追放された技術士《エンジニア》は破壊の天才です~仲間の武器は『直して』超強化! 敵の武器は『壊す』けどいいよね?~

いちまる

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探索者ライフ②パーティーハウスを建てよう!

材料がやってくる

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 街に混乱をもたらす事件が起きるとは、この頃の彼らは知る由もない。
 ギルドから大通りに出たクリス一行は、これ以上ないほどはしゃいでいた。

「やったわね、クリス! ついにあたし達も一流探索者になったってわけよ!」
「『神聖武器倉庫』の一件より前から話をもらっていたのですから、むしろ遅いくらいですわ。帝都でいちゃもんをつけてきた連中は、見つけ次第ブチのめしますわ!」

 肩をいからせるパワー担当の二名を、冷静担当の二名が宥める。

「まあまあ、結果として許可は下りたんだからいいじゃないか」
「うむ! 見えない敵に苛立つのは精神衛生上にもよろしくないぞっ!」

 残る天然担当の一名は、さっきからずっと首を傾げている。

「クリス、家ってそんなに大事なの?」

 マガツが聞くと、クリスが微笑んだ。

「もちろん大事だけど、本当に大事なのは家を建てていいって許可が出たことそのものかな。俺達パーティーだけの家は、それくらい特別なんだ」
「分かんない。けど、マガツはクリスといられれば幸せ」

 ぴとりとクリスにくっつくマガツを見て、カムナとリゼットの目の色が変わった。

「あたしは今も幸せよ? クリスとこれから、もーっと幸せになるんだから!」
「おバカ二人はおこちゃまですわね。相手の幸せも考えてこそ、真の伴侶ですのよ」

 同じようにくっついてくる二人にも囲まれて、クリスは困り顔だ。
 断っておくが、別段この美女三人は仲が悪いわけではない。ただ、それはそれ、これはこれで、クリスを相手に渡してやる気がないだけである。
 ついでに言うと、周囲は羨むというより「またやってる」という目線で見つめている。
 当初は美人に囲まれるクリスに嫉妬の視線をぶつける者もいたが、カムナ達の厄介さを見ると、今ではむしろよくやっているな、と言いたげでもあるのだ。

「は、張り合わなくても……そうだ、建築資材を市場街で買わなくちゃ!」

 思いついたように三人の囲いから脱出したクリスのそばで、フレイヤが笑う。

「話を逸らすのが上手になったな、クリス君! はっはっは!」
「からかわないでよ、フレイヤ……あれ、あの人だかりは……?」

 クリスがフレイヤの肩を叩いた時、ふと気づいた。
 今、彼らはパーティーハウスの建設予定地である街の中心部から少し離れたところに向かっていたのだが、そこに妙な人だかりができているのだ。

「よろず屋のおじさんに武具屋の亭主さん? 他にも人がたくさんいるわね」
「何かあったのかな?」

 よくよく見てみれば、その誰もが見知った顔だ。
 クリス達が駆け寄ると、彼らに気付いた男の一人が手を振った。

「おーっ! 来たな、オロックリン!」

 他の面々も嬉しそうにクリス達を取り囲んだ。
 探索者がこういう目に遭うと、普通は金銭を要求されるか、もっとひどい目に遭う。
 だが、今日はちっともそうではないようだ。

「聞いたぜ、パーティーハウスの許可が下りたらしいじゃねえか! めでてえなぁ!」
「資材なら俺達がタダでいくらでも用意してやるから、遠慮なく言いな!」

 なんと、肩をばんばんと叩く彼らは、建築用の資材を無償でくれるというのだ。

「た、タダで!? ダメですよ、ちゃんとお金は払います!」

 当然の如く手と首をぶんぶんと振って断るクリスだが、商人、大工、その他諸々たくさんの人達は誰もがクリスに私財を提供する気満々なのである。

「タダがダメってんなら、俺達がいつも色んなもんを修理してもらってるお返しだとでも思ってくれ! 昨日だって、壊れたかまどを直してくれたしな!」

 というのも、クリスは普段からどんな修理、改良の仕事も請け負っていた。
 本人も探索者としての仕事があるだろうに、誰に頼まれても仕事を断らなかった。善意も理由の一つだが、何かをいじくり、修理するのは彼の趣味でもあるのだ。

「いやいや、あれは俺の趣味の延長線みたいなものだから……」

 だから、趣味のお礼など受け取るのは良くない。
 クリスはそう考えていたのだが、周囲はお構いなしである。

「何言ってんだ、うちの家の壁のひびだって一日かけてキレイにしてくれたろ!」
「包丁だって時間をかけて研いでくれたじゃない!」
「探索者のうちの息子がお前の話ばっかりするんだ、武器アームズをいつも修理してくれるってな! 一度くらい、お礼をさせておくれよ!」

 年配者に頭をわしゃわしゃと撫でられ、クリスの意見は却下された。

「とりあえず、必要そうな資材を建築予定地に集めておくぜ! そんじゃなーっ!」

 手を振って大笑いしながら、一同は去ってゆく。
 ぽかんと口を開けたまま背中を見送るクリスに、カムナが笑いかけた。

「やったわね、クリス!」
「普段の人助けとは、巡り巡って自分の元に帰ってくるというわけだっ!」

 ここまでお膳立てしてもらったなら、頼らない方が失礼だろう。

「……皆、予定変更だ! 資材はゲットしたから、さっそく皆の意見をまとめて、図面とコンセプトを作っていこう!」

 やっと笑ったクリスに、皆も笑顔を向けた。

「遠慮なくアイデアを出し合って――最高のパーティーハウスにしようね!」
「「おーっ!」」

 そして彼が空高く手を掲げると、仲間達も応じるのだった。



 ――ホープ・タウンにくろがねの巨人が降臨するまで、あと数日。
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