異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

文字の大きさ
35 / 98

三十話 【ブラコンとショタコン】

しおりを挟む
 遊び始めてから直ぐにフェルが夕食を作り終え、
 くだらない遊びは幕を閉じた。
 テーブルに少し豪華な料理がずらりと並び思わず涎が出てしまう。
 食堂で見るゲテモノ系の料理ではなく、
 魔王城で見るSAN値が削られる料理でもない、
 ごく普通で少し豪華な料理達だ。

 ローストビーフや白米、サラダの詰め合わせスープ。
 他にも美味しそうな料理が並んでいる。

「美味しそう……」

 と発したのは意外にもウルエではなくアンアの方だった。
 
(フェルが此処まで料理出来るなんて知らなかったわ……)

 フェルはアンアとこの部屋で長い事暮らしているが、
 今までこのような豪華な料理は一度も作った事ないのだ。
 交代交代で料理をするのだが、何時も白米にちょっとしたおかずだけだった。
 だが、ウルエに料理を振舞うとなったら訳が違う。
 
「さぁ、ウルエ一杯食べてね」

「うん!いただきます!!」

 味は勿論美味しく、白米一粒一粒にも味が染みている気がする。
 何かを一口食べるだけで頬が落ちそうになる。
 
「あぁ、可愛らしいウルエ……」

 美味しそうに食べるウルエを見てフェルはうっとりと見つめ、
 少し視線をずらし表情を一変させる。

「貴女も食べれば?」

「え、でも、これはウルエの為に……良いんですの?」

「態々貴女の分を別で作るとでも?
 何様のつもりなの?ふざけないで」

 ウルエの頼みなら面倒な事でも喜んでやるフェルだが、
 他人の為に態々面倒な事をやるのは大嫌いなのだ。
 今回もウルエが別で作ってと頼んでくるなら話は別だが、
 ウルエからしてみてもそんな面倒な事を頼む理由がない。

「美味しいですわ!」

「そう、当たり前の事言わないでくれる?」

「本当に美味しいのですわ!」

「わかったら、黙って食え」

 アンアは心の底からフェルの料理を褒めているが、
 フェルにとってはウルエ以外に褒められても何も嬉しくないのである。
 何時褒められるのだろうかとウキウキしながら
 美味しそうに料理を食べるウルエをだらしなく頬を緩ましながら眺める。

(すっごい見られてる……)

 目の前の豪華な料理を頬張りながら
 フェルから飛んで来るねっとりとした視線が非常に気になる。
 
(何だろう……感想待ちかな?)

「美味しいよ!今まで食べたご飯の中で一番かも!!」

 しっかりと口の中の物を噛んで飲み込んでから
 出来るだけ無邪気な笑顔を向けてそういった。
 
「あぁ、ぁあ!あぁ!ああ!ウルエ!!なんて可愛らしいの!!」

 頬に赤くして手を当て溶けた表情を浮かべて
 声高らかに叫んだ。

(食事中ですのに、なんて行儀の悪いことかしら)

 そう心の中で思いつつもアンアはフェルの気持ちを
 分からなくは無かった。
 あれほどの無邪気の笑顔を向けられてはこのブラコンと
 ショタコンは放っておくことはできないだろう。

「あぁ、ウルエ、ウルエ!」

(うるさいわね……そう言えば!)

 結構大きめな声でウルエの名ばかり呼んでいるフェルの事を
 いい加減にうるさく思ったアンアはどうにか話題を変えようと
 今日のウルエの授業の内容を思い出した。

「ウルエ、確か今日迷宮に行ったのでしたよね?」

「え、うん。そうだけど?」
 
 ちなみに、何故授業の内容を知っているかと言うと、
 あれだ、アンアはウルエの時間割を把握しているのだ。
 この女、フェル並みにやばいかもしれない。
 そんな事を知らないウルエは、授業の内容を知っていることなど
 気にすることはなく首をかしげる。

「どうでしたか迷宮は、楽しかったですか?
 怖くありませんでしたか?」

「うん、楽しかった!!怖くは無かったよ!」

「ウルエ、戦ったの?怪我しなかった?気持ち悪い魔物いなかった?
 何か嫌なこと無かった?小さなことでもいいから何かあったら言ってね!
 お姉ちゃん頑張っちゃうからね!」

 やっとフェルが我に帰ってきたかと思うと、
 アンアがウルエに振っていた話題にすぐさま喰らいつき
 がつがつとウルエに迫っていく。

「だ、大丈夫だったよ。今日は戦わなかったから!
 あっ、それとね、新しい友達が出来たんだ!!二人も!!」

「そう、良かった!……で、友達って?」

 友達の話題が出るとあからさまに嫌な顔をして
 声のトーンもかなり下がった。

(またよけいな虫がウルエに付きやがって!)

「んとね、一人が悪魔の子で、もう一人はねスライムなんだ!!」

「ん?悪魔も珍しいけど、スライムなんて種族いたかしら?」

 これはウルエの言い方が悪く、もう一人と言ってしまったからには
 スライムも人なのかと勘違いしてしまう。
 
「違うよ!スライムは迷宮にいたかわいい魔物さんだよ!」

(何が魔物さんだ!勢いで言ったけど気持ち悪いな……)

 自分の発言を自分で貶している。
 ひょっとしたらそういう性癖の持ち主なのかもしれない。

「スライム、ね。ウルエ、もしかしてそのスライムになにかされた?
 もし何かされてたら今すぐそのスライムを滅却しないといけない」

 真面目にそう発言しつつフェルの心の中では疑問が生まれていた。

(あの迷宮にスライムなんていないはず……新種の魔物か?)

 それはアンアも同様で、

(あの階層にスライムが湧くなんてありえないわね……
 これは調査が必要かもしれないわ)

「何もされてないよ!!寧ろ癒してくれたんだよ!
 あのスライム見かけても絶対に攻撃しないでね!絶対に!」

 この姉なら本当に滅却しかねないと思い釘をさしておく。
 
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

処理中です...