魔法使いは自衛隊で無双したい

賽の目四郎

文字の大きさ
6 / 176

6◇自衛隊魔法

6◇自衛隊魔法
=============================

さて、今日も一日定常運転で家庭教師のアイリスから地政学的な学習と魔法の指導を受けていた。
夕方近くになると夕食前の鍛錬だと称して父親が剣の訓練を付けてきた。
俺は前世で学生時代に剣道部だったのもあって、竹刀の様な軽い剣ならそこそこ振れる。
だが、この世界の訓練は刃の厚みがある木剣だ。
12歳という年齢もあって、剣道のつもりで振り回してみるとかなりよろけた。

「マーティンよ、以前はその木剣でもまともに振れていたではないか。それも忘れてしまったのか。しかも見たこともない妙な構えをしているし、どうしたのだ。」

父親が少し悲しそうな目で俺を見る。
俺の構えは剣道のいわば日本刀の構えだ。
洋剣であるこの木剣では使わない構えなのだろう。

「いえ、父上。忘れた訳ではないと思いますが、何故かこの構えがしっくり来るのです。」

俺は洋剣術を一から学ぶのは嫌だったので、とりあえず自己流として構えさせてもらった。

「まぁよい。打って来なさい。」

俺は中段の構えから小手狙いで素早く木剣を振るった。
父親は軽く身をよじって木剣の腹で俺の木剣を弾いた。
次に俺は木剣を引きながら側方に倒れ込み、胴を狙って横払いをした。
これも父親は素早く躱しながら俺の左腹に木剣を横薙ぎにしてきた。
俺はそれを避けきれず、革鎧の腹部に木剣を撃ち込まれて倒れた。

「ま、まいりました。」

「一回打ち込まれただけでもう音を上げるのか?前はもっと食らいついていたぞ。」

父親はそう言うと「立て」と言いながら木剣を横に構えた。
あれが洋剣の構えなのかと思いつつ、父親に提案した。

「父上、私が無意識に出していた剣技はこの木剣に合わない様です。申しわけありませんが、基礎から教えていただけませんでしょうか。」

「うぅむ、本当に忘れているというのなら残念だが仕方あるまい。今日はもう良いから明日からは護衛隊長のマークに基礎から稽古を付けさせよう。」

「ありがとうございます。そうしていただくと助かります。」

父親はそう言うと側に控えていたメイドに木剣を渡すと屋敷に戻って行った。
俺も木剣をメイドに渡し、土にまみれた服を自室で着替えてから夕食に向かった。

夕食時、父親が執事のセバスチャンに明日から護衛隊長のマークに剣技の稽古を俺に付けさせる様に指示していた。
剣の構えがまるでなっていないので基礎から鍛える様にも言っている。
まぁ俺の剣道の経験はそのうち生きる時もあるだろう。
今はこの環境に合った剣技を習得するのが一番の早道だな。

俺は夕食後に自室に戻り、部屋のドアに内側からレバーを操作して鍵をかけた。
ドアの外に錠穴はあったので、セバスチャン辺りなら合鍵を使って入って来れるだろうが、今は少しの時間だけでも良いのでプライベート空間が欲しかった。
何故なら今のところ家族にも秘匿したい自衛隊魔法を色々試したかったのだ。
ステータスを表示させると昼間のアイリスの魔法訓練で魔力が290から260に減っている。
あの程度の訓練ならそれくらいの消費量か。

「自衛隊魔法、ランク1召喚」

俺はランク1武器の「9mm拳銃」をタッチで選択して召喚呪文を唱えた。
淡い光と共に目の前の床にエアソフトガンで見慣れた自衛隊仕様9mm拳銃、「SIG P220 IC」が現れた。
スライドの右側面にちゃんと「桜にW」と「9mm拳銃」の刻印がある。

「おお、俺のコレクションにあった紛れもない陸自仕様P220だ。」

ちょっと嬉しくなって床のP220を拾おうとしたところ、少しくらっときた。
立ちくらみかなと思ったら急激な魔力消費をするとこの症状が出るとアイリスに聞いたことを思い出す。
ステータスを見ると9mm拳銃召喚の魔力消費は200だったので、俺の現在の魔力量250に対してあまり余裕がない。
そりゃー8割を一気に使ってはそうなるか。

気を取り直して手に取ってみるとエアソフトガンと違って、1kg近くある鉄の塊でずしりと重い。
いや、12歳のこの体だから余計に重く感じるのだろう。
また、この12歳の手の平ではグリップが大きすぎて片手ではまともに握れなかった。
そして、スライドを引こうとしてもリコイルプリングが強すぎるのか、腕の力では半分も引けない。
テーブルの縁にスライドの上端を引っ掛けて体重をかけると、やっと全部引けてスライドストップに引っ掛かった。
中に実包が入っていないことを確認してスライドストップを開放するとガチャンと音を立ててスライドが前進した。
トリガーを引くとカチンと音がしてハンマーが落ちる。
銃口を覗いてみるとかっちりとしたライフリングが見える。
勿論全体は鉄と思われる金属で触ると冷やりとする。
グァムで撃った実銃を思い出し、思わず身震いがした。
グリップ底部のマガジンキャッチレバーをずらしてマガジンを抜いてみる。
マガジンはシングルカラムの中空鉄板なので非常に軽い。

あれこれいじったが、実銃なので実包を入れてここで撃つわけにもいかず、トリガーを引いてダブルアクション、ハンマーを起こしてシングルアクションで暫く空撃ちして遊んだら飽きてしまった。
まだこの12歳の体では実包を撃つのも反動からして難しいだろう。
もうちょっと成長してからだな。

召喚した9mm拳銃をそのままにしてメイドや執事に見つかって両親に報告でもされるとやばい。
隠しても掃除の時に見つけられてしまうだろう。
魔道具ではないので魔法がらみの疑惑は持たれないだろうが、この世では作るのは困難な鉄製の精密構造物だ。
用心しておくに越したことはない。
なので、もったいないと思ったが「粉砕魔法」で潰すことにした。

部屋の隅にあったトレーの上に9mm拳銃を置き、「粉砕魔法」で9mm拳銃をハイライトさせた後にタッチして反転表示させ、「粉砕魔法、ランク1実行」と唱えると荒い砂粒状に崩れ落ちた。
その直後、立っていられないくらいのめまいが襲い、俺はしばらく床に膝を着いてうめいていた。
10分くらいするとだいぶましになったので起きてステータスを確認すると残りの魔力は10だった。
9mm拳銃は召喚時魔力200だったが、粉砕時はその1/4の50も必要らしい。
まぁ鉄の塊だから頑丈なんだろう。
やばいやばい、もっと余裕を持ってスキルは使わないと危ないな。

俺は窓を開けるとトレーの上に乗った9mm拳銃だった粒を庭にばら撒いて証拠隠滅をするのだった。

―――――――――――――――――――――――――――――

自衛隊魔法の武器がとりあえずちゃんと召喚出来ることが確認出来たので、俺のサイドアームはこれで決まった。
9mm拳銃単体の召喚で魔力を200も持って行かれるので、今の保有魔力290ではあまり余裕が無い。
9mm実包100発はまだ召喚したことが無いのでどれくらい魔力を消費するか分からないし。
装備のほうの魔力消費は軽いと思われるので、順番に試してみよう。

昨日9mm拳銃召喚で殆ど消費した魔力は一晩寝ると元の290に復活していた。
やはり寝ると魔力は復活するのか。
おそらく体力も同様だろうな。
いや、これは前世でも同じか。

今朝起きて朝食を摂った後、アイリスが来るまでの間は2時間ほどあるので俺はランク1装備を召喚してみることにした。

「自衛隊魔法、ランク1召喚」

俺はランク1装備の「レーション」をタッチで選択して召喚呪文を唱えた。
缶詰が現れ、缶の側面には「赤飯」と日本語で書かれていた。
もう一回レーションを召喚してみると今度は「まぐろ味付」と書かれた缶が出てきた。
自衛隊のレーション「戦闘糧食I型」である缶詰は12種類あるはずなので、出て来るのは順番か。
まさかランダムじゃぁないだろうな。

次に「医薬品キット」を召喚してみた。
解熱剤、鎮痛剤、下痢止め、咳止めなどの他に、抗生物質やモルヒネまで入っていた。
いやこれ自衛隊の一般兵士用ではないだろ。
衛生兵かよ。
これまたこの世の物では無いので色々やばい。
そのうち役に立つ時があるだろう。

次には「簡易工具類」を召喚した。
出てきたのはいわゆるマルチツールと呼ばれるラジオペンチとナイフやノコギリ、はさみや缶切りなどが折り畳まれた工具だ。
それに加えてドライバーセットも出てきた。
回すネジも無いのにどないせいっちゅーんや。

残りの「戦闘服上下」、「ブーツ」、「ヘルメット」、「テント」はわざわざ召喚しなくとも分かるので省略だ。
サバゲーで似たモノを着てたしな。
今回の召喚で消費した魔力は合計90だった。
レーション2回で10、医薬品キットで40、簡易工具類で40だな。
まぁこれくらいなら今の魔力でもそこそこ余裕はある。
レーションだけ、飲料水だけならそれぞれ50回分以上あるしな。

今回の召喚物も見られるとやばいので早速粉砕魔法でバラす。
トレーの上でまとめて粉砕すると液体も混じっていたので全体がぐっちょりとした塊になった。
仕方がないので、少しづつ摘みながら窓から方々に投げ捨てた。

まぁこれで一人放置されても飢えと渇きに苦しむことはない。
俺は奇妙な安心感を得てアイリスの授業に行った。
感想 1

あなたにおすすめの小説

はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~

せんぽー
ファンタジー
 エリートが集うゼルコバ魔法学園。  この学園には、筆記試験、技術試験の合計点が基準に2回満たなかった場合、強制退学になってしまうという決まりがある。  技術において落ちこぼれのネルは、筆記試験でなんとか点数を取り、高等部まで進学していた。  しかし、高等部に上がって初めての期末テスト。ネルの点数は基準点以下になっていた。  「お兄様、あのお水に何が入っていたか知っていますか? 私特製の『特定記憶抹消薬』が入っていたんですよ? お気づきになりませんでした?」  義妹にはめられ裏切られ、強制退学をくらってしまい、学園を追い出されたネル。  彼はトランク1つ手に持ち、フラフラと街を歩いていると、ある女性から宝石を渡される。彼はそれを手にすると、気を失ってしまった。目を覚ますと広がっていたのは、見知らぬ地。赤い空、不気味な森があった。  「ここは………裏世界?」  裏世界。世間では幻とされる世界。    そこへ行くには、自身のレベルを8000にするか、魔石オラクルを使い、大量の魔力を注ぎ込む方法2択。どちらの選択も、Lv.12のネルには到底無理なこと。  そのため裏世界の魔物はLv.8000ものばかり。即死間違いなしだ。  しかし、なぜか彼は、平気に裏世界の魔物を倒せていた。  これは落ちこぼれ扱いされていた少年が2つの世界で最強になる話。  ※更新は基本夜です。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】しるしを刻む者 ~異世界に渡った判子屋~

シマセイ
ファンタジー
寿命を終えた判子職人、田中健三、八十二歳は、女神によって異世界へ。 少年ケンとして新たな生を受け、生前の「印を刻む技術」を特殊スキル『印』として授かる。 新しい家族や村人たちとの温かい交流の中、ケンは物に様々な効果を与える『印』の力で、人々の役に立つ喜びを知っていく。 そのユニークなスキルは次第に村で評判となり、様々な依頼が舞い込むようになるが、同時にスキルの限界や更なる可能性にも気づき始める。 ケンは『印』の力をより高めるため、まだ見ぬ外の世界へと目を向け始めるのだった。