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第2部 大帝国のヤンデレ皇子に囚われたりなんてしない!
第1章 アリーシャは囚われフラグを回避できない
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第1の囚われフラグ『魔王襲来』から1ヶ月……。
すっかりこの世界での暮らしにも慣れ始めた私に、第2の囚われフラグが迫っていた。
「おぉ、アリーシャ!愛しい我が娘よ!今日も愛らしいのぅ!」
兄が兄なら父もこんななのか……とウンザリするようなテンションで、国王が話しかけてくる。
ここはシェリーロワール城の謁見の間。私はこの世界での父である国王から「改まった話がある」とのことで呼び出されたのだ。
だが私は話を聞くまでもなく、既にその内容を知っている。
「あのー、お父様。お話が『ケガをした兄の代わりにガルトブルグの建国記念式典へ出席してくれ』ということでしたら、絶対にイヤです」
先回りして言うと、国王は驚愕したように目を見開いた。
「まだ何も言っておらんのに理解しておるとは……そなたは何と賢い姫なのだ!」
「いえ、そういうんじゃないですから。……って言うか、お兄様は何でケガしてるんですか」
兄王子ジェラルドは本来のシナリオでは妹王女を攫いに来た魔王に戦いを挑んで負傷する。だが1ヶ月前の魔王襲来時、兄の登場シーンよりだいぶ前に私が魔王を(物理的に)倒してしまったせいで、彼の出番はなくなってしまったはずなのだが……。
「それがのぅ……。大ホールでバナナの皮を踏んで中央階段をすべり落ちたそうなのだ」
……まさか、あの時魔王が踏んづけて飛んでいったバナナの皮が……?
と言うか、ジェラルド王子は何をどうしてもケガをする運命なのか……。
「ガルトブルグの建国記念式典には各国が元首級の使者を出す。本来であればジェラルドに行ってもらう所なのだが、足を骨折しておるし、知っての通り私は腰痛持ちだしのぅ……」
「だったらお母様が行けばいいじゃないですか!王妃ならガルトブルグだって文句ないでしょ!?」
行けば確実に囚われると分かっているのに、みすみす罠にはまってたまるものか。そう思って必死に抵抗したのだが……
「実はユースから提案があってな。お前も15になったことだし、そろそろ王族の公務を務めてみても良いのではないかと。初めての遠出で不安もあると思うが、供の者も大勢つけるゆえ、心配はないぞ」
「ユースが!?」
なんて余計なことを……。
どうもユースが関わってくると、私の運命がどんどん囚われの方向へ傾いていってしまう気がするのだが……気のせいだろうか。
「お父様、私どうも、誕生日パーティーの日にあの皇子に目を付けられた気がするんです。行ったら何されるか分かりません。お父様だって可愛い娘が囚われたり無理矢理結婚させられそうになったら嫌でしょ!?」
正攻法で訴えるが、父王は笑うばかりでとりあってくれない。
「なるほどのぅ。お前の美貌は世界一だからのぅ。大帝国の皇子に惚れられるのも無理はなかろう。しかし、いくら恋した相手とは言え、拉致監禁は立派な犯罪。まさか大帝国の皇子ともあろう人間が自ら国際問題を起こしたりはすまい」
私もそう思いたい。だが、私は知っている。
ガルトブルグ帝国唯一の皇子であるクリスティアーノは、歪んだ家庭環境に育ったがために、人の愛し方も歪んでしまっている。
その上、愛を手に入れるためならどんな手段を使っても良いと思い込んでいるところがある。だから極秘裏に王女を攫い、王宮内に軟禁し、シェリーロワール側がどんなに王女の所在を問いつめても知らぬ存ぜぬを通すのだ。
ガルトブルグは軍事力の強い大帝国。シェリーロワールのような小国がそんなに強く抗議できるような国ではない。
「これは国王命令だ。行ってくれるな?アリーシャ」
何も知らない父王は、そう言って笑顔で娘を窮地に追いやる。だが、私は諦めない。
「……分かりました。ガルトブルグへ行って来ます。ただし……ペットを1匹、一緒に連れて行ってもいいですか?」
すっかりこの世界での暮らしにも慣れ始めた私に、第2の囚われフラグが迫っていた。
「おぉ、アリーシャ!愛しい我が娘よ!今日も愛らしいのぅ!」
兄が兄なら父もこんななのか……とウンザリするようなテンションで、国王が話しかけてくる。
ここはシェリーロワール城の謁見の間。私はこの世界での父である国王から「改まった話がある」とのことで呼び出されたのだ。
だが私は話を聞くまでもなく、既にその内容を知っている。
「あのー、お父様。お話が『ケガをした兄の代わりにガルトブルグの建国記念式典へ出席してくれ』ということでしたら、絶対にイヤです」
先回りして言うと、国王は驚愕したように目を見開いた。
「まだ何も言っておらんのに理解しておるとは……そなたは何と賢い姫なのだ!」
「いえ、そういうんじゃないですから。……って言うか、お兄様は何でケガしてるんですか」
兄王子ジェラルドは本来のシナリオでは妹王女を攫いに来た魔王に戦いを挑んで負傷する。だが1ヶ月前の魔王襲来時、兄の登場シーンよりだいぶ前に私が魔王を(物理的に)倒してしまったせいで、彼の出番はなくなってしまったはずなのだが……。
「それがのぅ……。大ホールでバナナの皮を踏んで中央階段をすべり落ちたそうなのだ」
……まさか、あの時魔王が踏んづけて飛んでいったバナナの皮が……?
と言うか、ジェラルド王子は何をどうしてもケガをする運命なのか……。
「ガルトブルグの建国記念式典には各国が元首級の使者を出す。本来であればジェラルドに行ってもらう所なのだが、足を骨折しておるし、知っての通り私は腰痛持ちだしのぅ……」
「だったらお母様が行けばいいじゃないですか!王妃ならガルトブルグだって文句ないでしょ!?」
行けば確実に囚われると分かっているのに、みすみす罠にはまってたまるものか。そう思って必死に抵抗したのだが……
「実はユースから提案があってな。お前も15になったことだし、そろそろ王族の公務を務めてみても良いのではないかと。初めての遠出で不安もあると思うが、供の者も大勢つけるゆえ、心配はないぞ」
「ユースが!?」
なんて余計なことを……。
どうもユースが関わってくると、私の運命がどんどん囚われの方向へ傾いていってしまう気がするのだが……気のせいだろうか。
「お父様、私どうも、誕生日パーティーの日にあの皇子に目を付けられた気がするんです。行ったら何されるか分かりません。お父様だって可愛い娘が囚われたり無理矢理結婚させられそうになったら嫌でしょ!?」
正攻法で訴えるが、父王は笑うばかりでとりあってくれない。
「なるほどのぅ。お前の美貌は世界一だからのぅ。大帝国の皇子に惚れられるのも無理はなかろう。しかし、いくら恋した相手とは言え、拉致監禁は立派な犯罪。まさか大帝国の皇子ともあろう人間が自ら国際問題を起こしたりはすまい」
私もそう思いたい。だが、私は知っている。
ガルトブルグ帝国唯一の皇子であるクリスティアーノは、歪んだ家庭環境に育ったがために、人の愛し方も歪んでしまっている。
その上、愛を手に入れるためならどんな手段を使っても良いと思い込んでいるところがある。だから極秘裏に王女を攫い、王宮内に軟禁し、シェリーロワール側がどんなに王女の所在を問いつめても知らぬ存ぜぬを通すのだ。
ガルトブルグは軍事力の強い大帝国。シェリーロワールのような小国がそんなに強く抗議できるような国ではない。
「これは国王命令だ。行ってくれるな?アリーシャ」
何も知らない父王は、そう言って笑顔で娘を窮地に追いやる。だが、私は諦めない。
「……分かりました。ガルトブルグへ行って来ます。ただし……ペットを1匹、一緒に連れて行ってもいいですか?」
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