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第1章
朝の散歩をしていたら~エルフの里でサンクチュアリとフェルナを習う~
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翌朝、キャンピングカーでヤムロ村の近くまで降りてきて、二人で朝の散歩を楽しんでいた時だった。
「おや、薬草の採取かい?」
耳が少し長い若い綺麗な女性が声をかけてくれた。
「こんにちは。妻が薬草に興味があって、少しだけ採らせてもらったんですが……ご迷惑でしたか?」
「いや、こんな山奥まで人族が入って来たので珍しかったのだよ。二人はかなり魔力が高いようだが魔導師と魔女かい」
「はい、妻と二人でナニサカ市で薬の研究を少々しておりまして」
「申し遅れました。マリオと妻のリカコです」
「ここはヤムロ村。人族にはほとんど知られていない、エルフ族の隠れ里なんだ。 エルフは長命だからね。結界を張って、なるべく人族とは関わらないようにしているのさ」
「私は、ヤムロ村のアルゼル。族長を務めているよ。
「そうなんですか? 私たちは知らずにエルフの地に足を踏み入れてすみませんでした」
「エルフの皆さんも薬草を採取されるのですよね」
「全員では無いよ、ごく一部のエルフだけだね」
「あなたたちからは危険な意思を感じない。だから、村に招待しよう。案内は夫のマハルマに任せるよ」
アルゼルが許可を出したので、エルフの隠れ里に招かれることになったのだ。
森の奥に広がる静かな集落。木々に溶け込むような家々と、澄んだ空気の中で暮らすエルフたちの姿があった。
すると、森の奥からもう一人のエルフが現れた。銀髪を揺らしながら、穏やかな笑みを浮かべている。
「ようこそ、マリオさん、リカコさん。私はこの里の族長の夫、マハルマです」
「エルフの里は女系社会なので代々女エルフが族長を務め、男エルフは戦士と錬金薬師なのだよ」
マハルマさんは落ち着いた声で語りかけてきた。長い銀髪と深緑のローブが風に揺れていた。
「昨日、ヤムロ峠でロックリザードを討伐しました。洞窟の奥にミスリル鉱床がありましたが、領地の所有権を尊重し、採掘はしておりません。欠片だけ持ち帰りましたが、アルゼルさんにすべてお渡しします」
マリオはミスリルの欠片を丁寧に差し出した。アルゼルはそれを受け取り、静かに頷いた。
「その判断、感謝します。人族でそこまで配慮できる者は稀です。あなた方には、我々の知恵を少しだけ分け与えましょう」
マハルマさんは微笑みながら、腰のポーチから小瓶を取り出した。中には淡い緑色の液体が揺れていた。
「これは、エルフの初級ポーション。人族の中級ポーションと同じ効果があるけれど、材料も作り方も少し違うの」
「えっ……それって、教えていただけるんですか?」
「リカコさん、あなたの魔素の流れはとても安定している。創薬の心得があるなら、伝えても問題ないと思う」
マハルマさんは、ポーションの材料を一つずつ説明してくれた。
- 月光草(夜露を吸った薬草)
- 精霊水(魔素を含んだ泉の水)
- 森の息吹(瞑想によって集まる微細な魔素の結晶)
「エルフは“サンクチュアリ”という魔法で、これらを一度に融合させる。魔素の流れを整えるだけで済むから、魔力の消費も少ないの」
リカコは頷きながら、タブレットにレシピを登録した。
「人族のポーションの作り方は、抽出《イズリカット》、浄化《アチシーニ》、固定《イスプラベノ》の三工程が必要なの。だから魔力の消費で無駄が大きく、普通の人では連続調合が難しいのよね」
「でも、リカコさんならできると思うよ」
リカコは創薬スキルを起動し、魔素の流れを整えながら慎重に調合を始めた。瓶の中に、淡い緑色の液体が静かに満ちていく。
「サンクチュアリ」
「できた……」
「リカコ、すごいよ。まるでマハルマさんのと同じ色だ」
マハルマさんは瓶を手に取り、光にかざして確認した。
「……完璧だね。これで、あなたはエルフ式創薬の初歩を習得したことになるよ。人族に教えたのは初めてだけど、あなたたちなら安心して任せられる」
リカコのタブレットには「エルフ式ポーション(初級)」の項目が追加され、創薬スキルが微かに進化したように感じられた。
「マリオさん、これで私たちの旅が少しだけ安心になったね」
「うん、リカコの薬があれば、どんな魔物が出てきても怖くないよ」
ポーション作りが終わったので、アルゼルはリカコに向き直ると、木製の小瓶を手渡した。中には濃い褐色の液体が入っていた。
「これは“エルフの森汁”と呼ばれる調味料。樹皮と豆類を発酵させ、魔素で熟成させたものです。魚にも肉にも、野菜にも合う万能調味料です」
「……これ、醤油に似てるかも」
リカコは瓶の香りを嗅ぎ、懐かしい記憶が蘇った。日本で使っていた醤油に近い香ばしさと深みがあった。
「アルゼルさん、これを作る方法を教えていただけますか?」
「もちろん。あなたの創薬スキルなら、発酵魔法と具現化を組み合わせれば再現できるはずです」
アルゼルは、森汁の製法を丁寧に説明してくれた。
材料:黒豆、樹皮粉末、精霊水、魔素触媒
工程:発酵魔法で3日熟成 → 魔素で味の調整 →瓶詰め
「ただし、森汁は一度に大量に仕込むのが基本だよ。エルフの薬師は全員が自分の魔力に合った“薬師の大鍋”を使います。人族の鍋の三倍から十倍はあるので、魔素の流れを乱さないよう注意が必要です」
「マリオさん、鍋を具現化してもらえる?そうね、最初だから直径30センチでお願い」
「リカコ、その鍋ならポーションと調味料の両方に使えるね」
「うん、任せて」
マリオはタブレットを操作し、創作・具現化スキルで薬師の大鍋を再現した。直径は30センチ、深さもたっぷりあり、鍋の縁には魔素を安定させる紋様が刻まれていた。
リカコは材料を一つずつ鍋に入れていく。黒豆、樹皮粉末、精霊水、そして魔素触媒。鍋の中で素材が静かに混ざり合い、魔素がゆっくりと立ち上っていく。
「呪文は『フェルナ』だよ。エルフ語で発酵と言う意味よ」
「フェルナ」
リカコは両手を鍋の上にかざし、魔素の流れを整えながら発酵魔法を唱えた。鍋の表面が淡く光り、素材が魔素の波に包まれていく。
時間が経つにつれ、鍋の中から香ばしい香りが立ち上り始めた。森の木々が風に揺れ、まるで調味料の誕生を祝福しているかのようだった。
「魔素調整……瓶詰め」
リカコは魔素の流れを微調整しながら、鍋の中の森汁を小瓶に移していった。褐色の液体は光を受けて深い艶を放ち、まさに“異世界の醤油”と呼ぶにふさわしい仕上がりだった。
「できた……」
「リカコ、すごいよ。これで、異世界でも醤油が使えるね」
アルゼルは瓶を手に取り、光にかざして確認した。
「見事です。これで、あなたたちは我々の味を継承したことになります。森汁は、味だけでなく“癒し”の力も持っています。食事は魔素の安定にも繋がるのです」
リカコは深く頷き、瓶を収納にしまった。タブレットには「エルフ式調味料:森汁」の項目が追加されていた。
「アルゼルさん、本当にありがとうございました」
「またいつでも訪れてください。あなたたちのような人族なら、我々も歓迎します」
マリオとリカコは深く礼をして、エルフの里を後にした。森の風が優しく吹き抜け、二人の背中を押してくれているようだった。帰り道、リカコは鍋のサイズと魔素紋様の重要性を改めて実感したのだった。
----------------------------------
鍋の考察──
※人族が通う魔法学園では、魔法水の調合に5センチから10センチ以下の鍋を使うのが一般常識とされている。これは、本人の魔力量──およそMP3000から5000──に合わせてオーダーメイドされるためだ。
体に合っていない大きな鍋を使うと、魔力水がまったく溜まらない。 (※エルフはこれを“精霊水”、教会では“聖水”と呼んでいる)
リカコは世界辞書の知識から、この世界での常識を理解していたため、あえて控えめなサイズの鍋を選んだのだった。
「おや、薬草の採取かい?」
耳が少し長い若い綺麗な女性が声をかけてくれた。
「こんにちは。妻が薬草に興味があって、少しだけ採らせてもらったんですが……ご迷惑でしたか?」
「いや、こんな山奥まで人族が入って来たので珍しかったのだよ。二人はかなり魔力が高いようだが魔導師と魔女かい」
「はい、妻と二人でナニサカ市で薬の研究を少々しておりまして」
「申し遅れました。マリオと妻のリカコです」
「ここはヤムロ村。人族にはほとんど知られていない、エルフ族の隠れ里なんだ。 エルフは長命だからね。結界を張って、なるべく人族とは関わらないようにしているのさ」
「私は、ヤムロ村のアルゼル。族長を務めているよ。
「そうなんですか? 私たちは知らずにエルフの地に足を踏み入れてすみませんでした」
「エルフの皆さんも薬草を採取されるのですよね」
「全員では無いよ、ごく一部のエルフだけだね」
「あなたたちからは危険な意思を感じない。だから、村に招待しよう。案内は夫のマハルマに任せるよ」
アルゼルが許可を出したので、エルフの隠れ里に招かれることになったのだ。
森の奥に広がる静かな集落。木々に溶け込むような家々と、澄んだ空気の中で暮らすエルフたちの姿があった。
すると、森の奥からもう一人のエルフが現れた。銀髪を揺らしながら、穏やかな笑みを浮かべている。
「ようこそ、マリオさん、リカコさん。私はこの里の族長の夫、マハルマです」
「エルフの里は女系社会なので代々女エルフが族長を務め、男エルフは戦士と錬金薬師なのだよ」
マハルマさんは落ち着いた声で語りかけてきた。長い銀髪と深緑のローブが風に揺れていた。
「昨日、ヤムロ峠でロックリザードを討伐しました。洞窟の奥にミスリル鉱床がありましたが、領地の所有権を尊重し、採掘はしておりません。欠片だけ持ち帰りましたが、アルゼルさんにすべてお渡しします」
マリオはミスリルの欠片を丁寧に差し出した。アルゼルはそれを受け取り、静かに頷いた。
「その判断、感謝します。人族でそこまで配慮できる者は稀です。あなた方には、我々の知恵を少しだけ分け与えましょう」
マハルマさんは微笑みながら、腰のポーチから小瓶を取り出した。中には淡い緑色の液体が揺れていた。
「これは、エルフの初級ポーション。人族の中級ポーションと同じ効果があるけれど、材料も作り方も少し違うの」
「えっ……それって、教えていただけるんですか?」
「リカコさん、あなたの魔素の流れはとても安定している。創薬の心得があるなら、伝えても問題ないと思う」
マハルマさんは、ポーションの材料を一つずつ説明してくれた。
- 月光草(夜露を吸った薬草)
- 精霊水(魔素を含んだ泉の水)
- 森の息吹(瞑想によって集まる微細な魔素の結晶)
「エルフは“サンクチュアリ”という魔法で、これらを一度に融合させる。魔素の流れを整えるだけで済むから、魔力の消費も少ないの」
リカコは頷きながら、タブレットにレシピを登録した。
「人族のポーションの作り方は、抽出《イズリカット》、浄化《アチシーニ》、固定《イスプラベノ》の三工程が必要なの。だから魔力の消費で無駄が大きく、普通の人では連続調合が難しいのよね」
「でも、リカコさんならできると思うよ」
リカコは創薬スキルを起動し、魔素の流れを整えながら慎重に調合を始めた。瓶の中に、淡い緑色の液体が静かに満ちていく。
「サンクチュアリ」
「できた……」
「リカコ、すごいよ。まるでマハルマさんのと同じ色だ」
マハルマさんは瓶を手に取り、光にかざして確認した。
「……完璧だね。これで、あなたはエルフ式創薬の初歩を習得したことになるよ。人族に教えたのは初めてだけど、あなたたちなら安心して任せられる」
リカコのタブレットには「エルフ式ポーション(初級)」の項目が追加され、創薬スキルが微かに進化したように感じられた。
「マリオさん、これで私たちの旅が少しだけ安心になったね」
「うん、リカコの薬があれば、どんな魔物が出てきても怖くないよ」
ポーション作りが終わったので、アルゼルはリカコに向き直ると、木製の小瓶を手渡した。中には濃い褐色の液体が入っていた。
「これは“エルフの森汁”と呼ばれる調味料。樹皮と豆類を発酵させ、魔素で熟成させたものです。魚にも肉にも、野菜にも合う万能調味料です」
「……これ、醤油に似てるかも」
リカコは瓶の香りを嗅ぎ、懐かしい記憶が蘇った。日本で使っていた醤油に近い香ばしさと深みがあった。
「アルゼルさん、これを作る方法を教えていただけますか?」
「もちろん。あなたの創薬スキルなら、発酵魔法と具現化を組み合わせれば再現できるはずです」
アルゼルは、森汁の製法を丁寧に説明してくれた。
材料:黒豆、樹皮粉末、精霊水、魔素触媒
工程:発酵魔法で3日熟成 → 魔素で味の調整 →瓶詰め
「ただし、森汁は一度に大量に仕込むのが基本だよ。エルフの薬師は全員が自分の魔力に合った“薬師の大鍋”を使います。人族の鍋の三倍から十倍はあるので、魔素の流れを乱さないよう注意が必要です」
「マリオさん、鍋を具現化してもらえる?そうね、最初だから直径30センチでお願い」
「リカコ、その鍋ならポーションと調味料の両方に使えるね」
「うん、任せて」
マリオはタブレットを操作し、創作・具現化スキルで薬師の大鍋を再現した。直径は30センチ、深さもたっぷりあり、鍋の縁には魔素を安定させる紋様が刻まれていた。
リカコは材料を一つずつ鍋に入れていく。黒豆、樹皮粉末、精霊水、そして魔素触媒。鍋の中で素材が静かに混ざり合い、魔素がゆっくりと立ち上っていく。
「呪文は『フェルナ』だよ。エルフ語で発酵と言う意味よ」
「フェルナ」
リカコは両手を鍋の上にかざし、魔素の流れを整えながら発酵魔法を唱えた。鍋の表面が淡く光り、素材が魔素の波に包まれていく。
時間が経つにつれ、鍋の中から香ばしい香りが立ち上り始めた。森の木々が風に揺れ、まるで調味料の誕生を祝福しているかのようだった。
「魔素調整……瓶詰め」
リカコは魔素の流れを微調整しながら、鍋の中の森汁を小瓶に移していった。褐色の液体は光を受けて深い艶を放ち、まさに“異世界の醤油”と呼ぶにふさわしい仕上がりだった。
「できた……」
「リカコ、すごいよ。これで、異世界でも醤油が使えるね」
アルゼルは瓶を手に取り、光にかざして確認した。
「見事です。これで、あなたたちは我々の味を継承したことになります。森汁は、味だけでなく“癒し”の力も持っています。食事は魔素の安定にも繋がるのです」
リカコは深く頷き、瓶を収納にしまった。タブレットには「エルフ式調味料:森汁」の項目が追加されていた。
「アルゼルさん、本当にありがとうございました」
「またいつでも訪れてください。あなたたちのような人族なら、我々も歓迎します」
マリオとリカコは深く礼をして、エルフの里を後にした。森の風が優しく吹き抜け、二人の背中を押してくれているようだった。帰り道、リカコは鍋のサイズと魔素紋様の重要性を改めて実感したのだった。
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鍋の考察──
※人族が通う魔法学園では、魔法水の調合に5センチから10センチ以下の鍋を使うのが一般常識とされている。これは、本人の魔力量──およそMP3000から5000──に合わせてオーダーメイドされるためだ。
体に合っていない大きな鍋を使うと、魔力水がまったく溜まらない。 (※エルフはこれを“精霊水”、教会では“聖水”と呼んでいる)
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