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第1章
夫婦の無知~オカロダ町とザリット~
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ヒロシとミサエさんは、神託に従って獣人族の里近くの洞窟で魔鉱石を採取し、タブレットの指示をもとに苦労してキャンピングカーを完成させた。
試運転を兼ねてオカロダ町へ向かったが、冒険者制度を何も知らない二人は、思わぬ恥をかくことになる。
オカロダ町の冒険者ギルドは、隣村ダニヤのダンジョンへ向かう冒険者たちで朝から賑わっていた。
バスターソードを背負った屈強な冒険者たちの雰囲気に、ヒロシとミサエさんは圧倒され、暫くは壁で様子うかがいながら、ようやく空いた受付へ向かった。
「すみません、魔物は買い取ってもらえますか?」
受付嬢にカードを見せると、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「ヒロシ様、こちらは商人カードです。冒険者カードではございません」
「えっ、今まで魔物を買い取ってもらえましたよ」
受付嬢の説明では、ソタイン村では5年前に冒険者ギルドが閉鎖され、現在は商業ギルドのみ残っており、魔物の買い取りは素材扱いの代行であり、商人カードでは討伐記録は残らないという。
「商人カードから冒険者カードへの書き換えは無料です。今から変更されますか?」
「はい、お願いします」
アハハハ……、その瞬間、ギルド内に笑い声が響き渡った。
「あいつら、相当の田舎者だな、ザリットの村から来たってさ」
「ああ、冒険者カードと商人カードのの区別も知らないなんて、恥ずかしいぜ」
周囲の冒険者たちの嘲笑に、ヒロシとミサエさんは静かに耐えていた。
「ヒロシ様、ミサエ様、準備が出来ましたので魔力測定盤に手を置いてください」
◇ ◇ ◇ ◇
【名前】ヒロシ・ミラタ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】薬師見習い
【スキル】 ****
【LV】20
【MP】****
【名前】ミサエ・ミラタ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】薬師見習い
【スキル】 ****
【LV】20
【MP】****
◇ ◇ ◇ ◇
二人のレベルは20だった。受付嬢はその高さに驚き、奥の解体場へ案内した。
いかつい顔のギルドマスターのマルニクスさんは大きな体を揺らしながらヒロシとミサエさんに質問したのだった。「お前たち何処で狩りをしてきた」
「はい、最初はカブラ村の草原でスライム50匹を倒しました。次に行ったのは獣人族の里の近くの森でゴブリンを3体とオーク3体を倒したのです」
ヒロシは収納からオーク3体とゴブリンの耳3体分を出した。
マルニクスさんの近くに置かれた嘘発見器の魔道具は青のままだったのでヒロシとミサエさんが嘘を付いていないことは証明された。
「ゴブリン3体とオーク3体だな」
「ゴブリン3体銀貨9枚、オーク3体金貨30枚、合わせて金貨30枚と銀貨9枚だ。疑うような事をして悪かった。魔力測定盤のレベルと魔物を照らし合わせても、お前たちの実力は間違いなくCランクの実力だ」
「ありがとうございます」
「それから、お前たちは今日からDランク冒険者として登録をするが、明日と明後日の2日間は冒険者講習を受けてもらうので活動をするのはその後だ。今夜と明日の晩はギルド指定の宿屋で泊まってくれ」
「分かりました、よろしくお願いします」
マルニクスは、ギルド内で差別発言をしていた勇者オーディックと聖女アネルマに釘を刺した。
「おい、お前たちも、先輩冒険者としてヒロシとミサエに色々と教えてやってくれ」
「ソタイン村のザリットに俺たちが教えることは何もない」
「ザリットの村人でも同じ人間だ。ギルド内で差別は許さん」
ヒロシとミサエさんは“ザリット”という言葉の意味をまだ知らなかった
“ザリット”という言葉の意味は、まだ二人には分かっていなかった。だが、村人の身分が、ギルド内で差別を受けているのは明らかで、よそ者への偏見がだと感じた。
その夜、二人はギルド指定の宿屋「髭の酒蔵亭」に向かった。
オカロダ町の中心部から徒歩5分ほど、石畳の通りに面した木造の建物だった。
「ミサエさん、ここが宿屋だよ。名前の通り、酒場も兼ねてるみたいだね」
「ヒロシさん、なんだか賑やかで楽しそう」
店内は木の香りが漂い、冒険者たちの笑い声とエールのジョッキがぶつかる音が響いていた。
宿屋の主人は髭を蓄えた陽気な男で、二人を温かく迎えてくれた。
「いらっしゃい、ギルドからの紹介だね。部屋は二階の奥、夕食はすぐに出せるよ」
夕食は名物の「ボアファングのシチュー」と「オクタ揚げ」。
オーク肉の腸詰めを揚げたオクタ揚げは、外はカリッと中はジューシーで、二人は思わず顔を見合わせて笑った。
「ヒロシさん、これ美味しいわね」
「うん、異世界の料理も悪くないね」
飲み物は、ポヤティラ山の伏流水で仕込まれた「アロゴエール」と、山ぶどう酒を一杯ずつ。
どちらも鉄貨3枚、オクタ揚げは大盛りで鉄貨5枚。宿代は二人で銀貨2枚だった。
「ミサエさん、銀貨1枚が1万円だとすると、今日は2万円か……」
「でも、食事も部屋も満足だし、いい出費だったと思うわ」
部屋は木造の落ち着いた造りで、窓からはオカロダ町の灯りがちらちらと見えた。
二人は手を握って見つめ合いながら、今日の出来事を静かに振り返った。
「ミサエさん、今日は色々あったけど、俺たち、ちゃんと前に進めてるよね」
「ええ、恥ずかしいこともあったけど、それも経験よ」
「明日からの講習、頑張ろう」
「うん、私たちならきっと大丈夫」
その夜、キャンピングカーは結界の中で静かに待機していた。
タブレットの賢者は、次なる指示を静かに準備していた。
続く──
----------------------------------
作品での通貨の目安(全作品共通)
通貨単位 G《ギル》通貨は全世界共通
※ 通貨の価値は全作品をとおして同じとします
小鉄貨 1G 10円
鉄貨 10G 100円
銅貨 100G 1000円
銀貨 1000G 10000円
金貨 10000G 10万円 ※一般に流通しているのは金貨まで
白金貨 1000000G 1千万円
試運転を兼ねてオカロダ町へ向かったが、冒険者制度を何も知らない二人は、思わぬ恥をかくことになる。
オカロダ町の冒険者ギルドは、隣村ダニヤのダンジョンへ向かう冒険者たちで朝から賑わっていた。
バスターソードを背負った屈強な冒険者たちの雰囲気に、ヒロシとミサエさんは圧倒され、暫くは壁で様子うかがいながら、ようやく空いた受付へ向かった。
「すみません、魔物は買い取ってもらえますか?」
受付嬢にカードを見せると、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「ヒロシ様、こちらは商人カードです。冒険者カードではございません」
「えっ、今まで魔物を買い取ってもらえましたよ」
受付嬢の説明では、ソタイン村では5年前に冒険者ギルドが閉鎖され、現在は商業ギルドのみ残っており、魔物の買い取りは素材扱いの代行であり、商人カードでは討伐記録は残らないという。
「商人カードから冒険者カードへの書き換えは無料です。今から変更されますか?」
「はい、お願いします」
アハハハ……、その瞬間、ギルド内に笑い声が響き渡った。
「あいつら、相当の田舎者だな、ザリットの村から来たってさ」
「ああ、冒険者カードと商人カードのの区別も知らないなんて、恥ずかしいぜ」
周囲の冒険者たちの嘲笑に、ヒロシとミサエさんは静かに耐えていた。
「ヒロシ様、ミサエ様、準備が出来ましたので魔力測定盤に手を置いてください」
◇ ◇ ◇ ◇
【名前】ヒロシ・ミラタ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】薬師見習い
【スキル】 ****
【LV】20
【MP】****
【名前】ミサエ・ミラタ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】薬師見習い
【スキル】 ****
【LV】20
【MP】****
◇ ◇ ◇ ◇
二人のレベルは20だった。受付嬢はその高さに驚き、奥の解体場へ案内した。
いかつい顔のギルドマスターのマルニクスさんは大きな体を揺らしながらヒロシとミサエさんに質問したのだった。「お前たち何処で狩りをしてきた」
「はい、最初はカブラ村の草原でスライム50匹を倒しました。次に行ったのは獣人族の里の近くの森でゴブリンを3体とオーク3体を倒したのです」
ヒロシは収納からオーク3体とゴブリンの耳3体分を出した。
マルニクスさんの近くに置かれた嘘発見器の魔道具は青のままだったのでヒロシとミサエさんが嘘を付いていないことは証明された。
「ゴブリン3体とオーク3体だな」
「ゴブリン3体銀貨9枚、オーク3体金貨30枚、合わせて金貨30枚と銀貨9枚だ。疑うような事をして悪かった。魔力測定盤のレベルと魔物を照らし合わせても、お前たちの実力は間違いなくCランクの実力だ」
「ありがとうございます」
「それから、お前たちは今日からDランク冒険者として登録をするが、明日と明後日の2日間は冒険者講習を受けてもらうので活動をするのはその後だ。今夜と明日の晩はギルド指定の宿屋で泊まってくれ」
「分かりました、よろしくお願いします」
マルニクスは、ギルド内で差別発言をしていた勇者オーディックと聖女アネルマに釘を刺した。
「おい、お前たちも、先輩冒険者としてヒロシとミサエに色々と教えてやってくれ」
「ソタイン村のザリットに俺たちが教えることは何もない」
「ザリットの村人でも同じ人間だ。ギルド内で差別は許さん」
ヒロシとミサエさんは“ザリット”という言葉の意味をまだ知らなかった
“ザリット”という言葉の意味は、まだ二人には分かっていなかった。だが、村人の身分が、ギルド内で差別を受けているのは明らかで、よそ者への偏見がだと感じた。
その夜、二人はギルド指定の宿屋「髭の酒蔵亭」に向かった。
オカロダ町の中心部から徒歩5分ほど、石畳の通りに面した木造の建物だった。
「ミサエさん、ここが宿屋だよ。名前の通り、酒場も兼ねてるみたいだね」
「ヒロシさん、なんだか賑やかで楽しそう」
店内は木の香りが漂い、冒険者たちの笑い声とエールのジョッキがぶつかる音が響いていた。
宿屋の主人は髭を蓄えた陽気な男で、二人を温かく迎えてくれた。
「いらっしゃい、ギルドからの紹介だね。部屋は二階の奥、夕食はすぐに出せるよ」
夕食は名物の「ボアファングのシチュー」と「オクタ揚げ」。
オーク肉の腸詰めを揚げたオクタ揚げは、外はカリッと中はジューシーで、二人は思わず顔を見合わせて笑った。
「ヒロシさん、これ美味しいわね」
「うん、異世界の料理も悪くないね」
飲み物は、ポヤティラ山の伏流水で仕込まれた「アロゴエール」と、山ぶどう酒を一杯ずつ。
どちらも鉄貨3枚、オクタ揚げは大盛りで鉄貨5枚。宿代は二人で銀貨2枚だった。
「ミサエさん、銀貨1枚が1万円だとすると、今日は2万円か……」
「でも、食事も部屋も満足だし、いい出費だったと思うわ」
部屋は木造の落ち着いた造りで、窓からはオカロダ町の灯りがちらちらと見えた。
二人は手を握って見つめ合いながら、今日の出来事を静かに振り返った。
「ミサエさん、今日は色々あったけど、俺たち、ちゃんと前に進めてるよね」
「ええ、恥ずかしいこともあったけど、それも経験よ」
「明日からの講習、頑張ろう」
「うん、私たちならきっと大丈夫」
その夜、キャンピングカーは結界の中で静かに待機していた。
タブレットの賢者は、次なる指示を静かに準備していた。
続く──
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作品での通貨の目安(全作品共通)
通貨単位 G《ギル》通貨は全世界共通
※ 通貨の価値は全作品をとおして同じとします
小鉄貨 1G 10円
鉄貨 10G 100円
銅貨 100G 1000円
銀貨 1000G 10000円
金貨 10000G 10万円 ※一般に流通しているのは金貨まで
白金貨 1000000G 1千万円
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