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第6章

6-6 空飛ぶ筏を作ろうよ ラファエル、スイーツがおすすめの都市はあるの?

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 ピピピ、ピピピ、ピピピ、ラファエルは今朝も朝6時のアラームでヒロシとミサエさんを起こしていた。もちろんサブローとダリナもラファエルのアラームで起こされていた。

「ミサエさん、おはよう」
「ヒロシさん、おはよう」

「ミサエさん、今朝は皆んなに聞いてもらいたことがあるんだ」
 ダリナとサブローも起きてきたので4人はテーブルの前に座った。

「皆んな、空飛ぶ島を作ってみない?」
「ヒロシさん、いよいよ青狸の世界ですか?」

「ダリナ、またヒロシさんとサブローが突拍子も無いことを考えているわよ」
「ミサエさん、毎回なので諦めましょうヒロシさんもサブローもですから」

「そうだったわね、厨二病はヒロシさんもこの前宣言してたわ」

 ヒロシは頭の中で温めていたイメージをタブレットに投影して3人に見せた。ヒロシが考えた空飛ぶ島の構造は底面が半球型のお椀のような形をしており、その上に平らな地面が載っていた。

「但し、この形を実現しようとすると地面が最低でも50メートルくらいは必要なんだ」
「ヒロシさん、飛空船は全長何メールですか?」

「ラファエル、飛空船の全長を教えてくれ」

「はい、キャラベル船でおよそ25メートルです」
「ちなみにガレオン船がおよそ50メートルです」

「それからヒロシさんの考えた構造では鉄礬石ボーキサイトが大量に必要になりこの世界には鉄礬石ボーキサイトが産出しないので現実的ではありません」

「サブロー、いい考えだと思ったけどな」

「ダリナ、ヒロシさんとサブローの討論が長引きそうだから先に朝食の準備をしましょう」
「ミサエさん、今朝のメニューは何ですか?」

「ダリナが買ったカステラとスイカのスムージはどうかしら?」
「後は貴女たちが大量にストックしている串肉で大丈夫でしょう」

「そうですね、サブローさんは朝からショルラッグだと思います」

 ミサエさんはスイカを半分に切ってスムージを準備しだした。ダリナはカステラを4皿分取り分け、マンゴーの種を取って実だけにして砂糖を加えてフードプロセッサーで細かくして冷凍魔法で固めたのだった。

「ミサエさん、マンゴーペーストが出来ました」

「ヒロシさん、サブロー、朝ごはんよ」
「「は~い」」

「ダリナさん、マンゴーカステラおかわりです」
「サブロー、ショルラッグ3本よ」
「ダリナさん、はい」
 サブローは収納からショルラッグを3本出した。


「ミサエさん、朝からスムージってどうしたの?」
「ヒロシさんがスイカのスムージって言っていたからダリナと大量に作ったのよ」

「ミサエさん、全部いただきます」
「ヒロシさん、冗談よ」

 朝食後……

「ヒロシさん、筏みたいに木で枠を組んで空に浮かべるのはどうでしょうか?」

「ラファエル、木枠の筏の強度は出せるのか?」
「はい、ところどころに筋交いを入れればガレオン船クラスの50メートルまで大丈夫だと思います」

「ラファエル、この辺の針葉樹林で大丈夫なのか?」
「強度的にはけやき材が最高ですが、針葉樹に硬化強化魔法で大丈夫です」

「梁に相当する部分は高さ30センチ✕幅20センチで材料を用意しましょう」
「間に20センチ✕幅15センチの小梁を渡す構造になります」

「サブロー、ここまで理解できたか?」
「ヒロシさん、木造建築なんて学校では習ってないから初めてですよ」

「サブロー、大体でいいんだよ、後はラファエル先生に構造計算は任せよう」
「そうですね」
「ラファエル、設計と構造計算は任せたよ」

「ヒロシさん、了解しました」

「さてと、材料になる木材の準備だね」
「ヒロシさん、この付近の木で間に合いそうですね」
「そうだね」

「ミサエさん、ダリナ、サブローと森で木を切ってくるよ」
「は~い、気をつけてね」

「ダリナ、ヒロシさんたち下手すると夕方まで帰ってこないよ」
「ミサエさん、私買い物に行きたいです」

 ダリナはサブローのタブレットに向かって命令をした。

「ラファエル、予備の転移門を作って」

「了解です、こちらが予備の転移門になります」
「ミサエさん、転移門は私たちが行ったことがない場所に行けないのですか?」

「そうねぇ、ヒロシさんは行った場所にしか使っていなかったね」
「ダリナ、ラファエルに聞いてみたら?」

「ラファエル、スイーツがおすすめの都市を教えて?」
「はい、ロキシア国のナトホカです。ナトホカのスイーツはダリナさんたちと同じ渡り人が作っているので元の世界と同じ味ですよ」

「ダリナ、今すぐナトホカに行くわよ」
「はい、ミサエさん」

(ヒロシさん、サブロー、私たちナトホカに行ってきます)
(えっ、ミサエさん、ナトホカって急にどうしたの?)

(ヒロシさん、スイーツを食べに行くのよ)

「サブロー、一大事だ!! 森どころじゃないぞ、俺たちも直ぐに戻ろう」
「はい」

「ミサエさん、戻りました」
「ダリナさん、ただいま~」

「まぁ、二人とも直ぐに戻ってきたから許してあげるわ。その代わりスイーツ代はヒロシさんのおごりね」
「はい、ミサエさん任せてください」

 ヒロシが転移門を開けると、ナトホカの港だった。4人は錬金術師と魔女の衣装で市内へと入って行ったのだった。

(ラファエル、先に高級スイーツ店に案内してくれ)
(了解です、そのまま大通りを歩いて魔導具店の横が洋服店で向かいがスイーツ店です)

「サブロー、ケーキを爆買いよ」
「ダリナさん、待って下さい」

 ミサエさんとダリナはスイーツ店で1つ銀貨2枚のショートケーキを40個と爆買いをした。それから1枚銅貨5枚のクッキーも100枚買ったのだった。ヒロシは金貨13枚を支払ったのだった。

「ヒロシさん、次は洋服のお店よ」

「ミサエさん、ちょっと待って~」
 ミサエさんとダリナはスキップで洋品店に入っていった。

「いらっしゃいませ、魔女様、導師様」
 洋品店の女性店員は精一杯の笑顔で迎えてくれた。

「魔女様、こちらの青の聖女服はいかがでしょうか?」
「元は正教会をイメージした青の聖女服ですが、ロキシア国で活躍されている大魔女様が最初に購入された服でして特に若い女性に人気の商品なのです」

「ダリナ、2着買っていこうよ」
「そうですね」

「魔女様、ご一緒に紺のマントはいかがでしょうか?」
「そうね、大魔女と被るのは嫌だから、紫色と桃色のマントを一緒にいただくわ」

「魔女帽子も紫と桃色のリボンをお付けしておきます」
「ありがとうございます、合わせて金貨15枚になります」

 ヒロシは店員に金貨15枚を渡した。

「ミサエさん、聖女服とマントがとっても似合っていますよ」
「ダリナさんも聖女服が似合っていますよ」

「ヒロシさん、アレよアレ」
「ミサエさん、待って下さい」

「サブロー、ダリナ、行くぞ」

 ミサエさんとダリナは屋台で揚げたてのピロシキを40個と多めに買ったが、隣の屋台では揚げたてのカツレツを売っていた。看板にはタレスタと書いてあった。

「おじさん、タレスタ40枚揚げて下さい」
「あいよ、銀貨4枚だ」

「ダリナ、食パンを探すわよ」
「ミサエさん、フィッシュバーガーですね」

「そうよ、タルタルソースは自分たちで作ればいいのよ」

 ヒロシとサブローは向かいの魔導具店のウインドウを覗いていた。

「ヒロシさん、オートマターが並んでいますね」
「そうだね、サブロー、金貨3000枚だよ」

「サブロー、店の中に入っていこうよ」
「はい」
(ミサエさん、ダリナ、魔導具店に寄っていきます)
(ヒロシさん、わかったわ、あとで行くから)

「ヒロシさん、変わった剣ですね」
「本当だね」

「導師様、こちらはハバロフキの若手魔導師が考えた魔剣シャシュカです」
「魔石を交換することによって、火、水、風、土、雷の各魔法が使えるのです」
「一振り金貨120枚です」

「そうなんですか」
(サブロー、俺たちと同じアイディアだな)
(そうですね、多分、渡り人だと思います)

 ヒロシとサブローは店内を見渡し、飛空石の値段を見て腰を抜かしそうになった。

「サブロー、飛空石は金貨10000枚だ」
「ヒロシさん、そんなに高いのですか?」

「導師様、こちらの飛空石はウラノカメンスク村産出の貴重な飛空石なのです」
「もっとも、これにアダマンタイトの触媒が必要でして、それと、飛行術式の加工が必要になります」
「飛ばせる船の大きさはコグ船から3本マストのカラベル船くらいまでです」

「ご主人、ここでアダマンタイトの買い取りはしているかね?」
 はい、ゲヌマヌイ産出のアダマンタイトが流通していますが、買い取りは可能です」

 ヒロシは店主にアダマントを一つ渡した。

「導師様、こちらはモンゴリヤ国のサンドワームから出てきた大粒のアダマンタイトですな」
「ひょっとして、皆様はサンドワームを倒されてきたのですか?」
「はい、そうです」
 ヒロシとサブローはロキシア国のAランクカードを店員に見せた。

「導師様、これは大変失礼しました」
「買い取りは1つ金貨1000枚になります」

(ヒロシさん、ゴーレムの核を買って帰りましょう)

「ご主人、ゴーレムの核は置いてあるかね」

「導師様、お目が高いですな、こちらは古代遺跡から産出したゴーレムの核石です」
「1つ金貨500枚でどうでしょう」

「では、ゴーレムの核石10個全部いただくよ」
「支払いはサンドワームからのアダマンタイト5個でいいかな」

「はい、ありがとうございます」

「サブロー、他に買いたい物はあるか?」
「いいえ、ヒロシさん、ミサエさんと合流しましょう」

「ご主人、ありがとういい買い物が出来たよ」
 ヒロシは礼を言って魔導具店の外に出た。

(話終わり)
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