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CHAPTER02: 捜索
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目の前で信じられない事ばかり起きたので、話を整理する所から始めなくてはならない。
時は新元号が施行されて、平成から令和へと移り変わったばかりの二〇一九年九月。
場所は生まれた頃からさして変わり映えのしない景色が続くだけの街、C県S市。
私、逢瀬 雫を怪人の手から救ったジャスティス・ファイヤーと名乗る正義の執行人は、人間と怪人とを見分ける私の能力を買って協力を申し出てきた。
普通であればそんな話は無視して、そのまま日常へと戻ってしまいそうなものだが…私は、彼が差し伸べた手をそのまま握り返した。
ようやく気持ちが落ち着いてきたので、振り返ってみたが纏めると大体そんな所だろうか。
「私がその…人間に擬態した怪人を見つけたとしてどうするつも…」
「君の目が見つけ出して、私が戦って仕留める」
私が言い切る前に言葉が返って来た。その言葉の通りに事を進めるという流れは分かったのだが、私は肝心の手段が気になった。
これから醜悪な怪人達と戦っていくにあたって戦力を把握しておいた方が良いと思ったからだ。
「…武器は、これだけだ。炎の必殺剣、ジャスティス・ブレード」
そう言って彼が先程まで怪人に向けて振り下ろしていた長さ一メートル程の剣を差し出す。
「付いてるんだ…名前」
そんな耳を覆いたくなるような恥ずかしい呼称がついているとは知らなかった。
それは至る所にファイヤーパターンが刻み付けられている彼の防具と比べると大分飾りっ気の無い簡素な得物に見えた。
黒い柄の部分から伸びている銀色の刀身の所々には怪人の返り血である赤黒い飛礫がこびり付いている。
ジャスティス・ブレードはその見た目通りに剣の性質を裏切る事無く、標的を斬り離す事を目的とした近接戦闘用の武器だと理解する。
彼曰く、以前は炎の必殺剣という呼称を裏切らない機能を有していたのだが、それは長い戦いの中で失われてしまったらしい。
「…ねえ、フォームチェンジとかって出来ないの?」
「フォームチェンジ―?」
「正義の味方のお約束でしょ?色や姿を変えてのパワーアップ。力任せの相手にはスピードで撹乱し、超スピードの相手には研ぎ澄まされた感覚で捉える―」
フォームチェンジ、それは古くは昭和の時代から始まって現代のヒーローにまで受け継がれ、今でも当たり前の様に行われているヒーローの常套手段である。
相手の能力を把握し切った所で、自身の戦闘スタイルを変えて、最適解を叩きつけるというどちらが悪党なのか分からなくなる冴えたやり方である。
しかし話を進めていくと、どうやらこの正義の執行人はジャスティス・ブレードという一振りの剣だけでこれまで戦い続けていたという事になる。
近接戦闘の武器しか持っていないとなれば、選択の幅は狭まり戦略は大分限定されてしまう。
そう感じた雫から他に手段は無いのかという質問が飛んで来るのは当然の事だった。
「しかし、雫―」
「…なに?」
「正義とは、不変の存在であるべきだと思わないか?」
「…出来ないなら出来ないって言って」
淡い期待を抱いたが、どうやらそういう真似はしない主義…というより出来ないからそういう主義へと至ったらしい。
その後も私は思いつく限りのヒーローものの定石を彼にぶつけてはみたのだが結果は同じだ。
「それは余りにも卑怯だ。正義の執行人である私のやる事では無いな」といった類の言葉が返って来るだけだ。
「専用のバイクとかってあるの?」と聞いただけでこの体たらくなのである。
この私ですら自分専用の自転車を持っているというのに、だ。
別に何も今直ぐに五体のメカが変形合体するジャスティス・ロボを呼べとは言ってない。
「はあ…他に何か出来る事は?」
「LINEをやってる。君はどうだ?」
「じゃあ、交換…しておく?」
「必要以上に不安がらせる心算は無いが、君の能力を恐れて怪人が襲い掛かって来るかもしれない。連絡手段はあった方が良いだろう」
確かに、泣いて叫べば現れるヒーローなんて番組の中だけだろうし、そんな表現は前時代的だ。今時では画面の中でもそうは見掛けない。
私と彼とで互いに端末を振り合って正義の執行人を友達として追加する。
まさかヒーローの口から「君LINEやってる?交換しよ?」と言われるとは予想を大分裏切られたが、そこまで大暴投という訳でも無く割と現実的な提案だった。
彼の見てくれや信念は大分前時代的なものだと感じ取ってはいたが、こうしてスタンプで挨拶してくる所を見るにそこそこ現代にも適応している様だった。
一通りの質疑応答を終え、連絡体制を整えた所でその日は別れる事とした。
怪人に襲われてから三日程経ったが、幸いあの場には加害者と被害者と正義の執行人しか居なかったので、メディアやネットに取り上げられて騒ぎが大きくなるという事は無かった。
他人の噂話の種になる様な事は死んでも避けたいと思っているので胸を撫で下ろす。もし、そんな真似をやる時があるとすれば、それはこの世から綺麗さっぱりと消え去る時だ。
そんな事を考えながら画面を眺めていると通知が割って入って来る。メッセージの差出人は交換してからまだ一度もやり取りの無かった相手。
その内容はジャスティス・ファイヤーからの提案で、私を襲った怪人を捜し出す為にパトロールに同行して欲しいというものだった。
サラリーマンの怪人、写真などの証拠を手元に残している訳ではないが、あの擬態の顔や声は自身の記憶が良く覚えている…
スケジュール帳を起動してシフトを確認すると明日は午前中にアルバイトが終わる日だった。
………
待ち合わせ場所に辿り着いたタイミングで丁度通知音が鳴った。
表示されたメッセージには「正義の時間だ」と書かれていたので、取り敢えず既読スルーをしてアプリを落とす。
S駅を北口から出て、直ぐ傍にある広場と言えば此処らの待ち合わせ場所として通りが良い。
広場の真ん中にある円形のオブジェ、その中心から延びる鉄柱には大きな時計が取り付けられており、それが良い目印になる為、県外から来る人間にも優しい。
「雫、顔を合わせるなりですまないが…」
その時計の下で端末を弄くり回していると、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「決め台詞を既読スルーされるのは流石の私も傷付く」
その言葉を受けて画面から顔を上げると、寸分の狂いも無く時間通りに待ち合わせ場所に現れたジャスティス・ファイヤーが目の前に立っていた。
あの日見た正義の執行人は決して自身の作り上げた幻などでは無く、数日前に怪人を追い払ったあの姿のまま確かに実在していた。
漆黒のマントを風になびかせながらも、赤を基調とした荘厳なる甲冑を着こなし、兜の頂に座している装飾が強い輝きを放っている。
「…既読スルー程度でメンタルに重傷を負う繊細な神経の持ち主には到底見えないんだけど?」
雫が呆れる様な視線を突きつけながらも、彼に言葉を向ける。
「…む?どうした?そんな表情を浮かべて、この私に何処か可笑しい所でもあるのか?」
「ねえ、それ本気で言ってる?」
「ああ、正義の執行人としてこれ以上は無い相応しい格…」
ジャスティス・ファイヤーが自身の身だしなみを確かめる素振りを見せたその瞬間、彼女の声が割って入った。
「可笑しい所しか無いでしょ!?あの時は土地勘の無いご当地ヒーローが路地裏に迷い込んだだけだと思っていたのに正義の執行人って常にそうなの!?こういう時は変身を解除して来るとかそういう発想は…!」
「正義の執行にTPOは無い」
今度は逆に、取り乱す彼女を遮る様に彼が簡潔に答えた。
それは正義を貫き通す者が放つ、確かな信念を帯びた言葉だった。この場合はそれ故に性質が悪いのだが。
「それに雫、君だって休日なのにも関わらず制服じゃないか」
「それは…私服だと、バイト先で色々言われて面倒だからこうしてるだけ!」
しまった。目立ちたくは無かったが、どうしてこんな頓珍漢な格好をしている相手に制服というフラットな記号を言及されなくてはならないのかと思うと大声が上がってしまった。
「…はぁ」
融通が効きそうにもない彼の言葉を受けて、彼女は深い溜息を吐きながらもバッグから折り畳み傘を取り出して手渡す。
怪人捜しを始める前にせめてその派手なマスクだけでも隠したい。
分かっている。この衆人監視の中で誰の目にも留まらずに完全にカバー出来るだなんて微塵も思ってはいない。
そんな事は分かっているが、これからやる事を考えると他人の目を引く事は極力避けたい。
最悪、見つかってしまったら高校でやる文化祭の出し物だとか、C県S市で新たに生まれた現在売り出し中のローカルヒーローです皆宜しくね!だとか何とか言って誤魔化すしかない。
「雫、正義の執行人である私がどうしてこう、こそこそと立ち回らなくてはならないのだ?」
傘と物陰を巧く駆使しつつ、独特の軌道を描きながら後から尾いて来る正義の執行人の姿。
「目立つから。悪目立ちするから」
それに対抗する様にツカツカと足早に歩を進める彼女が彼を言葉で冷たく切り捨てる。
「わっ、わる…?それは即ち悪ッ!?私が悪人だとでも言うのかッ!?」
一刀両断されたジャスティス・ファイヤーは藻掻き苦しんでいるが、雫の歩調の勢いは緩む所かさらに増した。
「…何で四六時中そんな格好してて今まで捕まらなかったのよ?」
「私の存在そのものが正義だからだッ!!」
「……」
馬鹿に付ける薬が無い様に掛ける言葉も無くなってきたので最短距離を真っ直ぐに行く。
数分程歩き続けた所で人通りの多いメインストリートから外れた路地に出た。
取り敢えず一安心、インスタ映えを狙う層に捕まって玩具にされなくて本当に良かった。
そんな彼女の気持ちも露知らず、ジャスティス・ファイヤーが静かに口を開いた。
「雫、今は別にこのままでも構わないのだが、怪人を見つけたその時は…」
先程とは違う冗談交じりでは無い正義の執行人としての声。
その重圧からマントの内側でジャスティス・ブレードを力強く握り締めている事が視認せずとも十二分に伝わってくる。
「…分かってる。そうなったら傘から出て好きな様に動いてしまって構わない」
彼の感情、その気迫に応える様に、雫も言葉を返した。
「君の目が標的を捉え、私の手で討つ。この街の裏側に潜む確かな悪を、だ―」
………
「見つからない、な」
備え付けてある緑色のベンチに掛けた正義の執行人が、そう零しながら自販機で買ってきたペットボトルの緑茶を開栓して口に含む。
「…見つからない、ね」
ジャスティス・ファイヤーの張りの無い声のトーンに合わせる様にして、雫も冴えない声を上げた。
彼から受け取った飲料のプルタブに指を掛けて引き上げると、プシュッという炭酸飲料特有の耳障りの良い音がした。
S駅の周辺を歩き回って三時間。特に結果が結びつかなければこうもなるのが自然な流れか。
怪人捜索に乗り出したばかりの二人の気持ちはすっかりと意気消沈してしまって、流石に歩き疲れたので休憩を取る事にした。
「飲む時くらいは変身解除すれば?」
二人分くらいの距離を開けて隣に座っている突っ込み所満載の相手に雫が茶々を入れる。どう見ても茶々が入っていきそうには無い絵面だからだ。
「断る。正義の執行に…」
「TPOは無い、でしょ?はいはい…」
見た目も信念も暑苦しい相手に改善を求めても無駄だったという事に途中で気付いて、彼女は再び缶を傾ける。九月とはいえまだ暑い。
こういったその月のイメージを裏切る様な気候に巡り合う度に、四季という枠に組み込まれていった暦には、今一度綺麗に解散して貰って新たに再編成される必要がある様に思う。
そんな事に思考を巡らせていると、お茶を飲み干したジャスティス・ファイヤーが雫へと話し掛けてきた。
「雫、この前の怪人でなくても良い。これまでに擦れ違ってきた中で、妙に目立っていたり少しでも怪しそうな相手は見当たらなかっただろうか?」
「今、こうして目の前に居る相手が痛いくらいに悪目立ちしてて、ぶっちぎりで怪しいって事以外は特に何も…」
「……」
「冗談はおいといて…結構ムラが有るかな。街中歩いていても視えない日もあるから」
「そうか。そういうものか―」
「ねえ、アナタも昔は見分ける事が出来たの?人間と人間に擬態している怪人とを」
「そうだな…」
一度呼吸を置いてから、彼は何処か遠くへと離れてしまった景色を懐かしむ様に話を続けた。
「昔は私にも視えていたんだ。確かな悪のモデルが溢れていたからな…私は、ただそれを追いかけて仕留めるだけで良かった。しかし…戦いの中で私の悪を捉える能力は衰えてしまった」
「…そう、なんだ」
本人もそれ以上は言いたくは無さそうだったので深く踏み込む気にはなれなかった。
私が自分の目の性質に対して確証を持っていないのと同じ様に、彼も何故そうなってしまったのか分からず苦しんでいる様に見えたからだ。
「だから、君の目が必要なんだ。君が指し示してくれなければ、私はこの手で怪人を葬り去る事が出来ない…」
ふと、彼に目をやるとジャスティス・ブレードの刀身を見つめながらも、自身の不甲斐無さに憤りを感じているという事がひしひしと伝わってきた。
私が期待に応えられていれば、彼も此処まで肩を落とす事も無かっただろう。
「ごめん…見つけられなくって」
思うよりも先に、雫の口からは言葉が自然と漏れ出していた。
明確な悪役が存在しなければ正義のヒーローは成り立たない。
散々と使い古されて来た図式だが、それが覆る事は決して無い。
令和元年、九月の今日、C県S市はヒーローを必要としないくらいには平和だったのだ。
………
二、三十分休憩を取った後、最後にもう一度だけと、一時間程歩き回って再び怪人を捜す事にした。
私も、どんな小さな事でも見落しが無い様にと注意深く目を凝らしてはいたのだが、残念な事に結果は奮わなかった。
「それじゃあ、今日はここまでで」
「…そうだな。また予定を合わせて付き合って貰えると助かる」
互いに直接口には出す事は無かったが、二人の胸の内に残ったのは怪人を一人も見つける事が出来なかったという事実からなる虚無感だけだ。
ジャスティス・ファイヤーと話を着けて、歩いてきた道をそのまま引き返す。
途中、話しても話さなくても良い様なやりとりを何度か交わしたが、あまり覚えていない。
気が付くと待ち合わせ場所の駅前の広場まで戻って来ていた。
鉄柱に取り付けられた時計の針は既に六時を指しており、辺りは足早に歩を進めて帰路を急ぐ人達で溢れていた。
そんな慌ただしさの中に一際目立つ大きな人混みが場を賑わせていた。
丁度ジャスティス・ファイヤーと別れようとした所で、拡声器を通した声が耳に入ってくる。
「いいですか?良く聞いて下さい。この情報過多の現代社会に晒され、擦り切れてしまった貴方を救う方法はたった一つしかありません!」
始めはストリートミュージシャンの路上ライブで出来た人だかりかとも思ったが、言葉を拾うにどうも方向性が違う。
街頭演説という単語が脳裏を掠めるが、S市の市長選は今年の四月の出来事で選挙のシーズンからは大きく外れている。
となると路上販売か、新興宗教の勧誘か、いやどの可能性にしたってこの人の集まりようは不自然だ。
興味を抱いて騒ぎの中心へと目をやる。すると、人混みを掻い潜ったその先に立っている者は一人の、一人…?いや、其処に立っているのは本当に人なのだろうか…
自身の視覚を通して、現実から剥離した世界の裏側からの歪な情報が頭に直接流れ込んで来る。あれは、あの形は、まさか―!?
「ジャスティス・ファイヤー…」
こうして視認出来る今でも怪人の存在を疑っているのだろうか。視線を逸らせないまま声だけが漏れる。
「どうした?PASMOのチャージなら今終わった所だが?」
「今日はもう、終わりにしようって言ったけど…」
券売機から戻って来たばかりの彼は目を見開いたまま、身体と声とを震わせている雫のその様子から異変を察知する。
「雫…?怪人を、見つけたのかッ!?」
ジャスティス・ファイヤーの問いに対して、彼女が無言のまま頷く。
「この前取り逃した相手は昆虫の姿をしていたと言っていたが…今は、何が視えている?」
「仏様…私には、大きな仏像が視える」
「仏…?仏の怪人だとッ!?」
新たな怪人が二人の前にその姿を現した。彼女の視覚が捉える人ならざる者の輪郭。雑踏の中に聳え立ち雄弁に語るソレは金色に輝く仏の御姿をしていた。
時は新元号が施行されて、平成から令和へと移り変わったばかりの二〇一九年九月。
場所は生まれた頃からさして変わり映えのしない景色が続くだけの街、C県S市。
私、逢瀬 雫を怪人の手から救ったジャスティス・ファイヤーと名乗る正義の執行人は、人間と怪人とを見分ける私の能力を買って協力を申し出てきた。
普通であればそんな話は無視して、そのまま日常へと戻ってしまいそうなものだが…私は、彼が差し伸べた手をそのまま握り返した。
ようやく気持ちが落ち着いてきたので、振り返ってみたが纏めると大体そんな所だろうか。
「私がその…人間に擬態した怪人を見つけたとしてどうするつも…」
「君の目が見つけ出して、私が戦って仕留める」
私が言い切る前に言葉が返って来た。その言葉の通りに事を進めるという流れは分かったのだが、私は肝心の手段が気になった。
これから醜悪な怪人達と戦っていくにあたって戦力を把握しておいた方が良いと思ったからだ。
「…武器は、これだけだ。炎の必殺剣、ジャスティス・ブレード」
そう言って彼が先程まで怪人に向けて振り下ろしていた長さ一メートル程の剣を差し出す。
「付いてるんだ…名前」
そんな耳を覆いたくなるような恥ずかしい呼称がついているとは知らなかった。
それは至る所にファイヤーパターンが刻み付けられている彼の防具と比べると大分飾りっ気の無い簡素な得物に見えた。
黒い柄の部分から伸びている銀色の刀身の所々には怪人の返り血である赤黒い飛礫がこびり付いている。
ジャスティス・ブレードはその見た目通りに剣の性質を裏切る事無く、標的を斬り離す事を目的とした近接戦闘用の武器だと理解する。
彼曰く、以前は炎の必殺剣という呼称を裏切らない機能を有していたのだが、それは長い戦いの中で失われてしまったらしい。
「…ねえ、フォームチェンジとかって出来ないの?」
「フォームチェンジ―?」
「正義の味方のお約束でしょ?色や姿を変えてのパワーアップ。力任せの相手にはスピードで撹乱し、超スピードの相手には研ぎ澄まされた感覚で捉える―」
フォームチェンジ、それは古くは昭和の時代から始まって現代のヒーローにまで受け継がれ、今でも当たり前の様に行われているヒーローの常套手段である。
相手の能力を把握し切った所で、自身の戦闘スタイルを変えて、最適解を叩きつけるというどちらが悪党なのか分からなくなる冴えたやり方である。
しかし話を進めていくと、どうやらこの正義の執行人はジャスティス・ブレードという一振りの剣だけでこれまで戦い続けていたという事になる。
近接戦闘の武器しか持っていないとなれば、選択の幅は狭まり戦略は大分限定されてしまう。
そう感じた雫から他に手段は無いのかという質問が飛んで来るのは当然の事だった。
「しかし、雫―」
「…なに?」
「正義とは、不変の存在であるべきだと思わないか?」
「…出来ないなら出来ないって言って」
淡い期待を抱いたが、どうやらそういう真似はしない主義…というより出来ないからそういう主義へと至ったらしい。
その後も私は思いつく限りのヒーローものの定石を彼にぶつけてはみたのだが結果は同じだ。
「それは余りにも卑怯だ。正義の執行人である私のやる事では無いな」といった類の言葉が返って来るだけだ。
「専用のバイクとかってあるの?」と聞いただけでこの体たらくなのである。
この私ですら自分専用の自転車を持っているというのに、だ。
別に何も今直ぐに五体のメカが変形合体するジャスティス・ロボを呼べとは言ってない。
「はあ…他に何か出来る事は?」
「LINEをやってる。君はどうだ?」
「じゃあ、交換…しておく?」
「必要以上に不安がらせる心算は無いが、君の能力を恐れて怪人が襲い掛かって来るかもしれない。連絡手段はあった方が良いだろう」
確かに、泣いて叫べば現れるヒーローなんて番組の中だけだろうし、そんな表現は前時代的だ。今時では画面の中でもそうは見掛けない。
私と彼とで互いに端末を振り合って正義の執行人を友達として追加する。
まさかヒーローの口から「君LINEやってる?交換しよ?」と言われるとは予想を大分裏切られたが、そこまで大暴投という訳でも無く割と現実的な提案だった。
彼の見てくれや信念は大分前時代的なものだと感じ取ってはいたが、こうしてスタンプで挨拶してくる所を見るにそこそこ現代にも適応している様だった。
一通りの質疑応答を終え、連絡体制を整えた所でその日は別れる事とした。
怪人に襲われてから三日程経ったが、幸いあの場には加害者と被害者と正義の執行人しか居なかったので、メディアやネットに取り上げられて騒ぎが大きくなるという事は無かった。
他人の噂話の種になる様な事は死んでも避けたいと思っているので胸を撫で下ろす。もし、そんな真似をやる時があるとすれば、それはこの世から綺麗さっぱりと消え去る時だ。
そんな事を考えながら画面を眺めていると通知が割って入って来る。メッセージの差出人は交換してからまだ一度もやり取りの無かった相手。
その内容はジャスティス・ファイヤーからの提案で、私を襲った怪人を捜し出す為にパトロールに同行して欲しいというものだった。
サラリーマンの怪人、写真などの証拠を手元に残している訳ではないが、あの擬態の顔や声は自身の記憶が良く覚えている…
スケジュール帳を起動してシフトを確認すると明日は午前中にアルバイトが終わる日だった。
………
待ち合わせ場所に辿り着いたタイミングで丁度通知音が鳴った。
表示されたメッセージには「正義の時間だ」と書かれていたので、取り敢えず既読スルーをしてアプリを落とす。
S駅を北口から出て、直ぐ傍にある広場と言えば此処らの待ち合わせ場所として通りが良い。
広場の真ん中にある円形のオブジェ、その中心から延びる鉄柱には大きな時計が取り付けられており、それが良い目印になる為、県外から来る人間にも優しい。
「雫、顔を合わせるなりですまないが…」
その時計の下で端末を弄くり回していると、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「決め台詞を既読スルーされるのは流石の私も傷付く」
その言葉を受けて画面から顔を上げると、寸分の狂いも無く時間通りに待ち合わせ場所に現れたジャスティス・ファイヤーが目の前に立っていた。
あの日見た正義の執行人は決して自身の作り上げた幻などでは無く、数日前に怪人を追い払ったあの姿のまま確かに実在していた。
漆黒のマントを風になびかせながらも、赤を基調とした荘厳なる甲冑を着こなし、兜の頂に座している装飾が強い輝きを放っている。
「…既読スルー程度でメンタルに重傷を負う繊細な神経の持ち主には到底見えないんだけど?」
雫が呆れる様な視線を突きつけながらも、彼に言葉を向ける。
「…む?どうした?そんな表情を浮かべて、この私に何処か可笑しい所でもあるのか?」
「ねえ、それ本気で言ってる?」
「ああ、正義の執行人としてこれ以上は無い相応しい格…」
ジャスティス・ファイヤーが自身の身だしなみを確かめる素振りを見せたその瞬間、彼女の声が割って入った。
「可笑しい所しか無いでしょ!?あの時は土地勘の無いご当地ヒーローが路地裏に迷い込んだだけだと思っていたのに正義の執行人って常にそうなの!?こういう時は変身を解除して来るとかそういう発想は…!」
「正義の執行にTPOは無い」
今度は逆に、取り乱す彼女を遮る様に彼が簡潔に答えた。
それは正義を貫き通す者が放つ、確かな信念を帯びた言葉だった。この場合はそれ故に性質が悪いのだが。
「それに雫、君だって休日なのにも関わらず制服じゃないか」
「それは…私服だと、バイト先で色々言われて面倒だからこうしてるだけ!」
しまった。目立ちたくは無かったが、どうしてこんな頓珍漢な格好をしている相手に制服というフラットな記号を言及されなくてはならないのかと思うと大声が上がってしまった。
「…はぁ」
融通が効きそうにもない彼の言葉を受けて、彼女は深い溜息を吐きながらもバッグから折り畳み傘を取り出して手渡す。
怪人捜しを始める前にせめてその派手なマスクだけでも隠したい。
分かっている。この衆人監視の中で誰の目にも留まらずに完全にカバー出来るだなんて微塵も思ってはいない。
そんな事は分かっているが、これからやる事を考えると他人の目を引く事は極力避けたい。
最悪、見つかってしまったら高校でやる文化祭の出し物だとか、C県S市で新たに生まれた現在売り出し中のローカルヒーローです皆宜しくね!だとか何とか言って誤魔化すしかない。
「雫、正義の執行人である私がどうしてこう、こそこそと立ち回らなくてはならないのだ?」
傘と物陰を巧く駆使しつつ、独特の軌道を描きながら後から尾いて来る正義の執行人の姿。
「目立つから。悪目立ちするから」
それに対抗する様にツカツカと足早に歩を進める彼女が彼を言葉で冷たく切り捨てる。
「わっ、わる…?それは即ち悪ッ!?私が悪人だとでも言うのかッ!?」
一刀両断されたジャスティス・ファイヤーは藻掻き苦しんでいるが、雫の歩調の勢いは緩む所かさらに増した。
「…何で四六時中そんな格好してて今まで捕まらなかったのよ?」
「私の存在そのものが正義だからだッ!!」
「……」
馬鹿に付ける薬が無い様に掛ける言葉も無くなってきたので最短距離を真っ直ぐに行く。
数分程歩き続けた所で人通りの多いメインストリートから外れた路地に出た。
取り敢えず一安心、インスタ映えを狙う層に捕まって玩具にされなくて本当に良かった。
そんな彼女の気持ちも露知らず、ジャスティス・ファイヤーが静かに口を開いた。
「雫、今は別にこのままでも構わないのだが、怪人を見つけたその時は…」
先程とは違う冗談交じりでは無い正義の執行人としての声。
その重圧からマントの内側でジャスティス・ブレードを力強く握り締めている事が視認せずとも十二分に伝わってくる。
「…分かってる。そうなったら傘から出て好きな様に動いてしまって構わない」
彼の感情、その気迫に応える様に、雫も言葉を返した。
「君の目が標的を捉え、私の手で討つ。この街の裏側に潜む確かな悪を、だ―」
………
「見つからない、な」
備え付けてある緑色のベンチに掛けた正義の執行人が、そう零しながら自販機で買ってきたペットボトルの緑茶を開栓して口に含む。
「…見つからない、ね」
ジャスティス・ファイヤーの張りの無い声のトーンに合わせる様にして、雫も冴えない声を上げた。
彼から受け取った飲料のプルタブに指を掛けて引き上げると、プシュッという炭酸飲料特有の耳障りの良い音がした。
S駅の周辺を歩き回って三時間。特に結果が結びつかなければこうもなるのが自然な流れか。
怪人捜索に乗り出したばかりの二人の気持ちはすっかりと意気消沈してしまって、流石に歩き疲れたので休憩を取る事にした。
「飲む時くらいは変身解除すれば?」
二人分くらいの距離を開けて隣に座っている突っ込み所満載の相手に雫が茶々を入れる。どう見ても茶々が入っていきそうには無い絵面だからだ。
「断る。正義の執行に…」
「TPOは無い、でしょ?はいはい…」
見た目も信念も暑苦しい相手に改善を求めても無駄だったという事に途中で気付いて、彼女は再び缶を傾ける。九月とはいえまだ暑い。
こういったその月のイメージを裏切る様な気候に巡り合う度に、四季という枠に組み込まれていった暦には、今一度綺麗に解散して貰って新たに再編成される必要がある様に思う。
そんな事に思考を巡らせていると、お茶を飲み干したジャスティス・ファイヤーが雫へと話し掛けてきた。
「雫、この前の怪人でなくても良い。これまでに擦れ違ってきた中で、妙に目立っていたり少しでも怪しそうな相手は見当たらなかっただろうか?」
「今、こうして目の前に居る相手が痛いくらいに悪目立ちしてて、ぶっちぎりで怪しいって事以外は特に何も…」
「……」
「冗談はおいといて…結構ムラが有るかな。街中歩いていても視えない日もあるから」
「そうか。そういうものか―」
「ねえ、アナタも昔は見分ける事が出来たの?人間と人間に擬態している怪人とを」
「そうだな…」
一度呼吸を置いてから、彼は何処か遠くへと離れてしまった景色を懐かしむ様に話を続けた。
「昔は私にも視えていたんだ。確かな悪のモデルが溢れていたからな…私は、ただそれを追いかけて仕留めるだけで良かった。しかし…戦いの中で私の悪を捉える能力は衰えてしまった」
「…そう、なんだ」
本人もそれ以上は言いたくは無さそうだったので深く踏み込む気にはなれなかった。
私が自分の目の性質に対して確証を持っていないのと同じ様に、彼も何故そうなってしまったのか分からず苦しんでいる様に見えたからだ。
「だから、君の目が必要なんだ。君が指し示してくれなければ、私はこの手で怪人を葬り去る事が出来ない…」
ふと、彼に目をやるとジャスティス・ブレードの刀身を見つめながらも、自身の不甲斐無さに憤りを感じているという事がひしひしと伝わってきた。
私が期待に応えられていれば、彼も此処まで肩を落とす事も無かっただろう。
「ごめん…見つけられなくって」
思うよりも先に、雫の口からは言葉が自然と漏れ出していた。
明確な悪役が存在しなければ正義のヒーローは成り立たない。
散々と使い古されて来た図式だが、それが覆る事は決して無い。
令和元年、九月の今日、C県S市はヒーローを必要としないくらいには平和だったのだ。
………
二、三十分休憩を取った後、最後にもう一度だけと、一時間程歩き回って再び怪人を捜す事にした。
私も、どんな小さな事でも見落しが無い様にと注意深く目を凝らしてはいたのだが、残念な事に結果は奮わなかった。
「それじゃあ、今日はここまでで」
「…そうだな。また予定を合わせて付き合って貰えると助かる」
互いに直接口には出す事は無かったが、二人の胸の内に残ったのは怪人を一人も見つける事が出来なかったという事実からなる虚無感だけだ。
ジャスティス・ファイヤーと話を着けて、歩いてきた道をそのまま引き返す。
途中、話しても話さなくても良い様なやりとりを何度か交わしたが、あまり覚えていない。
気が付くと待ち合わせ場所の駅前の広場まで戻って来ていた。
鉄柱に取り付けられた時計の針は既に六時を指しており、辺りは足早に歩を進めて帰路を急ぐ人達で溢れていた。
そんな慌ただしさの中に一際目立つ大きな人混みが場を賑わせていた。
丁度ジャスティス・ファイヤーと別れようとした所で、拡声器を通した声が耳に入ってくる。
「いいですか?良く聞いて下さい。この情報過多の現代社会に晒され、擦り切れてしまった貴方を救う方法はたった一つしかありません!」
始めはストリートミュージシャンの路上ライブで出来た人だかりかとも思ったが、言葉を拾うにどうも方向性が違う。
街頭演説という単語が脳裏を掠めるが、S市の市長選は今年の四月の出来事で選挙のシーズンからは大きく外れている。
となると路上販売か、新興宗教の勧誘か、いやどの可能性にしたってこの人の集まりようは不自然だ。
興味を抱いて騒ぎの中心へと目をやる。すると、人混みを掻い潜ったその先に立っている者は一人の、一人…?いや、其処に立っているのは本当に人なのだろうか…
自身の視覚を通して、現実から剥離した世界の裏側からの歪な情報が頭に直接流れ込んで来る。あれは、あの形は、まさか―!?
「ジャスティス・ファイヤー…」
こうして視認出来る今でも怪人の存在を疑っているのだろうか。視線を逸らせないまま声だけが漏れる。
「どうした?PASMOのチャージなら今終わった所だが?」
「今日はもう、終わりにしようって言ったけど…」
券売機から戻って来たばかりの彼は目を見開いたまま、身体と声とを震わせている雫のその様子から異変を察知する。
「雫…?怪人を、見つけたのかッ!?」
ジャスティス・ファイヤーの問いに対して、彼女が無言のまま頷く。
「この前取り逃した相手は昆虫の姿をしていたと言っていたが…今は、何が視えている?」
「仏様…私には、大きな仏像が視える」
「仏…?仏の怪人だとッ!?」
新たな怪人が二人の前にその姿を現した。彼女の視覚が捉える人ならざる者の輪郭。雑踏の中に聳え立ち雄弁に語るソレは金色に輝く仏の御姿をしていた。
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