異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

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四十八話 【エルフ】

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「――?」

 迷宮から出たウルエは直ぐに違和感を覚えた。
 何時もならいるはずの門兵の姿が見えないのだ。
 
「どこにいったんだろう……あっ、ケイン、聞こえる?」

『ああ、聞こえるぞ……』

「ん?」

 迷宮から出ても尚会話出来ることが確認出来て
 てっきりケインならもっと大げさに喜ぶだろうと思っていたウルエは
 彼の何故か深刻そうな反応に疑問を抱いた。

『人間――何者かが結界を貼っている』

「結界?」

『ああ、この学園全体に人封じの結界が張り巡らされているぞ。
 恐らく学園に居たものは既に封じられている』

「え、それってかなり不味いんじゃ?封じられた人間は何処にいったの!?」

 ケインから告げられた衝撃の事実にウルエはやっと
 今何が起きているのかを理解した。
 そして真っ先に脳裏に浮かんだのはフェルやアンア、ゲウヌ達の顔だった。
 
『この結界を破れば無事解放される。だが、破らなければ――存在が消える』

「え……」

 存在が消える。ウルエの中で今までの記憶が急速に再生されていった。
 たった十数年だが、それはとても幸せな時間であって
 ウルエにとってかけがえのない大切な記憶だ。

「そんなの嫌だ!!」

『慌てるな人間よ!俺様を誰だと思っているのだ!!
 この世界で最もかっこよく強い創造主様だぞ!ヴェッヘッヘ!』

 今にも泣き叫びそうなウルエを元気付ける為に、
 何時ものテンションでそう言う。
 実際にケインはこの状況をそこまで不味いとは思っていないのだ。
 この学園は何を再利用して創られたのかご存じないだろうか?

『この学園は元は迷宮、つまり俺様の支配下なのだ!!
 うん、今思ったら此処はまだ迷宮の外では無かったのだな!!
 忘れていたぞ人間!!ヴェッヘッヘ!!』

 この学園は迷宮ダンジョンの下層を利用してつくられているのだ。
 つまりは此処も迷宮内という事であり、創造主の力が及ぶ範囲なのだ。
 
「じゃあ、皆は助かる――っ!」

 ウルエの表情がパァと明るくなったが直ぐに真剣な表情に戻る。
 その理由は物凄い速さでこちらに接近してくる気配を察知したからである。
 そして、その気配は姿を現す。

「あれぇ?結界内なのに何で人間がいるのぉ?」 

 耳が尖っており、顔立ちは誰もが見ても美人と呼ぶ程の美貌。
 すらっとしているがしっかりと出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。
 エルフ、と呼ばれる種族だ。
 流石のウルエでもエルフのことは知っている。

 エルフは結界を貼ったのにも関わらず、
 結界内で人間が居るという事に苛立ちを覚えていた。
 ウルエは結界を貼られた際に創造主であるケインのいる
 最上階で寝ており最も影響を受けにくい場所にいた為封じられずに済んだのだ。

「まぁ、良いやぁ。君ぃ、此処で死んでねぇ?」

 理由はどうでも良い。問題なのは結界内で動いている存在がいるということ。
 エルフは問答無用でウルエを消し去ろうと魔法を発動したが――
 
「え?」

 パリィンと形成された魔法陣が砕け散ってしまった。
 
『人間よ、助けてやるぞ!!助け合いこそが友達って言うやつだろ?
 ヴェッヘッヘッヘ!』

 このエルフがどんなに強かろうが、どんなに賢いだろうが、
 そんな事はこの場所では無意味になるのだ。
 この場で最も強くカッコいいのは――彼だ。

『俺様の友達に手を出そうとしたのは間違いだったな!!』

 エルフの事を囲むようにいくつもの魔法陣が形成される。
 
「なんだぁ、これぇ!?君がやったのかぁ?」

 語尾がだらしないせいであまり緊張感が伝わってこないが、
 エルフはかなり焦っていた。
 魔法陣一つ一つに途轍もない魔力が込められている事が分かっているからだ。
 そんな魔法陣から魔法が放たれたら確実に死ぬだろう。

「まてぇ、待ってくれぇ!私が悪かったぁ!結界も解除するぅ!
 だから殺さないでくれぇ!ちょっと遊びたかっただけなんだよぉ!」

 必死に命乞いをするが創造主であるケインはそんな言葉では止まりはしない。
 だが、脳内お花畑野郎は違った。

「まって、ケイン。流石に殺すのはやり過ぎだよ!」

 フェルの時は止められなかったが、出来るだけ目の前で救える命があるのならば
 たとえそれが悪人であっても救いたいのだ。
 平和に暮らすためには恨み言を買う訳にはいかないのだ。

『そうか、人間がそういうのならば、この程度で許してやろう!!
 ヴェッヘッヘッヘ!』

 ケインの声はウルエにしか聞こえていないのだが、
 恰もエルフも聞こえているかの様に話すケイン。
 この創造主も結構抜けているのだ。

 一つの魔法陣がエルフの首元に巻き付き――一つの首輪となった。
 そして、ほかの魔法陣は全て消え去った。

「あ、あぁ、ありがとうございますぅ!私は一生をかけて貴方に償いますぅ!!」

「えぇ、困る!」

 ケインによって服従の首輪をつけられてしまったエルフは
 目の前にいるウルエを主人と見なし服従してしまった。
 本人の意思は残っているはずだがウルエに服従している――
 つまり、このエルフは……そういうことなのだ。
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