14 / 98
十二話 【担任は】
しおりを挟む
ざわざわと期待と不安を胸に移動し、
クラス分けが掲示されている教室前に着いた。
廊下の横幅が結構広い為、
人の波に呑まれるという事は無かったが、
掲示の前に人が集まり過ぎてクラス分けが確認できない。
「人、凄い……」
「ん、そうか?かなり少ない方じゃね。
俺はてっきりこの倍は居るかと思ってたんだけどな」
ウルエの呟きにゲウヌが反応した。
ゲウヌが言うように会場にも空席が多々あり、
今年は昨年よりも人が少ないと思われる。
だが、今まで城に籠っていた身としては、
これでもかなり多いと思ってしまうのだ。
「クラス一緒だと良いね、
ゲウヌとは一緒じゃなくても良いけど」
「ああ、そうだな――って、おい!
俺とは一緒じゃなくて良いってどういう事だ!
なぁ!なぁ!!」
ミアの肩を揺らしながらゲウヌは追及していた。
本当にこの二人は仲が良い。
先ほど出会ったばかりだと言うのに、
少し馴れ馴れしい気もするがこれがこの世界では普通なのかもしれない。
(おっと、そんな事よりも
早く止めないと周りの目が痛い)
「俺はミアとゲウヌの二人と一緒になれたら
嬉しいなって思ってるよ」
ウルエとしては二人と一緒になりたい。
初めて出来た友達二人と同じクラスになれたら
きっとこれからの学園生活が楽しくなるだろう。
「ほら、ウルエもそう言ってんだぞ!
俺とも一緒になりたいよな?」
「はぁ、ウルエがそう言うなら
ゲウヌと一緒のクラスでも良いわよ、別に」
(たった一言声を掛けるだけで止めてくれるのは非常にありがたいのだが……
本当にこの二人は何がしたいのだろうか)
そうこうしている間に、
掲示の前が空きすかさずウルエたちは潜り込んだ。
壁には名前が書かれた紙が貼っており、
名前の横にはAからDの文字が書かれている。
「えっと――あった!」
目で一生懸命自分の名前を探し、
真ん中の辺りにウルエ=ファルネルド……Bと書かれていた。
どうやらウルエはB組らしい。
自分のクラスを確認出来ミア達のクラスも確認しようと
名前を探し始めたが、
「おぉ、Bだぜ」
「私もB……最悪」
そんな会話が横から聞こえてきた。
どうやらウルエ達は全員Bクラスになったようだ。
(奇跡と言うべきか、本当にありがたい神に感謝しないと――って、
エミは女神だったな、よし、ありがとうエミ様!!)
そういえば最近話してないな……
「みんな一緒だね!」
「と言うことはウルエもBか!」
「うん!」
「嘘、奇跡……最高だわ!」
(本当に最高だ。初めて出来た友達二人と一緒のクラスになれるなんて。
これからの学園生活が楽しみだ)
ウルエ達はお互いの顔を見合い、
ニカリと笑い、ルンルンと教室に向かった。
異世界でも教室は普通だ。
段差が三段あり長机が階ごとに三台。
教壇があり黒板がある。
うん、ごく普通で良かった。
席はどうやら自由らしいので
ウルエ達三人は三段目の窓側に三人で座った。
その後、これから共に学園生活を送っていくであろう
クラスメイト達がざわざわと教室に入ってきた。
グループで入って来る者達もいれば、
一人でビクビクと怯えながら入って来る者もいる。
暫くして全員が席に着いたらしく、
皆長机に3人づつ座っていた。
このクラスはどうやら合計二十七名らしい。
「担任どんな人だろうなー
可愛い人が良いな」
「担任とか誰でもいいわよ、
ちゃんとしてくれる人なら」
ミアとゲウヌが担任の話をしている。
ウルエとしてはゲウヌに賛成したいのだが、
可愛くてもちゃんとしてくれない人なら意味がない。
まぁ、学園に居る以上どの教員も確りとしてると思うが。
「ウルエはどんな担任が良いの?」
「んー、出来れば話しやすい人かな」
教員がゴッツイ人だったらそれはもう大変。
何か伝えたい事や聞きたい事があっても、
ビクビク怯えて上手く伝えられない可能性がある。
「あー、確かに俺もそれが良いな。
可愛くて話しかけやすい雰囲気の人」
「私もウルエと同じだね。
確りとしてて話しかけやすい人」
ゲウヌはどうしても可愛い人が良いらしい。
確かに可愛い方が良いという感情は男なので仕方が無い。
そうこうしている内に教室に一人の教師が入ってきた。
「このクラスの担任になったアヌブ=ストロックだ」
「うわぁ……可愛くないよ……」
教壇に立って自己紹介をしてくれたのは、
スキンヘッドで目つきが厳つく、
太い声をした男性教師だった。
耳が尖がっており、エルフだという事がわかる。
あからさまにガックシしているゲウヌが横にいるが、
その気持ちは分からなくもない。
こんな筋肉の塊みたいな教師ウルエも嫌だった。
「早速だが、お前達のクラス分けをする」
「クラス分け?」
そう誰かが呟いた。
先ほどクラス分けが完了して
今のクラスになっているのにもかかわらず、
そこから更にクラス分けをするなんてどういうことなのだろうか。
「クラス分けと言うのは、お前達の強さを確認して
強さのクラスを付けるということだ。
一番強い奴はA、弱い奴はD」
(なるほど、体力テストみたいなものと考えて良いのか。
Aが一番良い評価でDが留年になる可能性があるみたいな評価か)
「さっそく移動するぞ」
そう言ってアヌブ先生は教室を出て行った。
ウルエたちは先生に続き教師を後にした。
「私自信あるんだけど、二人はどう?」
(ええ、ここは私自身無いんだけどじゃないのか)
「俺も勿論、自信あるぞ」
「……ちょっと心配かな」
今まで魔物と戦ったことも無ければ、
攻撃系の魔法を放ったことすらない。
勿論喧嘩なんてしたことがない。
「なーに、心配すんなって。
ウルエなら絶対行けるって!」
そう言ってバシバシと背中をたたいてきた。
本当にこういう時の友達の存在は大きい。
そう言ってくれるだけでも不安が和らぐ。
「着いたぞ――って、四年生が今使ってるのか。
まぁ、良いお前ら、四年の動きを確り見て勉強しろ」
巨大な室内グラウンドの様な所に着いたが。
周りには壁がありその上には観客席が幾つもあった。
一面に観客席があり全席埋まると相当の人が集まることになる。
恐ろしい。
そして、そのグラウンドを使っているのは四年生だ。
二人二組になって魔法を撃ち合ったり、
模擬刀らしいもので打ち合ったりしている。
「おお、凄いな」
「これが四年生……」
素人のウルエが見ても確かにすごいと思ってしまう。
動きが洗礼されており無駄な動きが無い、
そんな感じが伝わって来る。
観客席ではなく同じ場にいる為、
魔法の衝撃などが伝わって来て圧倒される。
魔法の撃ち合いをしている組は撃った瞬間
防御魔法や回避魔法を発動させており、
何時でも対応できる状態だ。
模擬刀組は……とにかく早い。
「あの、先生」
誰かは分からないが、先生の事を呼んだ。
「何だ」
「一人だけさぼっているのですが、
あれは良いのですか?」
「ん?ああ、あの子は特別だ」
授業をさぼるけしからん子が居るらしい
ウルエは先生の目線の先を見て――
「えぇ!?」
思わず大声を出してしまい、
四年生を含めみんなの視線を集めてしまった。
四年生達は一瞬だけ此方を向いたが、
興味を無くし再び撃ち合いを始めた。
ただ一人を除いて。
距離が離れていても分かるってしまう程の
真っ白で綺麗な髪に真っ赤な目。
ウルエの事を誰よりも知っていて、
ウルエも彼女の事を誰よりも知っている。
「ど、どしたウルエ」
「ご、ごめんちょっと驚いちゃって……」
自分でもびっくりする位の大声が出てしまい、
本当に皆には申し訳ないと思っている。
謝りつつもウルエの目線は只一つに向いている。
クラスメイト達も興味を無くし、
四年生達の方を向いた。
此方もただ一人を除いて……
「貴様、授業妨害か?」
スキンヘッドで目が厳ついアヌブ先生だ。
ただでさえ太くて怖い声なのに、一層低い声を出していて
明らかにお怒りになっていらっしゃる。
(このハゲ、何処が授業妨害だっていうんだ!
そもそもまだ授業はじまってすらいないだろ)
「そんなつもりは無かったです、すいません」
本当に授業妨害なんてするつもりは無かったし、
ちょっと大声を出しただけで授業妨害なんて
言われるとも思ってもみなかったウルエは取り敢えず謝った。
「貴様、本当にそうおもっているのか?」
「え、はい。申し訳ないと思ってます」
一体先生は何が言いたいのだろうか。
ウルエがそう思っていると、見つめ続けていた彼女が
此方に向かって歩き出した。
「貴様舐めているのか?」
「は?」
先生の言っている意味がわからず
思わず目を逸らし先生の顔をみた。
先生はただでさえ厳つい目つきだが、
更に厳つくなっていた。
周りをチラリとみると、
ゲウヌやミアがあわわと口をパクパクさせながら
此方を見て来ていた。
「どういう意味ですか?」
全く意味が分からず、
きょとんとした顔で首を傾げながらそう尋ねると
先生の顔がより一層怖くなり、
握り拳がぷるぷると震えていた。
「貴様!歯を食いしばれ――っ!!」
先生の拳が天高く振り上げられ、
ウルエは、あっ、殴られる、と悟った。
チラリと視界にはミアとゲウヌが先生を止めようとしているのか、
急いで手を伸ばしていたが確実に先生の拳の方が早い。
もうだめだと思い
覚悟を決め歯をギュッと噛みしめた。
「――っ!」
覚悟を決め目を瞑ったのだが、
一向に痛みも振動も伝わってこなかった。
不思議に思い恐る恐る目を開けると――
「先生、次ウルエに手出そうとしたら
絶対に許しませんから」
そこには三年振りのお姉ちゃん、
フェル=ファルネルドの姿があった。
お姉ちゃんは先生の手を掴んでいた。
大の大人が十三歳に拳を掴まれ、
汗をダラダラと流しているという
なんとも言えない光景だ。
「な、何故貴女がこの者を庇うのですか?」
「先生には関係ないでしょ、
さっさとこの手を下ろして私の目の前から消えなさい」
「――っ!」
先生は何とも言えない顔をして拳を下ろし、
グラウンドから出て行ってしまった。
これは授業放棄にならないのだろうか。
「ふぅ、汚らわしい物を掴んでしまいました」
お姉ちゃんはそういうと
ポケットからハンカチを取り出し手をふきふきした。
そして、此方に振り返り、
「ウルエ、大丈――」
「ウルエ!!」
ゲウヌが心配そうにそう言ってきたが、
お姉ちゃんの言葉に遮られた。
そしてウルエは周りの目など気にしない
お姉ちゃんに抱き着かれてしまった。
「ウルエ!?」
そんな光景を見てクラスメイト達の
色々な声と共にミアがなんとも言えない悲鳴を上げていた。
クラス分けが掲示されている教室前に着いた。
廊下の横幅が結構広い為、
人の波に呑まれるという事は無かったが、
掲示の前に人が集まり過ぎてクラス分けが確認できない。
「人、凄い……」
「ん、そうか?かなり少ない方じゃね。
俺はてっきりこの倍は居るかと思ってたんだけどな」
ウルエの呟きにゲウヌが反応した。
ゲウヌが言うように会場にも空席が多々あり、
今年は昨年よりも人が少ないと思われる。
だが、今まで城に籠っていた身としては、
これでもかなり多いと思ってしまうのだ。
「クラス一緒だと良いね、
ゲウヌとは一緒じゃなくても良いけど」
「ああ、そうだな――って、おい!
俺とは一緒じゃなくて良いってどういう事だ!
なぁ!なぁ!!」
ミアの肩を揺らしながらゲウヌは追及していた。
本当にこの二人は仲が良い。
先ほど出会ったばかりだと言うのに、
少し馴れ馴れしい気もするがこれがこの世界では普通なのかもしれない。
(おっと、そんな事よりも
早く止めないと周りの目が痛い)
「俺はミアとゲウヌの二人と一緒になれたら
嬉しいなって思ってるよ」
ウルエとしては二人と一緒になりたい。
初めて出来た友達二人と同じクラスになれたら
きっとこれからの学園生活が楽しくなるだろう。
「ほら、ウルエもそう言ってんだぞ!
俺とも一緒になりたいよな?」
「はぁ、ウルエがそう言うなら
ゲウヌと一緒のクラスでも良いわよ、別に」
(たった一言声を掛けるだけで止めてくれるのは非常にありがたいのだが……
本当にこの二人は何がしたいのだろうか)
そうこうしている間に、
掲示の前が空きすかさずウルエたちは潜り込んだ。
壁には名前が書かれた紙が貼っており、
名前の横にはAからDの文字が書かれている。
「えっと――あった!」
目で一生懸命自分の名前を探し、
真ん中の辺りにウルエ=ファルネルド……Bと書かれていた。
どうやらウルエはB組らしい。
自分のクラスを確認出来ミア達のクラスも確認しようと
名前を探し始めたが、
「おぉ、Bだぜ」
「私もB……最悪」
そんな会話が横から聞こえてきた。
どうやらウルエ達は全員Bクラスになったようだ。
(奇跡と言うべきか、本当にありがたい神に感謝しないと――って、
エミは女神だったな、よし、ありがとうエミ様!!)
そういえば最近話してないな……
「みんな一緒だね!」
「と言うことはウルエもBか!」
「うん!」
「嘘、奇跡……最高だわ!」
(本当に最高だ。初めて出来た友達二人と一緒のクラスになれるなんて。
これからの学園生活が楽しみだ)
ウルエ達はお互いの顔を見合い、
ニカリと笑い、ルンルンと教室に向かった。
異世界でも教室は普通だ。
段差が三段あり長机が階ごとに三台。
教壇があり黒板がある。
うん、ごく普通で良かった。
席はどうやら自由らしいので
ウルエ達三人は三段目の窓側に三人で座った。
その後、これから共に学園生活を送っていくであろう
クラスメイト達がざわざわと教室に入ってきた。
グループで入って来る者達もいれば、
一人でビクビクと怯えながら入って来る者もいる。
暫くして全員が席に着いたらしく、
皆長机に3人づつ座っていた。
このクラスはどうやら合計二十七名らしい。
「担任どんな人だろうなー
可愛い人が良いな」
「担任とか誰でもいいわよ、
ちゃんとしてくれる人なら」
ミアとゲウヌが担任の話をしている。
ウルエとしてはゲウヌに賛成したいのだが、
可愛くてもちゃんとしてくれない人なら意味がない。
まぁ、学園に居る以上どの教員も確りとしてると思うが。
「ウルエはどんな担任が良いの?」
「んー、出来れば話しやすい人かな」
教員がゴッツイ人だったらそれはもう大変。
何か伝えたい事や聞きたい事があっても、
ビクビク怯えて上手く伝えられない可能性がある。
「あー、確かに俺もそれが良いな。
可愛くて話しかけやすい雰囲気の人」
「私もウルエと同じだね。
確りとしてて話しかけやすい人」
ゲウヌはどうしても可愛い人が良いらしい。
確かに可愛い方が良いという感情は男なので仕方が無い。
そうこうしている内に教室に一人の教師が入ってきた。
「このクラスの担任になったアヌブ=ストロックだ」
「うわぁ……可愛くないよ……」
教壇に立って自己紹介をしてくれたのは、
スキンヘッドで目つきが厳つく、
太い声をした男性教師だった。
耳が尖がっており、エルフだという事がわかる。
あからさまにガックシしているゲウヌが横にいるが、
その気持ちは分からなくもない。
こんな筋肉の塊みたいな教師ウルエも嫌だった。
「早速だが、お前達のクラス分けをする」
「クラス分け?」
そう誰かが呟いた。
先ほどクラス分けが完了して
今のクラスになっているのにもかかわらず、
そこから更にクラス分けをするなんてどういうことなのだろうか。
「クラス分けと言うのは、お前達の強さを確認して
強さのクラスを付けるということだ。
一番強い奴はA、弱い奴はD」
(なるほど、体力テストみたいなものと考えて良いのか。
Aが一番良い評価でDが留年になる可能性があるみたいな評価か)
「さっそく移動するぞ」
そう言ってアヌブ先生は教室を出て行った。
ウルエたちは先生に続き教師を後にした。
「私自信あるんだけど、二人はどう?」
(ええ、ここは私自身無いんだけどじゃないのか)
「俺も勿論、自信あるぞ」
「……ちょっと心配かな」
今まで魔物と戦ったことも無ければ、
攻撃系の魔法を放ったことすらない。
勿論喧嘩なんてしたことがない。
「なーに、心配すんなって。
ウルエなら絶対行けるって!」
そう言ってバシバシと背中をたたいてきた。
本当にこういう時の友達の存在は大きい。
そう言ってくれるだけでも不安が和らぐ。
「着いたぞ――って、四年生が今使ってるのか。
まぁ、良いお前ら、四年の動きを確り見て勉強しろ」
巨大な室内グラウンドの様な所に着いたが。
周りには壁がありその上には観客席が幾つもあった。
一面に観客席があり全席埋まると相当の人が集まることになる。
恐ろしい。
そして、そのグラウンドを使っているのは四年生だ。
二人二組になって魔法を撃ち合ったり、
模擬刀らしいもので打ち合ったりしている。
「おお、凄いな」
「これが四年生……」
素人のウルエが見ても確かにすごいと思ってしまう。
動きが洗礼されており無駄な動きが無い、
そんな感じが伝わって来る。
観客席ではなく同じ場にいる為、
魔法の衝撃などが伝わって来て圧倒される。
魔法の撃ち合いをしている組は撃った瞬間
防御魔法や回避魔法を発動させており、
何時でも対応できる状態だ。
模擬刀組は……とにかく早い。
「あの、先生」
誰かは分からないが、先生の事を呼んだ。
「何だ」
「一人だけさぼっているのですが、
あれは良いのですか?」
「ん?ああ、あの子は特別だ」
授業をさぼるけしからん子が居るらしい
ウルエは先生の目線の先を見て――
「えぇ!?」
思わず大声を出してしまい、
四年生を含めみんなの視線を集めてしまった。
四年生達は一瞬だけ此方を向いたが、
興味を無くし再び撃ち合いを始めた。
ただ一人を除いて。
距離が離れていても分かるってしまう程の
真っ白で綺麗な髪に真っ赤な目。
ウルエの事を誰よりも知っていて、
ウルエも彼女の事を誰よりも知っている。
「ど、どしたウルエ」
「ご、ごめんちょっと驚いちゃって……」
自分でもびっくりする位の大声が出てしまい、
本当に皆には申し訳ないと思っている。
謝りつつもウルエの目線は只一つに向いている。
クラスメイト達も興味を無くし、
四年生達の方を向いた。
此方もただ一人を除いて……
「貴様、授業妨害か?」
スキンヘッドで目が厳ついアヌブ先生だ。
ただでさえ太くて怖い声なのに、一層低い声を出していて
明らかにお怒りになっていらっしゃる。
(このハゲ、何処が授業妨害だっていうんだ!
そもそもまだ授業はじまってすらいないだろ)
「そんなつもりは無かったです、すいません」
本当に授業妨害なんてするつもりは無かったし、
ちょっと大声を出しただけで授業妨害なんて
言われるとも思ってもみなかったウルエは取り敢えず謝った。
「貴様、本当にそうおもっているのか?」
「え、はい。申し訳ないと思ってます」
一体先生は何が言いたいのだろうか。
ウルエがそう思っていると、見つめ続けていた彼女が
此方に向かって歩き出した。
「貴様舐めているのか?」
「は?」
先生の言っている意味がわからず
思わず目を逸らし先生の顔をみた。
先生はただでさえ厳つい目つきだが、
更に厳つくなっていた。
周りをチラリとみると、
ゲウヌやミアがあわわと口をパクパクさせながら
此方を見て来ていた。
「どういう意味ですか?」
全く意味が分からず、
きょとんとした顔で首を傾げながらそう尋ねると
先生の顔がより一層怖くなり、
握り拳がぷるぷると震えていた。
「貴様!歯を食いしばれ――っ!!」
先生の拳が天高く振り上げられ、
ウルエは、あっ、殴られる、と悟った。
チラリと視界にはミアとゲウヌが先生を止めようとしているのか、
急いで手を伸ばしていたが確実に先生の拳の方が早い。
もうだめだと思い
覚悟を決め歯をギュッと噛みしめた。
「――っ!」
覚悟を決め目を瞑ったのだが、
一向に痛みも振動も伝わってこなかった。
不思議に思い恐る恐る目を開けると――
「先生、次ウルエに手出そうとしたら
絶対に許しませんから」
そこには三年振りのお姉ちゃん、
フェル=ファルネルドの姿があった。
お姉ちゃんは先生の手を掴んでいた。
大の大人が十三歳に拳を掴まれ、
汗をダラダラと流しているという
なんとも言えない光景だ。
「な、何故貴女がこの者を庇うのですか?」
「先生には関係ないでしょ、
さっさとこの手を下ろして私の目の前から消えなさい」
「――っ!」
先生は何とも言えない顔をして拳を下ろし、
グラウンドから出て行ってしまった。
これは授業放棄にならないのだろうか。
「ふぅ、汚らわしい物を掴んでしまいました」
お姉ちゃんはそういうと
ポケットからハンカチを取り出し手をふきふきした。
そして、此方に振り返り、
「ウルエ、大丈――」
「ウルエ!!」
ゲウヌが心配そうにそう言ってきたが、
お姉ちゃんの言葉に遮られた。
そしてウルエは周りの目など気にしない
お姉ちゃんに抱き着かれてしまった。
「ウルエ!?」
そんな光景を見てクラスメイト達の
色々な声と共にミアがなんとも言えない悲鳴を上げていた。
41
あなたにおすすめの小説
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います
リヒト
ファンタジー
不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?
「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」
ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。
何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。
生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。
果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!?
「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」
そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?
自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる