改訂版 愛のエキスと聖女さま

にしのみつてる

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第3章

神託の街と遺されし記憶・王都ケトマスとバリアポリシ~ランシンの遺品~

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 セレスティアドックのハッチから降りた4人はデカチョラ山に向かって走っていた。

「エレナ、ベッキ、今度こそ負けないからな」
「アラン、イワン、勝負よ」

「時間は夕方までの3時間真剣勝負」
「ああ、いいだろう」
「「アースディグ」」
 ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ……アランとイワンのアースディグが炸裂した。

「「アースディグ」」
 ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ……エレナ、ベッキも同じようにアースディグを炸裂させた。
 山が瞬く間に削られいくが、後でグラウンド・ウィーブで修復されるので誰も気付かないだろう。

「ヒロシさん、毎度のことながら壮絶な戦いですね」
「サブロー、魔物が狩れないからストレス発散だよ」

「それにしては皆んなで楽しんでいませんか?」
「まあね」

 ヒロシとサブローが呆れ返るのも無理は無かった。意思を持ったバトル執事とバトルメイドは何処かのCMのように『24時間戦える』優秀なパートナーだった。夜中に寝るのはヒロシたち4人だけだったが、リミッターが外れているので眠らなくてもいいはずだったが、人間の癖で夜になると4人は眠りについた。

 バトル執事とバトルメイドは元々がゴーレム由来なので魔力が有る限り動くそうだが、イワンいわく、マイクロ魔導原子炉に交換したので1万年は稼働し続けるそうだ。

 4人はいつ呼ばれてもいいように外で待機したが、次第に手持ち無沙汰になったので金の精錬を始めようとした。
「「「「フォージ・ゴールド」」」」
 ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン……

 4人の魔力が循環して金塊が次々と積み上げられている。一応、金以外の不純物と岩石に分けられ。不純物は後で銅と銀を精錬する予定だった。金塊が10000個を超えていた。

「「「「グラウンド・ウィーブ」」」」

「ふぅ~、ようやく終わった」
「サブロー、勝負の結果は?」

「はい、今回は引き分けだそうです」
「それがいい」

 ガンガン、「今夜は味噌カツです~ お残しは許しません」
「ナツコさんが外に出てきて大声で呼んでいる」

 夕食の後はブリーフィングを真っ最中だった。

「明日はケトマスに行こうと思うけど……」
「ヒロシさん、今から試験飛行を兼ねて飛んで。マッハで飛べば10分もかからないわ」

「アラン、イワン、メガドラコニアの方も終わったの?」
「はい、補助リアクターも含め、艦内の魔導原子炉は全てオリハルコンに交換されています」

 ヒロシはモニターの時計を確認した。「19時ケトマスに向けて出航」

「目的地、ピーラ山」
「了解、目的地をピーラ山にセットします」

「絶対防御Max展開」
「圧力隔壁異常無し」
「飛空システム異常なし」
「オートバランサー作動正常」
「オートジャイロ作動正常」
「射撃統制システム作動正常」
「計器類オールグリーン」
「フライトチェック、完了」

「大型マジック・リアクター起動」
「エネルギ出力100%」
「大型マジック・リアクター圧力安定」

「セレスティアドッグ発進」
「テイクオフ」
「目的地、ピーラ山に設定、オートパイロット作動、視界クリアー、コース障害無し」

「速度マッハ1、圧力安定しています」

「ミサエさん、市場は閉まっていますが、王都中心部は夜遅くまで開いてそうです」
「エレナ、ベッキありがとう」

 ポーンポーン、「まもなくピーラ山に着陸します」
「降下開始」
「スピードブレーキアップ、200キロ」
 ポーンポーン、「高度1000メートル」
「ギアダウン、微速前進、高度300メートル」
「タッチダウン」

「ダリナさん、漁火がきれいでいい眺めですね」
「本当ね」

「王都の冒険者ギルドまで転移門で転移しよう。神界への報告も兼ねてスイーツも発見したいね」
「はい」
 ピーラ山から、王都の冒険者ギルドまではヨダシステムに共通座標が登録されていたので、難なく転移ができた。 

 王都ケトマスは眠らない街で、西のナニサカ市と共に許可を貰えば終日営業が可能な街だった。

   大通りは多くの商店が店を開け、買い物客で賑わっていた。 

(ヒロシさん、神界から緊急神託が届いています。ミサエさんと直ぐお戻り下さい)
 ラファエルの念話でヒロシとミサエさんはピーラ山のセレスティアドッグに転移して戻った。 

「ラファエル、緊急神託の内容を教えてくれ」
「バリアポリ市にて、ランシンの遺品が発見されたそうです」
  「悪意の波動が徐々に満ちており、新たな脅威になる可能性があります」

「ラファエル、座標ボールからルミナスの矢で消滅は出来ないの?」
「座標ボールは悪魔と生体の波動には反応しますが、過去の遺物に宿る悪意は検知できません」
「なるほどね、だから、バリアポリ市に行くしか無いんだね」
「そうです」

  (サブロー、ダリナ、ケトマスの夜を楽しんでくれ)
  (俺とミサエさんは一足先にソタイン村に転移してそこからキャンピングカーでバリアポリ市に向かうよ)
  (ヒロシさん、ミサエさん、お気をつけて) 
(ミサエさん、行ってらっしゃい)

  こうして、ヒロシとミサエさんはソタイン村へと転移し、収納からキャンピングカーを出して乗り込んだ。飛行時間は約10分ほどの短いフライトだった。

 キャンピングカーを収納に仕舞って、二人はジェネオス・マサキ、アギオス・ユーミーの碑に静かに手を合わせた。

「マサキさん、ユーミさん、力をお貸し下さい」
 二人が祈りを捧げると、一条の光は宗教施設の方向に伸びていた。


「ミサエさん、あの教会に遺品があるかも知れないね」  
「ええ、元はランシンの教会だったから、遺品は地下の礼拝堂に保管されていたはずよ」

 ふたりは碑の裏手にある古い石段を降り、礼拝堂の奥へと進んだ。  
 そこには、封印された木箱が静かに置かれていた。

「ラファエル、解析をしてくれ」  
(はい、波動解析開始……悪意の残留波動、LV4.9。座標ボールでは検知不能な“記憶型”です)

「ミサエさん、神託の通りだね。これは神意でしか見つけられない」  
「ヒロシさん、浄化を始めましょう」

「ルミナス・ピュリファイ」  
「アギオス・セラフィム」

 光が礼拝堂を満たし、箱の中から黒い霧が立ち上がった。  
 それは静かに揺れ、やがて風に溶けるように消えていった。

「悪意の波動、消失確認。神界ログに記録します」  
「ラファエル、ありがとう」

 ふたりは再び碑の前に戻り、静かに頭を下げた。  
「マサキさん、ユーミさん……これで、また少し世界が穏やかになりました」  
「ええ。神託は、いつも静かに届くのね」

ヒロシは転移門を出して、ピーラ山のセレスティアドッグに転移した。

続く──

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