異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

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七十一話 【準備】

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「それで、何時行くのが良いかしら」

「できれば早めが良いな」

 冒険者に被害が及ぶ前に処理をしておきたいと考えるウルエ。
 だが、助けてもらう側の立場であり今すぐにでも行こうとは言えないでいた。
 早めが良いとだけ伝え、後はフェルに委ねることにした。
 
「そうね……」

 フェルとしてはウルエと少しでも長い時間を共に過ごしたい為、
 今すぐに戦場に行くというのは少し抵抗がある。
 ウルエが望むのならばそれは別の話なのだが、肝心の彼は今回フェルに任せている。
 だが、少しでも遅れてウルエの恩人である冒険者が死んでしまっては元も子も無い。

「今日中にいきましょうか。丁度あの竜人族の力も確かめてみたいですからね」

 フェルはかなり悩んだ末に今日に決めた。
 今日言ってしまえば確実に戦争は終了し近頃学園に行くことになるだろう。
 フェルはそこで考えた、学園が再開するのならばそれを邪魔すれば良いと。
 別に休園になるのは戦争の影響だけではない。
 
 戦争以外にも休園にさせる方法はいくらでもある。
 その内の一つにフェルの大好きな破壊行為も含まれている。
 戦争が終わるのならば学園を少し破壊して休園を長引かせれば良い。
 それに、戦場でリグロを戦わせどれ程の力を持っているかを確かめ、
 問題点を見つけて少しでもウルエの役に立つ人材に育て上げる事も考えている。

「分かった、準備するね!!」

 早めと言ったがまさかの今日と言うことに驚いたが、
 ウルエは直ぐに切り替えて準備に取り掛かった。
 と言っても地下に降りるのが非常に遅いウルエは途中でフェルに追いつかれてしまった。
 意気込みは良いのだが、もう少し体力を付けてほしいものだ。

「うっ」

 フェルにひょいと持ち上げられてスイスイと降りていき
 あっという間に地下に着いたウルエは何とも言えない気持ちに襲われるが、
 フェルにはしっかりとお礼を言って部屋へと向かう。

「あれ?」

 部屋に入り、本当に自分の部屋なのかと疑った。
 なぜそんなアホみたいな行動をしているのかと言うと、
 それは部屋の中が見違う程綺麗になっていたのだ。
 元が決して汚かったわけではないが、それでも見違えるほど綺麗になっている。
 
 ベットのシーツはピシッとなっており、本は綺麗に順番どおりに本棚に収まり、
 床はワックスがけをしたかの様にピカピカと輝き、部屋の何処を見渡しても
 塵一つ見えず寧ろ眩しくて目が痛いほどだ。

「あら、意外な才能があったのね。雑用は合格ね」

 フェルがそう声を掛けたのはこの部屋をピカピカにした犯人。
 雑用として部屋の掃除を命じられていたリグロだ。
 
「ありがとうございます」

「じゃあ、次は実戦よ。お前の実力を確かめさせてもらうわ」

「え!?リグロの身体は大丈夫なの?」

 ウルエはリグロの身体の傷を心配したのだが、見た感じ出血をしていたり痛そうなところは無かった。
 これは竜人族の力の一部である治癒力の影響だ。
 腕を切り離されても一日あれば再生するほどの治癒力だ。
 
「はい、問題ありません。見ての通りですよ」

 心配しているウルエを安心させるようにリグロは腕をグルグル回したり、
 軽くジャンプをして見せ何処も痛いところは無いアピールをする。
 
「なら良かった……でも無理しないでね」

「はい。ちなみに、私の相手は誰がしてくれるのでしょうか」

 リグロは口には出さないが、自分と互角にやりあえる存在がいるとは思えないのだ。
 この魔王城にいる悪魔たちは恐らく竜人族よりも遥かに強い為、釣り合わない。
 かと言ってそこら辺の種族とやっても弱すぎて話にならないのだ。
 
「お前の同族と堕天使共よ」

「そうですか、なら大丈夫そうですね」

「……」

 相手が同族だと聞かされても何の反応も示さないリグロを見て
 何だか少し悲しい気持ちになるウルエだったが、
 そこはどうしようもないので割り切る。

「ほら、早く準備しなさい……さぁ、ウルエはお姉ちゃんと準備しましょうね~」

「う、うん」

 相変わらずのフェルと共に戦場に行く準備をする。
 と言っても特に準備するものは無く着替えるぐらいだ。武器も何も持たない。
 ウルエは安全な所で見ているだけだし、フェルは魔法があれば十分だ。
 
「あの、武器はないのですか?」

「なに、お前武器が無いと戦えないの?何て面倒な種族なのかしら。
 ほら、これでも使ってなさい」

 口では何だかんだ罵倒しているが、しっかりと武器を渡す。
 魔法で武器を取り出しリグロに向かって投げる。
 それもかなりの勢いで投げている為、もし、キャッチミスでもすれば大参事になるのは目に見えている。
 だが、竜人族は決してそんな失敗はすることなく、桁外れの身体能力で見事にキャッチする。

「これは!!こんな立派な武器を使っても良いのですか?」

「そんなガラクタ誰も使わないわ、ゴミ同然なのだからお前にはお似合いね」

「ありがとうございます」

 フェルはガラクタだのゴミ同然だの滅茶苦茶に言っているが、
 リグロが渡された武器は聖剣とも呼ばれる程の物なのだが、
 フェルからしてみれば気に喰わない奴を殺した時に手に入った物の為、
 全く価値が無く、使う予定も無い。

 準備を終えたフェル達は魔王たちには一切何も言わずに戦場へと向かった。
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