突きをし始めた。
「ちょ、痛い、痛いからフリード」
「あなたにはちょうど良い塩梅なんですよ、これぐらいが」
「どういうこと!?」
あと爆音なんですけど、ゴロゴロ!
僕の抗議の声なんぞ聞こえていません、とばかりにさらなるナメナメの刑に処された。うう、解せぬ。
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