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探索者ライフ②パーティーハウスを建てよう!
一回目の建築
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パーティーハウスの打ち合わせが終わって、はや二日が過ぎた。
「ふっ……よっと……」
建設予定地では、クリスが一人で黙々と建築作業を続けていた。
仲間に約束した通り、彼は誰の手も借りずに資材を運び、解体し、組み合わせている。一流の職人ですら目を見張る動きに、野次馬達は感心するばかりだ。
「すげえな、オロックリンのやつ。昨日の夜から敷地に来たかと思ったら、寝ずにあの調子でずっと作業してんだぜ」
「俺達が手伝うって言っても、自分でやりたいの一点張りだしな」
「そっとしておいてやりなよ。あの子はきっと、自分の手で恩返しをしたいんだよ」
既にホープ・タウンに住む住人には知れ渡っているが、クリス・オロックリンという人間は、意外にも頑固者なのだ。
自分がやると言ったら自分がやるし、手助け無用と言えば手助け無用。
助力すると申し出ても、気持ちだけをしっかりと受け取るのみに留まるのだ。
そんな彼の作業工程は、おおむね順調に進んでいる。何もなかった敷地に、家の基盤がしっかりと完成しつつある。
「一階はおおむね完成かな、あとは……」
頭に巻いたタオルを外し、首元の汗を拭うクリスは、ふと視線を前に向けた。
「おーい、オロックリン!」
両手に籠を持った夫婦が、どたどたと駆けてきたのを見たからだ。
「あれは確か、素材屋の……どうかしましたかーっ?」
パーティーハウスに素材を分けてくれた素材屋だと知っているクリスが手を振ると、相手も手を振り返しながら、彼のもとへとやってくる。
「うちの家内が昼飯を作ったんだ、一緒に食べないかーっ!」
「ありがとうございます、いただきますーっ!」
大声に大声で返して少しすると、二人はクリスのそばにやって来た。
素材屋の夫婦は空いたところにどっかりと座り、籠の中身を広げた。
ほんのりと香るパンにソーセージ、ゆで卵の昼食は、シンプルながらこれ以上にありがたいものはないだろう。
クリスも近くの資材に腰かけ、パンを手に取った。
「ちょうどお腹が空いてたので、助かります。けど、どうして急に?」
パンをかじる彼に、素材屋の男が言った。
「お前が作業に手を出されたくないってのは分かってたがな、どうしてもああして頑張ってるのを見ると助けてやりたくなってよ。ほら、お前はしょっちゅう暖炉やかまどの整備をしてくれたろ?」
「整備ってほどじゃないです。いつもきれいに使ってるから、手助けくらいですよ」
クリスがこんな風に返事したのを、街の住民は何度聞いただろうか。
無私の心で修理し、その後のメンテナンスまでしてくれるだけでなく、性能を上げてくれる。こんな技術士が、世に何人いるというのか。
相変わらず謙虚すぎるな、と夫婦は顔を見合わせて笑った。
「それでも、お前のおかげで長持ちしてるのは事実さ」
「隣の奥さんもそうよ。壁を補強してくれてから、ひび一つ入らないのよ!」
「うちの兄貴だって同じだ、同じ技術士なのに、いつもツールをメンテナンスしてくれるんだってな。普通は技術士どうし、手の内を隠すのにな」
素材屋の兄を、当然クリスは知っている。
ツールが壊れて途方に暮れていたところを、彼が助けたのだから。
ただ、クリスは増長など少しもしなかった。
「……それ以上に、俺が助けられてるんです」
彼はいつも感謝していた。
自分がホープ・タウンに来て、探索者として活動し続けられているのは、街の人々が助けてくれているからだと、彼は常々感謝していた。
素材を分け与えてくれる。
探索者の活動を支えてくれている。
ここまでしてくれている相手に、どれだけ恩返しをしても足りないとクリスは思っていた。
「こうしてお昼ご飯をもらって、素材をもらって、色んな所で支えられてる。俺はどんな時もありがたいって思ってますし、修理や整備はそれしかできない、俺の恩返しです」
彼の言葉は謙虚さでも何でもない、本心だ。
「仲間にも……カムナやフレイヤ、リゼットにマガツ、皆に恩を返したいんです。守ってくれて、助けてもらって、おかげで俺は前に進めてるから」
前に進み続けられるお礼をするのは今しかないと、彼は確信しているのだ。
ソーセージにかぶりつきながら、クリスは立ち上がった。
「お昼、ありがとうございました。それじゃ、作業に戻ってきます」
そして軽く頭を下げると、再びパーティーハウスの予定地に戻っていった。
「不器用だなあ、オロックリンは」
「でも、カムナちゃん達があの子を好きになる理由が分かるわね。ちょっと危ういけど本当に優しくて、人を想う気持ちが誰よりも強いもの」
「ははっ、そういう気持ちが暴走しなきゃいいんだがな!」
ピクニックのように籠を広げて作業を眺める素材屋夫婦の声を聞いていると、なぜか心の底から元気が沸き上がってくるような気がして、クリスの口元は笑っていた。
ツールを動かす手が軽くなる。
運ぶ資材も、心なし重く感じない。
そのうちクリスは、時間の感覚すら忘れるようになっていた。
ただただ無我夢中に、仲間達の笑顔を見たいとだけ考えていると、疲労なんて吹き飛んだし、ひたすら自分の活動に集中できた。
陽が上った。
陽が沈んだ。
何度か空の色が変わるのを肌で感じているうち、とうとうクリスの手は止まった。
「……できた……!」
それはつまり、パーティーハウスの完成を意味していた。
「これが、俺と皆の……パーティーハウス……!」
皆の要望を詰め込んだ理想の家は、上り行く日の光を浴びて輝いてすら見えた。
「ふっ……よっと……」
建設予定地では、クリスが一人で黙々と建築作業を続けていた。
仲間に約束した通り、彼は誰の手も借りずに資材を運び、解体し、組み合わせている。一流の職人ですら目を見張る動きに、野次馬達は感心するばかりだ。
「すげえな、オロックリンのやつ。昨日の夜から敷地に来たかと思ったら、寝ずにあの調子でずっと作業してんだぜ」
「俺達が手伝うって言っても、自分でやりたいの一点張りだしな」
「そっとしておいてやりなよ。あの子はきっと、自分の手で恩返しをしたいんだよ」
既にホープ・タウンに住む住人には知れ渡っているが、クリス・オロックリンという人間は、意外にも頑固者なのだ。
自分がやると言ったら自分がやるし、手助け無用と言えば手助け無用。
助力すると申し出ても、気持ちだけをしっかりと受け取るのみに留まるのだ。
そんな彼の作業工程は、おおむね順調に進んでいる。何もなかった敷地に、家の基盤がしっかりと完成しつつある。
「一階はおおむね完成かな、あとは……」
頭に巻いたタオルを外し、首元の汗を拭うクリスは、ふと視線を前に向けた。
「おーい、オロックリン!」
両手に籠を持った夫婦が、どたどたと駆けてきたのを見たからだ。
「あれは確か、素材屋の……どうかしましたかーっ?」
パーティーハウスに素材を分けてくれた素材屋だと知っているクリスが手を振ると、相手も手を振り返しながら、彼のもとへとやってくる。
「うちの家内が昼飯を作ったんだ、一緒に食べないかーっ!」
「ありがとうございます、いただきますーっ!」
大声に大声で返して少しすると、二人はクリスのそばにやって来た。
素材屋の夫婦は空いたところにどっかりと座り、籠の中身を広げた。
ほんのりと香るパンにソーセージ、ゆで卵の昼食は、シンプルながらこれ以上にありがたいものはないだろう。
クリスも近くの資材に腰かけ、パンを手に取った。
「ちょうどお腹が空いてたので、助かります。けど、どうして急に?」
パンをかじる彼に、素材屋の男が言った。
「お前が作業に手を出されたくないってのは分かってたがな、どうしてもああして頑張ってるのを見ると助けてやりたくなってよ。ほら、お前はしょっちゅう暖炉やかまどの整備をしてくれたろ?」
「整備ってほどじゃないです。いつもきれいに使ってるから、手助けくらいですよ」
クリスがこんな風に返事したのを、街の住民は何度聞いただろうか。
無私の心で修理し、その後のメンテナンスまでしてくれるだけでなく、性能を上げてくれる。こんな技術士が、世に何人いるというのか。
相変わらず謙虚すぎるな、と夫婦は顔を見合わせて笑った。
「それでも、お前のおかげで長持ちしてるのは事実さ」
「隣の奥さんもそうよ。壁を補強してくれてから、ひび一つ入らないのよ!」
「うちの兄貴だって同じだ、同じ技術士なのに、いつもツールをメンテナンスしてくれるんだってな。普通は技術士どうし、手の内を隠すのにな」
素材屋の兄を、当然クリスは知っている。
ツールが壊れて途方に暮れていたところを、彼が助けたのだから。
ただ、クリスは増長など少しもしなかった。
「……それ以上に、俺が助けられてるんです」
彼はいつも感謝していた。
自分がホープ・タウンに来て、探索者として活動し続けられているのは、街の人々が助けてくれているからだと、彼は常々感謝していた。
素材を分け与えてくれる。
探索者の活動を支えてくれている。
ここまでしてくれている相手に、どれだけ恩返しをしても足りないとクリスは思っていた。
「こうしてお昼ご飯をもらって、素材をもらって、色んな所で支えられてる。俺はどんな時もありがたいって思ってますし、修理や整備はそれしかできない、俺の恩返しです」
彼の言葉は謙虚さでも何でもない、本心だ。
「仲間にも……カムナやフレイヤ、リゼットにマガツ、皆に恩を返したいんです。守ってくれて、助けてもらって、おかげで俺は前に進めてるから」
前に進み続けられるお礼をするのは今しかないと、彼は確信しているのだ。
ソーセージにかぶりつきながら、クリスは立ち上がった。
「お昼、ありがとうございました。それじゃ、作業に戻ってきます」
そして軽く頭を下げると、再びパーティーハウスの予定地に戻っていった。
「不器用だなあ、オロックリンは」
「でも、カムナちゃん達があの子を好きになる理由が分かるわね。ちょっと危ういけど本当に優しくて、人を想う気持ちが誰よりも強いもの」
「ははっ、そういう気持ちが暴走しなきゃいいんだがな!」
ピクニックのように籠を広げて作業を眺める素材屋夫婦の声を聞いていると、なぜか心の底から元気が沸き上がってくるような気がして、クリスの口元は笑っていた。
ツールを動かす手が軽くなる。
運ぶ資材も、心なし重く感じない。
そのうちクリスは、時間の感覚すら忘れるようになっていた。
ただただ無我夢中に、仲間達の笑顔を見たいとだけ考えていると、疲労なんて吹き飛んだし、ひたすら自分の活動に集中できた。
陽が上った。
陽が沈んだ。
何度か空の色が変わるのを肌で感じているうち、とうとうクリスの手は止まった。
「……できた……!」
それはつまり、パーティーハウスの完成を意味していた。
「これが、俺と皆の……パーティーハウス……!」
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