異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

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四十七話 【慈悲深い】

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『おい、人間、そろそろ起きろ』

「ん……」

 暫くの間寝ていたウルエのことをおこすケイン。
 かれこれ三時間は寝ていたのでもうそこそこ起こしても良い頃合いだろうと判断したのだ。
 目を覚ましたウルエは光を発しているクリスタル目がけて両腕を伸ばし
 んんんん~~!!と思いっきり筋肉を伸ばす。

「おはよ、ケイン、ナーガ」

『おはようヴェッヘッヘ!人間、寝顔もなかなかだったぞ!!
 まぁ、俺様には及ばないがな!ヴェッヘッヘ!』

 相変わらずのケイン。ナーガは体をプルりと揺らして返事をする。
 クリスタリに伸ばしていた腕を次は前の方に持っていき筋肉を伸ばす。
 ふと、その際に昨日嵌めた指輪が目に入り、少し疑問が生まれた。

「ねぇ、ケイン?この指輪ってさ
 こうやって会話をする事が出来る効果があるんでしょ?」

『その通りだ!俺様が作り上げた最高傑作だ!
 まぁ、本当は副産物なんだけどな!!ヴェッヘッヘ!』

 本当はある指輪を創ろうとしていたケインだったが、
 それを生成するさいに副産物として生成されたのが
 ウルエがはめている指輪なのだ。

「じゃあさ、これって別に迷宮の中じゃなくても会話できるかな?」

 この指輪をはめている限りはケインとこうして会話出来る。
 距離に制限があるかどうかは分からないが、
 指輪をはめている以上どこでも会話は可能なのではないかと思うウルエであった。
 迷宮は魔物が出るため出来れば部屋の中で平和に会話をしていたいのだ。

『天・才だな!人間!!その考えは無かった――じゃない!!
 俺様も昨日そう思ってな!今日はそれを確かめ様と思っているのだ!!
 ヴェッヘッヘ!!』

 そう思ったのならばすぐさまウルエの頭の中に言葉を送って
 会話を試みれば良かったのではないかと思うのだが、
 必死に自分の手柄にしようとしているケインの間抜けさに免じて見逃そう。
 当然、ウルエもそんなことを思っており、見逃すつもりだ。

「そうなんだ!楽しみだなぁ!」

『ヴェッヘッヘ、俺様と会話をするのがそんなに楽しみか!
 俺様も楽しみだぞ人間!!』

 二人とも友達という存在が出来た事がとても嬉しく思っており、
 どんなに下らない会話でも二人にとってはそれが大切な会話になるのだ。
 普段から友達と会話している者ではわからない。
 ウルエは、魔王城に籠って友達が出来なかった時間。
 ケインは、創造主として存在し友達など出来なかった数え切れない程の年月。

 二人にはその空白の時間があり反動もあり、
 人一倍友達を嬉しく思い大切にしたがるのだ。

『人間よ、まだ時間はあるか?』

「うん、全然大丈夫だよ!」

『ならば、これをみてくれ!!』

 ウルエの頭の中に映像が送られ来た。
 その映像に映し出されているのは、
 今にも死にかけそうな冒険者の姿だった。
 大きな魔物に追い詰められ絶体絶命のピンチ。

 巨大な爪が冒険者目がけて振り下ろされる――瞬間、
 その魔物は姿を消し、冒険者の体が光に包まれて入口に戻されていた。

『どうだ、人間!これが俺様の慈悲の心だ!!!
 慈悲深いだろ?ヴェッヘッヘっ!』

 わざわざそれを言うためにウルエに迷宮内の映像を見せてきたのだ。
 本来であれば迷宮で命を落とすのは自己責任だが、
 今の創造主は最高に気分が良く先ほどの死にかけの冒険者は
 気まぐれで命を救われたのだ。
 捉え方を変えればウルエによって救われたみたいなものだ。

「凄い!ケインって何でも出来るんだね!!」

『ヴェッヘッヘ!そうだ!俺様は凄いのだ!!』

「うんうん!凄い凄い!!」

 段々とケインの扱い方が分かってきたウルエは 
 それからも何か言われれば褒め続け、ケインは最高に気分が良い状態になり、
 今日迷宮での死亡者はいなかったという。
 結構良い時間になり、ウルエは入口に戻してもらった。

 この後の起きる出来事など想像もしていないウルエは
 スライムをポケットにしまい、ケインと会話がどこまで出来るのかと言う
 実験も含めて迷宮の外に出た――。
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