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第3章
マカロンの街から、ハンバーガーの国へ――竜の巣なんか怖くない。空を越えて、アメリキ国へ
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メラーナ島で待機中の翌朝、皆んなで朝食にムサカ料理を食べながら話をしていた。
ムサカとはミサエさんとダリナがマスターしたナスを使ったエラーダ料理だった。
「ヒロシさん、アメリキ国へは行かないのですか?」
「そうだね、たぶん直ぐに飛ぶとは思っているよ」
「サブロー、それよりも、レーダーとログハウスの強度アップだ。この前の120%運転でガタがでているはずだ」
「そうですね」
「ラファエル、元の世界のレーダーの仕組みを解析してくれ。それと並行してログハウスのガタを調べておいてくれ」
「ヒロシさん、了解しました。バックグラウンドでログハウスのガタを調べています」
「ドップラーレーダーの信号解析完了しました。魔石に付与した探知魔法の周波数(f0)をログハウスから放射し、積乱雲内部の乱気流(空気分子)に当たって戻ってきた周波数のズレ(Δf)を解析することで、雲の内部構造と移動速度をリアルタイムで把握できます!」
「サブロー、今の解説で分かったか?」
「ヒロシさん、僕は文系ですよ。わかる訳がありません」
「俺も物理は苦手だった」
ラファエルは、魔石を圧縮してバレーボール大の魔導レーダーを完成させていた。ログハウスの屋根に4個取り付ける事で全周囲の観測が可能となった。
「サブロー、魔導レーダーの取り付け完了、モニターに転送してくれ」
「ヒロシさん、了解です」
「ヒロシさん、何だか雨雲レーダーを見ているようね」
「俺もそう思った」
「ミサエさん、その考え方で合っています」
ラファエルはレーダの話を始めようとしたが、ミサエさんがそれを止めた。
一方、ダリナとミサエさんはアメリキ国の食べ物話で盛り上がっていた。
「ミサエさん、ドーナッツとフライドチキン、それにハンバーガーが有ると思います」
「ダリナ、貴女が食べたい物ばかりね」
「エへへ~、ミサエさん、バレていましたか?」
ダリナは本音がバレたのでペロッと舌を出した。
「ダリナさん、コーラも有りますよね」
「サブロー、そうよ、コーラよ」
「ミサエさん、それよりもミシンが有るかも知れないよ」
「えっ、ヒロシさん、ミシンが有るの?」
「うん、たぶんね、俺たちと同じ渡り人がミシンを開発していればの話だけどね」
「ダリナさん、ヒロシさんとミサエさんは何でミシンの話だけで幸せな表情になれるのですか?」
「そうよ、私たちはドーナッツとフライドチキンなのに」
「不思議ですね」
「そうね、不思議ね」
「ダリナさん、何だかドーナッツとフライドチキンを食べた気分になってきました」
「サブロー、私も同じ気持ちよ」
「あっ」「あっ」二人は顔を見合わせた。
「ダリナさん、僕たちも幸せな気分でいっぱいでしたね」
「そうよ、私たちアメリキ国へは行っていないけど、二人に共通な話題だと幸せな気分になれるのよ」
「ダリナさん、早くアメリキ国へ行きたいです」
「サブロー、私もよ」
「ヒロシさん、このまま飛行しても問題はありません」
「それなら良かった」
「ラファエル、神界から新しい情報は来ていないの?」
「1年前の情報から召喚勇者と聖女はわがまま仕放題です。新しい情報は入ってきていません」
「ヒロシさん、ログハウスの魔導系統は異常はありません。いつでも発進可能です」
「ラファエル、ありがとう」
「飛行ルートはアトラシア海を横断しますが、朝8時にメラーナ島を出発して直接ニューヨーキに向かいます。到着はニューヨーキ時間の17時頃です」
「ヒロシさん、ソタイン村に転移してアメリキ国に飛ぶのはどうかしら?」
「ミサエさん、それだと今の倍以上の時間がかかってしまいます。到着時刻は翌日の午前0時です」
「わかったわ、アトラシア海を飛びましょ」
ミサエさんは、元の世界の感覚で簡単に言ったが、実際はソタイン村からチョノルル島を経由し、ロサンゼルキ、ニューヨーキまで飛行コースでアトラシア海の15時間に対して約29時間のフライトだった。
「ラファエル、出発用意」ヒロシの掛け声でラファエルはフライト前チェックを読み上げた。
「絶対防御Max展開」
「圧力隔壁異常無し」
「飛空システム異常なし」
「オートバランサー作動正常」
「オートジャイロ作動正常」
「計器類オールグリーン」
「フライトチェック、完了」
「目的地をアメリキ国ニューヨーキに設定。オートパイロット作動、視界クリアー、コース障害無し」
「テイクオフ」
ログハウスは、朝の光を受けてゆっくりと浮かび上がった。
「ミサエさん、お茶が入りました」
ダリナがお茶を入れてくれた。
「ミサエさん、そう言えば、飛行ルートはガリア国の近くを飛んでいきすね」
「元のフランスと同じだから……きっとマカロンがあるはすです」
「ダリナ、マカロンを買いに行きましょう」
「ラファエル、コース変更、目的地はガリア国、パリシよ」
ポーン、ポーン、「コース、ガリア国、パリシに変更します」
出発から約2時間後、ログハウスは、ビンセントの森上空300メートルで静かにホバリングしていた。
「ラファエル、大きな悪意を持つ輩はいないようだね」
「はい、パリシ市街地は魔力流が穏やかです。安全圏、確保済みです」
時刻は午前10時頃、パリ市の大通りは多くの人々で賑わっていた。
ヒロシとサブローは、青の錬金術師服に着替え、ミサエさんとダリナは青の魔女服を身に纏った。 隠蔽魔法を発動して空から降り立った。四人は何事もなかったかのように隠蔽魔法を解除して、目的のマカロンの店へと歩いていった。
ラファエルが神界のヨダシステムから共有されているパリシの情報を転送してきた。
「パリシには三つの魔道具店があるそうですが、平民が入れるのはドミニク魔道具店とセザール魔道具店です」
ヒロシとサブローは、ドミニク魔道具店へ向かった。 店内は質素ながら整然としており、魔導具が静かに並んでいた。
「これは……認識阻害のペンダントだな」 ヒロシが手に取ると、ラファエルが即座に解析を始めた。
「魔力波を周囲に拡散し、存在感を希薄化させる効果があります。実用性、高」
一方、ミサエさんとダリナはセザール魔道具店へ。 店内は華やかで、装飾品が多く並んでいた。
「このミスリル鉱石、品質は劣るけど、細工には使えるわね」
「ダリナ、購入よ」
「ミサエさん、このアメジストとガーネット、指輪の装飾に使えそうです」
2人は小さな宝石を選び、銀貨数枚で購入した。
4人は魔道具店を後して広場を歩いていると、路地裏からチンピラが現れた。
「おい、そこの青い魔女たち、いい服着てるじゃねえか」
男がミサエさんとダリナに襲いかかろうとした瞬間、バリアが展開された。男は弾かれて地面に転がった。
「こんちきちしょう、刻んでやろうか」
「オブリビオン」 ダリナが呟くと、男は両手で口を押さえながら、何かを忘れたような顔で路地裏へと走り去った。
「ミサエさん、チンピラに絡まれるのはいつものことですね」
「そうね、でも今日はチョコレートとマカロンがあるから、気分が違うわ」
◇ ◇ ◇ ◇
ログハウスは、パリシを離れて南西へと進路を取った。 四人は、屋台で買ったそば粉のガレットで昼食をとった。
ハム、チーズ、卵を載せてもらい、料金は銅貨1枚だった。
「ダリナさん、美味しいですね」
「サブロー、3種のせは正解だったね」
「はい」
昼食後、お茶を飲みながら、ヒロシが収納から4つの指輪を取り出した。
「ミサエさん、買ってきた素材で認識阻害の指輪を作ったよ」
「ミサエさんはアメジスト、ダリナはガーネットだ」
ヒロシはミサエさんの薬指に認識阻害の指輪をはめた。サブローもダリナの薬指に認識阻害の指輪をはめた。
魔導エンジンは安定した唸りを上げ、午後の光の中、船体は静かにアンギリア国の空へと滑り込んでいった。
「ラファエル、目的地は王都ロンディーノ市。待機場所はお任せだ」
「了解しました。目的地、王都ロンディーノ市にセットします。視界クリア。コース障害無し」
午後2時過ぎ、ログハウスはアンギリア国のロンディーノ市の公園上空300メートルに到着した。
ロンディーノ市街は貴族街と平民街に別れており平民街から貴族街に接する街道沿いには、魔導オーブで焼き上げるスコーン専門店が並び、香ばしいバターと小麦の香りが風に乗って漂っていた。
「ミサエさん、ここはスコーンの聖地みたいな場所ですね」
「ええ、魔導バターを使った焼き菓子なんて、贅沢の極みよ」
ダリナは、店先に並ぶスコーンを見て目を輝かせた。スコーンはアンギリア国の伝統的な菓子で貴族のお茶会には必需品だった。
「このプレーンと、ベリー、それから……全部ください」
「ダリナ、落ち着いて。まずは試食からよ」
4人は「スコーン・ド・アンギリア本店」に入った。店内は焼きたてのスコーンの匂いを嗅いだだけで、ミサエさんとダリナは幸せな表情を浮かべていた。
大きめの魔導ショーケースに焼き立てのスコーンが満たされ、二人はここでも多めに買い物をした。
「ミサエさん、ここのスコーンは金貨2枚で30個入りの詰め合わせが買えますよ」
「ダリナ、10箱買いましょう。お茶会用ね」
ダリナは、収納にスコーンを丁寧に入れた。
「ミサエさん、ここのクロテッドクリームも魔導製で美味しそうです」
「それなら、紅茶と一緒にいただきましょう」
「ラファエル、アトラシア海の竜の巣の状況はどう?」
「現在、南西方向に魔力渦を確認。竜の巣の残留魔力が再活性化しています。進路を南側に1,000km迂回すれば安全に飛行可能です」
「了解。目的地はニューヨーキ。到着予定は現地時間19時に設定」
「目的地をアメリキ国ニューヨーキに再設定。迂回ルート確定、オートパイロット作動」
「テイクオフ」
ログハウスは、午後の空を裂くように再び浮かび上がり、アトラシア海の魔力渦を避けながら、西へ西へと進んでいった。
続く……
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ムサカとはミサエさんとダリナがマスターしたナスを使ったエラーダ料理だった。
「ヒロシさん、アメリキ国へは行かないのですか?」
「そうだね、たぶん直ぐに飛ぶとは思っているよ」
「サブロー、それよりも、レーダーとログハウスの強度アップだ。この前の120%運転でガタがでているはずだ」
「そうですね」
「ラファエル、元の世界のレーダーの仕組みを解析してくれ。それと並行してログハウスのガタを調べておいてくれ」
「ヒロシさん、了解しました。バックグラウンドでログハウスのガタを調べています」
「ドップラーレーダーの信号解析完了しました。魔石に付与した探知魔法の周波数(f0)をログハウスから放射し、積乱雲内部の乱気流(空気分子)に当たって戻ってきた周波数のズレ(Δf)を解析することで、雲の内部構造と移動速度をリアルタイムで把握できます!」
「サブロー、今の解説で分かったか?」
「ヒロシさん、僕は文系ですよ。わかる訳がありません」
「俺も物理は苦手だった」
ラファエルは、魔石を圧縮してバレーボール大の魔導レーダーを完成させていた。ログハウスの屋根に4個取り付ける事で全周囲の観測が可能となった。
「サブロー、魔導レーダーの取り付け完了、モニターに転送してくれ」
「ヒロシさん、了解です」
「ヒロシさん、何だか雨雲レーダーを見ているようね」
「俺もそう思った」
「ミサエさん、その考え方で合っています」
ラファエルはレーダの話を始めようとしたが、ミサエさんがそれを止めた。
一方、ダリナとミサエさんはアメリキ国の食べ物話で盛り上がっていた。
「ミサエさん、ドーナッツとフライドチキン、それにハンバーガーが有ると思います」
「ダリナ、貴女が食べたい物ばかりね」
「エへへ~、ミサエさん、バレていましたか?」
ダリナは本音がバレたのでペロッと舌を出した。
「ダリナさん、コーラも有りますよね」
「サブロー、そうよ、コーラよ」
「ミサエさん、それよりもミシンが有るかも知れないよ」
「えっ、ヒロシさん、ミシンが有るの?」
「うん、たぶんね、俺たちと同じ渡り人がミシンを開発していればの話だけどね」
「ダリナさん、ヒロシさんとミサエさんは何でミシンの話だけで幸せな表情になれるのですか?」
「そうよ、私たちはドーナッツとフライドチキンなのに」
「不思議ですね」
「そうね、不思議ね」
「ダリナさん、何だかドーナッツとフライドチキンを食べた気分になってきました」
「サブロー、私も同じ気持ちよ」
「あっ」「あっ」二人は顔を見合わせた。
「ダリナさん、僕たちも幸せな気分でいっぱいでしたね」
「そうよ、私たちアメリキ国へは行っていないけど、二人に共通な話題だと幸せな気分になれるのよ」
「ダリナさん、早くアメリキ国へ行きたいです」
「サブロー、私もよ」
「ヒロシさん、このまま飛行しても問題はありません」
「それなら良かった」
「ラファエル、神界から新しい情報は来ていないの?」
「1年前の情報から召喚勇者と聖女はわがまま仕放題です。新しい情報は入ってきていません」
「ヒロシさん、ログハウスの魔導系統は異常はありません。いつでも発進可能です」
「ラファエル、ありがとう」
「飛行ルートはアトラシア海を横断しますが、朝8時にメラーナ島を出発して直接ニューヨーキに向かいます。到着はニューヨーキ時間の17時頃です」
「ヒロシさん、ソタイン村に転移してアメリキ国に飛ぶのはどうかしら?」
「ミサエさん、それだと今の倍以上の時間がかかってしまいます。到着時刻は翌日の午前0時です」
「わかったわ、アトラシア海を飛びましょ」
ミサエさんは、元の世界の感覚で簡単に言ったが、実際はソタイン村からチョノルル島を経由し、ロサンゼルキ、ニューヨーキまで飛行コースでアトラシア海の15時間に対して約29時間のフライトだった。
「ラファエル、出発用意」ヒロシの掛け声でラファエルはフライト前チェックを読み上げた。
「絶対防御Max展開」
「圧力隔壁異常無し」
「飛空システム異常なし」
「オートバランサー作動正常」
「オートジャイロ作動正常」
「計器類オールグリーン」
「フライトチェック、完了」
「目的地をアメリキ国ニューヨーキに設定。オートパイロット作動、視界クリアー、コース障害無し」
「テイクオフ」
ログハウスは、朝の光を受けてゆっくりと浮かび上がった。
「ミサエさん、お茶が入りました」
ダリナがお茶を入れてくれた。
「ミサエさん、そう言えば、飛行ルートはガリア国の近くを飛んでいきすね」
「元のフランスと同じだから……きっとマカロンがあるはすです」
「ダリナ、マカロンを買いに行きましょう」
「ラファエル、コース変更、目的地はガリア国、パリシよ」
ポーン、ポーン、「コース、ガリア国、パリシに変更します」
出発から約2時間後、ログハウスは、ビンセントの森上空300メートルで静かにホバリングしていた。
「ラファエル、大きな悪意を持つ輩はいないようだね」
「はい、パリシ市街地は魔力流が穏やかです。安全圏、確保済みです」
時刻は午前10時頃、パリ市の大通りは多くの人々で賑わっていた。
ヒロシとサブローは、青の錬金術師服に着替え、ミサエさんとダリナは青の魔女服を身に纏った。 隠蔽魔法を発動して空から降り立った。四人は何事もなかったかのように隠蔽魔法を解除して、目的のマカロンの店へと歩いていった。
ラファエルが神界のヨダシステムから共有されているパリシの情報を転送してきた。
「パリシには三つの魔道具店があるそうですが、平民が入れるのはドミニク魔道具店とセザール魔道具店です」
ヒロシとサブローは、ドミニク魔道具店へ向かった。 店内は質素ながら整然としており、魔導具が静かに並んでいた。
「これは……認識阻害のペンダントだな」 ヒロシが手に取ると、ラファエルが即座に解析を始めた。
「魔力波を周囲に拡散し、存在感を希薄化させる効果があります。実用性、高」
一方、ミサエさんとダリナはセザール魔道具店へ。 店内は華やかで、装飾品が多く並んでいた。
「このミスリル鉱石、品質は劣るけど、細工には使えるわね」
「ダリナ、購入よ」
「ミサエさん、このアメジストとガーネット、指輪の装飾に使えそうです」
2人は小さな宝石を選び、銀貨数枚で購入した。
4人は魔道具店を後して広場を歩いていると、路地裏からチンピラが現れた。
「おい、そこの青い魔女たち、いい服着てるじゃねえか」
男がミサエさんとダリナに襲いかかろうとした瞬間、バリアが展開された。男は弾かれて地面に転がった。
「こんちきちしょう、刻んでやろうか」
「オブリビオン」 ダリナが呟くと、男は両手で口を押さえながら、何かを忘れたような顔で路地裏へと走り去った。
「ミサエさん、チンピラに絡まれるのはいつものことですね」
「そうね、でも今日はチョコレートとマカロンがあるから、気分が違うわ」
◇ ◇ ◇ ◇
ログハウスは、パリシを離れて南西へと進路を取った。 四人は、屋台で買ったそば粉のガレットで昼食をとった。
ハム、チーズ、卵を載せてもらい、料金は銅貨1枚だった。
「ダリナさん、美味しいですね」
「サブロー、3種のせは正解だったね」
「はい」
昼食後、お茶を飲みながら、ヒロシが収納から4つの指輪を取り出した。
「ミサエさん、買ってきた素材で認識阻害の指輪を作ったよ」
「ミサエさんはアメジスト、ダリナはガーネットだ」
ヒロシはミサエさんの薬指に認識阻害の指輪をはめた。サブローもダリナの薬指に認識阻害の指輪をはめた。
魔導エンジンは安定した唸りを上げ、午後の光の中、船体は静かにアンギリア国の空へと滑り込んでいった。
「ラファエル、目的地は王都ロンディーノ市。待機場所はお任せだ」
「了解しました。目的地、王都ロンディーノ市にセットします。視界クリア。コース障害無し」
午後2時過ぎ、ログハウスはアンギリア国のロンディーノ市の公園上空300メートルに到着した。
ロンディーノ市街は貴族街と平民街に別れており平民街から貴族街に接する街道沿いには、魔導オーブで焼き上げるスコーン専門店が並び、香ばしいバターと小麦の香りが風に乗って漂っていた。
「ミサエさん、ここはスコーンの聖地みたいな場所ですね」
「ええ、魔導バターを使った焼き菓子なんて、贅沢の極みよ」
ダリナは、店先に並ぶスコーンを見て目を輝かせた。スコーンはアンギリア国の伝統的な菓子で貴族のお茶会には必需品だった。
「このプレーンと、ベリー、それから……全部ください」
「ダリナ、落ち着いて。まずは試食からよ」
4人は「スコーン・ド・アンギリア本店」に入った。店内は焼きたてのスコーンの匂いを嗅いだだけで、ミサエさんとダリナは幸せな表情を浮かべていた。
大きめの魔導ショーケースに焼き立てのスコーンが満たされ、二人はここでも多めに買い物をした。
「ミサエさん、ここのスコーンは金貨2枚で30個入りの詰め合わせが買えますよ」
「ダリナ、10箱買いましょう。お茶会用ね」
ダリナは、収納にスコーンを丁寧に入れた。
「ミサエさん、ここのクロテッドクリームも魔導製で美味しそうです」
「それなら、紅茶と一緒にいただきましょう」
「ラファエル、アトラシア海の竜の巣の状況はどう?」
「現在、南西方向に魔力渦を確認。竜の巣の残留魔力が再活性化しています。進路を南側に1,000km迂回すれば安全に飛行可能です」
「了解。目的地はニューヨーキ。到着予定は現地時間19時に設定」
「目的地をアメリキ国ニューヨーキに再設定。迂回ルート確定、オートパイロット作動」
「テイクオフ」
ログハウスは、午後の空を裂くように再び浮かび上がり、アトラシア海の魔力渦を避けながら、西へ西へと進んでいった。
続く……
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