囚われの姫は嫌なので、ちょっと暴走させてもらいます!~自作RPG転生~

津籠睦月

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第2部 大帝国のヤンデレ皇子に囚われたりなんてしない!

第22章 アリーシャ、大団円を迎える

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「……終わった……の……?」
 
 私の問いに、皇妃が振り返り、力強くうなずく。
 
「良かったぁ……。あ、でもみんな、大丈夫?ケガとかしてるよね?」
 
 私は聖霊戦士たちの間をすり抜け、クリアたちの方へけ寄る。
 
「あ!やっぱり血が出てる!とりあえず応急処置しとこ。レベル10のスキル、タウリン100mgミリグラム!」
 
 実は私はちょっとだけ回復魔法が使える。前にアッシュを倒してレベルが上がった時に覚えたのだ。
 
 ……元のシナリオでジェラルディンちゃんは勇者パーティーの "回復役" になるはずだったからな……。
 
 もっとも、レベル10では初歩のレベルの低い回復魔法しか使えない。
 
「うーん……。やっぱり100mg程度ていどじゃ、たいして回復にならないか……。もう少しレベルが上がれば、もっとたくさん回復させてあげられるんだろうけどなー……」
 
 クリアのケガの状態を確かめながらブツブツ言っていると、皇妃が顔をのぞき込んできた。
 
「アリーシャ姫は回復系の魔法が使えるのか?」
 
「あ、ハイ。でもまだレベル10なんで、大した魔法が使えなくて……」
 
「ならば、少しばかり経験値を上乗せしてやろう。今が10であれば、15くらいにはレベルが上がるのではないか?」
 
 言うなり皇妃は私の肩をおうぎでポンとたたいた。直後……
 
《アリーシャはレベルが上がった!時間停止1分間ストップモーション・ワンミニットを覚えた!
 アリーシャはレベルが上がった!敵を混乱させる魔法ダイコンミズマシ・ダイコンランを覚えた!
 アリーシャはレベルが……》
 
 例のレベルアップのファンファーレが鳴り響いた。
 
「えぇぇっ!? 私、今回は戦闘に参加してない気がするのに、どうして!?」
 
「知らぬのか?各国の元首げんしゅやその配偶者はいぐうしゃには、特定の者に経験値を付与ふよする権限が与えられておる。まぁ、数値の上限はあるがな。その権利を行使したまでよ」
 
 ……ああ。RPGで時々あるよね。
 王様から "ごほうび" で経験値をもらうやつ……。
 
「それより、レベル15でタウリン500mgを覚えたようだぞ。すまぬがクリスティアーノに使ってやってくれぬか?それと、そこの青年にも……」
 
 そう言って皇妃が指し示した先には……
 
「レッド!やけに静かだと思ったら、気絶してたの!?」
 
 私が来た時には既に満身創痍まんしんそういだったレッドは、今、完全に気を失っていた。
 
 ……まぁ、ボス戦勝利時に勇者が戦闘不能状態っていうのも、RPGではよくあることだよね。
 
「タウリン500mg!……さすがに戦闘不能状態からの全回復はムリか……」
 
 私は回復魔法をかけるが、レッドは目を覚まさない。
 
「この青年のことはガルトブルグが責任をもって快癒かいゆするまで面倒を見よう。お前たち、この青年を医務室へ運べ」
 
 皇妃は聖霊戦士たちにテキパキと指示を出す。
 
「ケリュネイアさんたち……まだ遺跡に戻らなくていいんだ……?」
 
「町中を彷徨さまよっていた者どもは呪いの剣の鎮静化ちんせいかともない遺跡へ戻っていったであろうが、この者たちは既にわらわの忠実なるしもべだからな。今回の騒動でクリスパレスにもそれなりの被害が出たであろうし、この者たちには当面の間このまま働いてもらおう」
 
 皇妃はその後も皇帝を運ばせたり、壊れた闘技場の破片を片付けさせたりと聖霊戦士たちをき使う。
 使えるものは何でも使うというその姿勢……、見習いたいかも知れない。
 
「アリーシャ姫……何と言ってお礼を言ったら良いか……。母を助けていただいたばかりか、私と父のことまで……」
 
 まだ傷口から血のにじむクリアがヨロヨロと歩み寄って来る。
 
「あぁあ……っ!そんなのいいから、まだ寝てて!私の魔法じゃなおしきれてないし……!」
 
「……いや。妾からも改めて御礼を言わせて欲しい。ガルトブルグはそなたによって救われた。どれほど感謝しても足りぬくらいだ」
 
 皇妃が神妙な顔で頭を下げる。
 
「いえ!そんな!むしろ大変なのはこれからなんじゃないですか?皇帝の信用や威厳いげんはガタ落ちでしょうし、国民の支持も……」
 
 元のシナリオでは、クリアが騒動の元凶となった父を倒し、新たな皇帝として立つことでガルトブルグは立ち直っていく。
 だが今回、皇帝は死んでいない。この先どうするのだろう……。
 
「安心せよ。あの男を政務に戻すような愚は犯さぬ。あの男が妾にしたことを、今度は妾がするまでよ。病の療養という名目があれば、皇帝が表に出て来ずとも何の不審もあるまい?」
 
 皇妃はゾッとするような酷薄こくはくな笑みを浮かべた。
 
「あ、じゃあクリアが皇帝代理に……?」
 
 結局は元のシナリオと似た状況になるのかと思ってそう言うと、皇妃は首を横に振った。
 
「いいや。我が息子は他国の姫をかどわかし監禁するような愚か者。まずはその性根しょうねをしっかり叩き直さねばなるまい。クリスティアーノが皇帝にふさわしき立派な人格者に育つまで、皇帝の職務は妾があずかろう」
 
 クリアはしかられた子どものようにシュンとしている。だがその顔はどことなくうれしそうにも見えた。
 
 ……それにしても、皇妃様が皇帝代理を務めるのか。
 まぁ、元々 "女帝" っぽい雰囲気があるし、適役なのかも知れない。
 
「それよりも、つかれたであろう。すぐに湯を用意させる。汚れを落とし、ゆっくり休まれるが良い」
「おフロ!? ありがたいです!汗とかホコリとかでドロドロだったんで!」
 
 私は皇妃の提案に飛びついた。
 
 そのまま大浴場に案内されながら、ふと思う。
 
 …………あれ?私、何か忘れてないかな……?
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