62 / 162
第3部 電脳機神兵の花嫁になんてならない!
第21章 アリーシャ、バナナの皮で現在地を把握する
しおりを挟む
「わっ……また機械系モンスター……」
「退がってな、アリーシャちゃん。マイスター・スキル其の陸!」
上の階に通じる階段を見つけられないまま、私たちは何度もモンスターに遭遇した。
インディは驚いたことに、ブルー並の……いや、下手をするとブルー以上のマイスター・スキルの持ち主だった。
「よしッ、と。一丁上がり!もう大丈夫だぜ、アリーシャちゃん」
「ありがとうございます。すみません、すっかりお任せしちゃって」
「いやいや。他のモンスターや無法者の時には、だいぶ助けてもらってるし、お互い様だろ」
明るく笑ってインディは、機械系モンスターの "なれの果て" をポケットに詰め込んでいく。
「その部品、後で何かに使うんですか?」
「ああ。倅に調べさせりゃ、何か分かるかも知れねぇし、リサイクルして何かに使えるかも分からんからな」
「息子さんがいらっしゃるんですか」
「ああ。息子が2人に、娘が1人。俺に似てヤンチャなのが2人と、俺に似ずにエラく優等生に育ったのが1人、な」
ん……?その家族構成、どこかで……。
「お……。宝箱があったぜ。どうする、アリーシャちゃん。開けていくかい?」
ここが何階なのかはよく分からないが、私たちが今いるフロアは、床や壁に穴も無く、宝箱もたくさん設置されている。
……ひょっとして、かなり下の方の階まで戻されてしまったのだろうか……?
「もちろん開けていきます!宝箱の中身チェックは、ダンジョン探索の基本ですし!」
何か役立つアイテムが入っているかも知れないし、中身によっては、今どの辺りにいるか分かるかも知れない。
どの宝箱に何を入れたか、全部をいちいち覚えているわけではないが、重要アイテムを入れた場所は、何となく覚えている。
「おっ、これは…………って、バナナの皮じゃねーか!誰だ、こんなゴミを宝箱に入れたのは!」
……ゴメンナサイ。それ入れたの、私の幼馴染です。
って言うか創君、バナナ仕込むの好きだな。確かコレを仕込んだ時も、すっごくイキイキしてたよね。
『苦労して辿り着いた、こんな深いダンジョンの奥で、出て来たのがバナナの皮だった時のガッカリ感……良くね?しかもコレ、実はボスにも効く超有能なアイテムなんだぜ!』
そこまで思い出して、私はハッとした。
――こんな深いダンジョンの奥……。
……そうだ。ここは、普通ならボス戦後のエクストラ・ダンジョンとして訪れる、特別な場所だ。
今いるここは、階層自体はかなり下の方にある。
だが、内壁により完全隔離されていて、天空牢獄の同一フロアからは行き来することができない。
相当な上層階から、ひたすら階段を下りて来ることでしか辿り着けない、とても意地悪な隠しダンジョン……通称 "裏牢獄" だ。
「そっか……。床の穴から落ちたら、偶然 "裏牢獄" の方に来ちゃったんだ……。ってことは、壁の向こうは天空牢獄の第二層か……」
私は天空牢獄と裏牢獄を隔てる壁をコンコン叩いてみる。
「ん……?ってことは、ブルーの所へ行くには、一旦、天空牢獄の上層階に行かなきゃならなくない?一旦、十数階上がってから、また十数階下りることに……。しかも上層階って、モンスターのレベル、ヤバいんじゃ……」
思考を整理するにつれ、だんだん血の気が引いていく。
マズい。これ、思っていた以上に厄介な状況だ。
「いや、待って。エクストラ・ダンジョンなんだから、最下層にはレアアイテムがあるはず……」
バナナの皮は、裏牢獄で最も価値ある宝の前の "フェイント" だ。
そして、このエクストラ・ダンジョンで最も価値ある宝とは……
「ヴァルキュリエ・ソードじゃん!この下の階のどこかに、ヴァルキュリエ・ソードがあるんじゃん!」
「は?アリーシャちゃん、あんた一体、何言ってんだ?」
「インディさん!上の階へ行くのは一旦、保留です!下の階へ行く階段を探しましょう!きっとそこにヴァルキュリエ・ソードがあります!」
最終兵器クラスの武器ならば、既にセイクリッド・シザーは持っている。
だがそれは王女では装備できないし、アイテムとして使用した時の光属性最強攻撃魔法は、敵によっては通じない。
メトロポラリス編のボスなど、その "通じない敵" の典型だ。ヴァルキュリエ・ソードは是非とも手に入れておきたい。
幸い、裏牢獄のモンスターレベルは、同じ階の天空牢獄と全く一緒だ。現在地は天空牢獄で言えば "下から2番目" のフロアだから、私とインディなら何とかなる。
「……そうか。神託の乙女であるシェリーロワールの姫君がそう言うなら、行ってみる価値はありそうだな」
あ、神託の乙女、メトロポラリス編の人でも知ってるんだ。
本来ならクレッセントノヴァ編で初めて出て来る設定のはずなんだけどなー。だが、そのおかげですんなり信じてもらえて助かった。
「じゃあ、とりあえずダンジョン探索を続けましょうか」
そう言って歩き出そうとした瞬間、耳が奇妙な音を拾った。
何かが壁の向こうから、ガ、ガ、ガ、ガ……ッと近づいて来るような……
「アリーシャちゃん、退がれ!何か来る!」
インディが私に注意を促した次の瞬間、裏牢獄と天空牢獄を隔てる壁が轟音とともに崩れ落ちた。
そして、ぽっかり開いた穴から姿を見せたのは……
「電脳機神兵……!? どうしてココに……っ!?」
「退がってな、アリーシャちゃん。マイスター・スキル其の陸!」
上の階に通じる階段を見つけられないまま、私たちは何度もモンスターに遭遇した。
インディは驚いたことに、ブルー並の……いや、下手をするとブルー以上のマイスター・スキルの持ち主だった。
「よしッ、と。一丁上がり!もう大丈夫だぜ、アリーシャちゃん」
「ありがとうございます。すみません、すっかりお任せしちゃって」
「いやいや。他のモンスターや無法者の時には、だいぶ助けてもらってるし、お互い様だろ」
明るく笑ってインディは、機械系モンスターの "なれの果て" をポケットに詰め込んでいく。
「その部品、後で何かに使うんですか?」
「ああ。倅に調べさせりゃ、何か分かるかも知れねぇし、リサイクルして何かに使えるかも分からんからな」
「息子さんがいらっしゃるんですか」
「ああ。息子が2人に、娘が1人。俺に似てヤンチャなのが2人と、俺に似ずにエラく優等生に育ったのが1人、な」
ん……?その家族構成、どこかで……。
「お……。宝箱があったぜ。どうする、アリーシャちゃん。開けていくかい?」
ここが何階なのかはよく分からないが、私たちが今いるフロアは、床や壁に穴も無く、宝箱もたくさん設置されている。
……ひょっとして、かなり下の方の階まで戻されてしまったのだろうか……?
「もちろん開けていきます!宝箱の中身チェックは、ダンジョン探索の基本ですし!」
何か役立つアイテムが入っているかも知れないし、中身によっては、今どの辺りにいるか分かるかも知れない。
どの宝箱に何を入れたか、全部をいちいち覚えているわけではないが、重要アイテムを入れた場所は、何となく覚えている。
「おっ、これは…………って、バナナの皮じゃねーか!誰だ、こんなゴミを宝箱に入れたのは!」
……ゴメンナサイ。それ入れたの、私の幼馴染です。
って言うか創君、バナナ仕込むの好きだな。確かコレを仕込んだ時も、すっごくイキイキしてたよね。
『苦労して辿り着いた、こんな深いダンジョンの奥で、出て来たのがバナナの皮だった時のガッカリ感……良くね?しかもコレ、実はボスにも効く超有能なアイテムなんだぜ!』
そこまで思い出して、私はハッとした。
――こんな深いダンジョンの奥……。
……そうだ。ここは、普通ならボス戦後のエクストラ・ダンジョンとして訪れる、特別な場所だ。
今いるここは、階層自体はかなり下の方にある。
だが、内壁により完全隔離されていて、天空牢獄の同一フロアからは行き来することができない。
相当な上層階から、ひたすら階段を下りて来ることでしか辿り着けない、とても意地悪な隠しダンジョン……通称 "裏牢獄" だ。
「そっか……。床の穴から落ちたら、偶然 "裏牢獄" の方に来ちゃったんだ……。ってことは、壁の向こうは天空牢獄の第二層か……」
私は天空牢獄と裏牢獄を隔てる壁をコンコン叩いてみる。
「ん……?ってことは、ブルーの所へ行くには、一旦、天空牢獄の上層階に行かなきゃならなくない?一旦、十数階上がってから、また十数階下りることに……。しかも上層階って、モンスターのレベル、ヤバいんじゃ……」
思考を整理するにつれ、だんだん血の気が引いていく。
マズい。これ、思っていた以上に厄介な状況だ。
「いや、待って。エクストラ・ダンジョンなんだから、最下層にはレアアイテムがあるはず……」
バナナの皮は、裏牢獄で最も価値ある宝の前の "フェイント" だ。
そして、このエクストラ・ダンジョンで最も価値ある宝とは……
「ヴァルキュリエ・ソードじゃん!この下の階のどこかに、ヴァルキュリエ・ソードがあるんじゃん!」
「は?アリーシャちゃん、あんた一体、何言ってんだ?」
「インディさん!上の階へ行くのは一旦、保留です!下の階へ行く階段を探しましょう!きっとそこにヴァルキュリエ・ソードがあります!」
最終兵器クラスの武器ならば、既にセイクリッド・シザーは持っている。
だがそれは王女では装備できないし、アイテムとして使用した時の光属性最強攻撃魔法は、敵によっては通じない。
メトロポラリス編のボスなど、その "通じない敵" の典型だ。ヴァルキュリエ・ソードは是非とも手に入れておきたい。
幸い、裏牢獄のモンスターレベルは、同じ階の天空牢獄と全く一緒だ。現在地は天空牢獄で言えば "下から2番目" のフロアだから、私とインディなら何とかなる。
「……そうか。神託の乙女であるシェリーロワールの姫君がそう言うなら、行ってみる価値はありそうだな」
あ、神託の乙女、メトロポラリス編の人でも知ってるんだ。
本来ならクレッセントノヴァ編で初めて出て来る設定のはずなんだけどなー。だが、そのおかげですんなり信じてもらえて助かった。
「じゃあ、とりあえずダンジョン探索を続けましょうか」
そう言って歩き出そうとした瞬間、耳が奇妙な音を拾った。
何かが壁の向こうから、ガ、ガ、ガ、ガ……ッと近づいて来るような……
「アリーシャちゃん、退がれ!何か来る!」
インディが私に注意を促した次の瞬間、裏牢獄と天空牢獄を隔てる壁が轟音とともに崩れ落ちた。
そして、ぽっかり開いた穴から姿を見せたのは……
「電脳機神兵……!? どうしてココに……っ!?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
39
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる