異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

文字の大きさ
15 / 98

十三話 【犠牲】

しおりを挟む
 三年ぶりに抱き疲れ、
 三年前とは違った感触が伝わってくる。
 身長も結構伸びていてウルエが小さく感じる。
 お姉ちゃんは立派に育っている様だ。

「ウルエ、ウルエ、ウルエ、ウルエ」

 よーく耳を澄ますとお姉ちゃんは
 ウルエの名前をブツブツと呪文の様に呟いていた。
 重度のブラコンは健在のようだ。
 
 久しぶり再会を楽しみたいところだが、
 周りの目が非常に怖い。

「お姉ちゃん、流石に授業中は不味いよ」

 ウルエがそう囁くとお姉ちゃんはピクリと体を動かし、
 急停止してしまった。

「ウルエ、お姉ちゃんの事嫌いになったの?
 駄目だよ?そんな事許さないよ、お姉ちゃん怒るよ」

 お姉ちゃんはそう言いつつ、
 更に強く抱きしめてきた。

「い、いや、そういう訳じゃないんだけど、
 流石に周りの目が――」

「そんなの関係ないじゃない」

(そうだった、これが俺のお姉ちゃんだ。
 周りの目なんて気にしない。そうだった……)

「こらこら、フェル。
 授業中ですよ先生が困ってまし――あああああああ!?」

 目の前はお姉ちゃんでいっぱいのため、
 一体誰の声なのかは分からないが、
 フェルと言う名でお姉ちゃんを呼んでいる事から
 お姉ちゃんと親しい仲であるのは間違いないだろう。

「ちょ、ちょ、ちょっと!!
 フェル何してるのですか!?」

「うるさい、幾ら貴女でも私とウルエの再会の
 邪魔をするようだったら殺すわよ」

「う……で、でもですね、今は授業中――」

 お姉ちゃんが突然俺を解放して、
 友人であろう人物に向けて手のひらを向けた。
 一瞬の事で何をやっているのか理解できなかったが、
 
「言ったよね、邪魔したら殺すって」

 その言葉で理解出来た。
 お姉ちゃんは魔法を放つ気だ。
 不味い、非常に不味い、ウルエの平和が崩れていく。
 こんな所で殺人なんてされたらウルエの平和はもう大変。
 
 何が何でも止めないと。
 幸いな事に暴走してるお姉ちゃんの
 止め方はマスターしている。

「お姉ちゃん、駄目」

 お姉ちゃんの後ろから抱き着いてそう言った。
 そう、これでお姉ちゃんはもうイチコロ。
 ブラコンのお姉ちゃんにはこれが一番効果的なのだ。
 
 こんなシスコンな行動を目の当たりにしている
 クラスメイト達はウルエの事をどう思っているのだろうか、
 考えたくも無い……

「命拾いしたわね、ウルエに感謝しなさい」

 効果は抜群だったようだ。
 これでウルエの平和は守られたウルエ自身の評価と引き換えに。
 何かを守るためには何かを犠牲にしなくてはならない。
 
「お姉ちゃん、今は授業中だよ。
 俺も会えて嬉しいけど、今は授業中。
 だから後でまたゆっくりと。
 別に嫌いになったとかじゃないからね」

「ウルエ……分かったわ、また後でね」

 そういってお姉ちゃんは友人らしき人物を置いて
 四年生がいる所へ帰って行った。
 
「貴方がフェルの弟なのね……」

「はい、何か?」

「いえ、何も……」

 友人らしき人物は何か言いたそうな顔をして
 お姉ちゃんに続いた。

「ふぅ」

 これからどうしたものか。
 ウルエは何とも言えない顔で此方を見て来ている
 ゲウヌ達の顔を見て思わず苦笑いをした。

・・・・

「……ウルエ、今のってお姉ちゃんなのか?」

 嵐の様なお姉ちゃんが去っていき、
 何とも言えない空気が流れている中、
 ゲウヌがそう尋ねてきた。

「うん、そうだよ……」

 ウルエは今物凄く恥ずかしい。
 クラスメイト全員の視線が杭付けになっている中、
 先ほどの人物が核爆弾級のブラコンのお姉ちゃん
 だと言う事を暴露しなくては行けない。
 暴露しなくても既にばれてしまっている事だが。

「な、なんというか、凄く弟思いの姉だな」

「う、うん。そうだね」

「ウルエのお姉ちゃんって一体何なの?
 先生の事消しちゃったわよ?」

(そういえば先生出て行ったきり帰って来てない……授業どうするの)
 
「三年間あってなかったから良くわからないけど、
 優しいお姉ちゃんだよ」

 まさか魔王の娘だよ!なんて言える訳ない。
 三年間でお姉ちゃんに一体なにがあったのだろうか。
 まさか先生に恐れられている存在になっているとは。
 一体何をしたんだろう……

「まぁ、話は後で聞くとして、
 取り敢えず先生呼びに行こうぜ?」

「そうだね、行こう」

「二人が行くなら私も行こうかな」

 ウルエ達三人は授業放棄した先生を探す旅に出た。
 が、入学して間もないウルエ達には学園を旅するの早く、
 早速迷子になってしまった。

 適当に階段を上ってしまったのが駄目だったのだろう。
 外から見ても分かったようにこの学園は物凄く高い。
 当然その分階段がたくさんあり、
 数階上り暫くすると自分が今何回にいるのかも分からない。
 
「こりゃ参ったなぁ」

「どうしよう」

「取り敢えず人探してみましょ」

「そうだね」

 ウルエ達三人は誰か人を探してこの迷子の状況から
 何とか抜け出そうと動き出し、
 とにかく、部屋という部屋を回った。
 空の部屋や教室やトイレ……
 そして今は研究室の様な所に来ている。

 黒板に良くわからない数式や魔法陣がかかれ、
 試験管やフロスコなど凄くサイエンス的な
 物が沢山ある。

「誰かいませんか」

「いねえだろ」

 パッと見だれもいないが、
 一応声を出してみる。

「おっお、何だお前ら」

「うぉっ!」

 驚くこと声が返ってきたのである。
 それも更に驚く事に背後から声を掛けられた。
 恐る恐る振り返ってみると、
 そこには体が半透明の巨人が立っていた。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

処理中です...