改訂版 勇者と聖女の育成請け負います_みんなで育てれば怖くないね

にしのみつてる

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第2章

緊急処置と再インストール

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 一旦、物語の時間を午前に戻すことにしよう……

 ヨーヘーとアッコの冒険者講習が別館で始まって頃、シローとスミレさんはギルド受付で二人分の受講料を銀貨4枚を立て替えていた。ギルド職員は2階応接室に行くように案内したので二人は黙ってついていった。
 職員が応接室のドアを開けて案内するとギルドマスターのアレックスさんはスキンヘッドの頭を掻きながら丁寧に謝ってきた。

「シローさん、昨日は大変失礼した。俺も騒ぎで苛立っていたが……あの後、チーフに注意されて目が覚めたよ」
「謝罪は昨日いただいていますから気にしていませんよ」

「それなら良かった……さて、折り入って二人に相談があるのだが……」
「今からキチロス山まで馬車で移動しての鉱山周辺の調査を引き受けてくれないか?」

 テーブルに広げられた地図にはキチロス山の位置が記載され、『アンデッド多数・危険区域』と記入されていた。キチロス山へ行くには、馬車で1時間の距離だそうだが、山の麓は瘴気が濃く、山の周辺を常にアンデッドが徘徊しているので上位冒険者Cランクでも瘴気にあてられ命の危険があった。

「この場所は鉱山開発に失敗した山なんだが、アンデッドが徘徊していて立ち入れないのだ」
「それと、アンデッドが出している濃い瘴気で、冒険者もアンデッド化する場所だ」

「それは厄介ですね……」

「教会で浄化をしてもらわなかったのですか?」
「過去には教会にお布施を払っって浄化をしようとしたが、効果が無かったようだ

 シローとスミレさんはギルドマスターの依頼を断り切れずに半ば無理やり依頼にオッケーするしかなかったのだった。


「分かりました。今から調査に行って夕方には帰ってきます」
「お前たち、馬車を使わないで移動はどうするのだ」

「はい、飛行魔法で飛んでいきます」
「お前たちだから出来る魔法だな。それでは頼んだぞ」

 冒険者ギルド裏口でシローはスミレさんと手を繋いで飛翔魔法でキチロス山へ向かった。キチロス山の麓一体に近づくにつれて、重い空気になって瘴気が出ていることが分かった。二人は上空で待機していると雑魚アンデッドが周辺を徘徊をしていた。

(シローさん、スミレさん、徘徊している雑魚アンデッドはこの位置から広域浄化エリア・ピュリフィケーションで先に浄化しましょう)
(エリア・ピュリフィケーションはスミレさんが主になりますのでシローさんは飛行魔法を維持しながらスミレさんの抱えて魔力を供給し続けて下さい)

(ミカエル、そうするよ)
 シローは後ろからスミレさんを抱えるとオヘソの辺りで手を当てた。魔力の循環が始まって二人の体が輝き出した。

「「広域浄化エリア・ピュリフィケーション」」
 周辺を徘徊していた雑魚アンデッド1000体はスミレさんのエリア・ピュリフィケーションで全て浄化され消えて無くなった。

「スミレさん、雑魚アンデッドが消えて、瘴気が無くなったようだね。やっと洞穴に入れるね」
「ええ、大丈夫みたいね」
 スミレさんはシローが後ろからおへそに手を回していたので動揺していたが、地上に降りたのでドキドキがようやく収まってきた。

「スミレさん、行こうか」
「ええ」

「スミレさん、前方から赤い点が来る」

浄化ピュリフィケーション✕20」
 シローはスミレさんの後ろに回って魔力を補給しながら二人で浄化魔法を放った。ボスアンデッドは一瞬で浄化されていった。

「スミレさん、赤い点の塊が向かってくるよ」
 「「広域浄化エリア・ピュリフィケーション✕20」」ボスアンデッド5体と雑魚アンデッド100体は一瞬で浄化されていった。

「スミレさん、洞窟の奥に行ってみようよ」
「そうね、アンデッドは全て浄化されたから大丈夫ね」

「シローさん、金の欠片を拾って、冒険者ギルドに報告よ」
「そうだね」
 シローは金のかけら数個を収納にしまった。

「スミレさん、帰る前に、キャンピングカーを出してお茶とお昼にしようよ」
「そうよね、私たち朝から働きっぱなしだったわね」

 二人は遅めのお昼を食べて、その後ゆったりとお茶の時間を楽しんだ。

(シローさん、スミレさん、そろそろ冒険者ギルドに戻って下さい)

 ミカエルの声でシローとスミレさんは転移門を使って冒険者ギルドに移動し、受付で金鉱石の欠片を数点出した。受付の女性職員はシローたちを2階の部屋に案内したのだった。

「お前たち、早かったな」
「キチロス山は100年前からアンデッドの巣窟になっていたのだよ。当時の領主が欲をかいて鉱山を開発しようとしたが、鉱山開発は失敗に終わり口封じとして犯罪奴隷は全員が処刑されたのでそれがアンデッド化したのだ。人が近づかなければアンデッドたちは向こうからは襲って来ないので仕方なく鉱山を放置をしていたのさ」

「そうだったのですか」

「ところで、麓と洞窟内でアンデッドの攻撃は無かったのか?」
「はい、麓のアンデッドと洞窟内のアンデッドは俺とスミレが協力して浄化魔法で全て浄化してきました」

「はぁ~、お前たち教会の高位神官でも使えない広域浄化魔法まで使えるのか?」
「まぁ、たまたま使えたので」

「それなら、今後は瘴気が漏れ出ることは無いのだな」
「はい、全て浄化してきたので大丈夫です」

「鉱山の件は領主からせっつかれていたので助かったよ。今から領主に報告するので報酬は7日後に取りに来てくれ」

「これで、塩漬け案件の依頼は終了だ、受付で新しいAランクカードをもらってくれ」
「ありがとうございます」

 ◇ ◇ ◇ ◇

 夕方……ダンジョンから帰ってきた冒険者たちで冒険者ギルドが賑わう時間帯になってきた。

「シローさん、スミレさん、講習が終わったよ。俺たちクタクタだよ」
「ヨーヘーさん、アッコさん、俺たちも今終わったところだよ」

「ヨーヘー、ボっとしないで直ぐに防御魔法を展開するのよ」
「おう」

 4人は冒険者ギルドから出て大通りを歩いていた。大通りは冒険者も多かったが、仕事を終えた職人たちも多かった。中にはスリを働く輩がいるかも知れないので安全のために防御魔法は必要だった。

「ヨーヘーさん、アッコさん、俺たちは今夜もメガロイメラ山の洞窟でキャンプをします。明日の朝早くに冒険者ギルドの受付で会いましょう」

 シローとスミレはそう言い終わると、転移魔法で消えていった。

「ヨーヘー、あんたがしっかりしていからシローさんとスミレさんは怒って山へ帰っていったんだよ」
「アッコ、分かっているって、俺だってしっかりしないといけないのは分かっているつもりなんだ」
「だけど、何か肝心な事を直ぐに忘れてしまうんだ」

「そう言えば、私もスミレさんに何か大事なことを言われていたけど……まっ、いいかぁ~」


「ヨーヘー、それよりも何処かで食べ物を買って、今夜も河原で飲み明かしましょう」
「ああ、そうしよう」

「アッコ、ここの酒屋でビールを買っていこうよ」
「そうね、昨夜は飲みすぎたから今夜はビールにしましょう」

 二人は酒屋に入っていった。二人が思っている冷えたビールはこの世界には全く存在しなかった。エールと呼ばれる酒はビールとは違う味で店主に試飲をさせてもらったが生ぬるくて二人には不味く感じた。

 仕方が無いので、口当たりが良いミード酒を10本買ったのだった。

「アッコ、俺たちって酒に酔うと何でだらしないんだ?」
「それはヨーヘーが馬鹿だからよ」

 アッコとヨーヘーは大通りの酒屋で試飲と称して空きっ腹でエール何杯かとミード酒をしこたま飲んでいたので既にベロベロに酔いが回ってろれつが回らなくなっていた。酒店の店主は二人に試飲の代金以上にふっかけた。普通に考えても酒代は金貨1枚でお釣りがくる代金のところを金貨10枚もボッタクられたが、二人は全く気づいていなかったのだった。

(バイタル異常検知、生命の危険回避、キュアポインズン発動、エクストラヒール発動)

 ジョフィエルは二人がこのまま道端で寝てしまうと強盗に襲われる可能性が有るので生命の危険を察知してヨーヘーとアッコの意識を酔っ払う前の正常な状態に戻した。

(ジョフィエル、辞書強化版を再インストールを実行するのです)

 ミカエルは遠隔操作リモートコントロールでジョフィエルにヨーヘーとアッコにの再インストールと称して、神より託されたジェネオス・アギオスを神の使命に忠実に働くように脳に直接刻み込むプログラムを再インストールーをさせた。また、ヨーヘーとアッコの脳の一部を緊急手術し、ジョフィエルが24時間二人を監視する措置がとられた。

 ヨーヘーとアッコが寝落ちしそうになって10分後……

「ヨーヘー、しっかりして、直ぐに河原に帰りましょう」
「アッコ、ごめんごめん、俺たち酔っ払って寝たようだな」
「そうみたいね」

「アッコ、俺たち何か変わったぞ」
「そうね、私たち今までワガママだった心が無くなったよ」

「ヨーヘーさん、アッコさん、緊急手術は成功ですね」

「ジョフィエル、俺たちはどう変わったのだ?」
「それはヨーヘーさん、アッコさんのワガママな心が表に出ないように改ざんしたのです」

「あっ、そうか、俺たちがシローさんとスミレさんに嫌われた思っているのは俺たちのワガママからか?」
「そうです、前世の老人特有のワガママな心が消えずに転生してきたので、私が緊急処置として記憶の一部を改ざんしました」

「アッコ、明日になったらシローさんとスミレさんに謝ろう」
「ええ、そうね、そうしましょう」

 ヨーヘーとアッコの二人は無事に河原に帰ってきたが、シローとスミレのキャンピングカーは何処にも無かった。
 ジョフィエルに昨夜から今朝の出来事の詳細を聞いて、二人は反省をするしかなかった。一応、シローとスミレにはヨーヘーとアッコから念話でいつでも連絡が取れるのだが、ヨーヘーとアッコの二人は念話のやり方が全く分かってなかった。

(話終わり)

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