異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

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七話 【旅立ち】

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 夢を見始めてから約二年が経ち、
 ウルエは遂に学園に行く歳、十歳になった。
 この二年間でかなりの魔法が使えるようなった。
 ちなみに、夢の内容は二年間ずっと同じままで、
 霧がかった部屋の奥の方で人型の影がゆらゆらとしているだけ。

 そんな何の変化もない不気味でつまらない夢を
 二年間も見せら続け気が狂ってしまいそうと思うが、
 ウルエは夢の中でも魔法が使えると言うことを知ってしまい、
 夢の中でも魔法の練習をしているのだ。
 起きているときも魔法、寝ているときも魔法。
 
 完全に魔法廃人となりかけている今日この頃、
 ウルエは三年前の時の様に魔王城の入り口に来ている。
 この場にはお義母さんとお義父さんと見知らぬ悪魔さん達が
 見送りの為に集めっている。

 お姉ちゃんの時とは少し違って、
 ウルエの見送りをしてくれる悪魔さん達の姿が多い。
 恐らくこれが通常で、この前のはお姉ちゃんが
 必要な悪魔以外を寄せ付けなかっただけなのだろう。

「ウルエも、もうこんなに大きくなって……」

「ウルエは父さんの自慢の子だ。
 学園に行ってもフェルと仲良くやるんだぞ。」

「うん、今までありがとうねお義父さん、お義母さん。
 学園に行ってもお姉ちゃんと仲良くやってくるよ!」

 ハンカチで涙を拭いながら二人はウルエの事を抱いてきた。
 幼い時は別に良かったのだが、流石に十歳となると周りの目が気になる。
 学園に行くと数年は帰ってこれない。
 だから今日は別に周りの目は気にしないでおこう。

 十分に抱き合い二人はウルエから離れ、
 お義父さんがいきなり空間に手をねじ込んだ。
 ぐにゃりと空間が歪み、手が吸い込まれていく。

 これは所有空間《インベントリスペース》という魔法だ。
 空間の中に物などを入れといて好きな時に取り出せるという
 結構便利な魔法だ。因みにウルエはこれをお義母さんから教えてもらった。

 お義父さんは空間から黒い箱を取り出した。

「これをウルエに上げよう」

「ありがと、何入ってるの?」

 黒い箱を受け取り、
 ウルエはお義父さんに中身を聞いてみた。

「開けてみな」

「うん。」

 箱をパカリと開けると、
 そこには黒い宝石が入った指輪が入っていた。
 
「指輪?」

「ああ、そうだ。
 魔力を高めてくれる優れモノだからなくしちゃだめだぞ。」

「うん、わかった!
 ちなみにこの指輪ってどの指にはめればいいの?」

 この世界では指輪をはめる指と言うのは決まっているのだろうか、
 もし決まりがあるのならば今のうちに知っておきたいと思い、
 ウルエはお義父さんに質問した。

「ん、どこでも良いぞ。
 お父さんだったら人差し指にはめるかな。」

「わかった!」

 ウルエはお義父さんと同じように人差し指に指輪をはめた。
 指輪はウルエの指の太さに合わせるように縮んでいき、
 指にぴったりの大きさになった。

「おお、凄い。」

「ウルエ、お母さんからも渡したいものあるの。」

 そういうと、お義母さんもお義父さんと同様に
 空間に手をねじ込んでハンカチを取り出した。
 よく見るとそのハンカチは折りたたまれており、
 一か所だけ丸く盛り上がっていた。

 お義母さんがハンカチを広げると、
 真っ赤な丸い宝石のようなものが現れた。

「これを食べて」

「え、何それ……」

「これはね、フェアルヌの実と言ってね
 食べると治癒力が上がるのよ。」

「すごい、ありがとう!
 いただきまーす。」

 お義母さんからフェアルヌの実を受け取り、
 早速口の中に入れた。
 すると、口の中に溶け込むかのように実は消えて行ってしまった。
 味は無味だ。

「そろそろ、別れの時間だな。」

「ええそうね、寂しくなるわね」

「ウルエ、お父さんとお母さんの事忘れるなよ」

「ウルエ、心配ないと思うけど朝はしっかり起きるのよ。」

「うん、わかってるよ。それじゃあ、行ってきます!」

 ウルエはそう言ってお義父さんとお義母さんに背を向けて
 魔王上の扉に手をかけたが――

「あの、手伝ってほしいです。」

 人間の力ではびくともしなかった。
 ウルエは護衛をしてくれる悪魔たちにお願いした。
 悪魔たちは皆顔を見合わせ笑い、快く手伝ってくれた。

 上級悪魔エデル
 スキンヘッドで厳つい目つきの悪魔、
 声も太く見た目通りの感じだ。
 好きな事は酒を飲むこと、嫌いな事は仲間を侮辱する者。

 上級悪魔ベアデ
 見た目は大きくて可愛らしい目が特徴の幼い女の子だが、
 実は数百年生きているという。
 見た目通り幼い声をしているのだが中身は百歳越えの婆
 好きな事は実験、嫌いな事は子供扱いされる事。

 魔王親衛隊隊長デヌ
 白髪の優しそうな顔つきの爺ちゃん。
 体の彼方此方に傷を負っている。
 基本的に優しいが戦闘になると別人になる。
 好きな事は戦う事、嫌いな事は誰かが死ぬ事。

 ウルエは今この三人の悪魔に護衛されながら
 学園へ向かっている途中だ。
 三人とは何回か話したことがあり、 
 今回が初めてという訳では無いので気が楽だ。

 三人は悪魔だとバレない様に翼と額の紋章を消している。
 紋章と翼がなければ本当に只の人間にしか見えない。
 
 ちなみにウルエが行く学園の名前はリーゼイ学園というらしい。
 リーゼイ王国にあるからリーゼイ学園。シンプルでいいね。
 ここからリーゼイ学園に行くには最低でも三日掛かるらしい。
 本来であれば翼を使って飛んで行くらしいのだが、
 生憎人間のウルエには翼なんて生えていない為歩きなのだ。
 三人には申し訳ないと思っている。

「そろそろ休憩するか?」

 魔王城から出て暫く歩き、
 森の中へと入り、開けた場所に出るとエデルがそういってきた。

「うん、ちょっと疲れたな」

(生憎、今まで城に籠っていたもので体力なんてミジンコレベルなんです)
 
「時間丁度良い位なので、昼食にしますかね。」

 デヌ爺ちゃんが所有空間から
 布を被ったバスケットを取り出した。

「おぉ!いいねぇ~」

「ベアデ、私はウルエに言ったのですが」

「えぇ~けちぃ~ウルエーデヌが意地悪するよぉー」

 凄く幼い子の様に駄々を捏ねて居るベアデを見て、
 うわぁ、本当に子どもみたいだなー
 と思ったが、それを口に出したらきっと殺されるので
 言葉を飲み込んだ。

「ははは、皆で食べよ!」

「ほらぁ、ウルエが言ってるんだよぉ、私にもちょーだい」

「はぁ、」

 爺は困ったように首を横に振った。

「誰もベエデの分が無いなんて言ってませんよ。
 しっかり皆さんの分も作ってありますから」

「おっ、俺も良いのか!」

「勿論です」

「いただきます」

 地面に座り、バスケットから
 デヌ爺ちゃん手作りのサンドイッチを取り出して
 皆でおいしく頂く。

 シャキシャキとした野菜と柔らかい肉が入っていて、
 ものすごく美味しく歯ごたえがある。
 この世界に来て初めてサンドイッチを食べたが、
 地球とあまり変わりはない様だ。

「ごちそうさまでした」

 食事を終えたウルエたちは再び歩き出した。
 エデル曰く、今日中にこの森を抜けて
 ヘンリ王国に入り宿をとるのがノルマらしい。
 
「おや、おや」

「ん、どうしたの爺ちゃん」

 爺ちゃんが突然止まりだしたので
 気になったウルエは聞いてみた。

「魔物が此方を狙っていますね」

「えぇ!」

(やっぱり異世界と言ったらいるよな、魔物。恐ろしあまり出会いたくない)

「おいおい、爺さんよまさか戦うなんて言わないよな?」

「勿論戦いませんよ。弱者には興味がありませんから
 少し威嚇するだけで消えるでしょう」

 一瞬だが風が強く吹いた気がした。

「ほら、消えました」

 どうやら魔物は消えたようだ。
 それから暫く歩き森を抜けると、大きな門が見えてきた。
 ヘンリ王国だ。
 王国の周りには水が流れており、
 入るには橋が架かっている正面門を通るしか無いようだ。

 門には二人の門兵が立っていて、
 右側に窓が付いておりそこにも一人座っていた。

 門を通るときに身分証か何か必要なのかと思ったが、
 そんな事はなく門兵達にも
 声を掛けられることなくすんなりと通れた。

「何も聞かれないんだね」

 てっきり何か聞かれると思っていた。

「まあねぇー私の魔法に掛かれば余裕だよぉー」

「えぇ、魔法使ったの?」

「そうだよぉーあの人達の脳をちょこちょこっと弄ってねぇー」

「だ、大丈夫なのかな」

「大丈夫だよぉー」

 流石悪魔だ。
 やることが凄い。
 門の中に入り、早速宿を探した。
 爺ちゃんが歩いてる人に優しく尋ねると快く教えてくれた。

 金銭関係は全部爺ちゃんに任せてあるらしく、
 宿をとるのも全部爺ちゃんがやってくれる。
 向かったのは木製の結構年季の入った宿だった。
 中に入ると、ギシギシと音がなる。

「いらっしゃい」

 カウンターからよぼよぼの爺ちゃんが現れた。
 
「一泊したいのですが、空いてますか?」

「四人部屋だったら丁度空いてる」

「じゃあ、その部屋でお願いします。」

 そんな感じのやりとりを爺ちゃんが済ませ、
 ウルエたちは案内された部屋に向かった。
 部屋の中にはベッドが二つしか置いてなく、
 寝るときは一つのベッドに二人になりそうだ。
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