異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

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七十四話 【報告】

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「あれ、お姉ちゃんリグロはどこ行ったの?」

 風呂から上がり部屋に戻ってきたウルエだったが、
 そこにはフェルの姿しか無く、竜人族の彼の姿は確認できない。
 フェルがいる以上彼が逃げたという事は無く、それ以前にリグロが逃げるとも思えない。

「修行のためにちょっとあるところに連れて行ったのよ、
 気にすることないわ!あそこで死ぬならその程度だったって事なのよ」

 ウルエのベットの上に腰を掛けながらどこか楽し気にリグロの行方を話している。
 どうせ邪魔者がいなくなったからご機嫌なのだろうとウルエは思いつつも
 濡れた髪の毛をタオルで拭きながらフェルの隣に腰をおろした。

「あるところってどこなの?」

 聞かなくても確実に危険な場所なのは分かっているのだが、
 一応聞いて置かないと安心出来ない。
 
「ん~知りたいの?」

「うん」

「えっとね、この魔王城よりも遥かに小さい魔王城よ!
 確か、ケンって言う魔王の城ね!」

「え……」

 この世界にはここ以外にも魔王城があり魔王がいるということは知っているウルエだったが、
 リグロをそんな魔王城に放りこんだという事は、つまり魔王城を落として来い
 と言う事であり、魔王とリグロが戦うということを意味している。
 相変わらずの出鱈目な姉に驚きを隠せない。

(魔王相手って!!リグロ大丈夫かな?)

「だ、大丈夫なの?」

「さあね、でもウルエが心配することじゃないわ!!
 寧ろ、あいつが負けたら将来の不安が無くなるって事なのよ?」

 フェルが言う将来の不安と言うのは、リグロにウルエの護衛を任せることだが、
 ウルエからしてみれば近くに誰かがいてくれるだけでかなり心が落ち着く為、
 例え護衛が勤まらなくともリグロがいてくれるだけで良いのだ。

「それにね、ケンは魔王達の中でも最弱なのよ、
 それぐらい倒せない様じゃ、本当にいらないのよ」

「そ、そうなんだ……」

 本気でウルエの事を心配してくれているからこそ、
 他人に護衛を任せるときはかなり厳しい訓練をさせる。
 心配してくれている事は分かっている為、何も言う事が出来ない。

「何時頃帰ってくるのかな」

「さあ、それはアイツ次第ね。そんな事よりこれから何しましょうか!
 やっと二人になれたんだものね!二人でしかできないことしましょうよ!!」

「あははは……そ、そうだ!お義父さんたちにゾンビ達の事言わなくても良いの?」

 一人で盛り上がっているフェルをうまいこと躱す。
 
「そうね……じゃあ今から伝えに行きましょうか!一緒に!!」

「う、うん」

 態々二人で行く必要性は感じないのだが、
 フェルが暴走するよりかはマシなので素直についていくことにした。
 ウルエが階段を上り地上に行こうとするとかなりの時間を要してしまう為、
 最初からフェルに抱きかかえられて飛びながら地上に連れていかれる。

 魔王たちの居場所は決まって地下に居なければ王座の間にいる為、
 迷うことなく王座の間に向かう二人。
 ちなみに、地上に上がっても尚フェルはウルエの事を離しはしなかった。
 圧倒的な力の差がある為そう簡単には抜け出すことが出来ない為、
 ウルエは大人しくフェルに抱かれるがままになっている。

「あれ、お二人ともどうしたんですか?」

 王座の間に行き、二人の存在にいち早く気が付いた大魔王がのほほ~んとそう言った。
 
「ね、そろそろ――」

「お前が戦場に作り出したゾンビ共を処理した、それだけ伝えに来た」

 ウルエがそろそろはなして欲しいと言おうとしたのだが、
 フェルはそれを遮り王座に座っている大魔王に敵意丸出しでそう言った。
 それを聞いた大魔王は困った表情を浮かべていたが、
 王座の横で鼻をほじっている魔王は何も聞いていなかったようだ。

「それは困りましたね、私が折角お二人と――」

「ああ、それなら問題ないわ。手は打ったから、しばらくは休園が続く」

「まぁ、流石ですわね!安心しました!」

 一体何をしたのかは気にならないのだろうか、
 流石フェルのお母さんと言ったところか。
 
「じゃあ、それだけ」

「ええ、おやすみなさい」

 本当に親子なのだろうかと疑ってしまう程の短い会話だ。
 ウルエは、おやすみなさいの一言ぐらい言いたかったのだが、
 口を開いた瞬間フェルの腕に力が入り顔を服に押し付けられてしまい声を出すことは出来なかった。
 
「ねえ、お姉ちゃん?」

「ん、どうしたの?」

 ウルエは運ばれながら少し気になる事がありフェルに声を掛けた。
 
「お義父さんたちのこと嫌い?」

 今更かもしれないがこのまま行ってしまうと、
 あまりにもお義父さんたちが可哀想に思えてきたウルエは
 どうにか仲良く出来ないものかと考えながらフェルに質問してみた。 

「別に嫌いではないわ、好きでもないけど」

「え、そうなの?」

 てっきり嫌いで嫌いで仕方がないとでも言って来るかと思っていたが、
 予想外の回答に思わず驚いてしまう。

「ええ、ウルエに手を出そうとするから敵意を向けてるだけよ。
 私を産んでくれたこと、ウルエを拾って来てくれたことには本当に感謝しているわ」

「お姉ちゃん!!」

 普段のフェルからは想像もできない様な言葉が飛び出し、
 それを聞いたウルエは安心したのであった。

(この言葉が本当なら、まだ家族同士仲良くできそう!)
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