異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

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三十七話 【戦争の相手】

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「まず、私が居なかった理由はね、お父さんに呼ばれたからなの」

 何故か先ほどまでの下品な笑みを消して真剣な顔をになっているフェル。
 説明をする時はしっかりと切り替えをしているのだ。
 そうでもしないとウルエに伝わらないと知っているからだ。

「ん!そうなんだ!」

(良かった、変な事に巻き込まれていなくて)

 主に相手がなのだが、そのことは心の中でも声にも出さなかった。
 それにしてもフェルがお父さんに呼ばれる、しかも緊急の連絡とは
 一体なにがあったのだろうかと気になるウルエ。

「それでね、糞――違った。お父さんが私を呼んだ理由なんだけど、
 これから戦争が起きるからウルエの事を護ってやれと言う連絡だったんだよ。
 それも相手は竜人族って言う翼が生えた蜥蜴よ」

「!!」

 ウルエはお義父さんが戦争をするという事にはあまり驚かなかった。
 その理由は至って簡単でそれはお義父さんが魔王だからだ。
 ウルエが驚いたのはその戦争する相手、
 今日ゲウヌが言っていた竜人族だからだ。

「あの糞も良い事を言う様になったわね……」

「フェルお姉ちゃん?」

 徐々にフェルの言葉に力が籠っていき、
 頬も赤く染まり息も切らし始めていた。
 明らかに異様な光景にウルエは心配になり声を掛ける。

「私に、この私にウルエを護れですって?
 何をいまさら言っているのかしら、私はこれまでもこれからもずっとずっと
 ウルエを護っていくに決まってるじゃないの!!!
 ウルエを傷つけようとする者がいれば私がぶっ殺してやるわ!
 たとえ相手がだれであろうとも!私がこの手で四肢を引き千切って!
 内臓をぐちゃぐちゃにして!それを家族に送りつけてやるのよ!!」 

「お、お姉ちゃん……」

(不味い、これは暴走するぞ!!)

 身の危険を察知してすぐさまその場から立ち去ろうとしたのだが、
 一瞬にしてフェルの両腕が腰に回ってきて捕まってしまった。
 フェルはウルエをお腹より少し下に頭をつけてぐりぐりとし始めた。

「これから戦争が始まってあいつらが死ねば、いいえ、私が殺してしまえば
 ウルエは完全に私の物になるのよ!!
 そうよ、戦争に紛れて私があの糞共を殺してしまえば良いのよ!!」

 腰に両腕を回したままウルエの顔を見上げるフェル。
 その顔は女性のものとは思えない程下品な顔をしている。
 これまで色々とフェルの狂気染みた発言を聞いた来たが、
 今回ばかりはどうしても聞き逃せなかったウルエ。
 
(お義父さんは俺の恩人だ。それを殺すのは流石に見逃せない)

「ねぇ?ウルエ……」

「待って、お姉ちゃん」

「何かしら?」

「それは、駄目だよ。絶対に駄目」

 ウルエはたったそれだけを口にしただけだった。
 今まで誰にも見せた事の無いような真剣な表情で真っすぐにフェルの目を見つめる
 ウルエの瞳には何の迷いも戸惑いも無く一つの決意によって満ち溢れてる。
 フェルはそんなウルエの言葉を聞き今までの熱が一気に冷めてくのを感じた。

「う、るえ?どうして?どうしてそんな事を――」

「お姉ちゃん俺はお姉ちゃんの事が好きだよ。
 でも、お義父さんのことも好きなんだよ。
 あの魔王城にいた皆が好き。だから皆大切にしたい。
 お姉ちゃんは俺が大切だと思うものを奪ったりはしないよね?」

「う……」 

 ウルエには本当に弱いフェルは思わず言葉が詰まってしまう。
 それに更に追い打ちをかけていくウルエ。

「あ、でもね。一番好き、大好きなのはフェルお姉ちゃん!
 そんな大好きなお姉ちゃんには俺の大切なものを傷つけてほしくないな!」

(ふっ、決まった)

「あぁ、私が間違っていたわ。ごめんなさいウルエ。
 貴方の大切なものを私は……」

「分かってくれたのなら嬉しいよ」

「ウルエ――っ!!」

 フェルは腰にあった手をずらしてぎゅっとウルエに事を抱きしめた。
 無事お義父さんの命を救うことが出来て一安心したウルエだが、
 まだ不安は残っているのだ。
 竜人族と戦ってお義父さんたちは大丈夫なのだろうか。
 そんな不安を抱きながら今はフェルの抱擁を素直に受け取るのであった。

(良いわ、ウルエ……私が殺さずともどうせあいつは死ぬけどね)
 
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