改訂版 勇者と聖女の育成請け負います_みんなで育てれば怖くないね

にしのみつてる

文字の大きさ
68 / 78
第6章

厄介事? 青銀色のちびドラゴン

しおりを挟む
「また、シローさんは厄介事に首を突っ込んで~」
 スミレさんは口では文句を言っていたが、顔はニコニコしていた。

「シローさん、劉景星の部下が我々の後を付けようとしていましたが、ゴーホームで巻いたようです」
「ネイト、全然知らなかったよ」

「それと、店の裏口で出入りが頻繁に行われていたので部下が冒険者ギルドで我々の素性を調べてきたと推測されます」

「ふ~ん、それはちょっと気になるね」

「シローさん、そもそも何で俺たちは強盗に襲われたのですか?」
「金持ち貴族のボンボンに間違われた可能性もあるけど、劉景星が予め対抗する『九龍血盟団』に嘘の情報を流したかも?」

「それなら、食事中に起きた不自然な攻撃は辻褄が合うわ」
「スミレさん、今回は殲滅作戦がいいと思います」

「シローさん、劉景星とその影部隊は『全員殲滅』よ」

「イーライ、ネイト、ヒナミ、ホノカ、聞いたとおりだ。殲滅作戦でいこう」
「了解しました。先に店内を探索します」

(超小型ドローン設置完了。龍香苑の様子を転送)

 ◇ ◇ ◇ ◇

 高級飲茶店「龍香苑」の内部映像がリビングの大型モニターに映し出された。
 表向きは高級飲茶店だが……劉景星は裏稼業にも手を染めていて。店には不釣り合いな黒尽くめの服装の男たちが動いているのが見えた。

「やっぱりいました。シローさんたちを嗅ぎ回っていた影の連中です」
 イーライが腕を組んだまま低くつぶやいた。

「イーライ、影って忍者みたいに諜報活動でもしているの?」と、シローが首を傾げた。

「劉景星が雇ってる裏稼業専門の連中です。普段は劉景星の護衛を兼ねていますが、人数が多すぎます」

 推測になりますが、麻薬、人身売買、禁制品の輸入、殺人依頼、その他裏稼業全般に手を染めていると思います」


「じゃぁ、イーライたちで見つからないように悪事を調べ『殲滅作戦』だから殺していいよ」
「「「「はい、任せて下さい」」」」


 深夜、シローたち4人は先に眠ることにした。


 イーライたちは転移魔法で「龍香苑」の裏口近くに移動した。店の裏口は人気がなかった。表向きは上流貴族が優雅に点心を楽しむ高級店だが、裏口は完全に別の空気をまとっている。

 イーライとネイト、ヒナミとホノカの4人は「龍香苑」の裏口に別の裏路を見つけ、店の地下へ通ずる入口を見つけた。

「サーチ」

「やっぱり、地下に影が五人いるようだ」
「『殲滅作戦』なので、強力なスタンガン✕5を発動しよう」
「ヒナミとホノカは援護を頼む」

 ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、瞬間、影の5人は心臓麻痺で起こして昇天していった。

 鉄格子の扉の向こうには……奥の部屋へとつながっていた。 奥の部屋には青銀色の鱗を持つ子犬くらいのちびドラゴンが鎖に繋がれて震えていた。劉景星の影の部下が五人、槍と短剣を構えて立っていた。

「侵入者だ!」
 ビー、ビー、ビー、警報音が鳴り響き、大勢の部下たちが別の通路からやってきたらしく、4人は完全に包囲された。

「広域殲滅、サンダーボルト✕5」
 ガラガラ、ピシャーン、ガラガラ、ピシャーン、ガラガラ、ピシャーン、ガラガラ、ピシャーン、ガラガラ、ピシャーン、大勢の部下たちは雷撃と電撃魔法で心臓麻痺で起こして一瞬で昇天していき積み重なっていた

「スタンガン✕5」
 ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、

 しかし、ここで問題が発生した。

「ギョワー」
 鎖に繋がれたドラゴンの目が真っ赤に染まり、突然、耳をつんざく咆哮を上げたのだ。
 その声だけで地下室の石壁が崩壊しそうになり、埃が舞い上がった。

「駄目だ、子ドラゴンが暴走してる!」
「シローさんたちに知らせよう」

「皆んな、大丈夫か?」
「はい、問題ありません」

「待って……」スミレさんが手を上げた。

「この子、衰弱しているけど怯えてるだけよ」

「パーフェクトヒール」
 そう言って、スミレさんはパーフェクトヒールを唱えた。

 眩い光がちびドラゴンを包み、震えが次第に収まっていく。
 赤く染まった瞳が青銀に戻り、か細い声が響いた。

「……ほんとうに、たすけてくれるの?」
「もちろんよ。もう大丈夫」
 スミレが優しく撫でると、ドラゴンは小さく鳴いて彼女の手に顔を寄せた。

 スミレさんが安堵の息を吐くが、すぐ後ろから重い足音が響いた。


「シャンルンに来たばかりの使徒様どもが、俺の商売を嗅ぎ回るとはな」

「ドラゴンを鎖で繋ぐのが真っ当な商売なのか?」
 サキヒコが鋭く言い放つ。

「この青龍はな、王に高値で売れるんだよ。国が欲しがってるんでな」
 劉景星は笑みを浮かべたまま、右手を振った。
「やれ」

 影たちが一斉に動いた瞬間、ヒナミとホノカが前に出た。
「スタンガン✕5・オーバーキル」
 ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、

 二人のバトルメイドはまるで舞うように戦い、影たちを次々と制圧していった。
 イーライとネイトも援護に回り、同じようにグロッグで攻撃した。
 一瞬で部下は全て心臓麻痺を起こし床に倒れていった。

 今回はシローから『殲滅作戦』だから殺していいよと許可を得ているので情け容赦はなかった。

「……おのれ、こんな連中に…」
 ビッ、ビッ、ビッ、 劉景星が言い終わる前にシローが留めをさした。

「敵殲滅完了、敵生命反応0を確認、依頼終了」

「ギョワー」
 その時、鎖が砕け散って、子ドラゴンの咆哮が起きた。

「ゴーホーム」
 青銀のドラゴンを抱えてログハウスに戻ったが、子ドラゴンをこのままにしておく訳にはいかなかった。

「龍香苑」の建物全体が子ドラゴンの咆哮で崩れ落ち瓦礫の山となった。公式記録では劉景星が調理中に爆発して従業員ともども建物の下敷きになったと記録された

「シローさん、神界からの緊急通信です。子ドラゴンは“リバイアサンの子”だそうです。放流先を指定されましたので、緊急発進します」

 ポーン、ポーン。
 放流先に到着し、シローたちは転移で子ドラゴンを解き放った。

 ポチャン。

「グワ~」

「シローさん、スミレさん、リバイアサンのお母さんのようです」
「本当だ」

「ふう~、やっと片付いたね」
「シローさんの厄介事はドラゴンと共に去っていったね」「そうだね」

「「「「「「「「ハハハ……」」」」」」」


「ミカエル、オウランバータに向かってくれ」
「了解です」

(話終わり)
 ----------------------------------

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

金髪女騎士の♥♥♥な舞台裏

AIに♥♥♥な質問
ファンタジー
高貴な金髪女騎士、身体強化魔法、ふたなり化。何も起きないはずがなく…。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

処理中です...