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第2章
転移門の改良と祠の建立~起点は重要なのです~
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翌朝、四人は久しぶりに冒険者ギルドに顔を出した。
受付の奥にいたサブマスターのカレンさんが、マリオたちの姿を見て目を丸くした。
「あら、珍しいわね。最近は見なかったけど、何処かに行っていたの?」
「ええ、今日は借家の鍵を返却に来ました」
リカコが丁寧に頭を下げる。
「神託が降りまして。私とミチルは、テオポルタに向かうことになりました」
「神託では仕方ないわね……あなたち、ここだけでは物足らなくなったのね」
「いいわ、テオポルタのギルドには連絡しておいてあげるわ」
カレンさんは苦笑しながら、借家の鍵を受け取った。
ギルドを後にした四人は、森の湖に戻った。 ログハウスを展開し、マリオとヒカルは手分けして湖畔に小さな祠を2つ作り始めた。
「きなこ、あんこ。祠に祀るご神体はどうすればいい?」
きなこ:(九尾のキツネが最適です。神気の安定と転移精度が向上します)
あんこ:(耳はふわふわ、尻尾はもふもふでお願いします)
「相変わらず……甘々な注文だな」
マリオは笑いながら、具現化で木彫りの九尾のキツネ像を完成させ祠に納めた。ヒカルも同じように具現化で木彫りの九尾のキツネ像を作った。
二人が祠に収めた瞬間、祠の上に淡い光が灯り、転移門のドアに二匹の九尾のキツネの紋章が浮かび上がった。
「ヒカル、転移を試してみるか」
マリオは転移門のドアを開き、目的地を“冒険者ギルド裏”に設定した。
光が収束し、四人は一瞬でギルド裏の路地に立っていた。
そして、再び転移門を開き、“森の湖”を指定すると、ふわりと風が吹き、四人は祠の前に戻っていた。
「成功だ。これで、どこにいてもこの森の湖に帰ってこられる」
「マリオさん、九尾のキツネ様のおかげですね」
「きなこ、あんこ、ありがとう」
きなこ:(これで、神域との接続が常時安定します)
あんこ:(そして、いつでも甘々な帰宅が可能です)
森の湖は静かに輝き、旅の拠点としての神気を満たしていた。
「きなこ、目的地をテオポルタに設定」
きなこ:(それでは、飛びます、飛びます)
「あんこ、目的地をテオポルタに設定」
あんこ:(それでは、飛びます、飛びます)
二台のキャンピングカーは静かに上昇を開始した。
「きなこ、ナニサカ市→サカイオス市→ダマスキノ市→ストロモス→カンノニア市→キビピーチ市→テオポルタで回れるか?」
きなこ:(はい、簡単です)
「あんこにもコース指示よろしく」
きなこ:(了解です)
「マリオさん、高度がかなり上がっているね」
「そう言えば、1万メートルくらいの高さで飛んでいるね」
「それに、何だかスピードが早くなった気がするわ」
「そうみたいだね」
日本仕様になったキャンピングカーは性能が上がって最大で時速900キロまで性能が上がっていた。気密性も良くなり、高度1万メートルまでは十分に上昇できた。
「リカコ、どちらにしても、オートパイロットだから、俺たちは操縦出来ないからね」
「そうだったわね」
二台のキャンピングカーは、雲を突き抜けるようにして高度を上げていった。眼下には、ナニサカ湾の青が広がり、遠くにはダマスキノ市がちらりと見えた。
約、40分後、二台のキャンピングカーはテオポルタ市の港の近くに着陸をした。港から少し歩くと小さな祠があり、中に”もうかりまっかさん”が安置されていた。
「マリオさん、ナニサカの屋台村で見たもうかりまっかさんですか?」
「ヒカル、もうかりまっかさんに似ているけどえべっさんだと思う」
きなこ:(皆さん、こちらの祠にお参りして下さい)
あんこ:(えべっさんの神力が解放されます)
四人は祠に向かって、銅貨を1枚づつあげ、二礼二拍手一礼の参拝をし、祠を後にした。
ササ・モッテ・コイ……
きなこ:(神力が1000%に達しました。祠の封印が解除されます)
あんこ:(えべっさんの神力が解放されました。ロカ・オロス・リチニ・ナオス、石宝殿に行くことが出来ます)
「きなこ、ひょっとして、正式な手順を踏まないとククリヒメに逢えないのか?」
きなこ:(そうです、ククリヒメ様はくらいの高い神様なので、えべっさんの神力を解放し、その後の参拝になります)
◇ ◇ ◇ ◇
テオポルタ市の北端、山道を登った先に、石で築かれた静かな神殿があった。
神殿の名はロカ・オロス・リチニ・ナオス。神域の封印が施されたこの石宝殿は、神主以外の者、特に一般人には、決して足を踏み入れることが許されない禁足地だった。
特に、ククリヒメが眠る神聖な神殿であるため、古来より女人禁制とされていた。
神主は、神気の高まりを肌で感じ、石宝殿の扉が光ったのでククリヒメが眠りから覚めることを予知していた。
直ぐに石宝殿を解放する者が現れる事を職員に伝え、準備を行った。
港の祠から、四人は飛翔魔法で空へと舞い上がった。空は澄み渡り、風は柔らかく、マジックバリアは彼らの体を包んでいるので寒さは感じなかった。
「リカコ、ミチル、寒くないか?」
「大丈夫よ、マリオさん。神気が守られているわ」
「私も平気です。空って、こんなに静かなんですね」
約30分後、彼らはロカ・オロスの頂、リチニ・ナオスの前に降り立った。
石宝殿の扉が開き、ククリヒメは長い眠りから解放された。
きなこ:(ククリヒメの、力が1000%になり、全開放されました)
きなこ:(皆様に、ククリヒメ様のご加護が与えられました)
「マリオさん、あれ……」
「リカコ、あれは……神位の昇格か?」
二匹の九尾の狐が空に浮かび上がり、金色に輝いていた。九本の尻尾を持つ二匹の狐は、金色に輝きながら空に舞い上がり、やがて光に包まれて、二人の巫女の姿へと変化し、静かに消えていった。
きなこ:(今回の神域接続と封印解除により、私たちは“仙狐”へと昇格しました)
あんこ:(白蛇様と同格の神位となり、私たちは巫女として認定されました)
神主はその光輪を見て、深く頭を下げた。
「まさか、仙狐の顕現を見れるとは……、これは、千年に一度あるかないかの吉兆です」
「あなた方がククリヒメ様を起こされたので、神々の意志が、確かにこの地に示されたのです。心より感謝申し上げます」
こうしてロカ・オロス・ヤマスは、“富をもたらす女神ククリさん”として、屋台村の店主たちに小さな神像を飾られ、テオポルタ市の人々から深く崇敬される神域となった。
続く──
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受付の奥にいたサブマスターのカレンさんが、マリオたちの姿を見て目を丸くした。
「あら、珍しいわね。最近は見なかったけど、何処かに行っていたの?」
「ええ、今日は借家の鍵を返却に来ました」
リカコが丁寧に頭を下げる。
「神託が降りまして。私とミチルは、テオポルタに向かうことになりました」
「神託では仕方ないわね……あなたち、ここだけでは物足らなくなったのね」
「いいわ、テオポルタのギルドには連絡しておいてあげるわ」
カレンさんは苦笑しながら、借家の鍵を受け取った。
ギルドを後にした四人は、森の湖に戻った。 ログハウスを展開し、マリオとヒカルは手分けして湖畔に小さな祠を2つ作り始めた。
「きなこ、あんこ。祠に祀るご神体はどうすればいい?」
きなこ:(九尾のキツネが最適です。神気の安定と転移精度が向上します)
あんこ:(耳はふわふわ、尻尾はもふもふでお願いします)
「相変わらず……甘々な注文だな」
マリオは笑いながら、具現化で木彫りの九尾のキツネ像を完成させ祠に納めた。ヒカルも同じように具現化で木彫りの九尾のキツネ像を作った。
二人が祠に収めた瞬間、祠の上に淡い光が灯り、転移門のドアに二匹の九尾のキツネの紋章が浮かび上がった。
「ヒカル、転移を試してみるか」
マリオは転移門のドアを開き、目的地を“冒険者ギルド裏”に設定した。
光が収束し、四人は一瞬でギルド裏の路地に立っていた。
そして、再び転移門を開き、“森の湖”を指定すると、ふわりと風が吹き、四人は祠の前に戻っていた。
「成功だ。これで、どこにいてもこの森の湖に帰ってこられる」
「マリオさん、九尾のキツネ様のおかげですね」
「きなこ、あんこ、ありがとう」
きなこ:(これで、神域との接続が常時安定します)
あんこ:(そして、いつでも甘々な帰宅が可能です)
森の湖は静かに輝き、旅の拠点としての神気を満たしていた。
「きなこ、目的地をテオポルタに設定」
きなこ:(それでは、飛びます、飛びます)
「あんこ、目的地をテオポルタに設定」
あんこ:(それでは、飛びます、飛びます)
二台のキャンピングカーは静かに上昇を開始した。
「きなこ、ナニサカ市→サカイオス市→ダマスキノ市→ストロモス→カンノニア市→キビピーチ市→テオポルタで回れるか?」
きなこ:(はい、簡単です)
「あんこにもコース指示よろしく」
きなこ:(了解です)
「マリオさん、高度がかなり上がっているね」
「そう言えば、1万メートルくらいの高さで飛んでいるね」
「それに、何だかスピードが早くなった気がするわ」
「そうみたいだね」
日本仕様になったキャンピングカーは性能が上がって最大で時速900キロまで性能が上がっていた。気密性も良くなり、高度1万メートルまでは十分に上昇できた。
「リカコ、どちらにしても、オートパイロットだから、俺たちは操縦出来ないからね」
「そうだったわね」
二台のキャンピングカーは、雲を突き抜けるようにして高度を上げていった。眼下には、ナニサカ湾の青が広がり、遠くにはダマスキノ市がちらりと見えた。
約、40分後、二台のキャンピングカーはテオポルタ市の港の近くに着陸をした。港から少し歩くと小さな祠があり、中に”もうかりまっかさん”が安置されていた。
「マリオさん、ナニサカの屋台村で見たもうかりまっかさんですか?」
「ヒカル、もうかりまっかさんに似ているけどえべっさんだと思う」
きなこ:(皆さん、こちらの祠にお参りして下さい)
あんこ:(えべっさんの神力が解放されます)
四人は祠に向かって、銅貨を1枚づつあげ、二礼二拍手一礼の参拝をし、祠を後にした。
ササ・モッテ・コイ……
きなこ:(神力が1000%に達しました。祠の封印が解除されます)
あんこ:(えべっさんの神力が解放されました。ロカ・オロス・リチニ・ナオス、石宝殿に行くことが出来ます)
「きなこ、ひょっとして、正式な手順を踏まないとククリヒメに逢えないのか?」
きなこ:(そうです、ククリヒメ様はくらいの高い神様なので、えべっさんの神力を解放し、その後の参拝になります)
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テオポルタ市の北端、山道を登った先に、石で築かれた静かな神殿があった。
神殿の名はロカ・オロス・リチニ・ナオス。神域の封印が施されたこの石宝殿は、神主以外の者、特に一般人には、決して足を踏み入れることが許されない禁足地だった。
特に、ククリヒメが眠る神聖な神殿であるため、古来より女人禁制とされていた。
神主は、神気の高まりを肌で感じ、石宝殿の扉が光ったのでククリヒメが眠りから覚めることを予知していた。
直ぐに石宝殿を解放する者が現れる事を職員に伝え、準備を行った。
港の祠から、四人は飛翔魔法で空へと舞い上がった。空は澄み渡り、風は柔らかく、マジックバリアは彼らの体を包んでいるので寒さは感じなかった。
「リカコ、ミチル、寒くないか?」
「大丈夫よ、マリオさん。神気が守られているわ」
「私も平気です。空って、こんなに静かなんですね」
約30分後、彼らはロカ・オロスの頂、リチニ・ナオスの前に降り立った。
石宝殿の扉が開き、ククリヒメは長い眠りから解放された。
きなこ:(ククリヒメの、力が1000%になり、全開放されました)
きなこ:(皆様に、ククリヒメ様のご加護が与えられました)
「マリオさん、あれ……」
「リカコ、あれは……神位の昇格か?」
二匹の九尾の狐が空に浮かび上がり、金色に輝いていた。九本の尻尾を持つ二匹の狐は、金色に輝きながら空に舞い上がり、やがて光に包まれて、二人の巫女の姿へと変化し、静かに消えていった。
きなこ:(今回の神域接続と封印解除により、私たちは“仙狐”へと昇格しました)
あんこ:(白蛇様と同格の神位となり、私たちは巫女として認定されました)
神主はその光輪を見て、深く頭を下げた。
「まさか、仙狐の顕現を見れるとは……、これは、千年に一度あるかないかの吉兆です」
「あなた方がククリヒメ様を起こされたので、神々の意志が、確かにこの地に示されたのです。心より感謝申し上げます」
こうしてロカ・オロス・ヤマスは、“富をもたらす女神ククリさん”として、屋台村の店主たちに小さな神像を飾られ、テオポルタ市の人々から深く崇敬される神域となった。
続く──
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