改訂版 勇者と聖女の育成請け負います_みんなで育てれば怖くないね

にしのみつてる

文字の大きさ
26 / 78
第3章

ハカトン市のハヤトとサクラ 

しおりを挟む
「スミレさん、ギルドは目の前ですよ」
「あっ、いけない。クレープに夢中になって忘れてたわ」
 テへペロ スミレさんは照れて小さく舌を出したが、シローは気付かない振りをした。

◇ ◇ ◇ ◇

 ハカトン市の冒険者ギルドは静かだった。ここの冒険者たちはダンジョン専門らしく、依頼ボードを眺めた感じではダンジョンの依頼で埋め尽くされていた。

シローとスミレさんは暫くの間、壁際で冒険者ギルドの様子を観察していた。受付のお姉さんの一人が二人に気づいたようでにっこり微笑んで海洋ダンジョンの無料券をくれたのだった。二人は無料券をくれたお姉さんの名前を聞くのを忘れてしまったが冒険者ギルドを挟んで真向かいが海洋ダンジョンの入口に入っていった。

 海洋ダンジョンとは、元は炭坑だった施設らしく、地下20階層まである本格的な冒険施設だった。シローとスミレさんは、海洋ダンジョンの無料券で入ったので、1階の初心者コースでしか戦えないが、奥に向かって少し歩いてみることにしたのだった。

「シローさん、赤いゼリー」
「スミレさん、普通のレイピアを出したよ」
 シローは収納の武器庫にしまってあったレイピアを取り出してスミレさんに渡した。

 プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、プシュッ、
 赤い石は辺り一面に散らばっていた。

「あんたら、この赤い石を拾わないのかい?」
「えっ、この赤い石のことですか?」

「ああ、この赤い石10個で出口の景品交換所で明太子ミョンナンに交換してもらえるのだよ」
「そうなんですか、どうもありがとうございます」

 親切なダンジョンの職員は、名札に『ハヤト』と書いてあった。年格好は22歳くらいでシローよりも少し歳上に感じだ。

 ミカエルの情報ではハヤト、サクラ夫婦は半年前にリストラされた勇者と聖女だった。都合の良いときだけ雇われ用済みになったので解雇されたのだった。今は海上ダンジョンの嘱託職員として雇用されているとの事だった。

「失礼ですが、勇者ハヤトさんですか?」
「ああそうだが……」

「私はシローと言います、こっちは妻のスミレです」
「ああ、ポセイドン様から二人のことは神託で聞いているよ」

「申し訳ないが、俺もサクラも昼までの勤務なので、昼の鐘がなったら、冒険者ギルドのフロアーで会おう」
「分かりました、連絡もせずに突然来てしまったのですみません」


「それから、昼までは二人で市内観光をして時間を潰してきます」
「ああ、そうしてもらえると助かるよ」

 シローとスミレさんはダンジョンの外に出て、昼まで市内観光をすることにしたのだった。

 シローとスミレさんは海上ダンジョンの外に出てハカトン市内の観光をすることにした。赤いスライムを倒して拾った赤い石は出口の交換所でミョンナンと交換してもらった。

 ダンジョンを出て、直ぐの場所にいちごパンケーキの看板が立てかけてあった。

「シローさん、今度はいちごパンケーキよ」
「スミレさん、ダッシュで走らなくても、今行きますよ」
 珍しくスミレさんが脱兎の如く看板に向かって走って行ったのでシローは追いかけるのに必死だった。

 店内は落ち着いた雰囲気で、女性客を中心に賑わっていたのだった。

「いちごパンケーキ2つお願いします」
「かしこまりました。いちごパンケーキ2つですね。お飲み物はどうされますか?」
「コーヒーを2つお願いします」

「おまたせしました。いちごパンケーキとコーヒーです」

「う~ん、甘~い」
 スミレさんが至福の顔をしている姿を今日は二回も見たが……シローは、いちごパンケーキを食べながら、この世界はスイーツが極端に少ないことに早く気づくべきだった。

「シローさん、そろそろ出ましょうか?」
「スミレさん、いちごパンケーキも美味しかったね」

「さっきのプリンクレープも良かったけど……やっぱりいちごは正義ね
「ソウナンデスカ?」

「生のいちごは、王都ケトマスでは見なかったね」
「そうね、この世界ではまだ作付けがされていないかも知れないね」

(シローさん、スミレさん、そろそろ約束の時間になりましたので戻りましょう)
(ミカエル、ありがとう)

 二人はいちごパンケーキの店を出て、冒険者ギルドに戻ったのだった。丁度、昼の交代時間になったらしく、受付の女性は俺たちの顔を見て、こちらにやって来た。

「はじめまして、ハヤトの妻のサクラです」
「はじめまして、王都ケトマスから来たシローです」
「妻のスミレです」

「サクラ、遅れてすまん、すまん」
「ハヤトさん、そんなに走らないで下さいな」

「シローさん、スミレさん、私達の家に来ませんか?」
「そこなら、人目を気にしなくて済みますから」

「「おじゃまします……」」


 ギルド職員が入居している社宅は冒険者ギルドから歩いて10分ほどの場所に建っていた。建物は全部で6軒建っており、どれも同じ形の家だった。 ハヤト、サクラ夫妻は他のギルド職員と一緒にそこに住んでいたのだった。

ギルド社宅の家賃は一月に銀貨1枚だったので破格の安さだった。その代わりに部屋は一部屋しかなく、キッチンは付いていなかった。共同トイレと共同の水くみ場があって、風呂はこの世界では無いに等しいので最低限の住居には違いなかった。


(話終わり)
----------------------------------

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

処理中です...