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勝負

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「レオ・・・お前・・。今回は偉そうな貴族が出てくる本を読んだのか?」

「はい・・・。ごめんなさい。またやってしまいました」

「はぁ・・・。その貴族は主人公では無いのだろう?なぜ主人公ではなくそっちに引っ張られた?」

「・・・主人公より印象に残っていたから・・・・。」

んーーーーーー?どーゆーことカナ?なんか王子様(あ、俺様のほうね)俺様じゃなくなってる?お兄さんの前だからってわけではなさそうだし。雰囲気が柔らかくなってる気がする。

とりあえず近くのカフェに入った私たちは、さっきの出来事をお兄さんに説明した。お兄さんは、途中から呆れ顔になっていき、最後には盛大なため息をついていらしゃった。

澪が不思議そうにしていると、それに気づいたお兄さんが説明をしてくれた。

「レオは読んだ本の登場人物にひっぱられて、その登場人物と似たような言動をとってしまうんです。今までは城内でだけでしたので周りの者は暖かい目で見守ってくださいましたが・・・。まさか外でやってしまうとは。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。レオ、お前も謝れ!」

「お兄さんごめんなさい。そっちの白いもふもふさんもごめんなさい。」

王子はすっかりシュンとしてしまっている。こんな美少年が自分の前でシュンとしてると私がいじめたみたいだ。やめろ!涙をためるな!罪悪感でこっちが泣きそうになる!

「大丈夫ですからそんなにシュンとしないでください。謝っていただいたのでもう大丈夫です。えぇーーと・・・・、そうだ、自己紹介がまだでしたね。私は澪。こいつはシロ。2人で旅をしています。とは言っても、旅は最近出発したばかりですし、シロともここに来る前に会ったばかりですけどね。」

「私はこの国の第一王子、リアム・リュスィオールです。」

「ぼくは第二王子、レオン・リュスィオールです。」

「ミオさんは今おいくつなんですか?」

「16です。」

「では私と同じ歳ですね!そうですか・・・16・・・。ミオさんはこの国にはどのくらい滞在予定ですか?」

「ミオでいいですよ。そうですねー。私は死ぬか飽きるまでは旅を続けるつもりなので一つ一つの国をゆっくりと見て回る予定です。なので特には決めてないんですけど・・・、飽きるまで・・かな。」
前から考えてたんだけど、多分魔法を使えば寿命を伸ばすことも出来るんだよな。だから本当にゆっくりのんびり飽きるまでって感じでいこうと思ってる。

「ではミオ、今からとなると一年だけとなりますが、学園に通ってみませんか!試験を受けてもらわなくてはいけませんが、まだあと三ヶ月あります。どうですか?」

学園か。貴族たちが微笑みあってるだけの学校ならお断りだけど・・、んー。
『シロー学園だってー、行きたい?』
『どっちでもいいよ。』
『どっちでもいいよがいちばん困るんだけどな。』

「では、気が向いたら試験を受けに行ってみます」

「わかりました。学園は王都にあります。試験対策は本屋に行けば問題集が売ってるのでぜひ見てみてください。」

試験か。日本と同じ感じならいいんだけど。この世界の歴史とかが出るなら勉強しないとだな。


澪たちは王子たちと別れたあと、まだ時間があったので神殿に行くことにした。

「結局どっちも行けたね。」

「うん。楽しみだ。」

神殿まではそう遠くなく、歩いて十分くらいで着いた。中に入ると、今回も他に人は見当たらず、アレイの声だけが響いた。
「澪!久しぶりだね。」

「久しぶり。今日は新しい仲間を連れてきたよ。」

「はじめまして。シロです。」

「おー。よろしくね。・・・ねえ、触ってもいいかな?」

「え、ああ、まあいいけど。」

「やったー!」
アレイは目を輝かせてシロに飛びついた。

うんうん。仲良くなれそうでよかったよかった。

一通り報告し終えて、外に出たところで、シロの頭の中でアレイの声が聞こえた。
『澪はわたしのだからね。』
それだけ言ってあとは何度声をかけようが何も聞こえなかった。
その後シロは宿に着くまでずっと不機嫌そうだったが、澪が理由を聞いてもますます機嫌が悪くなるだけだった。

「どーよこのパジャマ!かわいいでしょ!」
澪はさっき買ったばかりの厚手のズボン付きワンピースのパジャマを着てくるりと一回転して見せた。いろいろあったが、かわいい服をたくさん買うことが出来て澪はご機嫌だ。

「うん、かわいい!日中のシンプルな服も似合うけどかわいいのもやっぱいいね。」

「ありがとう。あー、そういえばさ、学園って寮に入らなきゃいけないらしいけど、どうする?男の姿のままじゃ無理よねさすがに。ばれたとき面倒。」

「じゃあ女の姿で行けば?あの王子には内緒でさ。いつ気がつくか予想しようよ。」

「シロと名前で分かっちゃうでしょ。」

「僕は姿を変えればいいし、名前も変えちゃえばいいんじゃない?」

「それは・・・、卒業まで気が付かないんじゃない?」

「その時は卒業の日に盛大に種明かしをしてあげよう。」

「ほぅ・・。よいではないか。」

その夜、宿のある部屋では女と男の不気味な笑い声が夜遅くまで響きわたっていた。


三ヶ月後
澪たちは学園の試験を受けに王都に来ていた。澪は書類には本名を書いたが、受かった場合は生徒には本名を隠してエクラという偽名を伝えるということもしっかり許可を取っておいた。
そして、シロはというと・・・。

『ねえシロ。これさ、絶対気づかないよね、王子。』

『うん。気づいたら怖いよ逆に。』

『ね。だって私は女に。シロは私のピアスになってるんだもん。』

『我ながらよく考えたと思うよ。これならいつでも澪と一緒にいられる。』

『私の予想が半年で、シロは最後まで気づかない、でいいんだよね?』

『うん。絶対気づかないって思ってるのに半年でいいの?』

『だって一緒だと面白くないじゃん?』

『まあね。』

試験は筆記だけ。科目は数学、理科、歴史のみ。数学と理科は日本と同じだったので歴史だけ勉強してきた。魔法の試験とかあるのかと思ったけどそれは無いらしい。学園は15歳から17歳の子だけが入学することが出来る。それ以上でもそれ以下でもだめだ。しかし、年齢だけクリアしていればどの学年からでもスタートできる。たとえば15歳の子がいきなり3年生とか、逆に17歳の子が1年生になったりもできる。なので、卒業式で1年生の生徒が卒業ということもある。しかし、それは可能というだけであって、普通は15歳のときに1年生になってそのまま3年後に17歳で卒業するのがほとんどだ。
澪は今年で17になるが、王子が今3年生なので3年生になるための試験を受けるつもりだ。ちなみに今年3年生になる試験を受けるのは澪だけである。

結果発表は明日。試験を終えた澪たちはとりあえず宿に帰ることにした。

「じゃあ行ってくるね。」
「んー。」

宿に帰ると、澪はそう言って瞬間移動でどこかに行ってしまった。この三ヶ月間、澪はずっと勉強していたわけではない。思いつく限りの魔法をどんどん作っていったり、学園に入るためのお金を集めたり、今日みたいに突然どっかに出かけたり毎日自由に楽しく過ごしていた。
シロは1度、どこに行っているのか聞いてみたがまだ内緒らしい。

「毎回毎回どこに行っているのやら。」

溜息をつきながら、シロは神殿に向かった。シロとアレイはなんだかんだ言って仲良くなり、最近ではよく一緒にお酒を飲みながら澪の話をしている。

そして、澪が試験に受かるのかという心配をする者が一人もいないままあっという間に一日がたった。

『さあ、シロさん。運命の結果発表だね。』

『そうですね、澪さん。心配はしていませんけどね。』

この学園、実はこの世界ではトップクラスのレベル。入るのは簡単ではない。今日この場にいるものは緊張で震えている者ばかりだ。

そして、掲示板にかかっていた布が取り払われ、3年生の部にはひとつの名前。

『よかったー。落ちてたらどうしようかと思ったよ。』

『おめでとう。エクラさん。』

『勝負開始だよ、シロさん。』
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