改訂版 愛のエキスと聖女さま

にしのみつてる

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第3章

王都で爆買いだった件~女神も男神が駄菓子で幸福指数120%急上昇~

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 ヒロシとミサエさんは転移門から、セレスティア・ドッグのブリッジに足を踏み入れた。

「ヒコさん、ナツコさん、リマーナ、ご苦労様」
「お疲れ様でした、ヒロシさん、ミサエさん」

 ヒロシは、王都ケトマスへの転移門を開いた。

 王都の冒険者ギルド前。夕食後にもかかわらず賑わう大通りで、サブロー、ダリナ、エレナ、ベッキが待ち構えていた。

「ヒロシさん、ミサエさん、お帰りなさい!」サブローが笑顔で手を振る。
「お疲れ様でした、ランシンの遺品の浄化、無事済んでよかったです」とダリナ。

「ごめん、ごめん、またせたね」
「いくらノープランの俺でもまさか神託でバリアポリ市に行くことになるとは、想定外だったよ」
 ヒロシは冗談半分、頭をかきながら軽い調子で謝った。

「これで悪意の芽は一つ減ったわ」ミサエさんも穏やかに笑った。

「さあ、それじゃ爆買いツアーの開始だ!」ヒロシが号令をかけると、王都の夜が一段と輝きを増したように見えた。

「スイーツ探しのミッション、再開よ。おやつは銀貨1枚までのルール、今夜だけ撤廃!」
 ミサエさんが高らかに宣言した。

「ミサエさん、甘さにも品格が必要です。わたくしが同行いたします」
 ダリナがすかさずミサエさんの隣についた。二人は老舗の和菓子屋へと吸い込まれていった。

 一方、エレナとベッキは互いに頷き合う。

「ターゲット確認、駄菓子爆買い開始!」エレナの瞳が戦闘時と同じ鋭さで煌めく。
「応!」ベッキは短く答え、路地裏の駄菓子問屋街へ向かって駆け出した。

 LV99999のバトルメイドの本気による爆買いは、もはや神速の域だった。問屋の主人が一瞬目を離した隙に、目当ての駄菓子が次々とカートに積み込まれていく。

「エレナ、これは『やばい棒』の大人買いセットです!」
「ベッキ、まだよ、まだ修行が足りないわ。『ポテチフライ』のコンソメ味も確保しなさい!」
(ミッション完了)

 駄菓子爆買いは、戦闘のストレス発散と同様、二人の重要なミッションであった。手持ちのアイテムボックスは、瞬く間に多種多様な駄菓子で埋め尽くされていった。

 ヒロシとサブローは、そんな彼女たちの姿に呆れながらも、微笑ましい視線を送る。

「ヒロシさん、すごいスピードで街の駄菓子が消えていってますね」サブローが苦笑する。
「まあ、後で金で払えばいいさ」
「サブロー、俺は吟醸酒を探すとするよ。『古酒は使ってこそ価値がある』だろ?」

「はい!僕も何か技術開発に使える魔導部品を探してきます」

 ヒロシは王都に数軒しかない高級酒の店へ。サブローは魔導具の工房へと足を向けた。

 約一時間後。約束の場所である広場に、四組が再集結した。

 ミサエさんとダリナのアイテムボックスには、美しい練り切り、上品な羊羹、そして試食で選ばれた選りすぐりの洋菓子がぎっしり保管されていた。
 エレナとベッキのアイテムボックスからは、駄菓子の山がはみ出しそうになっていた。

「ヒロシさん、今回はこの『夜空の輝き』という名の和菓子が特に気に入りました」
 ミサエさんは満足そうに報告する。

「ええ、甘さが引き締まっていて、品格のある逸品でした」ダリナもうっとりと頷いた。

「ヒロシさん、古酒と共に、王都の最新型の魔道通信機の設計図を見つてきました!」
 サブローは興奮した様子だった。

「へぇ、それはいい獲物だね。後でアランとイワンに解析してもらおう」

「エレナとベッキは?」

「ミッション完了!王都の駄菓子在庫、一時的に僅少化させました!」 エレナは堂々と胸を張る。

「……完了」 ベッキは無言で、大量の駄菓子が詰まった大きな籠を収納から取り出した。


「じゃあそろそろセレスティア・ドッグに戻ろうか?ナツコさんが今頃、新しく手に入れた食材で何か作ってくれているだろうから」

 ヒロシは転移門を開き、一同はピーラ山のセレスティア・ドッグへと転移した。

 ◇ ◇ ◇ ◇
 セレスティア・ドッグのリビングでは、ナツコさんが新食材を使った料理を並べていた。香ばしい匂いが艦内に広がり、帰還したメンバーたちは思わず足を止める。

「ナツコさん、これは……」
「ええ、王都の市場で手に入れた“星芋”を使ったグラタンです。あと、駄菓子を使った創作スイーツもあるわ」

 テーブルには「やばい棒のカナッペ」「ポテチフライのミルフィーユ仕立て」など、ナツコさんの奇跡の一皿が並んでいた。

 リマーナはミルクセーキを手に、満面の笑みで言った。

「おかえりなさいませ~! 今日の晩餐は、爆買いの成果を最大限に活かした“スイーツ・オーバードライブ”です!」

 ヒロシは吟醸酒を注ぎながら、仲間たちの顔を見渡す。

「こうしてみんなで食卓を囲めるのが、何よりのご褒美だな」

 ミサエさんは頷き、静かに杯を掲げた。

「ヨダシステムからの情報によりますと、神界では「お菓子女子会」と男神の脳筋お菓子勝負」が行われ、世界中の幸福指数はついに120%を超えたそうです」

「世界中の幸福指数が上がる理由、わかった気がするわ」

 その夜、セレスティア・ドッグの艦内には、笑い声とスイーツの香りが満ちていた。神界の女神たちも、遠くからその宴を見守りながら、そっと微笑んでいた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ 

その頃、神界では――

 ヘーラを先頭に、女神たちによる「お菓子女子会」が絶賛開催中。 駄菓子を囲んだ笑い声と紅茶の香りが神殿を満たし、世界中の幸福指数はついに120%を突破した。

「この『やばい棒』、食感が神域ね!」 「『ポテチフライ』のコンソメ味、これは神託級の旨さよ!」

 女神たちは口々に絶賛しながら、ヒロシたちが持ち帰った駄菓子を次々と試食していた。

 そして、女神たちの幸せな様子を見守る男神たちは、吟醸酒の盃を傾けながら静かに頷いた。

「『やばい棒』を正式に神饌に加えるのじゃ」 「『ポテチフライ』のコンソメ味、も同様じゃ」
「異世界の味覚、侮れんな」

「「「「「意義な~し」」」」」
野太い声が神殿に響き渡り、吟醸酒は異常なペースで消費されていった。一方、女神たちはミルクセーキを手に、ヘーラが下賜した美しい練り切りと上品な羊羹にうっとりした表情を浮かべていた。

 こうして―― ヒロシが王都で購入した吟醸酒、そして女神たちが選び抜いた「やばい棒」「ポテチフライ」、そして美しい練り切りと上品な羊羹が神界の公式神饌として認定された。

 神々の宴は夜通し続き、地上ではその余波として、翌朝の駄菓子売り場が軒並み品薄となったという。

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