異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

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十七話 【ダンジョン】

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「それ、本当においしいの?」
 
 頼んだ料理が出来上がりカウンターから
 空いている席へと運び、半熟の卵がプルンプルンと揺れている
 未知の料理に手を付けようとしたが、
 目の前においてあるゲウヌが頼んだスライムラーメンの見て
 まず初めに出てきた感想がそれだった。

 緑色のスープに何やら粘着性のある紫色の麺。
 麺の方が粘着性があるのかスープの方にあるのか
 どちらも見た目がアレなのでハッキリとは分からない。
 折角作ってくれた料理にこんな事を言ってはいけないが
 ……正直に言ってゲテモノにしか見えない。

「美味いぞ!食ってみるか?」

「い、いや、いらいない」

「そうか、美味いのにな」

 そういってジュルルルルゥッ!と音を立てて
 麺を啜っていく、音だけ聞いていれば確かに美味そうだが
 どうしても目を開けてしまうと拒絶してしまう。
 そんな事はどうでも良いんだった早く目の前にある
 このモルデ丼と言うのを食べてみないとな。

「いただきます」

 此方はスライムラーメンとは違い、
 見た目も匂いも非常に食欲を注ぐので
 何の躊躇も無く一口ガブリと頂く。

「っ!美味しい」

 若干肉が固いような気がするが
 それもそれで噛みごたえがあり、
 噛めば噛むほど肉にしみ込んだ味があふれ出て来て
 卵とご飯に絡み合って物凄くおいしい。

「でしょ!私もそれ好きなのよ」

 それからウルエは黙々と箸が進み、
 あっという間にモルデ丼を平らげた。
 自分では結構早いペースで食べていたつもりなのだが、
 ウルエが食べ終わって箸を置くころには二人とも既に食べ終わっており、
 何やら此方を微笑みながら見て来ていた。

「な、なに?」

 食べ方がおかしかったのだろうか。
 それともこいつ遅ぇなとか思っているのだろうか。
 そんな事を考えていると、

「いや、変な意味で取らないで欲しいんだが、
 そうやって一生懸命食べていると小動物みたいで
 何だか可愛く思えて来てな」

「最悪、同感だわ。
 ウルエの姉ちゃんの気持ちが良く分かった気がするわ」

「え、えっと……ありがとう?」

 なんだか褒められているのか
 男としての存在を貶されているのか
 良く分からない気持ちになったが一応お礼を言ってみた。

「ったく、ご飯粒まで付けて……何だか世話の焼ける弟って感じだな」

「はぁ、それも同感」

「……ははは」

 ご飯粒を付けると言うなんとも
 ドジっ子みたいな事をしてしまい、
 恥ずかしくなり急いでご飯粒を取り恥ずかしさのあまり下を向き、
 愛想笑いをした。

 空になった食器をカウンター横に下げて
 ウルエ達は午後の授業へ向かった。
 歴史の授業などは全てが知らない事だらけの
 ウルエからしてみれば新鮮だが、皆は眠そうにしていた。
 一方魔法の授業は全然分からない。

 そんなこんなで午後の授業も終了し、
 一日目は無事に終わり放課後になった。

「さて、行くぞ!」

「何処によ?」

 机に両手を置き勢いよく立ち上がり
 決め顔で宣言したゲウヌに嫌々そうな顔で問いかけるミア。
 ミアの表情を見る限り何処に行くかは分かっているが
 行きたくないと言う気持ちが強く、あえて分からないふりをして
 ゲウヌに質問している様だ。

「決まってんだろ?ダンジョンだよ」

「……はぁ」

 やっぱりか、という顔をして大きな溜息を吐いたミア。
 ウルエはその表情を見て思わず苦笑い。
 
「ほら行くぞ」

「うん」

「仕方が無いわね……」

 皆は下校していく中ウルエ達は
 階段を幾階か登り最上階までやってきた。
 階段を登り切った先には大きな門があり、
 その横に二人の門兵らしき人物が立っていた。

 その門兵を見て、もしかしたらこれは追い返されるのではないか!
 とそんな期待を抱いたが、そんな事は無く、
 門兵の人に名前を書かされただけですんなりと中に入ることが出来た。
 門兵曰く、ダンジョンに潜るのは自己責任で名前を書かせたのは
 そのサインでもあり戻ってきたときにもう一度サインして
 しっかり帰還したかどうか確認する為らしい。

「うわぁ……」

 ダンジョンの中は薄暗く明かりは
 壁に立てかけてある松明のみだ。
 石煉瓦造りになっており、足元がおぼつかないという事はない様だ。
 もっと恐ろしい場所かと思っていたが、
 大して魔王城と変わりは無く、いやそれ以下であって
 なんの恐怖も感動も覚えなかった。

「よし、わくわくするな!行こうぜ」

「うん」

「本当に男って冒険好きよね」

 そこまで広くは無いが狭いとも言えない道を進む。
 コツコツと自分たちの足音しか聞こえず、
 なんとも静かな場所で不気味だ。

「なんもいねぇな」

「そうだね、いない方が良いんだけど」

「別のダンジョンではうじゃうじゃ出てきたんだが、
 此処まで出てこないって不気味だな」

 ウルエはダンジョンの経験おろか魔物と戦った事すらないため
 何となく不気味だという事はわかるが
 これが異常なのかどうかは判断できない。

 そんな事を思っていると、
 突然煉瓦の隙間から黒い液体は溢れだし
 一体の魔物へと変化した

「おっと、油断大敵だな」

 人の形をしているが
 ゆらゆらと形が安定せずにたまにぐにゃりと歪んだりしている。

「な、なにあれ?」

「ゴーストよ、人の形をしているってことはゴーストの中でも少し強い
 ゴーストナイトって呼ばれる魔物ね」

「ゴーストナイト……」

 少し厨二心をくすぐられるような気もするが
 今は目の前の魔物に集中しなくては
 何時やられるか分からない。

 初めて魔物を前にして
 恐怖で染まると持っていたが
 思ったよりもウルエは落ち着いており
 今もゆっくりと隅々まで魔物の姿を記憶していた。

「それじゃ、まずは俺が仕留めるぜ!」

 ゲウヌが勢いよく飛び出し、
 
「――、―」

 何かを呟き接近すると、ゲウヌの右手に魔法陣が現れ、
 その魔法陣をゴーストの体に押し付けた。
 刹那の間、魔法陣が輝きだしゴーストの体が輝く魔法陣に
 吸い込まれて消えて行った。

「一瞬だったね、凄いねゲウヌ!」

 一体何をしたのだろうか。
 一般的な魔法の知識が疎いウルエには理解できなかった。

「そうか?」

「うん!!ちなみに今の魔法はなんていうの?」

「ライトニングだが?」

「?」

 何だか再び厨二心をくすぐる様な言葉が飛び出し、
 ウルエは首を傾げた。

「あー、浄化っていえばわかりやすいか」

「浄化《ライトニング》……なるほど」

 そんな魔法もあるのか、ぜひ覚えたいものだ。

「本当に何も知らないんだな……」

 ゲウヌ達が知らないと思われる
 魔法なら沢山知っているが
 一般的な魔法は全く知らないのだ。
 魔王城に引き籠っていたから疎いのは
 仕方が無い事だが、

「今度私がみっちり教えてあげるわよ」

「ん、ありがと!」

 それからも何度かゴーストナイトは出てきたが
 それ以外の魔物で出てこずにその階は終わり、
 ウルエ達の前には上へと続く階段があった。
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