弱くてすみません~偽認定された夫婦の冒険記~

にしのみつてる

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第1章

ヤムロ峠の魔鉱石採掘

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 マリオとリカコは、冒険者ギルドの依頼ボードを隅から隅まで眺めて、魔鉱石の採掘依頼を受ける事にした。
 冒険者ランクは書いてなかったが、受付の女性職員の判断でマリオとリカコはすんなり依頼を受けることが出来たのだった。

「ヤムロ峠で強い魔物の情報は今の所入ってきておりませんが、くれぐれも気を付けてくださいね」
 魔鉱石の採掘場所は、ナニサカ市から東に40キロほど離れたヤムロ村にあるとの事だった。

 魔鉱石とは自然界の魔素が洞窟などに集まって魔素溜まりとして自然に出来た結晶で一般には魔石と呼ばれていた。またダンジョンで倒した魔物からも大小の魔石が出てきた。魔石を加工する魔道具職人は色々な商品に魔石をはめ込み、便利な生活用品として貴族向けに販売していたので魔石は高値で取引されていたのだった。

 ヤムロ村に行くには、ナニサカ市からハラカシ町まで乗り合い馬車が出ているので、朝早くの乗り合い馬車で向かえば、ハラカシ町での乗り換えを入れて夕方遅くにはヤムロ村に到着すると教えもらった。

 魔石の採掘場所は、さらにその奥のヤムロ峠の中腹にあるので、徒歩で1日の行程になるそうだが、ヤムロ峠は山の中なので当然、野宿になるそうだ。 魔石の数量は多ければ多いほど良いとの事で具体的な数量は言われなかった。

 ヤムロ峠での魔石の採取条件を聞いたので二人は冒険者ギルドを後にした。

「とりあえず、キャンピングカーで使えそうな調理道具を市場で買って帰ろうよ」
 マリオとリカコは市場に向かったが、市場にある調理道具屋はどれも食堂用の大きいサイズの鍋しか置いてなかったので買うのを諦めた。

「賢者、ヤムロ峠に行く前に魔鉱石がある場所をリストアップしてくれ」
「お勧めは、ハラカシ町の森の奥です」

「ヤムロ峠に行く途中になりますのでハラカシ町に立ち寄るのが効率的かと思います」

 マリオとリカコは再びオポタ川の堤防に来ていた。キャンピングカーを収納から出して、乗り込んだら、結界で姿を隠したたまま走ったのだった。

 キャンピングカーのダッシュボードはタブレットを置く台が備わっていたので、カーナビのように使うことが出来た。

 程なく、キャンピングカーはハラカシ町の森に到着したので二人は車から降りて魔鉱石のある洞窟を探すことにしたのだった。

「マリオさん、洞窟が3つ並んでいるね」
「賢者、どの洞窟から攻めるのだ?」

「どれでも構いませんが、真ん中から攻めましょう。なお、ボウガンは持って入って下さい」
「リカコ、タブレットに魔物の赤い点は映っていないかい?」

「ええ、今のところは大丈夫よ」
 マリオとリカコは、生活魔法のライトで洞窟内を照らしながら慎重に奥に向かって進んで行った。

「マリオさん、画面に赤い点が映っているよ」
「本当だね」

 マリオはボウガンに矢をセットして、周囲を警戒しながら慎重に歩いていた。
「マリオさん待って、赤い点が動いたわ、構えて」

 バシュッ!!矢は暗闇に吸い込まれ行ったが、矢に自動補正かかっているので確実に魔物に当たっていた。
 洞窟の主は、3mのサーペントだった。

「ここが一番最奥部のようだね、早く魔鉱石を採取しようよ」
 魔鉱石は大方採ったので、次は左側の洞窟に入った。

「リカコ、タブレットに赤い点は映っているの?」
「ええ、今は大丈夫よ」

 今度は何も出てこないので、二人は洞窟の最奥部に到着していた。魔鉱石はここでも採取できたのでかなりの量になっていた。

「賢者、まだ魔鉱石が必要なのか?」
「もう充分だと思いますので、先に抽出を行いましょう」
「わかった、リカコお願いね」
「ええ、マリオさん好きよ」
 洞窟内が七色に光って、魔石板が2枚出来ていた。

「マリオさん、次は私の番になります」
 タブレットが七色に光って、更新が始まったのだった。

「パパーン」
 再起動がかかって、タブレットは立ち上がってきた。

「お待たせしました。マリオさん、リカコさん、現在のステータスをご覧ください」

 ◇ ◇ ◇ ◇

【名前】マリオ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】錬金術師
 バッカス神の加護
 創作・具現化 収納 転送
【LV】35
【MP】35000

【名前】リカコ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】魔女
【スキル】
 アリアドネ神の加護
 創薬・具現化 鑑定 収納
【LV】35
【MP】35000

 ◇ ◇ ◇ ◇

「俺たちのレベルが35に上ったね」

「ええ、私も今回の更新でステータスが少し上がりました」
「マリオさんたちは後1回の更新でレベル45まで上げていただきます」

「これから行くヤムロ峠はボウガンでは役不足なりますので、他の勇者が作った魔導ライフルを作成しましょう」

「賢者、他の勇者はライフルを作っていたのか?」
「はい、そうです」

 タブレットの画面には魔導ライフルが映し出されていた。マリオは剣は得意でないので元の世界の武器を持っていないと強い魔物に勝てないと思っていたのだった。

「リカコ、魔導ライフルを作るね」
 世界辞書の知識と創造魔法の具現化で魔導ライフルは直ぐに出来た。

「マリオさん、キャンピングカーの側面のハッチを開けて下さい」
「先程、作った魔石板を2枚セットして下さい」

 キャンピングカーに魔石板は全部で10枚セット出来ると賢者は言っていたが、今は半分の5枚しか作っていなかった。

「では、ヤムロ峠に向けて出発しましょう」

 ヤムロ峠には昼前に到着をした。直ぐに洞窟に入るのでは無く、辺りの様子を伺うことにしたのだった。

 幸い、付近に赤い点は光っていないので、マリオとリカコは慎重に洞窟に入っていった。しばらくすると、辺り一面が七色に光っていたので魔鉱石の鉱床だった。

「リカコ、全て回収しようか」
「そうね」

 魔鉱石の回収が終わったので、最奥部に向かって歩いて行ったが、様子が少しおかしかった。洞窟全体が銀色に光っているのだった。

「マリオさん、赤い点がこっちに向かって動いているよ」

 マリオは魔導ライフルを構え、暗視スコープを覗くとロックリザードが見えたのだった。
 ズダーン、魔導ライフルの弾はロックリザードの頭に当たって即死していたのだった。

「賢者、この銀色に光る鉱石は何なの?」
「ミスリル鉱石です。鉱山は領主の物になるので持っては帰れませんが、欠片を少し拾って帰っても大丈夫ですよ」
「これで、今日の仕事は全て終了です。付近に魔物はいませんので、今夜はここでキャンプをお楽しみ下さい」

「リカコ良かったね」
「ええ」
「お昼は簡単なものでいいかな?」
 スクランブルエッグをパンに挟んで二人で食べたのだった。


 夜はダンジョンで狩ったオーク肉の残りを焼いてスパークリングワインで乾杯した。リカコは少し頬を赤らめながら、マリオの手をそっと握った。二人は静かに微笑み合い、湖畔の夜を穏やかに過ごした。

「リカコ、先にシャワーを浴びようよ」
 リカコにシャワーを勧め、マリオも後でシャワーを浴びたのだった。

 シャワーを浴びてさっぱりした後、二人はベッドに腰を下ろし、手を繋いで瞑想を始めた。
「マリオさん、魔力の還流が凄いね」
「リカコ、すごく力が漲ってきたね」

 魔素の還流が穏やかに巡り、二人は静かな安心感に包まれながら、自然と眠りについた。

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