どうしよう、俺の公子様がXXに。

小夜時雨

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案外と楽しい野外キャンプ

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 天幕が張られ、ヴォル家ご一行の団体の野外宿営地が完成した。

 割合として護衛する騎士たちが多いせいか、行動は速やかで手際良く、短時間で行われた。
トイレでさえ完備である。ご不浄の始末も、立ち去り際に行うという。訓練の賜物なのだろう、丁寧な仕事に感心する。

 (飛ぶ鳥跡を残さず、っていうもんね)

邪魔にならないよう端的な会話を心がけていると、ルフスさんが僕を呼びにやってきた。

 「リヒト様」

 どうやら一番大きな天幕にて食事の準備が整ったものらしい。
話をしてくれた彼らにお礼を言って失礼し、良い匂いが漂っている中心部へとルフスさんと歩く。
わいわいと騒がしい夕暮れを歩くのは久しぶりで、しかもこんなにも獣人の多い団体行動は珍しく、僕としては非常にそわそわとした心地でちょっと楽しい。宿のときは彼らと行動は別だったから、なんだろう、この感じ。

 (修学旅行みたいな?)
 目的が物騒なくせして、思ってたよりも浮かれているっぽい。
半歩、斜めうしろにいるルフスさんにちら、と視線を向けると、どことなくほっこりとした印象……柔らかく微笑んでいる。

 「ずいぶんと、ヴォル家のものたちや、
  騎士たちと打ち解けてらっしゃいますね」
 「変かな?」
 「リヒト様なら理解できます」

 よそん家じゃありえないっぽい。
続くルフスさんの言葉に僕は頷いた。

 「ヴォル家のものたちは誇り高く、
  忠誠心が高いので、
  よそのもの……、
  たとえリヒト様が貴族の血を引く、
  ご立派なお家だったとしても、
  それこそ他国の王侯だったとしても、
  ヴォル家では肩身の狭い思いをしたはずです。
  ……もちろん、これは俺が、
  このヴォル家で働き始めてからの印象、ですが……」

 働き始めの頃、ルフスさんも相当に苦労していた。
ハイパー執事が無茶な事案を発生させてでも、ルフスさんに事態を解決させたがったのもこのためだ。筆頭執事のちからをもってしても、この家の、それも内情のものたちをどうにかするには実力でのしあがるしかなかったのに、僕が彼を守るために、いきなり側仕えにしたものだから反発がそれ相応にあったのだ。
 (なんか……ごめん、というのも、
  彼に失礼かもしれない)
 苦労して報いる、ほうが良いのだろう。
なんたって、ルフスさんも頑張っているのである。

 火の番をしている護衛たちを遠目に、招かれた天幕へと入る。

 「きましたか」
 
 机のうえには、とても野外での食事、とは思えない立派な料理が並んでいた。
……というか、

 「えっ……すごい……」

 カトラリーをはじめとして、きちんとテーブルクロスが敷かれているし、料理の品数や果物、飲み物ですら……。何やら、見覚えが……ある。お皿にある印も……え、まさか?

 「……ヴォルの食堂と、同じ料理……?」
 「少し違うところはあるが、
  変化のないよう、
  外でも同じ格式をと、
  料理長から持たされたものが大半なんですよ、リヒ」
 「へ、へぇー……」

 フリードが説明してくれたが、僕の想像では大きな骨つき肉の丸焼き、とまではいかないまでも、切り取られたお肉が少々と、主食の硬いパン、腐らないようアルコールが入った携帯用飲み物、程度かなと思っていた。
 (まさか、
  ここまで料理にプライドを持っていたとは……)
 恐るべし。料理長。

 

 ルフスさんに給仕され、覚えのある美味しい味に満足いった食事をし終えたら……暇である。
フリードはフリードで、食事中も時々、誰かがやってきてはあれこれと会話をしている。相変わらず人気の公子様である。仕事に人気、というのも本人は大変かもしれないがどことなく生き生きとしている気がしないでもない。
 
 天幕張ってた間も暇で野外キャンプぶら歩きをしていたので、少し腹ごなしのためにも外出することにした。

 「リヒト様」

 ルフスさんに断ろうとしたところ、彼もついてきてくれた。

 「俺もお供いたします」

寝床の準備をし終えたらしい。僕の寝床はフリードと同じ大きな天幕だけど、ルフスさんはそのそばで待機するために、隣の天幕で寝るとのこと。

 すっかり暗くなり、夜もとっぷりと深まった。
空に星はなく、月もない。雲が出ているのだろう、天気が悪い予測なのだから。

 (……本当は、こういう日こそ。
  絶好のチャンスなんだけど)

 被疑者の住む場所は未知数だし、貴族名鑑だけで相手を特定するのは難しい。
身内である弟は誰だよ状態だし、周囲には戦いのプロである騎士がいて抜け出すには少し苦労しそうだし、まあ、仕方ないか。
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