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第3章
「愛する人たちとの平和な日常」を守ろうよ~ペスメノスクリーン計画・堕天使浄化作戦~
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オランドに滞在中のヒロシたちは、つかの間の休日を満喫していた。
前日、『ねずみの国』での遊戯施設体験があまりにも楽しく、特にダリナとサブローが夢中になったため、翌日も再び訪れることになった。ねずみの夫婦の広場で記念撮影をしたり、魔導駆動のボートライドで水上を滑ったりと、二人はまるで子供のようにはしゃぎ、ヒロシとミサエさんもその様子を微笑ましく見守っていた。
「サブローさん、今日もあのアヒルの乗り物に乗りましょう!」
「ダリナさん、もちろんだよ。昨日よりもっと楽しもう!」
そんな穏やかな時間の中、ヒロシはふと現実へと意識を戻した。オランドの遊戯施設で遊んでいた6組の勇者と聖女たちは無力化に成功していた。
堕天使・ルシファーの情報が全く無い。広大なサンパウロ国にいきなり行っても、何処に『堕天使・ルシファーが召喚した勇者と聖女』が居るのかはさっぱり検討がつかなかった。
「ラファエル、しつこいようだけど、サンパウロ国が俺たちの最終目的地だよね」
「はい、その予定です。……何しろ国土が広大なのでヨダシステムの地図が補完されておらず『堕天使・ルシファー』の場所が全く特定できないのです」
「ヒロシさん、元の世界でブラジルにはサンパウロにキリスト像が手を広げた大きな像がありましたよ」
「ダリナ、いい閃きだね。ああいう巨大な像の下には、何かと『悪意』が集まりやすいものだ」
「ヒロシさん、『堕天使・ルシファーが召喚した勇者と聖女』は10組だったので、全て無力化されたのでサンパウロ国にはいないのと違いますか?」
「サブロー、どうだろうね」
「サンパウロ国には俺たちを憎んでいた元・オカロダ町の勇者と聖女グループ・マリティレスがいるし、確か、粛清された地方領主と貴族が移住していたはずだよ」
「そうでした、マリティレスの存在を完全に忘れていました。堕天使より、むしろ彼らの方が執念深そうです」
「ヒロシさん、サブローさん、先に鉱山で魔石を大量に1000樽以上入手しませんか?無人機を30機作って、座標ボールを400個程作れば完全に敵を無力化することは可能だと思われます」
ヒロシは窓の外、楽しそうに遊具を見上げるミサエさんたちの姿に目を向けた。この一瞬の平和な時を、誰にも邪魔させてはならない。
「ああ、やろう。この平穏な日常を続けるためだ。徹底的に潰しておこう」
「ラファエル、鉱山の候補はあるの?」
「はい、メヒコ国のサラテカ鉱山とサンパウロ国のカジラヤ鉱山です。メヒコ国のサラテカ鉱山はミスリル鉱石と銀を調達し、特にカジラヤ鉱山は無尽蔵に魔鉱石が算出しているようです」
「ちなみに、串肉料理はサンパウロ国のシュラスコが有名です」
ミサエさんが笑顔で言う。「ええ。サンパウロで一番の極上シュラスコを探し出すのが、次のミッションよ。無人機(ドローン)は、平和な遠足を続けるためのお守りのようなものね」
「ヒロシさん、メヒコ国は採掘だけにして、サンパウロ国のシュラスコは外せませんね」
「サブロー、串肉料理は楽しみだね」
「ダリナさん、よだれが出ていますよ」
ダリナは慌てず、持っていたコーラを一口んだ。
「最高の串肉料理には最高の準備が必要なのよ。ね、サブロー?」
「はい、ダリナさん!」
「ラファエル、フライト前チェック、目的地はメヒコ国サラテカ鉱山にその後、サンパウロ国のカジラヤ鉱山だ」
「了解しました。フライト前チェックを行います」
「絶対防御Max展開」
「圧力隔壁異常無し」
「飛空システム異常なし」
「オートバランサー作動正常」
「オートジャイロ作動正常」
「射撃統制システム作動正常」
「計器類オールグリーン」
「フライトチェック、完了」
「テイクオフ」
「目的地をメヒコ国サラテカ鉱山に設定、オートパイロット作動、視界クリアー、コース障害無し」
ポーン、ポーン、「メヒコ国サラテカ鉱山まで2200キロ、およそ4時間24分です」
ログハウスは高度4000メートルを維持し、順調に飛行していた。
プープー、プープー、「敵、感あり、15度方向、距離2万メートル。魔力レベル50、対象は堕天使・ルシファーが召喚している召喚魔導師複数と認定、これより無力化します」
ヒロシはコーヒーを一口飲み、静かに言った。「極上の平和の平和を維持していくには、目の前の悪意を持つ連中を叩いておこう」
「迎撃モード移行」
ログハウス上部の重機関銃は魔核エネルギーを収束した光の矢『ルミナスの矢』が生成された。これは殺傷ではなく、対象のスキルを全て封印し、レベルを永久に5に封印する神の呪いだった。
「『ルミナスの矢』発射まで3、2、1…」
ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!
光の矢が空を裂き、飛空船に当たり周囲に目に見えない魔法陣が展開された。
「悪意の消滅を確認」
「通常モードに移行」
「アラン、イワン、今の飛空船に召喚魔術師たちが乗船していたのか?」
「おそらくですが、10組の勇者・聖女たちの無効化がバレたのだと思われます」
「それで、サンパウロ国から召喚魔術師を呼んだのだな」
ヒロシは立ち上がり、皆んなを見渡した。「愛する家族(なかま)のためだ。徹底的に叩くぞ」
「「「えいえいおー!」」」
「アラン、イワン、悪意の対象をLV5に変更、《ペスメノスクリーン計画》開始」
その言葉が発せられた瞬間、ヒロシと仲間たちを取り巻く空気が一変した。
オリンポスの公用語であるギリシャ語での作戦名が、彼ら亜神の力を増幅させ、無力化の効率を高めることとなった。
「了解しました。無人機、座標ボールに修正プログラムを転送します」
「イワン、修正バッチ起動、『チェンジ・LV5』」
「アラン、転送完了、『エグジット・B』」
「スクリーン投影」
「サブロー、かなり派手に撃っているな」
「そうですね、全員が無力化されるのはもう少し時間がかかりますね」
「アラン、イワン、ナイトメアを付与して魔術士が召喚魔術を完全に忘れされるのは可能なの?」
「はい可能です」
「じゃぁ、とどめにナイトメアも悪意を持った全員に転送して」
ヒロシは、モニターに映る無力化された飛空船を見据えた。「この世界の平和のため、そして何より、俺たちの遠足を邪魔させないためだ」
「了解、『チェンジ・LV5+ナイトメア』」
「『エグジット・B』」
「1号、定時報告。対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「1号、了解」
「2号、定時報告、対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「2号、了解」
「3号、定時報告、対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「3号、了解」
「4号、定時報告、対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「4号、了解」
「5号、定時報告、対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「5号、了解」
「6号、定時報告、対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「6号、了解」
「ヒロシさん、サブローさん、《ペスメノスクリーン計画》は無事完了です」
「アラン、イワン、アメリキ国全土をカバーしようとすると、今の倍はいるよね」
「そうですね……ワイバーン型無人機は30機、座標ボールを300個くらいでしょう」
ヒロシは笑った。「俺たちは『世界中の愛する人のために働こうよ』イワン、全機フル生産だ」
「イワン、ワイバーン型無人機の増産だ」
「了解」
「モデリング・ワイバーン・ドローン✕15」
「モデリング・ワイバーン・ドローン✕15」
アランとイワンの錬金術が起動すると、工作スペースには硬質なミスリルの残光が走り、次々と無人機が形を成していく。それは、最強の技術者たちが『愛する人たちの守りの盾を創り出す、神業の光景だった。
「イワン、楽勝だな」
「アラン、そうだな」
「俺たち、楽しいよな!」
「そうだな!」
「ベッキ、私たちは『強化型座標ボール』を150個づつよ」
「了解」
「クリエイト・エンハンスドコーディネートボール✕150」
「クリエイト・エンハンスドコーディネートボール✕150」
エレナとベッキの手から、無限のMPが奔流のように溢れ出し、空間を満たす。それはまるで、二つの小型魔導原子炉が同時に稼働したかのような、圧倒的な光景だった。
「エレナ、楽勝よ」
「そうね」
「カタパルトオープン」
艦体の腹部が開き、外部に接続されたカタパルトデッキが静かに展開される。
「カタパルト準備完了」
「『ワイバーン型無人機7号』射出準備完了」
「方位 0度、打ち上げ角、15度」
イワンが真剣な面持ちで叫ぶ。
「では、合言葉の斉唱!」
ヒロシからエレナまで、クルー全員の声が、リビングに響き渡った。
「イ・パゴスミア・イリーニ・マス! Η Παγκόσμια Ειρήνη μας!」
ギリシャ語の響きが、無人機の出力をわずかに高めた。
「3,2,1……」
「発射!」チューン
「射出成功」
ワイバーン型無人機が轟音を立てずに、しかし圧倒的な速度で青空へと消えていく。
「皆さん、射出に30分ほどかかりますので早めのお昼にしましょう」
「アラン、イワン、任せるよ」
「お昼は、ヌードーにしてみました」
「エレナ、ベッキ、あの勇者と聖女たちは、ラーメンを作らせていたの?」
「はい、勇者と聖女は教会の施設でわがまま仕放題だったようです。勇者と聖女たちが作らせたラーメンはニューヨーキのフードコートから出張させていたようで、結果としてアメリキ国民にラーメンが認知され、今ではアメリキ国のソウルフードになったようです」
「ふ~ん、あいつら相当の馬鹿だったと聞いたけど、まともな事もしたようだね」
「そうですね……」
「ヒロシさん、元の世界のアメリカ人がBBQソースに醤油を使うように、ソイソーもマヨネーズも当たり前なの」
「美味しい食べ物には国境はないのよ」
「ダリナさん、コーラです」
「サブロー、ありがとう」
終り──
----------------------------------
前日、『ねずみの国』での遊戯施設体験があまりにも楽しく、特にダリナとサブローが夢中になったため、翌日も再び訪れることになった。ねずみの夫婦の広場で記念撮影をしたり、魔導駆動のボートライドで水上を滑ったりと、二人はまるで子供のようにはしゃぎ、ヒロシとミサエさんもその様子を微笑ましく見守っていた。
「サブローさん、今日もあのアヒルの乗り物に乗りましょう!」
「ダリナさん、もちろんだよ。昨日よりもっと楽しもう!」
そんな穏やかな時間の中、ヒロシはふと現実へと意識を戻した。オランドの遊戯施設で遊んでいた6組の勇者と聖女たちは無力化に成功していた。
堕天使・ルシファーの情報が全く無い。広大なサンパウロ国にいきなり行っても、何処に『堕天使・ルシファーが召喚した勇者と聖女』が居るのかはさっぱり検討がつかなかった。
「ラファエル、しつこいようだけど、サンパウロ国が俺たちの最終目的地だよね」
「はい、その予定です。……何しろ国土が広大なのでヨダシステムの地図が補完されておらず『堕天使・ルシファー』の場所が全く特定できないのです」
「ヒロシさん、元の世界でブラジルにはサンパウロにキリスト像が手を広げた大きな像がありましたよ」
「ダリナ、いい閃きだね。ああいう巨大な像の下には、何かと『悪意』が集まりやすいものだ」
「ヒロシさん、『堕天使・ルシファーが召喚した勇者と聖女』は10組だったので、全て無力化されたのでサンパウロ国にはいないのと違いますか?」
「サブロー、どうだろうね」
「サンパウロ国には俺たちを憎んでいた元・オカロダ町の勇者と聖女グループ・マリティレスがいるし、確か、粛清された地方領主と貴族が移住していたはずだよ」
「そうでした、マリティレスの存在を完全に忘れていました。堕天使より、むしろ彼らの方が執念深そうです」
「ヒロシさん、サブローさん、先に鉱山で魔石を大量に1000樽以上入手しませんか?無人機を30機作って、座標ボールを400個程作れば完全に敵を無力化することは可能だと思われます」
ヒロシは窓の外、楽しそうに遊具を見上げるミサエさんたちの姿に目を向けた。この一瞬の平和な時を、誰にも邪魔させてはならない。
「ああ、やろう。この平穏な日常を続けるためだ。徹底的に潰しておこう」
「ラファエル、鉱山の候補はあるの?」
「はい、メヒコ国のサラテカ鉱山とサンパウロ国のカジラヤ鉱山です。メヒコ国のサラテカ鉱山はミスリル鉱石と銀を調達し、特にカジラヤ鉱山は無尽蔵に魔鉱石が算出しているようです」
「ちなみに、串肉料理はサンパウロ国のシュラスコが有名です」
ミサエさんが笑顔で言う。「ええ。サンパウロで一番の極上シュラスコを探し出すのが、次のミッションよ。無人機(ドローン)は、平和な遠足を続けるためのお守りのようなものね」
「ヒロシさん、メヒコ国は採掘だけにして、サンパウロ国のシュラスコは外せませんね」
「サブロー、串肉料理は楽しみだね」
「ダリナさん、よだれが出ていますよ」
ダリナは慌てず、持っていたコーラを一口んだ。
「最高の串肉料理には最高の準備が必要なのよ。ね、サブロー?」
「はい、ダリナさん!」
「ラファエル、フライト前チェック、目的地はメヒコ国サラテカ鉱山にその後、サンパウロ国のカジラヤ鉱山だ」
「了解しました。フライト前チェックを行います」
「絶対防御Max展開」
「圧力隔壁異常無し」
「飛空システム異常なし」
「オートバランサー作動正常」
「オートジャイロ作動正常」
「射撃統制システム作動正常」
「計器類オールグリーン」
「フライトチェック、完了」
「テイクオフ」
「目的地をメヒコ国サラテカ鉱山に設定、オートパイロット作動、視界クリアー、コース障害無し」
ポーン、ポーン、「メヒコ国サラテカ鉱山まで2200キロ、およそ4時間24分です」
ログハウスは高度4000メートルを維持し、順調に飛行していた。
プープー、プープー、「敵、感あり、15度方向、距離2万メートル。魔力レベル50、対象は堕天使・ルシファーが召喚している召喚魔導師複数と認定、これより無力化します」
ヒロシはコーヒーを一口飲み、静かに言った。「極上の平和の平和を維持していくには、目の前の悪意を持つ連中を叩いておこう」
「迎撃モード移行」
ログハウス上部の重機関銃は魔核エネルギーを収束した光の矢『ルミナスの矢』が生成された。これは殺傷ではなく、対象のスキルを全て封印し、レベルを永久に5に封印する神の呪いだった。
「『ルミナスの矢』発射まで3、2、1…」
ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!
光の矢が空を裂き、飛空船に当たり周囲に目に見えない魔法陣が展開された。
「悪意の消滅を確認」
「通常モードに移行」
「アラン、イワン、今の飛空船に召喚魔術師たちが乗船していたのか?」
「おそらくですが、10組の勇者・聖女たちの無効化がバレたのだと思われます」
「それで、サンパウロ国から召喚魔術師を呼んだのだな」
ヒロシは立ち上がり、皆んなを見渡した。「愛する家族(なかま)のためだ。徹底的に叩くぞ」
「「「えいえいおー!」」」
「アラン、イワン、悪意の対象をLV5に変更、《ペスメノスクリーン計画》開始」
その言葉が発せられた瞬間、ヒロシと仲間たちを取り巻く空気が一変した。
オリンポスの公用語であるギリシャ語での作戦名が、彼ら亜神の力を増幅させ、無力化の効率を高めることとなった。
「了解しました。無人機、座標ボールに修正プログラムを転送します」
「イワン、修正バッチ起動、『チェンジ・LV5』」
「アラン、転送完了、『エグジット・B』」
「スクリーン投影」
「サブロー、かなり派手に撃っているな」
「そうですね、全員が無力化されるのはもう少し時間がかかりますね」
「アラン、イワン、ナイトメアを付与して魔術士が召喚魔術を完全に忘れされるのは可能なの?」
「はい可能です」
「じゃぁ、とどめにナイトメアも悪意を持った全員に転送して」
ヒロシは、モニターに映る無力化された飛空船を見据えた。「この世界の平和のため、そして何より、俺たちの遠足を邪魔させないためだ」
「了解、『チェンジ・LV5+ナイトメア』」
「『エグジット・B』」
「1号、定時報告。対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「1号、了解」
「2号、定時報告、対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「2号、了解」
「3号、定時報告、対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「3号、了解」
「4号、定時報告、対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「4号、了解」
「5号、定時報告、対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「5号、了解」
「6号、定時報告、対象物の沈静化を確認」
「引き続き、警戒を密にせよ」
「6号、了解」
「ヒロシさん、サブローさん、《ペスメノスクリーン計画》は無事完了です」
「アラン、イワン、アメリキ国全土をカバーしようとすると、今の倍はいるよね」
「そうですね……ワイバーン型無人機は30機、座標ボールを300個くらいでしょう」
ヒロシは笑った。「俺たちは『世界中の愛する人のために働こうよ』イワン、全機フル生産だ」
「イワン、ワイバーン型無人機の増産だ」
「了解」
「モデリング・ワイバーン・ドローン✕15」
「モデリング・ワイバーン・ドローン✕15」
アランとイワンの錬金術が起動すると、工作スペースには硬質なミスリルの残光が走り、次々と無人機が形を成していく。それは、最強の技術者たちが『愛する人たちの守りの盾を創り出す、神業の光景だった。
「イワン、楽勝だな」
「アラン、そうだな」
「俺たち、楽しいよな!」
「そうだな!」
「ベッキ、私たちは『強化型座標ボール』を150個づつよ」
「了解」
「クリエイト・エンハンスドコーディネートボール✕150」
「クリエイト・エンハンスドコーディネートボール✕150」
エレナとベッキの手から、無限のMPが奔流のように溢れ出し、空間を満たす。それはまるで、二つの小型魔導原子炉が同時に稼働したかのような、圧倒的な光景だった。
「エレナ、楽勝よ」
「そうね」
「カタパルトオープン」
艦体の腹部が開き、外部に接続されたカタパルトデッキが静かに展開される。
「カタパルト準備完了」
「『ワイバーン型無人機7号』射出準備完了」
「方位 0度、打ち上げ角、15度」
イワンが真剣な面持ちで叫ぶ。
「では、合言葉の斉唱!」
ヒロシからエレナまで、クルー全員の声が、リビングに響き渡った。
「イ・パゴスミア・イリーニ・マス! Η Παγκόσμια Ειρήνη μας!」
ギリシャ語の響きが、無人機の出力をわずかに高めた。
「3,2,1……」
「発射!」チューン
「射出成功」
ワイバーン型無人機が轟音を立てずに、しかし圧倒的な速度で青空へと消えていく。
「皆さん、射出に30分ほどかかりますので早めのお昼にしましょう」
「アラン、イワン、任せるよ」
「お昼は、ヌードーにしてみました」
「エレナ、ベッキ、あの勇者と聖女たちは、ラーメンを作らせていたの?」
「はい、勇者と聖女は教会の施設でわがまま仕放題だったようです。勇者と聖女たちが作らせたラーメンはニューヨーキのフードコートから出張させていたようで、結果としてアメリキ国民にラーメンが認知され、今ではアメリキ国のソウルフードになったようです」
「ふ~ん、あいつら相当の馬鹿だったと聞いたけど、まともな事もしたようだね」
「そうですね……」
「ヒロシさん、元の世界のアメリカ人がBBQソースに醤油を使うように、ソイソーもマヨネーズも当たり前なの」
「美味しい食べ物には国境はないのよ」
「ダリナさん、コーラです」
「サブロー、ありがとう」
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