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第八話 この星で最も硬い装甲
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リフィルの携帯情報端末に表示されるこの地域の熱温度が急速に下がっていく。
熱核ミサイルは核の全てのエネルギーを熱量に変換して狭い範囲し集中して放出しあらゆるものを蒸発させる超高熱兵器。
だがその超高熱の残留時間は瞬間的なもの。
大気の熱が通常温度に下がったのを確認したリフィルは
熱核ミサイルが着弾する寸前に起動させた携帯式耐熱ドームから這い出して外の様子を伺った。
二人は無事なのだろうか?幾ら気士様とはいえ熱核ミサイルの直撃を受けては流石に…。
リフィルは恐る恐る、無事を祈りながら周囲を見渡した。
「く…ふぅ…」
そこには両手を広げ、仁王立ちになっているユーリルの姿があった。
その全身鎧づくめの姿は熱核ミサイルの起こした超高熱に焼かれ、高熱の煙が沸き立ち、黒金の鎧は白色化し、ひび割れてボロボロになっている。
そしてその背後の白銀の鎧姿のファージアは彼に庇われてほぼ無傷であった。
力尽き、両膝を突いてうな垂れるユーリル。
「ユーリル!どうして…こんな無茶をしてわたしを庇ったのぉ!」
ボロボロになったユーリルを抱きかかえて涙を流すファージア。
「たいしたことは無い…魔気士の宿願に生きていた私は貴様に倒されて、更に助けられた…私は貴様に命を貰ったようなもの…なら…その命を貴様の生存の為に使うのは当然…」
「わたし…そんなこと頼んで無いよぉ…」
「ああ…私が勝手に決めてやったこと…だから…気にしなくていい…」
「クソッ!熱核ミサイルの直撃に耐えるなんて…あいつら本当に人間なのかよッ!」
上空から突如聞こえる声。見上げれば帝国国境警備軍のサイドアーマー二機が戻ってきたのだ。
そのうち一機が持っている発射管が空になっている。先ほどの熱核ミサイルは彼らが撃ったものであった。
「だが、熱核ミサイルはもう一発ある!おいお前、撃て!」
「は、はい!中隊長、発射…うぎゃああ!」
だがそのアーマーがミサイルを発射させる前にその機体は、再び立ち上がったユーリルが放った気の斬撃で真っ二つにされ爆散した。
せっかくの熱核ミサイルも熱核爆発装置で爆発させなければその威力を発揮できない只のガラクタである。
「全ては己の未熟さが招いた原因…だが私自身の不始末は着けよう…」
「ひぃッ、助けてくれーーー!!」
最後の一機となった中隊長のサイドアーマーは飛行噴射口(ブースター)を全開にしてその場から離脱を図るが、再度ユーリルの放った気の斬撃でなす術も無く真っ二つにされ爆散し果てた。
「あのう…本当に熱核ミサイル直撃だったんです?何かもう傷が治っている感じなんですけど?」
全てに決着が着いたあと、力尽きその場に倒れ伏したユーリルを担ぎ上げて、アシリアの町の冒険者ギルド・アースガルフに戻ってきたファージアとリフィル。
リフィルはありったけの傷薬と包帯を準備してユーリルを介抱しようとしたが傷がほとんど治っている状態に驚きの声を上げた。
「…小娘、気士とは、人が持つ潜在的な力”気”を極限まで鍛え上げることによって力、防御、速度、あらゆる能力を飛躍的に向上させる。
それは身体の回復能力も例外では無い…。
そして気を収縮・圧縮して物資化した気の鋼で編み上げた鎧はあらゆる攻撃に耐えるこの星で最硬度の防御装甲だが、これは超高密度の気の塊でもある。
つまり物質化を解除して自身の身体に戻すことで失った気の回復を図ることで、身体の回復力を大きく向上させることが出来る…。
私の身体の傷がほぼ治っているのはそういうことだ」
銀髪の青年はその氷の様な表情を崩さずに淡々と説明する。
「へぇーなるほど気士様ってやっぱりすごいんですねぇ…って!誰が小娘ですかー!
あたしはリフィル=アースガルフって言う可愛い名前があるんです!
ちゃんと覚えて下さいねユーリルさん!あっそういえばユーリルさんって歳いくつなんです?」
栗色の髪を2つに結い上げた幼い感じが残る少女はユーリルにまくしたてる様に話し問いかける。
「…17歳だ」
綺麗な長い金髪を乱れさせて、ガタンと椅子から崩れ落ちるファージア。
「えっ?えっ?わたしと同い歳なのぉ…?そんなに大人っぽい感じなのに…?」
長い金髪の少女は意表を突かれて驚愕の表情を浮かべた。
「…一応苦労はしているつもりだ…少し老け気味になるのもやむを得ん」
「わ、わたしも村で畑仕事とかしていたからねぇ!結構働いていたからね!苦労してない訳じゃないからね!」
「ファージアさんは実年齢より若い感じが可愛らしくて良いとあたしは思いますよ!」
「リフィルちゃん、年下に可愛いと言われても嬉しくないよぉ!」
二人の少女がじゃれあうのを見つめながらユーリルは思う。
こういう和やかな雰囲気も悪くは無いか…そして師匠の言葉を思い出す。
(生まれながらに魔気士の考えに染まってはいないお前なら…魔気士のこれからの未来を変えることが出来るかもしれないな)
師匠…私はこれから魔気士としての新たな未来を歩むことにする…それが師匠の本当の望みだったというのなら…。
「ファージア=セントニア」
「は、はい?」
「我が名はユーリル=イブルクロス、今代の魔気士を務める者。
そして貴様に倒され、その命助けられたもの。
これからは貴様の力になろう。我が力、我が身体、我が知識、どの様に使ってくれても構わない。
どこまでも貴様と共に並び、共に歩もう」
「えっ!ええぇーーー!?あのリフィルちゃん…これは一体…?わたし…どうしたら?」
「ファージアさん…クールなイケメンゲットだぜ!ですよ、良かったですね!」
「良くないよぉおおーーー!!」
頬を真っ赤にして叫ぶファージアの絶叫がアシリアの町に響き渡った。
熱核ミサイルは核の全てのエネルギーを熱量に変換して狭い範囲し集中して放出しあらゆるものを蒸発させる超高熱兵器。
だがその超高熱の残留時間は瞬間的なもの。
大気の熱が通常温度に下がったのを確認したリフィルは
熱核ミサイルが着弾する寸前に起動させた携帯式耐熱ドームから這い出して外の様子を伺った。
二人は無事なのだろうか?幾ら気士様とはいえ熱核ミサイルの直撃を受けては流石に…。
リフィルは恐る恐る、無事を祈りながら周囲を見渡した。
「く…ふぅ…」
そこには両手を広げ、仁王立ちになっているユーリルの姿があった。
その全身鎧づくめの姿は熱核ミサイルの起こした超高熱に焼かれ、高熱の煙が沸き立ち、黒金の鎧は白色化し、ひび割れてボロボロになっている。
そしてその背後の白銀の鎧姿のファージアは彼に庇われてほぼ無傷であった。
力尽き、両膝を突いてうな垂れるユーリル。
「ユーリル!どうして…こんな無茶をしてわたしを庇ったのぉ!」
ボロボロになったユーリルを抱きかかえて涙を流すファージア。
「たいしたことは無い…魔気士の宿願に生きていた私は貴様に倒されて、更に助けられた…私は貴様に命を貰ったようなもの…なら…その命を貴様の生存の為に使うのは当然…」
「わたし…そんなこと頼んで無いよぉ…」
「ああ…私が勝手に決めてやったこと…だから…気にしなくていい…」
「クソッ!熱核ミサイルの直撃に耐えるなんて…あいつら本当に人間なのかよッ!」
上空から突如聞こえる声。見上げれば帝国国境警備軍のサイドアーマー二機が戻ってきたのだ。
そのうち一機が持っている発射管が空になっている。先ほどの熱核ミサイルは彼らが撃ったものであった。
「だが、熱核ミサイルはもう一発ある!おいお前、撃て!」
「は、はい!中隊長、発射…うぎゃああ!」
だがそのアーマーがミサイルを発射させる前にその機体は、再び立ち上がったユーリルが放った気の斬撃で真っ二つにされ爆散した。
せっかくの熱核ミサイルも熱核爆発装置で爆発させなければその威力を発揮できない只のガラクタである。
「全ては己の未熟さが招いた原因…だが私自身の不始末は着けよう…」
「ひぃッ、助けてくれーーー!!」
最後の一機となった中隊長のサイドアーマーは飛行噴射口(ブースター)を全開にしてその場から離脱を図るが、再度ユーリルの放った気の斬撃でなす術も無く真っ二つにされ爆散し果てた。
「あのう…本当に熱核ミサイル直撃だったんです?何かもう傷が治っている感じなんですけど?」
全てに決着が着いたあと、力尽きその場に倒れ伏したユーリルを担ぎ上げて、アシリアの町の冒険者ギルド・アースガルフに戻ってきたファージアとリフィル。
リフィルはありったけの傷薬と包帯を準備してユーリルを介抱しようとしたが傷がほとんど治っている状態に驚きの声を上げた。
「…小娘、気士とは、人が持つ潜在的な力”気”を極限まで鍛え上げることによって力、防御、速度、あらゆる能力を飛躍的に向上させる。
それは身体の回復能力も例外では無い…。
そして気を収縮・圧縮して物資化した気の鋼で編み上げた鎧はあらゆる攻撃に耐えるこの星で最硬度の防御装甲だが、これは超高密度の気の塊でもある。
つまり物質化を解除して自身の身体に戻すことで失った気の回復を図ることで、身体の回復力を大きく向上させることが出来る…。
私の身体の傷がほぼ治っているのはそういうことだ」
銀髪の青年はその氷の様な表情を崩さずに淡々と説明する。
「へぇーなるほど気士様ってやっぱりすごいんですねぇ…って!誰が小娘ですかー!
あたしはリフィル=アースガルフって言う可愛い名前があるんです!
ちゃんと覚えて下さいねユーリルさん!あっそういえばユーリルさんって歳いくつなんです?」
栗色の髪を2つに結い上げた幼い感じが残る少女はユーリルにまくしたてる様に話し問いかける。
「…17歳だ」
綺麗な長い金髪を乱れさせて、ガタンと椅子から崩れ落ちるファージア。
「えっ?えっ?わたしと同い歳なのぉ…?そんなに大人っぽい感じなのに…?」
長い金髪の少女は意表を突かれて驚愕の表情を浮かべた。
「…一応苦労はしているつもりだ…少し老け気味になるのもやむを得ん」
「わ、わたしも村で畑仕事とかしていたからねぇ!結構働いていたからね!苦労してない訳じゃないからね!」
「ファージアさんは実年齢より若い感じが可愛らしくて良いとあたしは思いますよ!」
「リフィルちゃん、年下に可愛いと言われても嬉しくないよぉ!」
二人の少女がじゃれあうのを見つめながらユーリルは思う。
こういう和やかな雰囲気も悪くは無いか…そして師匠の言葉を思い出す。
(生まれながらに魔気士の考えに染まってはいないお前なら…魔気士のこれからの未来を変えることが出来るかもしれないな)
師匠…私はこれから魔気士としての新たな未来を歩むことにする…それが師匠の本当の望みだったというのなら…。
「ファージア=セントニア」
「は、はい?」
「我が名はユーリル=イブルクロス、今代の魔気士を務める者。
そして貴様に倒され、その命助けられたもの。
これからは貴様の力になろう。我が力、我が身体、我が知識、どの様に使ってくれても構わない。
どこまでも貴様と共に並び、共に歩もう」
「えっ!ええぇーーー!?あのリフィルちゃん…これは一体…?わたし…どうしたら?」
「ファージアさん…クールなイケメンゲットだぜ!ですよ、良かったですね!」
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頬を真っ赤にして叫ぶファージアの絶叫がアシリアの町に響き渡った。
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