改訂版 愛のエキスと聖女さま

にしのみつてる

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第3章

座標ボールの設置~安全システムの試金石~

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 次の朝……
 ピピピ、ピピピ、ピピピ……ラファエルはいつものようにヒロシとミサエさんを起こした。

「おはようございます。次の目的地を決定させていただきます」
「次の候補地は……南の大陸 エーゲ周辺の国を回って、最終的には全世界を回る旅になります」

「ああ、たぶんそう言うだろうと思っていたよ」

「何でヒロシさんたちが次の目的地を知っているのですか?」
「昨日、ラファエルがアップデートか何かで答えてくれなかったから、俺が地図を紙に転写して4人で目的地を決めたんだ」

「ソウダッタノデスカ……」
 ラファエルはかなり残念そうな声で返事をした。

「ラファエル、気にしないで、また今日から一緒によろしく頼むよ」
「ハイ、お任せください」

 ラファエルは再び元気な声に戻った。ラファエルの感情が豊かになったのは、ヨダシステムが更新されたので感情が生まれたとのだった。

「ラファエル、ところで俺たちがいる島の名前を知っている?」
「はい、メラーナ島です」
「ヒロシさんたちが最初に着いたオルメノスから南に80キロの距離です」

「俺たちはそんなに飛んできたのか、知らなかったよ」
 ラファエルは普通の魔道士だと10キロも飛べは魔力切れになって動けなくなるが、ヒロシたちは膨大な魔力なので魔力切れを起こすことが無いことを説明した。


 ◇ ◇ ◇ ◇

「ヒロシさん、ミサエさん、おはようございます」
「サブロー、ダリナ、おはよう」

 ミサエさんとダリナは朝食の準備にとりかかった。

「「「「いただきます」」」」
 今朝のメニューはエラーダ国のパンとエラーダヨーグルト、新鮮な海老サラダだった。エラーダヨーグルトは水切りヨーグルトとも呼ばれていて固めのヨーグルトだった。


「ヒロシさん、転移門は行ったことが無い場所には行けないのですか?」

「そうだね、タイタニア号の遭難は緊急事態だったので、俺たちが行ったことの無い、キースロー国際空港へ乗客を転送出来たけど、普通はこれまでに行った先の座標ポイントだと思うよ」

「例えば、全く行ったことがない場所を指定した場合、転移先が誰かの家につながったり、危険な場所だったら目も当てられないからね」

「そうですね、いきなり他人の家では不法侵入になりますね」
「そうだよ」

 サブローは思考加速と並列処理を使って更に深く考えた。AIクリスタル脳に変わってからは並列処理で答えを導くのに早くなったのだった。

「そうか、目的地に座標の代わりに魔石を置いておけばいいんだ」
「ヒロシさん、魔石ですよ、魔石を転移先の座標にすれば簡単に移動ができます」

「サブロー、いいことに気づいたね」
「えへへ、それほどでもないです」
 サブローはヒロシに褒められたので照れていた。

「サブロー、串肉屋さんに魔石を置いておけば何時でも串焼き肉が食べに行けるね」
「ダリナさん、ナイスアイディアです」

「サブロー、ショルラッグ3本よ」
「ハイ」
 サブローは収納から串焼き肉を3本だした。

「ヒロシさん、サブローのアイディアは素晴らしいと思うわ」
「それなら、私もナトホカのケーキ屋さんに好きなときに行けるから」

「ミサエさん、それもいいですね」

「サブロー、地面に魔石がむき出しだと盗難に遭うぞ」
「そうですよね~」

「とりあえずは座標のアイディアは決まったから、ケースバイケースで魔石にカモフラージュするのはどうかな」
「ヒロシさん、それどういうことなの?」

「ミサエさん、隠蔽魔法を予めかけておいたソフトボール大の座標ボールを空中に浮かべておくの」
「例えば、ソタイン村なら魔女の家の上空に置いておけば、仮に隠蔽魔法が解けて村人が気付いても魔石は空の上だから絶対に取ることは出来ないと思うよ」
「オカロダ町に行きたい場合は、座標ボールをアチヤ川の堤防の上空に設置するとか」
「オウランバータの肉屋さんの上空に座標ボールを設置するとか……」

 ヒロシは暫くの間思考加速で考えていた。

「俺たちの今のレベルなら隠蔽魔法と浮遊魔法で下に移動すれば絶対に他人には見つからないよ」

(ヒロシさん、転送魔法を忘れています)
(ラファエル、ありがとう)

「「「ああ、なるほどね」」」

「ヒロシさん、座標ボールは早速実行ですね」

「そうだね、サブローが言ってた肉屋さんの近くに座標ボールを設置しに行こうよ」
「ヒロシさん、ありがとうございます。これで串焼き肉がいつでも買うことが出来ます」

 サブローとダリナは先にオウランバータの肉屋の裏に転移した。ヒロシとミサエさんは念話で会話しながらログハウスで待機していた。

「ダリナさん、ここなら誰も来れませんよ」
 サブローは上空1000メートルにソフトボール大の小さな魔石で出来た球を浮かべ、座標ボールに浮遊魔法と念写魔法をかけた。念写魔法は常時発動にしてタブレットに画像を転送しても良かったが魔石の魔力を節約して5分毎に静止画像を転送するように調整をした。

「ヒロシさん、座標ボールの設置は完了です」
「サブロー、ご苦労様、鮮明な画像がこっちに転送されているよ」

「ミサエさん、どう?、これれなら人に怪しまれないでしょ」
「そうね、合格よ」
 サブローとダリナはオウランバータの肉屋で串焼き肉をそれぞれ50本買った。

「ヒロシさん次はナトホカのケーキ屋さんよ」
「ハイ、ミサエさん、分かっていますよ」
 ヒロシは、創造魔法を発動して座標ボールは既に10個を作っていた。

 ミサエさんは転移門でナトホカに瞬間移動して洋品店横の公園の上空に座標ボールを設置した。
 ミサエさんとダリナは洋菓子店でそれぞれショートケーキを20個ずつ買った。

「ヒロシさん、次の場所はどうしますか?」
「サブロー、タイバン島のカステラ屋さんだよ」

「サブロー、私が設置して来るわ」
 ダリナはタイバン島に転移して座標ボールを設置してくれた。

(ダリナ、サブロー、ついでにパラチ島にも座標ボールを設置してきて)
(ヒロシさん、了解です)

「ヒロシさん、ソタイン村へは行かないの?」
「うん、行きたいけどやめておく」

「じゃあ、ゼニト村も同じね」
「うん」

「そうなると、王都ケトマスは?」

 4人は地図を見ながら次の候補地を探していた。

「ヒロシさん、くどいようだけど、ソタイン村とゼニト村にも座標ボールを設置しましょう」
「ミサエさん、何で?」

「たぶん、神様たちがは私たちが座標ボールを設置したから絶対に静止画像を見ていると思うわ」
「あっ、そうだった」

「ヒロシさん、僕とダリナでゼニト村に設置してきます」
「サブロー、お願いするよ」
(サブロー、イルクスカとキャフテの町もお願いね)
(了解です)

「ヒロシさん、私たちはソタイン村ね」
「そうだね」

「ふう~、これで座標ボールは5個設置したね」
「ヒロシさん、オカロダ町とキント市も設置していきましょう」
「ミサエさん、わかっていますよ」

 こうして座標ボール10個は今までヒロシたちが行った場所に設置された。
 最後に現在滞在しているエラーダ国に設置していなかったので追加で2個作った。

 ◇ ◇ ◇ ◇

「申し上げます。ヒロシ、ミサエ夫婦が設置した座標ボールの映像が神界に届いております」

「うむ、スクリーンに拡大投影じゃ」

「おお~、ゼウス様、これは鮮明な画像ですな」
「そうじゃな、民の様子が手に取るようにわかるのじゃ」

「ゼウス様、ご覧ください。ナトホカでマヨネースとカニコロッケが流行の兆しを見せております」
「先日のシロー、スミレ夫婦が伝えたレシピがもう市民に伝わったようじゃな」

「はい、そのようですね」

「こちらは、オカロダ町の様子ですな」
「今度は問題なさそうですな」

「そうじゃな、ソタイン村も平和なようで安心じゃ」

 ◇ ◇ ◇ ◇

 ヒロシたちが設置した座標ボールの設置場所

 イルクスカ(ロキシア国)
 ゼニト村(ロキシア国)
 キャフテの町(ロキシア国とオウランバータの国境)
 オウランバータ(肉屋)
 ナトホカ(ロキシア国の洋菓子店)

 ソタイン村
 オカロダ町
 キント市
 タイバン島
 パラチ島

 オルメノスの草原
 エラーダ国の港
 メラーナ島

 

続く──

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