改訂版 愛のエキスと聖女さま

第３章

【閑話】転生者ジョージ・ヤマモトと最愛の妻キャンディ～『ねずみの国』の創設物語～

　了解しました。以下に、中盤から後半を厚くしつつ、物語の締めとしてヒロシたち四人が『ねずみの国』で楽しく過ごす描写を加えた改稿版をお届けします。

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『ねずみの国』がオランド市民から深く愛されているのには、特別な理由がありました。

　それは、創設者であるジョージ・ヤマモトという一人の転生者の夢と、その夢を支えた女性の存在です。

　ジョージ・ヤマモトは、元の世界では日系ハーフのハイスクール生でした。  
　2015年、帰宅途中に銀行強盗の銃撃に巻き込まれ命を落としますが、神の計らいで異世界アウレリアに転生します。

　転生特典として神から一つだけスキルを授かることになり、遊園地好きだった彼は迷わず《テーマパーク》を選びました。  
　神は本来《賢者》を授けるつもりでしたが、ジョージの意志が固かったため、表向きは諦めたふりをして、密かに《賢者》を隠しスキルとして授けたのでした。

　転生先はアメリキ国のオランド。17歳の牧場主の息子として新たな人生を始めます。  
　しかし、転生して間もなく、父が友人の連帯保証人となったことで牧場を失い、絶望の末に命を絶ってしまいます。

　残されたジョージは、債権主に嘆願し、10年での返済を認められました。  
　彼は牧場を廃業し、土地をテーマパークに作り変えることで借金を返す決意を固めます。

　とはいえ、当時のアメリキ国はまだ文明が発展途上。資金も技術も足りず、彼の夢は絵に描いた餅に過ぎませんでした。  
　そんな折、激しい頭痛に襲われ、《賢者》のスキルが覚醒。彼の脳裏には、元の世界で見た数々のテーマパークの構造や運営ノウハウが鮮明に蘇ります。

　ジョージは巨大な紙に予想図を描き、銀行に相談に向かいますが、父を失った彼に耳を傾ける者はいませんでした。

　そんな彼を救ったのが、地元の銀行家の娘・キャンディ（キャンディース）です。  
　彼女はジョージの描いた設計図に記された「魔導駆動」という未来的な技術に強く惹かれました。  
　当時、魔道具の技術はデンタロウとデンジロウという二人の技術者が独占しており、莫大な富を築いていました。  
　キャンディはハイスクールで魔道具の基礎を学んでいたこともあり、ジョージの技術と情熱に国を変える可能性を見出します。

「これだけの技術があれば、借金を返すどころか、この国を変えることができるわ」

　彼女は家の金庫から多額の初期資金を提供。  
　この支援は、後に王家と教会を母体とする巨大銀行の創設へと繋がっていきます。

　ジョージは《テーマパーク》のスキルを駆使し、元の世界で最も愛された「ねずみの夫婦」と「アヒルの親友夫婦」を核とした遊戯施設を建設。  
　表のテーマは「夢と未来」ですが、そこにはジョージとキャンディの「永遠の愛」が込められていました。

　遊具はすべて魔導駆動に改造され、蒸気や油を使わない静かで滑らかな動きを実現。  
　園内の建物や装飾は、当時のアメリキ国では考えられないほど精巧で、カラフルな配色が施されていました。

　開業後わずか1年で『ねずみの国』は莫大な利益を上げ、ジョージは牧場の借金を完済。  
　その後、ジョージとキャンディは正式に結ばれ、アメリキ国の文化と娯楽産業の礎を築いた夫婦として、  
　オランド市民から「人々を笑顔にする魔法使い」と敬愛される存在となったのです。

　──そして現在。

　秋の風が心地よく吹く午後、ヒロシ、ミサエさん、ダリナ、サブローの四人は『ねずみの国』のゲートをくぐっていた。

「うわっ、ほんとに魔法みたいだ！」とサブローが叫び、  
「見て見て、あのアヒルの乗り物、浮いてる！」とダリナが目を輝かせながら走っていった。

　ヒロシはパンフレットを広げながら、「ミサエさん、『星の城』に行こうよ。夜になると光るんだって！」とミサエさんに提案しました。  

　ヒロシは笑いながら「ミサエさん、今日は精一杯案内役を勤めます。迷ったらごめんね」と半分冗談を飛ばした。

　二人は手を取り合ってい、夢と未来が詰まった魔法の国を巡っていく。  
　ねずみの夫婦が微笑む広場で銀貨2枚で記念写真を撮り、アヒルの親友が案内するボートライドで水の上を滑るように進む。

　その笑顔の中には、かつてジョージとキャンディが描いた「人々を幸せにする魔法」が、確かに息づいていた。

　そして、夕暮れの空に浮かぶ魔導ランタンの光の下、ヒロシたちは声を揃えて叫んだ。

「また、絶対に来たいね」

『ねずみの国』は、今日も誰かの夢を叶え、誰かの未来を照らしている。

続く──
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